「福利厚生と手当の違いとは?」
「福利厚生と手当で、課税対象・非課税対象になるものは何?」
上記のように悩むケースもあるでしょう。
福利厚生と手当の違いは、対象者・支給形態・支給方法です。本記事では福利厚生と手当の違いのみならず、それぞれの種類一覧や課税対象と非課税対象を解説します。
福利厚生と手当の使い分けのポイントを知りたい人も、ぜひ参考にしてください。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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1. 福利厚生と手当の違い
福利厚生と手当の違いは、以下の3点です。
福利厚生 |
手当 |
|
対象者 |
すべての従業員 |
条件に該当する従業員のみ |
支給形態 |
非金銭・金銭 |
金銭 |
支給方法 |
さまざまな方法で支給 |
給料と一緒に支給 |
福利厚生と手当の違いをさらに理解するために、まずはそれぞれの特徴について知っておきましょう。
1-1. 福利厚生とは?
福利厚生とは、会社が給与と賞与に加えて支給する報酬・サービスのことを指します。以下のように名称の異なる2種類があり、種類の違いは法律の定めの有無です。
種類 |
法律の定めの有無 |
法定福利厚生 |
有 |
法定外福利厚生 |
無 |
法定福利厚生は、法によりすべての企業が従業員に必ず提供すべきものと決まっています。一方で、法定外福利厚生の支給は各企業の任意です。
1-2. 手当とは?
手当とは、給与と一緒に支払われる金銭報酬を指します。福利厚生の種類と同様に、法律の定めにより支給する手当と、各企業が独自に支給する手当の2種類です。
時間外手当や深夜手当などは、法律に従って正しく支給しなければなりません。一方、通勤手当や住宅手当などは、支給するかどうかを企業が自由に判断できます。手当の種類については、後ほど詳しく解説します。
2. 福利厚生の種類一覧
法定・法定外に分けて、福利厚生の種類を一覧表にまとめました。
法定福利厚生の種類は以下の通りです。
法定福利厚生 |
健康保険 介護保険 厚生年金保険 雇用保険 労災保険 子ども・子育て拠出金 |
続いて、一般的な法定外福利厚生の種類を10項目に大別して一覧表にまとめました。
法定外福利厚生 |
|
通勤・住宅 |
通勤交通費補助 引越し代補助 住宅ローン補助 社員寮・社宅の提供および家賃補助など |
健康管理・医療 |
社内ジムの設置 社外ジムの無料・割引利用 人間ドック費補助など カウンセラーの無料相談会など |
レクリエーション |
社員旅行 社内サークル活動補助 社内イベント費補助 レジャー施設費補助など |
慶弔・災害 |
結婚祝い金 出産祝い金 傷病見舞金 災害見舞金など |
育児・介護 |
社内託児所の設置 育児・介護休業延長制度 ベビーシッター費補助 介護費補助など |
財産形成 |
財形貯蓄制度 社内貸付制度 持株会制度 金融セミナーの実施など |
働き方 |
テレワーク制度 フレックスタイム制度 時差出勤制度 短時間勤務制度など |
スキルアップ・自己啓発 |
研修・講習会の参加費補助 海外研修制度 資格取得費補助 図書購入費補助など |
食事 |
社員食堂の設置 食事代補助 ドリンクの無料提供 残業時の食事の無料提供など |
休暇 |
リフレッシュ休暇 バースデー休暇 アニバーサリー休暇 ボランティア休暇など |
上記の表にはない、自社の従業員のニーズに合う独自の法定外福利厚生を導入する会社も増えています。
3. 手当の種類一覧
法律の定めがある手当と会社が任意で支給する手当にわけて、手当の種類を一覧表にまとめました。
法律の定めがある手当 |
|
時間外手当 (残業手当) |
1日8時間または週40時間を超えた労働に対して支払われる金銭報酬 |
深夜手当 |
22時から5時までの労働に対して支払われる金銭報酬 |
休日手当 |
法定休日の労働に対して支払われる金銭報酬 |
法定休日とは、法律による定めのある、会社が従業員に必ず与えなければならない休日のことです。
会社が任意で支給する代表的な手当の種類一覧は、以下のとおりです。
会社が任意で支給する手当 |
|
通勤手当 |
従業員の自宅から勤務先までの交通費に対して支払う金銭報酬 |
住宅手当 |
持ち家のローンや家賃の補助を目的に従業員へ支払う金銭報酬 |
家族手当 |
扶養の有無に関係なく、家族のいる従業員へ支払う金銭報酬 |
扶養手当 |
扶養する家族がいる従業員へ支払う金銭報酬 |
皆勤手当 |
無遅刻無欠勤の従業員へ支払う金銭報酬 |
資格手当 |
業務の遂行に役立つ資格を保有している従業員へ支払う金銭報酬 |
職務手当 |
従業員の職務内容に対して支払う金銭報酬 |
役職手当 |
役職に就いている従業員へ支払う金銭報酬 |
地域手当 |
生活費の負担軽減を目的に物価の高い勤務地の従業員へ支払う金銭報酬 |
出張手当 |
出張費用の補填を目的に出張する従業員へ支払う金銭報酬 |
食事手当 |
日々の食事費用の補助を目的に従業員へ支払う金銭報酬 |
上記以外にも幅広い手当が存在し、支給条件は同じでも、会社により名称が異なるケースがあります。以下、それぞれの手当について簡単に解説します。
3-1. 時間外手当(残業手当)
時間外手当とは、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えた際に支払うべき手当です。通常の賃金に、25%以上の割増賃金をプラスして支払わなければなりません。
さらに、1カ月の時間外労働が60時間を超えた場合は、50%以上の割増賃金をプラスする必要があります。
3-2. 深夜手当
深夜手当とは、22時〜翌5時までの労働に対して支払うべき手当です。通常の賃金に、25%以上の割増賃金を加算して支払う必要があります。
また、22時〜翌5時に時間外労働をおこなった場合は、50%以上の割増賃金をプラスしなければなりません。
3-3. 休日手当
休日手当とは、法定休日における労働に対して支払うべき手当です。通常の賃金に、35%以上の割増賃金をプラスして支払う必要があります。
たとえば土日が休日の企業において、日曜日を法定休日としている場合、日曜日に労働すると休日手当が発生します。土曜日は法定休日ではないため、時間外手当のみが発生し、休日手当は発生しません。
3-4. 通勤手当
通勤手当とは、自宅から勤務先への通勤を補助するために支給する手当です。電車・バスで通勤するときの交通費や、車で通勤するときのガソリン代などを支給する企業が多いでしょう。
自宅から勤務先までの距離などに応じて、支給金額を決めるケースもあります。
3-5. 住宅手当
住宅手当とは、家賃や住宅ローンを補助するために支払う手当です。従業員が自分で契約している賃貸物件の家賃の一部を補助するケースもあれば、社員寮や社宅を設置して安く貸し出すケースもあります。
会社までの距離や勤続年数などによって、支給の有無や金額を決定する企業もあるでしょう。
3-6. 家族手当
家族手当とは、その名の通り、家族がいる従業員を支援するための手当です。後述する扶養手当とは異なり、その家族を扶養しているかどうかに関係なく支給されます。
3-7. 扶養手当
扶養手当とは、扶養している家族がいる場合に支払う手当です。従業員に家族がいたとしても、基準を超える収入がある場合は、扶養手当の支給対象にならないケースが多いでしょう。
3-8. 皆勤手当
皆勤手当とは、無遅刻・無欠勤の従業員に対して支払う手当です。遅刻や欠勤が数回以下であれば支払う、というルールにしている企業もあるでしょう。
ルールは企業が自由に設定できますが、有給休暇を取得した際に欠勤扱いにすると、有給休暇の取得が促進されなくなります。労働基準法違反と見される可能性もあるため注意しましょう。
3-9. 資格手当
資格手当とは、業務に役立つ資格を保有している従業員へ支払う手当です。資格手当を導入することで、従業員の受験を促すことができ、スキルアップや生産性向上につながります。
3-10. 職務手当
職務手当とは、担当している仕事内容や難易度に応じて支払う手当です。一般的に、難しい内容の仕事をこなしている従業員へ支給します。
後述する役職手当と似ていますが、職務手当は役職の有無にかかわらず支給する点で異なります。
3-11. 役職手当
役職手当は、特定の役職に就いている従業員に対して支払う手当です。部長や課長、チームリーダーといった役職に対して支払うケースが多いでしょう。
責任が大きい役職に就いているほど、役職手当の金額を高く設定するのが一般的です。
3-12. 地域手当
地域手当とは、特定の地域で働いている従業員に対して支払う手当です。主に物価が高いエリアを対象とし、家賃や食費を補助するために支給します。
地域手当を導入することで、勤務地の違いによる差を是正し、従業員間の不公平感を軽減できるでしょう。
3-13. 出張手当
出張手当とは、出張のためにかかる食費などを補助するための手当です。また、出張に対する慰労金としての意味もあります。
基本的には、交通費や宿泊費とは別に支給するケースが多いでしょう。
3-14. 食事手当
食事手当とは、日々の食費を補助するために支給する手当です。
全従業員にとって役立つ手当であるため、導入すれば満足度向上につながるでしょう。また、食事をしっかりと摂ってもらうことで、従業員の健康維持を図れます。
4. 福利厚生・手当で課税対象となるもの
福利厚生・手当で課税対象となるものについて、以下の流れで解説します。
1.福利厚生で課税対象となるもの
2.手当で課税対象となるもの
4-1. 福利厚生で課税対象となるもの
福利厚生で課税対象となるのは、法定外福利厚生のなかで以下の条件に該当するものです。
- 常識の範囲外の内容である場合
- かかる費用が妥当な金額でない場合
- 全従業員が平等に参加・使うことができない場合
- 規定のある項目について規定外になる場合
- 現金や換金性の高いものである場合(通勤関連は除く)
一般的には非課税対象となる全従業員対象の社内イベントで、一律に提供される飲食の費用を例にしてみましょう。たとえば、1人あたりの飲食代が5万円かかるなど、常識の範囲外の高額な金額とみなされた場合には課税対象となります。
健康診断の現金支給や高額な人間ドックについても、課税対象です。
また、全従業員対象の社員旅行や研修旅行であっても、以下に該当する場合は課税対象となります。
- 旅行期間(海外旅行は外国滞在日数)が4泊5日を超える
- 参加人数が全従業員の50%未満
- 参加しない従業員に現金を支給した
参照:No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁
以下の3項目については、課税対象となる場合があります。
- 社宅
- 通勤
- 食事
社宅については、企業が負担する賃貸料相当額が50%を超えると、すべての負担額が課税対象となるので注意しましょう。
賃貸料相当額の算出方法は、以下の1から3の合計金額です。
1.その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
2.12(円)×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
3.その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
参照:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁
通勤と食事の費用が課税対象となる条件については、後述する非課税対象となるケースを参考にしてください。
換金性の高い金券類やスーツの現物支給、スーツ購入のための現金支給なども課税対象です。
4-2. 手当で課税対象となるもの
手当は給与の一部とみなされるため基本的に課税対象ですが、以下の手当は非課税になる場合があります。
- 通勤手当
- 出張手当
- 宿日直手当
- 在宅勤務手当
- 資格取得手当
- 食事手当
上記が非課税になる場合については、次項で詳しく見ていきましょう。
5. 福利厚生・手当で非課税対象となるもの
福利厚生・手当で非課税対象となるものについて、以下の流れで解説します。
1.福利厚生で非課税対象となるもの
2.手当で非課税対象となるもの
5-1. 福利厚生で非課税対象となるもの
福利厚生で非課税対象となるものは、以下の法定福利厚生です。
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 子ども・子育て拠出金
加えて、以下の条件を満たす法定外福利厚生も非課税対象となります。
- 福利厚生の目的に沿う・常識の範囲内の内容である
- 福利厚生として妥当な金額である
- 従業員全員を対象とした平等な福利厚生の費用である
- 税務規定のある福利厚生の場合、規定の範囲内の支出である
たとえば新年会などの社内イベントでは、全従業員が対象のイベントのみ非課税対象となります。また飲食費についても、妥当な金額で、従業員に一律に提供された場合は非課税対象です。
慶弔費や育児・介護補助費用も非課税対象ですが、妥当な金額でない場合には課税対象となります。
5-2. 手当で非課税対象となるもの
非課税対象となる手当と各条件は、以下の通りです。
通勤手当 |
・公共交通機関利用の通勤交通費で、1カ月あたりの上限額15万円以内のもの ・自転車や自動車利用の通勤交通費で、片道が2km未満の従業員へ支給したすべてのもの ・自転車や自動車利用の通勤交通費で、片道が2km以上の場合に距離別の上限額4,200円~31,600円以内のもの |
出張手当 |
業務上必要で通常支払われる金額と認められる、交通費・日当・宿泊費など |
宿直手当 日直手当 |
・1回あたり4,000円までのもの、もしくは1カ月に4回実施の場合は1万6,000円までのもの ・食事の支給がある場合は上記の4,000円から食事代を差し引いた金額が非課税の上限額となる |
在宅勤務手当 |
業務に必要な実費相当額(パソコン・机・事務用品などの購入代のすべて、通信費や電気代のうち業務使用分を計算して支給したすべてのもの) |
資格取得手当 |
業務に関係する資格を取得するために必要な費用のすべて(研修会費用なども含む) |
食事手当 |
食事の現物支給において、従業員が食事代の半額以上を負担しており、従業員1人・1カ月あたりの負担額が3,500円以下の場合におけるすべての会社負担額 |
参照:No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当|国税庁
参照:No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき|国税庁
在宅勤務手当において、1カ月あたり4,000円などと、月額金額を決めて毎月支給する場合は課税対象となります。
加えて、業務に関係のない資格を取得する場合に支給した資格取得手当も課税対象です。
6. 福利厚生と手当の使い分けのポイント
福利厚生と手当の使い分けのポイントは、以下の通りです。
- 全従業員を対象とする場合は福利厚生とする
- 非金銭報酬で提供する場合は福利厚生とする
- コストや手間を考慮する
それぞれのポイントについて簡単に確認しておきましょう。
6-1. 全従業員を対象とする場合は福利厚生とする
支給する対象者によって、福利厚生と手当を使い分けるとよいでしょう。
前述のように全従業員を対象者にする場合は福利厚生、条件に該当する従業員のみを対象者とする場合は手当を使うのが一般的です。
6-2. 非金銭報酬で提供する場合は福利厚生とする
基本的に、非金銭報酬として提供する場合は福利厚生、金銭報酬として提供する場合は手当と考えるとよいでしょう。
たとえば、社内カフェや社内託児所の設置、フレックスタイム制度や社内貸付制度の新設など、非金銭報酬として提供する場合は法定外福利厚生を使います。
6-3. コストや手間を考慮する
一概には言えませんが、新しい手当を導入すると給与計算の手間が増えます。一方、新しい法定外福利厚生を導入すると、運用や管理の手間も増えるでしょう。
どちらもコストは増加しますが、手当よりも法定外福利厚生のほうがコストの負担が大きいと予想されます。導入時や導入後のコストや手間について検討し、2つを使い分けるのも良いでしょう。
7. 福利厚生と手当の違いをしっかりと理解しておこう!
今回は、福利厚生と手当の違いや使い分けのポイントなどについて解説しました。どちらも従業員に対して提供するものですが、意味や目的は大きく異なります。課税対象か非課税対象かも異なるため、違いをしっかりと認識しておきましょう。
また、一定の条件を満たすことで非課税対象となるケースもあります。節税効果を高めるためにも、課税・非課税となる条件をしっかりと把握しておくことが重要です。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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