社会保険の保険料を計算するためには、保険料率を正しく理解しておかなければなりません。
保険料率は常に変更される可能性があるため、最新の保険料率を知っておくことも非常に重要です。
当記事では、社会保険の料率計算や改定の時期について解説していきます。
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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という担当の方は、「社会保険料の給与計算マニュアル」をご覧ください。
1. 社会保険の料率とは?
社会保険の料率とは、社会保険料を計算するための割合のことです。
以前は全国で同じ社会保険料率が用いられていましたが、現在では都道府県ごとに異なる社会保険料率を採用しています。
1-1. 社会保険料率を考えるべき保険は5つ
社会保険料率を考慮すべき保険はひとつではありません。
会社の従業員が加入する社会保険にはさまざまなものがあり、それぞれに料率が設定されています。
社会保険の中には厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険そして労災保険が含まれているので、すべての保険において料率を考慮します。
それぞれに料率が設定されているので、保険料を計算する際には注意しましょう。
1-2.【2022年度改定版】最新の社会保険料率
最新の社会保険の料率は、厚生労働省のホームページから確認できます。
2023年4月現在の社会保険料率は、以下の通りです。
- 厚生年金18.3%(2017年以降現在まで固定)
- 介護保険1.82%
- 雇用保険1.55%(農林水産・清酒製造の場合1.75%、建設事業の場合1.85%)
- 健康保険料率は都道府県ごとに異なる
- 労災保険は業種によって異なる雇用保険料率は、労働者負担と企業が負担する保険料率が異なる
業種によって雇用保険料率が細かくわかれるので、詳しくは以下のサイトを確認してみてください。
健康保険料率は都道府県によって異なります。最新の協会けんぽの健康保険料率は以下のサイトから確認することができます。
参考:協会けんぽの特定保険料率及び基本保険料率(保険料率の内訳表示)について|協会けんぽ
労災保険料率は、業種によって異なり、厚生労働省の以下のサイトから確認することができます。
2. 社会保険の料率が改定されるタイミング
社会保険の料率は、常に改定される可能性があります。
最新の社会保険の料率を知っておかないと、保険料がいくらになるのかわからないので注意が必要です。
では、社会保険の料率の改定時期について見ていきましょう。
2-1. 社会保険の料率の改定は不定期
社会保険料率の改定は不定期におこなわれます。
一般的には4月に改定されることが多いですが、2022年度のように、雇用保険料が10月に改定されることもあります。
そのため、社会保険料率があっているかどうかを厚生労働省のホームページで適宜確認するようにしましょう。
社会保険料率を誤ると、給与計算に直結するため、トラブルにもつながりやすいです。最新の保険料率を必ず確認しておきましょう。
2-2. 社会保険料率の推移
社会保険料のうち、協会けんぽの健康保険料率と介護保険料率の直近10年間の全国平均は以下のように推移しています。
健康保険料率は2012年4月以降、10年間全国平均は約10%となっています。介護保険料率は不定期で改定があり、表に記載のように推移しています。
3. 社会保険料率を用いた社会保険料の計算方法
社会保険を計算する手順としては、まず標準報酬月額、もしくは月給を算出して、次に社会保険料率を確認して、算出します。
本章では具体的に計算する方法を手順に沿って解説します。
では、社会保険料の計算方法について順を追って見ていきましょう。
3-1. 社会保険料率の算出に必要な標準報酬月額を求める
標準報酬月額とは、給与などの平均額を区切りの良い幅で区分した金額のことです。
従業員がどの区分の標準報酬月額になっているのかについては、協会けんぽや日本年金機構のホームページから確認できます。
標準報酬月額等級表とよばれるこの表は、かなり細かく分かれているので、各従業員がどの区分に属するのかをしっかり見ておくことが重要です。
さらに、各都道府県によって区分や料率が変わることがあるので、会社が所属している都道府県の標準報酬月額等級表をチェックしておきましょう。
標準報酬月額には毎月の給与だけでなく、さまざまな諸手当が含まれます。
例えば、残業手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、賞与などです。
一方で、見舞金や祝い金、退職手当、臨時に支給された賞与、出張費などは標準報酬月額の算定に含まれません。
標準報酬月額は4月から6月の3ヵ月の報酬月額の平均に基づいて決定され、9月から翌年8月までの保険料計算に適用されます。
したがって、4月から6月にかけて長時間の残業が発生し、残業代が多くなったといったケースでは、標準報酬月額が高くなり、保険料の負担が9月から重くなる場合があります。
3-2. 標準報酬月額が変更されるケース
標準報酬月額は、4月から6月の平均に基づいて決定され、基本的に変更されることはありません。
しかし、昇進や昇給などによって、給与額が大きく変動することも考えられます。
その場合、連続する3ヵ月の賃金の平均が、現在適用されている標準報酬月額と2等級以上の差が出ている時に標準報酬月額が改定されます。
そのため、繁忙期や季節によって労働時間や報酬額が変わるような仕事をしている方は、保険料の負担が増えるかもしれない点に注意が必要なのです。
3-3. 新入社員の標準報酬月額
標準報酬月額は、3ヵ月の報酬月額の平均を取って計算されますが、新入社員の場合にはどうすればよいのでしょうか。
新入社員は、まだ3ヵ月間働いていないので、平均を算出することはできません。
新入社員の場合、新入社員の1ヵ月の報酬見込み額を計算し、標準報酬月額等級表に当てはめて標準報酬月額を決定します。
3-4. 育児休業等でも改定があり得る
標準報酬月額は、育児休業などでも改定される場合があります。
産休や育児休業によって報酬が大幅に低下した場合、現在の標準報酬月額と1等級以上の差が生じたのであれば社会保険料の改定をすることができます。
育児休業等以外の場合でも、報酬が3ヵ月以上連続で大幅に増加・減少した場合には、標準報酬月額の随時改定があり得るので注意しましょう。
3-5. 社会保険料の計算方法
社会保険料の計算方法は、社会保険の種類によって異なります。
健康保険料の場合、標準報酬月額×保険料率÷2で計算されます。
この計算で出た金額が、従業員と企業がそれぞれ負担する保険料になります。
健康保険料の料率を10.0%、標準報酬月額が30万円とすれば、従業員の保険料負担額は、30万円×10.0%÷2=15,000円となります。
介護保険料の料率を1.64%、標準報酬月額を同様に30万円と仮定すると、従業員の負担額は30万円×1.64%÷2=2,460円です。
一方、雇用保険料は、従業員と会社が折半するわけではありません。
2022年10月時点で雇用保険の料率は一般の事業の場合1.35%ですが、会社側が0.85%、従業員側が0.5%と定められています。
したがって、標準報酬月額が30万円であれば、会社側の負担が30万円×0.85%=2,550円、従業員側の負担が1,500円ということになります。
労災保険はすべて会社側の負担で、従業員の負担はありません。
労災保険料率を0.30%、標準報酬月額を30万円とすれば、労災保険料は30万円×0.30%=900円です。
このように、月給と標準報酬月額、社会保険料の料率、会社と従業員の負担の按分が分かれば、誰でも保険料の計算をすることができます。
3-6. 標準賞与額にも注意
標準報酬月額は社会保険料の計算に不可欠ですが、標準賞与額も忘れてはなりません。
標準賞与額とは、賞与額の1,000円未満を切り捨てた額のことで、その標準賞与額に保険料率をかけたものが保険料となります。
給与と賞与の違いは、名称ではなく、労働の対象として年間3回以下の回数で支給される点です。
賞与があった場合には、健康保険・厚生年金・介護保険に対して賞与金額を加味した金額を基に算出した保険料が発生することを忘れないようにしましょう。
4. 社会保険の料率を正しく理解しておきましょう
保険料率は、社会保険料の計算に不可欠な要素です。
料率さえ理解していれば、自分の給与や賞与から保険料をおおよそ計算することができます。
もちろん、会社側もしっかり料率について理解しておくことが必要です。
社会保険料率を理解し、正しい社会保険料の納付に役立てましょう。