「退職金制度の導入・見直し方法を知りたい」
「退職金制度の廃止を検討している」
「退職金制度の相場や計算方法がわからない」
上記のような悩みを抱えている経理・労務担当者も多いでしょう。
退職金制度を導入するタイミングは、創業時から成長期になります。また、見直すタイミングは、退職金制度の法律が変更されたり、定年制を変更したりした場合です。
本記事では、退職金制度の導入と見直し方法、相場、計算方法、廃止の可能性について解説します。退職金制度を効果的に利用し、従業員が働きやすい職場作りの参考にしてください。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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1. 退職金制度の導入・見直しの方法
退職金制度の導入や見直しは、正しい手順で進めなければなりません。以下、それぞれの方法を解説しますのでチェックしておきましょう。
1-1. 退職金制度の導入手順
導入する手順は、以下の通りです。
- 退職金制度を導入する目的を決める
- 従業員に退職金制度について周知する
- 労働基準監督署に届ける
導入には、従業員の協力と労働基準監督署への提出が必要になるため、正しく理解しておきましょう。
1-1-1. 退職金制度を導入する目的を決める
最初に、退職金制度を導入する目的を明確にしましょう。目的が明確であることで、どのような退職金制度を設置すべきかがわかります。
また退職金制度は一度導入すると廃止することが困難です。何を目的としているのか明確にしないまま退職金制度を導入すると、社内の経営状況に長期的に大きな影響を与えるおそれがあります。
従業員獲得の一助にしたいのか、現在の従業員が長く働ける環境を整備したいのか、自社における退職金制度導入の目的を十分に検討しましょう。
1-1-2. 従業員に退職金制度について周知する
退職金制度の導入を決めたら、従業員に周知しましょう。退職金制度の理解を広げることで、従業員の不安を解消し、社内全体で前向きに受け入れやすくなります。
具体的には、以下の点を説明することが大切です。
- 退職金制度を導入する背景・理由
- 退職金制度の概要
- 退職金制度を導入することによる影響
従業員のなかには、退職金制度を設けることで毎月の給与金額が下がるのではないか、と不安に思う人もいます。企業と従業員間の信頼関係を損なわないためにも、しっかりと導入の背景や目的を説明してください。
1-1-3. 労働基準監督署に届ける
退職金制度を導入するには、労働基準監督署に届け出て就業規則に記載する必要があります。
就業規則は、労働基準法第89条に則り作成しなければなりません。常時10名以上を雇用する企業は、就業規則を作成し届け出ることが義務化されています。
退職金制度の導入が確定し、詳細の検討が完了したら、労働基準監督署に追加する旨を届けましょう。
1-2. 退職金制度の見直し手順
退職金制度の見直す際の手順は、以下の通りです。
- 現状把握
- 課題の明確化
- シミュレーションの実施
- 説明会の開催
退職金制度の見直しについても、正しい手順で進める必要があります。しっかりポイントを押さえて効果的に実施しましょう。
1-2-1. 現状把握
まずは、企業内の現状を把握しましょう。現状を把握することで、改善すべき点が見つかります。見直すポイントは、以下の通りです。
- 退職金制度がうまく活用されているか
- 法律の改正に対応できているか
- 自社の状況に適した退職金制度であるか
また、企業の経営方針が変更された場合、退職金制度が変更に即したものか、確認しておきましょう。
1-2-2. 課題の明確化
現状把握が終われば、課題を明確化させましょう。課題がはっきりすると、解決に向けた行動を起こせるようになります。
見直したポイントから、変更が必要な箇所や機能していない部分を明らかにし、課題として把握してください。退職金制度を効果的に運用させるためにボトルネックとなっていることを見出し、改善につなげましょう。
1-2-3. シミュレーションの実施
退職金制度を見直すときは、シミュレーションを実施することが大切です。たとえば、退職金の支給額を変更するなら、どの程度の予算が必要になるか、長期的に運用していけるかどうかなどを検討しなければなりません。
退職金制度の見直しによって運用が難しくなっては意味がないため、事前にシミュレーションしておきましょう。
1-2-4. 説明会の開催
退職金制度を見直す場合、従業員に対して説明することが重要です。とくに退職金を減額したり、制度を廃止したりする場合は、従業員にとって不利益な変更となるため、従業員の同意を得なければなりません。また、不利益を緩和する措置を講じる必要があります。
2. 退職金制度の導入・見直しをするべきタイミング
退職金制度の導入・見直しをするのに最適なタイミングは、以下の通りです。
導入 |
創業から成長期 |
見直し |
・退職金制度の法改正があったとき ・定年制を変更したとき ・人事制度を変更したとき ・従業員満足度が下がっているとき |
創業期で人事評価や給与体系を検討する際に、退職金制度も整備することがおすすめです。
企業が成長していく段階で、従業員の増員は必要になるでしょう。就職を検討している就活生や、転職希望者は、福利厚生の一つとして退職金制度の有無を見ています。退職金制度を設けておくことで、競合他社との差別化や、従業員の職場環境の整備につながるでしょう。
見直しの主なタイミングは、以下の通りです。
2-1. 退職金制度の法改正があったとき
退職金制度に関する法律は、定期的に改正されています。そのため、法律の変更が実施されるタイミングに合わせて見直しましょう。
たとえば2021年の税制改正により、新たに「短期退職手当等」が導入されました。この改正により、勤続年数5年以下の従業員への退職金に対する税金が増えることになります。このような法改正に合わせて、退職金制度の見直しを実施することが重要です。
参照:No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)(令和4年1月1日以後)|国税庁
2-2. 定年制を変更したとき
定年制を変更したときも退職金制度を見直しましょう。定年制は、60歳で定年を迎えるのが一般的でした。
しかし、高年齢者雇用安定法の改正により、65歳を定年とする、もしくは65歳以降は再雇用を検討するなど、状況が変化しています。企業は、定年制を変更する場合、退職金制度についても見直すことが望ましいです。
2-3. 人事制度を変更したとき
社内の人事制度を変更したタイミングで退職金制度を見直すことも重要です。たとえば、部長・課長・係長といった役職を変更したり新設したりした場合などが挙げられます。役職に応じて退職金の支給額を変えている場合などは、退職金制度を見直して、適切な支給額を再設定しましょう。
2-4. 従業員満足度が下がっているとき
従業員満足度が下がっているときも退職金制度を見直すとよいでしょう。従業員満足度が低下すると、仕事のモチベーションが下がったり、従業員が離職してしまったりする可能性もあります。退職金制度を見直し、長く働くほどメリットがあることを示せば、従業員が定着してくれることを期待できるでしょう。
3. 退職金制度の導入・見直しで検討したい主な種類
退職金制度は大きく以下の3種類に分類でき、さらに細分化されます。
種類 |
制度名 |
内容 |
退職一時金 |
社内積立型 |
退職金を社内で積み立てる |
社外積立型 |
退職金共済制度を利用し、社外で積み立てる |
|
退職金年金 |
確定給付年金 |
企業が従業員に退職金の給付を約束させる |
確定拠出年金 |
掛金と運用益の合計をもとに給付額が確定する |
|
退職金共済 |
中小企業退職金共済と企業が契約し、掛金を納付する。その後、従業員が退職した際、中小企業退職金共済から退職金が給付される |
退職金の種類は一つではありません。上記の通り、さまざまな種類があり、どこに掛金を積み立てるのか、どのように運用するのかで内容が大きく異なります。
それぞれ特徴やメリットは異なるため、退職金制度を導入する目的を明確にしたうえで、最適な方法を選ぶことが大切です。種類と違いについて適切に理解し、自社の事情に合わせた退職金制度を導入しましょう。
4. 退職金制度の導入・見直しで押さえたい金額相場
退職金の相場は、以下の通りです。
企業の種類 |
相場 |
大企業 |
大卒:約2,648万円 高卒:約2,010万円 |
中小企業 |
大卒:約1,091万円 高卒:約994万円 |
参考:賃金事情等総合調査 退職金、年金及び定年制事情調査 |e-Stat政府統計の総合窓口
参考:中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)|東京都産業労働局
上記のように、退職金制度の金額相場は大企業と中小企業で大きく異なります。そもそも退職金制度を導入することは、法律上の義務ではありません。また、支給額や支給対象者などのルールも企業が自由に決定できるため、資金的に余裕のある大企業の方が金額が高くなる傾向にあるでしょう。
相場を知っておくことで、従業員が納得できる金額を提示でき、企業の負担が大きくなることを抑えられます。自社の予算や退職金制度を導入する目的に合わせて、最適な金額を設定しましょう。
5. 退職金制度の見直しで廃止する企業は多い
近年、退職金制度の見直しで、廃止する企業が増加しています。以下は厚生労働省が調査した退職金制度に関するデータです。
今後3年間で廃止する予定の企業の割合 |
退職金(一時金・年金)制度がある企業の割合 |
|
平成30年 |
1.9% |
80.5% |
令和5年 |
6.6% |
74.9% |
厚生労働省の調査によると、退職一時金の制度を見直した際に今後3年間で廃止する予定の企業は平成30年で1.9%、令和5年は6.6%でした。
さらに、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は平成30年時点では80.5%、令和5年時点で 74.9%と減少しています。
調査結果からも、退職金制度の見直しにより廃止している企業が多いことがわかるでしょう。
退職金を廃止する背景は、以下の2つです。
- 年功序列が崩壊している
- 退職金を給付する体力がない
現在の日本では、長期にわたって同じ企業に勤務する考えが薄くなっています。新入社員の早期退職や、企業に合わないと感じて転職する人の割合が増加傾向です。
さらに、コロナ禍による売上の減少、人件費の上昇など、企業の経営状況が悪化する要因が重なっています。そのため、退職金にお金をまわす余裕がなくなった結果、退職金制度を廃止した企業が増加しました。
6. 退職金制度の見直し・変更・廃止をする際の注意点
退職金制度の見直し・変更・廃止する場合の注意点は、以下の3つです。
- 専門家に相談する
- 従業員のモチベーションを管理する
- 不利益変更に注意する
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
6-1. 専門家に相談する
まずは、専門家に相談するようにしましょう。自社に適した退職金制度を取り入れるには、一定の知識が必要になるためです。
そのため、社労士などの専門家に相談し、プロのアドバイスを受けるようにしましょう。退職金制度そのものだけではなく、変更・廃止にともなう従業員への説明についても意見をもらえます。上記のプロセスを踏むことで一方的に廃止した印象を軽減でき、従業員と揉めるリスクを軽減できるでしょう。
6-2. 従業員に十分な説明をする
退職金制度を見直して変更・廃止する場合、従業員に十分な説明をしましょう。退職金は従業員にとって働く意欲を高めるものであり、人生における老後の経済的な計画にも影響します。
丁寧に対応しなければ、日常的な業務における生産性の低下や不満が発生したり、従業員が退職する要因にもなったりするリスクがあるでしょう。
退職金制度を変更・廃止する際には、合理性のある説明が必要です。きちんと準備をして、従業員の理解や納得を得るよう努めましょう。
6-3. 不利益変更に注意する
退職金制度を見直す際、従業員にとって不利益な内容になる場合はとくに注意しましょう。たとえば、支給額を減らしたり、退職金制度を廃止したりすることは、従業員にとって大きな不利益となります。
まずは従業員に対して変更の理由を丁寧に説明し、同意を得なければなりません。さらに打切り支給を検討するなど、不利益を緩和する措置を講じる必要があります。正しい手順をしっかりと理解しておきましょう。
7. 退職金制度の見直しは慎重に進めよう!
今回は、退職金制度の導入・見直しの方法や、制度を変更するときの注意点などを紹介しました。退職金制度を導入することで、従業員のモチベーションや定着率を高めることが可能です。ただし、導入することが企業の負担になるケースも多いため、予算などをしっかりと確認しておきましょう。
また、退職金制度を導入すると、簡単に変更したり廃止したりすることはできません。とくに支給額を減額する、制度を廃止するといった不利益変更は、簡単には実施できないため注意が必要です。長期的に運用できるかどうかをしっかりと検討したうえで、制度を設計するようにしましょう。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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