「ポリコレ」とは?人事担当者が知っておくべき企業経営における重要性を解説 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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ポリコレとは?企業経営で人事が知っておくべき重要性を解説

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「ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)」という言葉を聞いたことはありませんか。

近年、グローバル化などの多様性を重んじる社会で企業経営を進めていく中で、予想しなかった炎上やハラスメントを防止することが重要になっており、経営者や人事担当者の方は理解しておかなければならない概念です。

今回はそんなポリコレに関して、そもそもポリコレとは何か、そして、ポリコレにより取沙汰にされる問題や企業に与える影響などについて説明します。

「ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)」とは?

ポリティカル・コレクトネス(political correctness:以下、ポリコレとする)とは、直訳すると「政治的妥当性」「政治的公正」「政治的適正」「政治的正義」となります。

その意味をもう少しかみ砕いて説明すると、性別や人種、民族、宗教などに基づく差別や偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することをいいます。

もともとは、1980年代に多民族国家であるアメリカ合衆国で始まった概念であり、これが世界中に広がり、各国での表現の言いかえや訂正につながっています。

また近年では、政治的立場で区別する目的以外で、容姿、職業、性癖、健康や障害、年齢、婚姻状況などに関する社会的な差別・偏見が含まれないような、公正・公平な表現や用語を使うことが推奨されています。

ポリコレにより変わった言葉

ポリコレの観点により、これまで使用されてきた言葉が変化しつつあります。最も有名で分かりやすい変化の1つが、アメリカの人種・民族を表す言葉の訂正です。

アフリカ系アメリカ人が、黒人を表す「Black」から「African American」に置き換えられ、アメリカ州の先住民は、本来インド人を意味する「Indian」から「Native American」「First Nation」という表現に訂正されました。

また、その他にも職業名に「~man」が付くのは女性差別的であり、ポリコレに反するとして「Chairman(議長)」は「Chairperson」に、「policeman(警察官)」は「police officer」に、「cameraman(写真家)」は「photographer」という表現が使われるようになりました。

日本でもこのような用語の訂正は多くの事例が挙げられており、「看護婦」は「看護師」に、「障害者」は「障がい者」に、「スチュワーデス」は「客室乗務員」に変換されています。

「ポリコレ」により取り沙汰される問題

本章では、ポリコレの観点から取り上げられる、さまざまな問題について紹介いたします。

「ヘイトスピーチ」に関する問題

ヘイトスピーチとは、主に人種、国籍、思想、性別、障害、職業、外見など、個人や集団が抱える多様性や欠点に対して誹謗・中傷、貶す、差別する、さらには他人をそのように煽動する発言のことを表します。

憲法に規定されているように、私たちは発言に対しての自由が、差別的表現、侮辱的表現、扇動的表現を含めて保障されています(=表現の自由)。

しかし、それは「公共の福祉」により正当化できる範囲に限られており、立法により制限される可能性も存在します。

ヘイトスピーチは、ポリコレの観点から規制されるべきなのか、もしくは「表現の自由」の観点から容認されるべきなのかという視点でよく議論されています。

<事例>橋下元大阪市長と在特会(在日特権を許さない市民の会)の桜井誠会長との議論

橋下元市長は、桜井誠会長に対し「民族をひとくくりにして評価する発言は大阪ではやめろ。参政権を持たない在日韓国人に言うのではなく、国会議員や政府に言うべきだ」と指摘したのに対し、桜井会長は「朝鮮人を批判することがいけないことなのか。民主主義や言論の自由を否定するな」と反論しヒートアップし、両者全くかみ合いませんでした。

このような表現の自由を理由にしたヘイトスピーチと、ポリコレの観点からの批判による議論は頻繁におこなわれています。

「ハラスメント」に関する問題

ハラスメントとは、他人に対しての発言や行為などで、意図している・意図していないに関係なく、不快にさせたり、傷つけたりすることであり、最も代表的なものとしてセクハラ(セクシャルハラスメント)があります。

たとえば、体に触るなどの直接的な接触や、卑猥な言葉をかけるといったものや、力関係を背景に被害者が拒否できない状況であったり、「応じなければ仕事から外す」などの脅し文句を口にしたりすることは、職場におけるセクハラであるとされます。

また、「だから女はダメなんだ」「男のくせになさけない」といったような、性別だけを理由にした根拠のない暴言もセクハラです。

このような言動に対しての問題意識の高まりの背景には、間違いなくポリコレの考え方の広まりがあると考えられます。

実際に、ポリコレの観点からハラスメントに関する言動を法的に訴え、損害賠償が認められているケースが近年ものすごく増えています。

「行き過ぎたポリコレ」に関する問題

このようにポリコレの考え方が広まる一方で、行き過ぎたポリコレ問題が表出してきています。

上記のセクハラを例に出すと、「君の入れてくれたお茶おいしかったよ」や「なにか雰囲気変わった?髪とか切ったの?」という普段のコミュニケーションもハラスメントに当たるとの主張もあり、女性を「ちゃん」呼びしたり、ちらっと見たその目つきがセクハラだとの主張があったりもします。

ハラスメントだけでなく様々な分野でこのような行き過ぎたポリコレ問題が出てきており、「ポリコレ疲れ」や「ポリコレ棒」という言葉も出来上がりました。(ポリコレ棒とは、ポリコレは他人を攻撃するための棒であるとし、ポリコレを理由に自称正義(独善)を掲げて他人を攻撃することをいいます。)

また、アメリカの大学がおこなった世論調査では、52%の国民がポリコレ疲れを感じていることを発表しています。

ポリコレが企業に与える影響

ポリコレの考え方を企業経営に取り入れることで、企業は先ほど記載したように職業名を訂正する必要がある場合があります。

また、まず多くの企業に共通することは、「ビジネスマン」から「ビジネスパーソン」への訂正でしょう。

ここからはこのような比較的小さな変化ではなく、企業経営に与える大きな影響について「良い影響」とポリコレを軽視したことで引き起こってしまう「悪い影響」について見ていきます。

<企業経営に与える良い影響>

ポリコレと似たような言葉に、ダイバーシティという言葉があります。

ダイバーシティを直訳すると「多様性」となり、人種的な多様性、社会的な多様性、労働者の多様性を企業経営に取り入れたのがダイバーシティ経営です。

このダイバーシティ経営は、労働人口減少や企業のグローバル化、雇用観や労働の変化、消費の多様化など様々な変化を背景に注目が集まっています。

▼ダイバーシティ経営について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ダイバーシティ経営とは|取り組み内容、メリット、導入時の注意点を解説

ダイバーシティ経営を推し進めることには、「①従業員の定着と新たな人材の獲得」「②新しいアイデアが生まれやすくなる」「③企業の評価が上がる」などのメリットがあります。

一方で、実際に導入する際には、1人ひとりの違い(=多様性)を健全に受け入れられず、「①ストレスが増えてしまう」「②チームワークを悪くしてしまう」といった危険性があります。

このような危険性を減らすために、性別や人種、民族、宗教などに基づく差別や偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用するポリコレの活用が第一歩目として非常に有効になります。

つまり、ポリコレとダイバーシティ経営はセットであり、従業員の多様性を認めて活かすダイバーシティ経営を推し進めるのに大きく寄与してくれます。

<ポリコレを軽視したことで引きおこる悪い影響>

企業経営において、あらゆるステークホルダーとコミュニケーションを取る機会があると思いますが、その際にもポリコレを意識すること大切です。

インターネットが発達したことで、ちょっとした軽率な発言・発信からでも予想外の炎上をしてしまい、社会的信用を失ったり、ブランドに傷をつけてしまったりするリスクが増大しています。

実際に、日用品や化粧品メーカーのCMにおいて、表現が女性の外見における差別と批判されたことがありました。

そのCMに費やしたお金と批判によって傷ついてしまったブランド価値を考えると、その企業はかなりのダメージを負ったのではないでしょうか。

また、外国人労働者に対する待遇や人事制度、業務内容に偏見があると批判されるケースも増えています。

ポリコレは、企業経営において経営者の方や人事担当者の方が思っているよりも考えておかなければならないことであり、あらゆるテイクホルダーとコミュニケーションをとる際には意識しなければならない重要な概念です。

まとめ

企業経営を進めていく上で、そしてあらゆるステイクホルダーとコミュニケーションをとる上で、ポリコレを意識することは、ハラスメントや炎上などの予想外のリスク発生を抑えることができます。

またそれだけでなく、最近注目が集まっているダイバーシティ経営を押しすすめていく第一歩目としてポリコレを意識することはとても有効です。

つまり、ポリコレは企業経営において「守りの役割」を果たす一方で、「攻めの役割」をも果たします。これからは、ポリコレという概念を企業経営に取り入れるようにしましょう。

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