被保険者の家族や親族は、一定の要件を満たせば社会保険料の扶養に入ることが可能となります。ただし社会保険の適用範囲は法改正によって今後拡大されていくため、加入条件を詳しくチェックしておくことが大切です。
本記事では社会保険料の扶養について、条件や適用範囲を詳しくご紹介いたします。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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1. 社会保険料の扶養とは?
扶養という言葉には、1人で生計を立てることが難しい方を援助するという意味合いがあります。社会保険における扶養とは、被保険者の配偶者や子どもなど一定の条件下にある家族が、社会保険料を支払うことなく健康保険に加入できる仕組みのことを指します。
収入のない専業主婦や専業主夫のほか、パートやアルバイトで短時間労働をしている家族であっても、一定の条件を満たしていれば扶養に入れることができます。扶養に入ったときには配偶者の健康保険に加入することになるため、被扶養者本人が社会保険料を支払う必要なく3割負担で病院などを受診できます。
さらに、厚生年金に加入している被扶養者の扶養に入れば、国民年金の第3号被保険者になることが可能です。自身が国民年金の保険料を納付しなくとも、扶養に入っている間は保険料を納付したとされ、年金額に反映されます。
被保険者が配偶者や子どもを扶養に入れるときには手続きが必要です。まずは日本年金機構に対して被扶養者異動届を提出し、被扶養者認定を受けることになります。手続きをしなかったときには配偶者や子どもが扶養の適用外となり、国民健康保険などの負担を求められることがあります。
2. 社会保険適用拡大でどう変わる?
令和2(2020)年5月に年金制度改正法が成立し、社会保険料の適用範囲が拡大されることとなりました。
社会保険料適用拡大は、従業員数が501名以上の企業においてはすでにスタートしています。さらに、今後は従業員数の少ない事業所であっても要件に該当している労働者は社会保険への加入が義務化されます。
これまで、社会保険に加入するのは正規従業員やフルタイム従業員に限られていました。さらに、週の所定労働時間や月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合、パートやアルバイトの従業員も社会保険に加入する必要がありました。
改正法ではこういった方に加え、短時間労働のパートや従業員やアルバイト従業員にも社会保険加入が義務付けられます。週の所定労働時間が20時間以上あることや雇用期間が2ヶ月以上になること、賃金月額が8.8万円以上(年収換算でおよそ106万円)以上であることが社会保険加入の条件となります。なお、学生はこの要件に当てはまりません。
これまで家族の扶養に入っていた短時間労働者が新たに社会保険に加入しなければならなくなるケースが増えるため、十分な注意が必要です。
社会保険適用拡大は企業規模ごとに段階的におこなわれています。この法改正に対応するために、企業は社会保険の対象者が増えた場合の対応方法を確認しておかなればなりません。しかし、何をすればよいのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方に向けて、当サイトでは、社会保険適用拡大をうけて企業がすべき対応をまとめた資料を無料で配布しています。
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3. 社会保険料の扶養範囲
社会保険における扶養には一定の範囲が定められています。
対象となるのは、被保険者の配偶者と三親等内の親族に限ります。配偶者には、事実上婚姻関係と同様の人を含みます。
三親等内とは被保険者の直系尊属、子どもや孫、兄弟姉妹のことを指します。制度上、両親と子どもは一親等、祖父母や兄弟姉妹、孫は二親等ということになります。三親等内には被保険者のおじやおば、その配偶者、配偶者の父母や祖父母、子や孫などが含まれます。
生計をともにしていることが社会保険における扶養の判断材料となるため、亡くなった内縁関係の配偶者の父母や子どもであっても扶養の対象として認められます。扶養の条件はかなり広い範囲に適用されるため、手続きの際には詳しい条件を確認しましょう。
扶養に入れるかを判断する際には、家族や親族の同居の有無が確認されます。直系尊属や配偶者、子や孫、兄弟姉妹については、同居していない場合でも扶養に入ることが可能です。それ以外の三親等以内の親族については、同一世帯に居住していることが扶養に入るための条件となります。
また、社会保険の扶養に入れるのは原則として日本国内に住民票を有する人です。一定期間海外で生活する場合でも、日本に住民票があれば問題ありません。短期間の出張や留学で住民票を移動させるときにも、生活の基礎が日本国内にあると認められれば扶養に入ることができます。
4. 社会保険料の扶養の条件を確認しておこう
社会保険料の扶養に入るためには一定の条件を満たす必要があります。配偶者や親、子どもなど、それぞれの扶養の条件について詳しくチェックしていきましょう。
4-1. 生計維持関係にあるか否か
被保険者が生活費を負担するなど生計を維持されている人のみが社会保険料の扶養に入ることができます。年収などの条件を満たしているときでも、生計維持関係になければ扶養に入ることはできません。
生計維持関係は、同居の場合であれば扶養家族の年収が被保険者の年収の2分の1未満のときに認められます。別居のときには、扶養家族の年収が被保険者からの仕送り額よりも低い場合に生計維持関係があると判断されます。
4-2. 配偶者には年収の条件がある
配偶者が被保険者の扶養に入るためには、年収が一定額未満でなければなりません。原則として、年収が130万円未満であれば扶養に入ることが可能となります。ただし、60歳以上または障害者については、基準額が180万円に設定されています。
ただし現在は社会保険適用拡大が段階的に施行されている状況のため、注意が必要です。2022年10月以降は、パートやアルバイトなどの短時間労働者は、従業員数101名以上の企業に在籍し年間でおよそ106万円以上を稼いだ場合に社会保険の加入義務が生じます。
また、2024年10月以降は、従業員数51名以上の企業に在籍する短時間労働者にも同様の制度が適用となります。
年収が106万円以上になる見込みの方は、新たに社会保険の対象となるか否かを事業所に確認しておきましょう。
4-3. 被保険者の親が扶養に入るための条件
被保険者の親が定年退職後に収入がないなどの理由で子どもの扶養に入るケースがあります。
扶養に入れるか否かは年金の額に寄って異なります。老齢年金や障害年金、遺族年金といった公的年金は社会保険においては本人の収入とみなされます。基本的には年金額が130万円、60歳以上や障害者の場合には180万円を超えるときには扶養に入ることができません。
また、75歳以降になると後期高齢者医療制度に強制加入することになり、子どもの扶養に入ることはできなくなります。
4-4. 被保険者の子どもが扶養に入るための条件
被保険者の子どもは基本的に扶養に入ることができます。ただし、アルバイトをしている子どもで年収が130万円以上になるときには、扶養に入ることができなくなります。
この場合には、子どもが働く企業の社会保険や自治体が運営する国民健康保険に加入することになります。
5. 社会保険の手続きを行う際は扶養の範囲化をしっかり確認
社会保険においては、一定の条件を満たすことで親族を扶養に入れることが可能です。
扶養に入れるのは被保険者の三親等以内の親族で、関係性や同居の有無が問われることがあります。また、年収などの状況によっては扶養の適用外とされることもあります。
社会保険の手続きを行う際には、扶養の範囲内か否かを判断することが肝心です。