「福利厚生規定は何のために作成するの?」
「福利厚生規定に必要な項目は?」
上記のような疑問を持っている担当者も多いでしょう。
福利厚生規定を作成することで、従業員と企業間の誤解を防げるだけでなく、税務調査時の根拠資料としても活用可能です。福利厚生に関するトラブルを回避するためには必要不可欠な書類といえるでしょう。
そこで本記事では、福利厚生規定に必要な項目や作成の手順を解説します。作成後の注意点も解説しているので、本記事を参考にすることで適切に福利厚生規定を導入できるでしょう。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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1. 福利厚生とは
福利厚生とは、従業員やその家族に対して提供するサービスのことです。健康維持や生活をサポートすることを目的として、給与や賞与とは別に提供されます。
また、福利厚生は、必ず導入しなければならない法定福利厚生と、導入するかどうかを自由に決定できる法定外福利厚生に分けられます。法定福利厚生には健康保険や雇用保険などの社会保険が含まれ、法律に従って正しく導入しなければなりません。
一方の法定外福利厚生には家賃補助や昼食補助、退職金制度などが含まれ、企業が自由に制度を設計できます。法律上の導入義務はないため、整備しなくても罰則などはありません。
2. 福利厚生規定とは
福利厚生規定とは、企業が従業員に提供する福利厚生の内容や条件を明文化した規則のことです。法人保険の契約や慶弔費、見舞金、通勤手当などの導入の際に規定します。
福利厚生規定の作成に法的な義務は設けられていませんが、従業員が自らの権利について具体的に理解するために必要です。作成することで誤解によるトラブルを防ぎ、適切に福利厚生を実行する助けになるでしょう。
2-1. 法人保険とは
法人保険とは、会社が契約者となり、保険料を負担する保険のことです。経営者・役員が被保険者となるケースや、従業員が被保険者となるケースがあります。
法人保険の大きな目的は、経営者が急に亡くなったり、従業員が病気で動けなくなったりしたときでも、事業を継続できるようにすることです。たとえば経営者が亡くなった場合は、金融機関からの借入が難しくなるケースがあります。そのような場合でも、法人保険があれば死亡保険金を受け取ることができ、事業を継続できるでしょう。
3. 福利厚生規定が必要な理由
福利厚生規定が必要とされる理由は、主に以下の3つです。
- トラブルを防止できるため
- 経費計上の根拠になるため
- 従業員へ情報共有するため
以下、それぞれ詳しく解説します。
3-1. トラブルを防止できるため
福利厚生規定を設けることで、企業と従業員の間で発生する可能性のあるトラブルを未然に防げます。
福利厚生の内容や利用条件が明確に定められていない場合、従業員が自分の権利を正しく理解できず、不満や誤解が生じるためです。
また、万が一トラブルが発生した際に規定がなければ、適切に対応できず法的な問題に発展する恐れもあるでしょう。
福利厚生規定を作成することで、従業員が自分の権利と義務を理解しやすくなり、企業も一貫した対応が可能になります。
3-2. 経費計上の根拠になるため
福利厚生規定は、企業の財務管理においても重要な役割を果たします。
もし福利厚生費用が適切に計上されていないと、損金として認められない可能性があるためです。税務署から指摘を受けると、追加の税金を支払わなければなりません。
しかし、福利厚生規定によって明確に定めることで、税務調査などで福利厚生費用の正当性が問われた際に根拠として役立つでしょう。
3-3. 従業員へ情報共有するため
従業員への情報共有に役立つことも、福利厚生規定が必要な理由のひとつです。福利厚生規定を作成していないと、従業員はどのような福利厚生を利用できるのか、どのようなルールで法人保険が運用されているのか、といったことを把握できません。
最悪の場合、せっかく福利厚生を導入したのに利用されず、費用が無駄になってしまう可能性もあるでしょう。法人保険を含む福利厚生を導入する場合は、しっかりとルールを設定し、従業員全員へ周知することが大切です。
4. 福利厚生規定に記載する項目
福利厚生規定には、以下の項目を記載しましょう。
- 目的
- 施行日
- 対象となる従業員の範囲
- 福利厚生の種類
- 保険金額
- 事故発生時の扱い
- 退職時の扱い
- 制度の改廃
以下にて、それぞれ具体的に解説します。
4-1. 目的
企業が従業員とその家族の生活の質を向上させ、働きやすい環境を提供するために目的を記載することが重要です。
具体的な目的として以下が挙げられます。
- 従業員の健康増進
- モチベーション向上
- 離職防止
- 採用促進
「高度障害状態になった際に、生命保険を付保することで役員および従業員の福利厚生を図る」などと具体的に記載するとよいでしょう。
4-2. 施行日
どのタイミングで規定が施行されるのかを明確にしておきましょう。一定の期間のみ有効となるルールの場合は、その期間を記載しておきます。
4-3. 対象となる従業員の範囲
福利厚生の対象となる従業員の範囲も記載しましょう。
一般的に、福利厚生の対象となる従業員の範囲は、正社員のほか、契約社員やパートタイム労働者、派遣労働者なども含まれます。
もし、範囲を役員と正社員に限定したい場合や、年齢や勤続年数などの制限を設けたい場合は、具体的に記載することが大切です。
4-4. 福利厚生の種類
利用する保険会社名やサービス名、具体的な内容を記載します。
法人保険の場合は、トラブルを避けるためにも保険料の受取人や支払いの負担割合も記載することが大切です。
なお、従業員に保険料負担が発生して賃金控除が必要な際は、賃金控除の協定も忘れず結びましょう。
4-5. 保険金額
法人保険の場合は、保険が適用される条件と金額を記載することも重要です。保険金額を記載することで従業員の理解を得られるため、後々のトラブル防止につながります。
以下のように、どの保険でどれだけ保証されるかをわかりやすく記載することが大切です。
- 弔慰金:〇〇万円
- 見舞金:〇〇万円
- 傷病による療養(△△週間以上△△カ月未満):〇〇円
なお、表などで詳細に解説が必要な場合は、別用紙で作成するとよいでしょう。
4-6. 事故発生時の扱い
福利厚生規定には、事故発生時の対応について記載することも欠かせません。
主に、事故が発生してから保険金を支払うまでの流れや、企業が提供する見舞金、補償金の内容を明確にしましょう。
また、規定している事由以外の事故が発生した場合にどのような対応をするかを記載することも重要です。
4-7. 退職時の扱い
被保険者が退職した場合の扱いについても、明確に規定する必要があります。退職後の保険継続手続きや、解約返戻金の取り扱い方法などを説明しましょう。
「解約返戻金は一度会社で預かり、退職金規程に従い所定金額を支払う」などと具体的な流れを記載することが大切です。
4-8. 制度の改廃
福利厚生規定には、福利厚生制度の改廃についても明記することが重要です。改廃に必要な手続きの内容や、従業員への通知方法を明確にします。
「企業の経営状況や従業員の要望に応じて、必要に応じて変更や廃止をすることがあります」などと記載するとよいでしょう。
5. 福利厚生規定を作成する手順
福利厚生規定を作成する際は、以下の手順に沿って実施しましょう。
- 福利厚生の導入目的の明確化
- 福利厚生の選定・導入
- 福利厚生規定の作成
- 従業員への説明と周知
以下、それぞれ具体的に解説します。
5-1. 福利厚生の導入目的の明確化
福利厚生規定を作成する際は、まず導入目的を明確にしましょう。
目的を明確にすることで、どの福利厚生でどの程度のサポートが求められるかが明確になり、効果的な制度設計ができます。
また、福利厚生規定の項目である「目的」や「対象となる従業員の範囲」もスムーズに記載できるようになるでしょう。
従業員の働きやすい環境を提供して従業員満足度を向上させることを軸に、福利厚生の導入目的を明確化することが大切です。
5-2. 福利厚生の選定・導入
次に、福利厚生サービスを実際に選定・導入します。先ほど決定した導入目的に沿った福利厚生サービスを選定することが重要です。
法人保険契約の際は、保険の種類や保障内容、保険金額などを慎重に選定しましょう。とくに保険金は、金額が高すぎると福利厚生として認められない可能性があるため注意が必要です。
また、法人保険の契約の際は保障額や期間の設定も求められます。以下の計算式に当てはめて、自社に必要な保障額を計算しましょう。
(短期借入金+支払手形+買掛金)×150/100+(人件費・家賃)×必要月数=必要補償額
5-3. 福利厚生規定の作成
法人保険や福利厚生サービスの契約が終われば、さっそく福利厚生規定を作成します。先述した項目例に沿って記載しましょう。
なお、法人保険の締結が決定する前でも、保険の内容が明確に把握できれば作成しても問題ありません。
すぐに従業員に周知できるよう、契約したい保険会社と保険内容が決定次第、作成を進めておくことをおすすめします。
5-4. 従業員への説明と周知
福利厚生規定を作成した後は、従業員への説明と周知を徹底します。従業員に利用されなければ、制度が形骸化して費用だけが無駄になるため、必ず周知しておきましょう。
メールや社内ポータルサイト、説明会などを通じて、全従業員に規定の内容を伝えることが大切です。できるだけ多くの媒体を利用することで、より周知しやすくなるでしょう。
また、質問や疑問に対する対応も重要です。定期的な説明会やアンケートで得たフィードバックを反映させることで、福利厚生の利用率と満足度を向上させられるでしょう。
6. 福利厚生規定の作成後にすべきこと
福利厚生規定を作成したあとは、以下の4点を実施することが大切です。
- 賃金控除の協定を結ぶ
- マニュアルを作成する
- 定期的に見直す
- 退職金規定を作成する
それぞれ、具体的に解説します。
6-1. 賃金控除の協定を結ぶ
福利厚生によって必要な負担金を賃金から控除する場合、福利厚生規定を作成した後に賃金控除の協定を結ぶ必要があります。
住民税や健康保険などの法律で定められた項目以外の福利厚生は、許可なく従業員の賃金から控除できないためです。
賃金控除の協定を結ばないと、労働基準法第24条に基づき監査時に是正勧告を受ける可能性があるため注意しましょう。
協定書には控除の内容や控除額などを明確に記載し、締結後は社内でしっかりと保管することが大切です。
6-2. マニュアルを作成する
福利厚生規定を作成した後は、運用マニュアルを作成することが不可欠です。
運用マニュアルは、福利厚生規定の具体的な運用方法を示すもので、担当部門や経理部門が円滑に業務を遂行する指針となります。
福利厚生の申請方法から承認までの流れ、各部署の役割分担などを詳細に記載するとよいでしょう。
6-3. 定期的に見直す
福利厚生規定は、一度作成したら終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。
社会情勢の変化や法改正、従業員の要望の変化に対応するため、福利厚生規定を定期的に確認し、必要に応じて改訂しましょう。
また、社内アンケートを実施して従業員の満足度や利用率を把握することで、現行制度の課題が明確になり、改善点を見つけられます。
6-4. 退職金規定を作成する
必要に応じて退職金規定を作成しておくことも重要です。たとえば、養老保険に加入する場合、満期を迎えると満期保険金が支給されます。退職金規定には、「当該の従業員が死亡してしまった場合、満期保険金は会社側が受け取る」といった内容を記載しておくとよいでしょう。
退職金規定を作成していない場合、従業員の家族が満期保険金を受け取ってしまい、それとは別で退職金を支給する必要が出てきます。満期保険金を退職金として扱う旨を記載しておけば、多額の出費を防げるでしょう。
7. 福利厚生規定を作成して従業員へ周知しよう!
今回は、福利厚生規定の必要性や記載すべき項目などについて解説しました。福利厚生規定は、福利厚生に関する内容や適用条件などを記載したもので、主に法人保険や慶弔見舞金を導入する際に作成します。福利厚生規定を作成しておけば、福利厚生に関するルールが明確になり、労使間のトラブルを防止できるでしょう。
また、経費計上の根拠にもなるため、税務調査が入った際にも役立ちます。福利厚生規定には、導入する福利厚生の種類や目的、適用範囲などを明記し、しっかりと保管しておきましょう。
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