「産休手当の支給条件が知りたい」
「産休手当の計算方法を教えてほしい」
上記のような疑問を感じている担当者も多いでしょう。
産休手当(出産手当金)は、出産前後の一定期間に仕事を休む女性に対して支給される手当です。この制度は、出産による収入減を補うために設けられました。
本記事では、産休手当の概要、支給条件、計算方法について詳しく解説します。また、退職後も産休手当を受け取るための条件についても触れ、企業の経理・労務担当者が知っておくべきポイントを整理しています。
ぜひ本記事を参考に正しい手続きをおこない、適切に産休手当を支給できるようにしましょう。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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1. 産休手当(出産手当金)とは
産休手当(出産手当金)とは、出産のために会社を休む女性に支給される手当です。
労働基準法第65条によると、女性が出産予定日から6週間(多胎妊娠は14週間)以内に休業を請求した場合、企業はその請求を認めなければなりません。また、産後8週間(女性が請求した場合は産後6週間)を経過しない女性の就業は禁止されています。
労働基準法のなかには、産前産後休暇中の従業員に対する給与支払いについての規定はないため、会社の規定により給与が支払われない場合もあるでしょう。
出産手当金は公的医療保険による制度で、出産前後の休業期間中に収入が減少する女性を経済的に支援するために設けられています。
2. 出産手当金と出産育児一時金との違い
出産手当金と出産育児一時金の違いを表にまとめました。
項目 |
出産手当金 |
出産育児一時金 |
目的 |
出産前後の休業期間中の収入補填 |
出産にかかる費用の補助 |
支給対象者 |
出産のために休業する被保険者 |
被保険者またはその被扶養者が出産した場合 |
支給額 |
支給開始日以前(12カ月間)の各標準報酬月額の平均額÷30日×(2/3) |
最大50万円 |
支給期間 |
産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日までの範囲内で給与の支払いがなかった期間 |
一括支給 |
申請方法 |
健康保険組合や社会保険事務所に申請 |
健康保険組合や社会保険事務所に申請 |
必要書類 |
医師の証明書、事業主の証明書 |
出生届、医療機関の証明書 |
支給タイミング |
産前産後の休業期間中 |
出産後 |
どちらも出産に関する金銭的な補助です。両者の違いを理解してうまく活用しましょう。
参考:出産手当金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
参考:出産育児一時金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
2-1. 育児休業給付金とは?
育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が受け取れる手当です。1歳未満の子どもを養育するために休業した際、一定の条件を満たすと受け取れます。具体的には、育児休業開始日前の2年間で、11日以上働いた月数が12カ月以上あるなどの要件を満たさなければなりません。
また、育児休業給付金の申請手続きは、休業する従業員の代わりに会社側がおこなう必要があります。従業員から育児休業の申請があった場合は、忘れずに手続きを進めましょう。
2-2. 出生時育児休業給付金とは?
出生時育児休業給付金も雇用保険の被保険者を対象として支給される手当です。この給付金は、産後パパ育休(出生児育児休業)を取得した場合に支給されます。子どもの出生後8週間の期間内に、合計4週間分を限度として支給されますが、一定の要件を満たす必要があるため注意しましょう。
育児休業給付金と同様、会社側が申請の手続きを進めなければなりません。
3. 産休手当を支給するメリット
産休手当(出産手当金)を利用すると、従業員側と企業側それぞれにメリットがあります。
- 従業員のメリット|経済的な不安の軽減
- 企業のメリット|健康保険料・年金保険料の免除
それぞれのメリットについて詳しく確認しておきましょう。
3-1. 従業員のメリット|経済的な不安の軽減
出産手当金の一番のメリットは、出産のために仕事を休む期間中の収入を補填し、経済的な不安を軽減することです。産休中に給与を支払わない企業も多いため、出産手当金があることで従業員は安心して産休に入れます。
出産手当金を受給する期間中は、健康保険料や年金保険料が免除される仕組みです。免除期間中も保険の保障は継続され、保険料を納めた期間としてカウントされるため、年金の受給額に影響はありません。
3-2. 企業のメリット|健康保険料・年金保険料の免除
産休手当金を受給している期間中は、企業が負担する健康保険料や年金保険料も免除されます。
従業員が産休中に収入を得られる環境を整えることで、企業の福利厚生制度が充実し、従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
たとえば、産前産後休暇中も収入が得られるため、従業員は産休や育休明けに同じ職場に復帰しやすくなります。結果として、従業員が出産を理由に退職することを防ぎやすくなるため、企業は貴重な人材の流出を防ぎ、従業員の長期的な定着率の向上が期待できるでしょう。
また、産休手当金を適切に支給することは、企業の社会的責任(CSR)を果たしている証ともなり、企業イメージの向上に寄与します。従業員の健康と生活を支援する姿勢を示すことで、社会からの信頼を得やすくなり、優秀な人材の採用にもつながりやすくなるでしょう。
4. 産休手当の支給条件
産休手当(出産手当金)の支給を受けるためには、以下3つの条件を満たさなければなりません。
- 健康保険の被保険者である
- 出産が妊娠4カ月以降である
- 出産のため休職している
各条件の詳細は、以下の通りです。
4-1. 健康保険の被保険者である
出産手当金を受け取るためには、勤務先の健康保険へ加入していなければなりません。健康保険には、企業が加入する健康保険組合や協会けんぽ、共済組合などが含まれます。
また、パートタイマーやアルバイトの従業員でも、所定の労働時間や賃金の条件を満たしていれば、社会保険に加入して被保険者となることが可能です。
4-2. 出産が妊娠4カ月以降である
出産手当金は、妊娠4カ月(85日)以降に出産した場合に支給されます。妊娠4カ月以上であれば、流産や人工妊娠中絶の場合でも対象です。
85日未満の流産や早産の場合は対象外となります。
4-3. 出産のため休職している
出産手当金は、出産のために産前・産後休暇を取得している女性に支給されます。具体的には、産前42日間(多胎妊娠は98日間)および産後56日間の休職期間中が対象です。
休業中に給与の支払いがないことが基本条件ですが、もし産休中に給与が支払われる場合でも、給与の日額が産休手当金の日額よりも少なければ差額が支給されます。
5. 産休手当の計算方法
産休手当(出産手当金)の1日あたりの金額は、次のように計算しましょう。
1日あたりの金額 = 支給開始日以前(12カ月間)の各標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × (2/3) |
標準報酬月額とは、従業員が受け取る給与や手当などの報酬をもとに決定される金額で、健康保険や厚生年金保険の保険料計算の基準です。具体的には、各月の給与額を区切りの良い幅で区分し、それぞれの区分に対応する標準報酬月額が定められています。
都道府県ごとの詳しい区分については、下記サイトを確認してください。
5-1. 健康保険への加入期間が12ヵ月に満たないとき
支給開始日以前の健康保険への加入期間が12カ月に満たないときは、以下のいずれか低い金額を標準報酬月額として計算します。
- 支給開始日に属する月以前に継続している各月の標準報酬月額の平均額
- 健康保険組合の全被保険者の前年9月30日時点での標準報酬月額の平均額
参考:出産手当金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
6. 産休手当を支給する流れ
産休手当(出産手当金)を支給する流れは、次の通りです。
- 従業員からの申請意思の確認
- 申請書の準備
- 必要書類の準備
- 申請書の記入
- 医師の証明取得
- 事業主の証明取得
- 書類の提出
- 書類の審査と出産手当金の支給
6-1. 従業員からの申請意思の確認
従業員から出産手当金を受給する意思を確認しましょう。従業員が妊娠の報告をした際に、産前・産後休暇を取得するかを確認し、必要な手続きを案内します。
6-2. 申請書の準備
全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合から「健康保険出産手当金支給申請書」を用意します。たとえば協会けんぽでは、公式ホームページの申請書様式からダウンロード可能です。
6-3. 申請書の記入
まずは従業員が、申請書のうち被保険者に関する欄へ記入します。記入する主な項目は次の通りです。
- 被保険者証の記号・番号
- 生年月日
- 氏名
- 郵便番号および住所
- 電話番号
- 振込先指定口座(金融機関名称、支店名、預金種別、口座番号)
- 申請期間(出産のために休んだ期間)
- 出産前の申請か出産後の申請か
- 出産予定日と出産年月日
- 出生児数または死産児数
- 申請期間の報酬の有無
上記は、正確な情報の記入が重要です。
6-4. 医師の証明取得
申請書には、医師または助産師による証明欄があります。入院の際に医療機関に申請書を提出し、担当医に記入してもらいましょう。
ただし、医療機関によっては文書料が必要になることがあるため、事前に確認することが大切です。
6-5. 事業主の証明取得
申請書を受け取ったら、事業主の証明欄に従業員の賃金や出勤状況を記入します。事業主の押印は不要ですが、正確な情報を記載しましょう。
6-6. 書類の提出
事業主の証明を受けた申請書を、加入している健康保険組合または協会けんぽに提出します。
書類は郵送で提出することが一般的ですが、提出先の住所や方法は各保険組合のWebサイトで確認しておきましょう。
6-7. 書類の審査と出産手当金の支給
提出された申請書および必要書類は、健康保険組合または協会けんぽによって審査されます。審査が完了すると、指定された銀行口座に産休手当金が一括で振り込まれます。
通常、支給までの期間は申請から1〜2カ月程度です。
7. 産休手当の対象外となるケース
以下のような場合は、産休手当の対象外となるため注意しましょう。
7-1. 産休手当以上の給与を受け取っている場合
産休手当以上の給与を受け取っている場合は、支給を受けられない可能性が高いです。休業中にも給与の支払いがある場合は、注意しましょう。ただし給与が支払われる場合でも、産休手当の金額よりも少なければ、その差額が支給されます。
7-2. 配偶者が出産する場合
産休手当の対象となるのは、健康保険に加入している本人だけです。配偶者が出産する場合は、対象外となるため注意しましょう。
男性は対象外となるのはもちろん、男性の扶養に入っている女性も対象外となります。出産育児一時金であれば支給を受けられれる可能性があるため、利用を検討しましょう。
7-3. 国民健康保険に加入している場合
国民健康保険に加入している人は、産休手当を受給することはできません。個人事業主やフリーランスは産休手当の対象外となるため、出産育児一時金を利用しましょう。
また、健康保険の任意継続を利用している人も、一部の例外を除き、産休手当の対象外です。
8. 産休手当を支給するときの注意点
産休手当(出産手当金)を支給する際には、以下の注意点を把握しておきましょう。
- 産休を開始した翌日から2年以内が申請期限になる
- 従業員が退職後も出産手当金がもらえる
各注意点の詳細は以下の通りです。
8-1. 産休を開始した翌日から2年以内が申請期限になる
産休手当の申請は、産休を開始した翌日から2年以内におこなう必要があります。申請期限を過ぎると手当を受給できなくなるため、従業員に申請期限を忘れずに伝えましょう。
8-2. 従業員が退職後も出産手当金がもらえる
従業員が退職後も以下の条件を満たしていれば、出産手当金を受け取れます。
- 退職日まで継続して1年以上被保険者の期間がある
- 資格喪失日時点で出産手当金を受ける条件を満たす
- 退職日に出勤していない
退職後に出産手当金を受け取るためには、1年以上の健康保険の被保険者期間が必要です。仮に退職日までの1年以内に転職していた場合でも、1年以上、被保険者期間を継続していれば問題ありません。
また、退職後に出産手当金を希望する場合には、退職日の翌日時点で出産手当金を受けている、または受ける条件を満たす必要があります。
具体的には、出産日または出産予定日が42日以内(退職日を含む)であることが条件です。退職が産前42日より前の場合は出産手当金を受け取れません。
退職日の出勤が退職日の翌日以降の場合についても、出産手当金を受け取れないことに注意しましょう。
9. 産休手当の支給条件をしっかりと理解しておこう!
今回は、産休手当の対象者や支給条件などについて解説しました。産休手当(出産手当金)は、出産のために休業し、給与を受け取れなくなる女性に支給される手当です。産休手当があることで安心して仕事を休み、育児に専念することができます。
ただし、産休手当は必ず受け取れるわけではありません。休業中に給与を受け取っていたり、配偶者が出産したりする場合は、対象外となるため注意しましょう。まずは支給条件や対象者について、しっかりと理解しておくことが大切です。また、産休手当は産休を開始した翌日から2年以内に申請しなければなりません。手続きが遅れると支給を受けられなくなるため、早めに申請しましょう。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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