ストレッチアサインメントとは、目標達成が難しい業務や課題を与えることで、従業員の成長を促す人材育成の手法の一つです。ただし、やり方を間違えると従業員に過度なストレスがかかり、モチベーションの低下を招く恐れがあります。この記事では、ストレッチアサインメントとは何か、メリット・デメリットや導入手順、導入事例を踏まえてわかりやすく解説します。
目次
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1. ストレッチアサインメントとは?
ストレッチアサインメントとは、目標達成が難しい業務を与えることで従業員の成長を促進させる人材育成の方法です。少し努力すれば達成できる業務を任せることで、新たなスキルを習得し、業務の幅を広げることができるようになります。ここからは、そもそもアサインメントとは何か、その意味について紹介します。
1-1. アサインメントとは?
アサインメント(Assignment)とは、日本語で「割り当て」「任命」「譲渡」などを意味する用語です。アサインメントは、アサイン(Assign)の名詞系になります。ビジネスシーンでは、「仕事が割り当てられること」「役職に任命されること」といった意味で用いられます。
2. ストレッチアサインメントと類似する用語の違い
アサインメントには、ストレッチアサインメントだけでなく、ジョブアサインメントやダブルアサインメント、タフアサインメントなど、さまざまな種類があります。ここでは、ストレッチアサインメントと類似する用語の違いについて詳しく紹介します。
2-1. ジョブアサインメントとは?
ジョブアサインメントとは、管理職やリーダーがチームメンバーに対して、業務を割り振ることを意味します。組織の目標を達成するためには、個々の力を最大限に発揮することが求められます。ジョブアサインメントにより、従業員一人ひとりの性格やスキルに応じて適切なタスクを与えることで、パフォーマンスの向上が期待できます。これにより、従業員の成長だけでなく、効率よく組織の目標達成も目指すことができるようになります。
2-2. ダブルアサインメントとは?
ダブルアサインメントとは、1つの仕事に対して2人の従業員を配置して業務に取り組ませる手法です。ダブルアサインメントを取り入れることで、1人が退職・休職などにより不在になったとしても、業務を円滑に進めることができます。これにより、業務の属人化を防止することが可能です。また、ペアでコミュニケーションを密に取り、信頼関係を築きながら仕事を進めることで、従業員の心理的な負荷が軽減され、安心して仕事に取り組むことができます。ただし、1人でも問題ないような仕事にダブルアサインメントを導入すると、人件費の増加や生産性の低下を招く恐れもあるので注意が必要です。
2-3. タフアサインメントとは?
タフアサインメントとは、現在の実力よりも難しい課題を与えて従業員の成長を促進する人材育成手法を指します。タフアサインメントとストレッチアサインメントは、ほとんど同じ意味合いで用いられます。しかし、ストレッチアサインメントでは、ストレッチ(背伸び)という名称が用いられているように、背伸びしなければ対処できない程度の仕事を与える点が強調されています。つまり、非現実的で達成困難なタスクを与えることは、ストレッチアサインメントとは言えません。
3. ストレッチアサインメントが注目される背景や理由
ここでは、ストレッチアサインメントが注目されるようになった背景や理由について詳しく紹介します。
3-1. 少子高齢化による労働人口の減少
近年では少子高齢化により、労働人口が減少しており、人材確保に悩みを抱えている企業は少なくありません。このような時代において、少ない人材で高い成果を出すためには、従業員一人ひとりのパフォーマンスを高めることが求められます。また、人材白書2023によると、多くの企業で次世代のリーダー不足も懸念されています。ストレッチアサインメントは、リーダーを育成するための手法としても効果的です。このように、従業員の成長を促進するための手法の一つとして、ストレッチアサインメントが注目されています。
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3-2. 技術進歩や働き方改革による価値観の多様化
昨今ではIT技術の進歩が目覚ましく、ビジネス市場は目まぐるしく変化しています。また、働き方改革の影響もあり、テレワークやフレックスタイム制、裁量労働制、時短勤務など、柔軟な働き方が推進されています。このような現代において、従来のような画一的な人材育成を採用していては、環境の変化に柔軟に対応できる優秀な人材を育成することができません。
ストレッチアサインメントを取り入れて、従業員一人ひとりの価値観やスキルに着目し、それにあわせて手を伸ばせば届く実力以上の目標を設定することで、育成の質を高めることができます。このように、技術進歩や働き方改革により求められる人材育成のやり方が変化していることも、ストレッチアサインメントが注目される背景の一つとして挙げられます。
3-3. 人的資本経営への注目の高まり
人的資本経営とは、人材を資本として捉えて、中長期的な企業価値の向上につなげる経営手法を指します。近年では技術進歩などにより、企業経営において有形資産だけでなく、人的資本を含む無形資産の重要性が高まっています。また、投資家などのステークホルダーも、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」に配慮している企業を高く評価するように時代は変化してきています。このように、世界中において人的資本経営への注目が高まっています。人材を効率よく育成し、中長期的な成長につなげるためにも、ストレッチアサインメントが注目されています。
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4. ストレッチアサインメントのメリット
ストレッチアサインメントを取り入ることで、従業員や組織は多くのメリットが得られます。ここでは、ストレッチアサインメントのメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 従業員のポテンシャルを引き出せる
ストレッチアサインメントでは難しい業務や困難な課題への挑戦を促すため、従業員が自覚していないポテンシャルの発揮につながります。ポテンシャルとは、現状、発揮されていない秘められた能力のことです。ストレッチアサインメントにより、ポテンシャルを引き出すことで、従業員の成長とパフォーマンス向上が期待できます。
4-2. 主体性の向上が期待できる
ストレッチアサインメントを取り入れると、現状のスキルでは達成が難しいタスクに取り組むことになるので、どのような知識・スキルが不足しているか、どのように仕事のやり方を変えるべきかなど、自分で考えて行動せざるを得なくなります。これにより、主体性が向上し、新たなアイデアやイノベーションが生まれるきっかけにもなります。また、仕事に対する当事者意識も芽生え、モチベーションの向上が期待できます。
4-3. スキルアップにつながる
ストレッチアサインメントでは、現状のスキルでは達成が難しい業務を従業員に与えます。そのため、新しい知識・能力を身に付けるため、資格取得を目指したり、研修・セミナーに参加したりするといった取り組みを促すことが可能です。
また、仕事を与えられる側だけでなく、仕事を割り振る側である従業員の育成にもつながります。育成担当者は、どのようなレベルの業務を割り当てるのが効果的か、どのようにフォローをするのが部下のためになるのかなどを考えるようになります。これにより、マネジメントスキルの習得にもつながります。このように、ストレッチアサインメントは、育成対象者と育成担当者の両者にとってスキルアップの機会になります。
5. ストレッチアサインメントのデメリット
ストレッチアサインメントを正しく取り入れなければ、メリットだけでなく、デメリットが生じる恐れもあります。ここでは、ストレッチアサインメントのデメリットについて詳しく紹介します。
5-1. モチベーションの低下につながる
ストレッチアサインメントでは、努力すれば達成できるレベルの仕事を与えることで、主体性や積極性を高めることができます。一方、達成が不可能なレベルの課題を割り振ると、自信を失い仕事に対するモチベーションの低下につながります。このように、ストレッチアサインメントを実施する場合、難易度調整が重要になります。
5-2. 生産性が低下する
従業員によっては、ストレッチアサインメントの人材育成のやり方があっていない可能性もあります。優秀な従業員であっても、ストレス耐性がない人もいます。このような人材に対してストレッチアサインメントを適用すると、心身に大きな負荷がかかり、集中力が下がり、かえって生産性が低下する可能性もあります。このように、ストレッチアサインメントを取り入れる際は、適した人材を選定することが大切です。
5-3. 離職につながる
正しくストレッチアサインメントを実施すれば、効果的な人材育成を実現し、従業員のエンゲージメントを高めることができます。しかし、従業員一人ひとりの性格やスキルを考慮せずに、仕事を割り当てると、「会社から期待されていない」「業務にやりがいが感じられない」などと考えるようになり、帰属意識が低下します。結果として、離職率が高まり、人材育成のコストが大きくなる恐れもあります。ストレッチアサインメントを取り入れる際は、従業員に配慮して適切なレベルの仕事を割り振るようにしましょう。
6. ストレッチアサインメントの導入手順
ストレッチアサインメントを導入する際の注意点や流れを理解しておくことで、スムーズに制度を導入し、効果を高めることができます。ここでは、ストレッチアサインメントの導入手順について詳しく紹介します。
6-1. 対象とする従業員を選定する
ストレッチアサインメントは効果的な人材育成の手法ですが、大きな負荷がかかるため、すべての従業員に適しているとは言えません。まずはストレッチアサインメントを実施する目的とそのリスクを洗い出したうえで、対象従業員を選定しましょう。
たとえば、将来のリーダーを育成したいのであれば、管理職の適性があり、将来マネジメントの役割を担いたいと考えている従業員を選定することが推奨されます。また、従業員の成長を促進したい場合、ストレッチアサインメントだけでなく、他の育成手法と比較したうえで最適な方法を採用するのがおすすめです。このように、必ずしもストレッチアサインメントが効果的だとは限らないので、慎重に導入を進めることが大切です。
6-2. 事前の説明を実施する
ストレッチアサインメントは、従業員に負荷がかかります。ストレッチアサインメントの理解がないまま業務を始めると、タスクをこなすことが困難だと感じ、自信喪失やモチベーション低下につながる恐れがあります。そのため、ストレッチアサインメントの対象となる従業員には、事前に細かな説明をおこないましょう。ストレッチアサインメントの目的やメリット、実施期間、サポート体制などをあらかじめ周知し、従業員からの同意を得ることで、トラブルを防ぎ、効果的にストレッチアサインメントを実施することができます。
6-3. ストレッチゾーンを設定して目標管理をする
ストレッチアサインメントを実施する場合、タスクの難易度の調節が成功のカギを握ります。成長に関する環境は、次の3つに区分することが可能です。
- コンフォートゾーン:現状のスキルでも対処できる範囲
- ストレッチゾーン:現状から少し背伸びをすれば対処できる範囲
- パニックゾーン:自分の持つスキルが全く通用せず対処できない範囲
コンフォートゾーンの仕事であれば、従業員は現状のスキルで十分に対処できるため、安心して取り組むことができます。しかし、チャレンジすることが少なくなり、大きな成長が期待できません。一方、パニックゾーンの仕事を与えてしまうと、成長のきっかけになる可能性もありますが、ストレスの蓄積により心身が弱ってしまい、仕事に対するモチベーションや生産性が低下する恐れもあります。
このように、ストレッチアサインメントを取り入れる場合、コンフォートゾーンよりも難しく、パニックゾーンには至らないストレッチゾーンの課題を割り振り、目標管理をおこなうことが大切です。従業員一人ひとりの特性を正しく理解し、時期や段階に応じて最適なレベルの仕事を与えることで、従業員のモチベーション向上や成長が期待できます。
6-4. 実施中は支援せず見守る
ストレッチアサインメントの期間中は、上司や同僚から必要以上に支援しないように注意しましょう。問題が生じるたびにサポートすると、従業員の主体性を育めず、問題解決能力を鍛えられないためです。難しい状況と対面したときに、従業員に判断や対応を委ねることで成長を促せます。多少失敗しそうな場合でも、あまり口出しをせずに従業員を信頼して見守りましょう。
ただし、業務の進捗状況を確認しなかったり、業務を丸投げしたりするのは、重大なトラブルにつながります。イレギュラーな対応やインシデントを引き起こす可能性がある場合は、早期にサポートをおこないましょう。
6-5. 定期的にフィードバックを実施する
ストレッチアサインメントを取り入れたら、従業員の考えていることや仕事の進捗状況を確認するためにも、フィードバックをする機会を設けましょう。現状の課題が簡単にクリアしているのであれば、もう少し難しいタスクを与えてもよいかもしれません。
一方、課題に苦戦している場合、どのようにすれば乗り越えられるか、フィードバックをおこないましょう。簡単に答えを出してしまうと、主体性が育まれません。部下の意見に耳を傾け、その意思を尊重したうえで、今後のアクションプランを一緒に検討しましょう。
7. ストレッチアサインメントの導入事例
ストレッチアサインメントを導入することで、将来のリーダー育成を効率よく実現した事例があります。ストレッチアサインメントにより、どのようにすれば課題解決に導けるか自分で考えるようになり、従業員の主体性を育むことに成功しています。また、将来のキャリアから、早い段階で困難な課題に挑戦させることで、通常よりも早くスキルアップし、早期に目標達成を実現させています。さらに、リーダーシップ研修やダイバーシティ研修といった研修制度を充実させるなど、ストレッチアサインメントの効果を高めるサポート体制も強化しているのが特徴的です。
8. ストレッチアサインメントを導入して効率よく人材を育成しよう!
ストレッチアサインメントを取り入れることで、従業員の主体性やモチベーションを高めることができます。また、適切なレベルのタスクを与えることで、大きな成長につながりやすく、将来のリーダー育成にも役立ちます。ただし、あまりに難しすぎるタスクを与えてしまうと、かえってモチベーション低下につながる恐れもあります。従業員一人ひとりのレベルにあった仕事を割り振り、定期的にフィードバックをおこなうことが大切です。
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