給与明細の控除項目・計算方法を解説!マイナス控除はなぜ発生する? |HR NOTE

給与明細の控除項目・計算方法を解説!マイナス控除はなぜ発生する? |HR NOTE

給与明細の控除項目・計算方法を解説!マイナス控除はなぜ発生する?

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  • 給与計算

給与明細にある控除項目には、雇用保険料、介護保険料(40歳以上から)、健康保険料、厚生年金保険料、所得税、住民税の6つが必ず存在します。また控除額にマイナスがついている「マイナス控除」という表記も存在します。

今回は、給与明細の控除項目の具体的な内容や、計算方法、マイナス控除が発生するケースなどを解説します。

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また、給与明細の発行・交付が法律で決まっているにもかかわらず、従業員が持ち帰り忘れたり、出社しないため会社に残ったまま、というようなこともあるでしょう。

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1. 給与明細を構成するする3つの項目をおさらい

給与明細には、一般的には「勤怠情報」「支給額」「控除額」の3つの情報が記されています。支給額には、総支給額から控除額が差し引かれた金額が記されており、従業員の手取り給与として、口座振り込みをおこないます。

①勤怠項目

給与明細の勤怠項目には、労働日数や欠勤日数、遅刻早退時間、有給休暇取得日数、法定時間外労働時間数などを明記します。

②支給項目

給与明細の支給項目には、基本給に加えて、該当する各種該当する割増賃金手当、通勤手当、住宅手当、家族手当などの金額を明記します。

③控除項目

給与明細の控除項目には、法律により定められた6つの控除項目のほかに、自社であらかじめ規定している控除項目がある場合には、そちらも控除額として明記します。控除項目に関しては、下記で詳しく解説します。

2. 給与明細の控除項目

給与明細の控除項目には、「法定控除」と「法定外控除」の2種類があります。それぞれの控除について解説します。

2-1. 6つの「法定控除」項目

法定控除とは、法律で控除が定められている項目のことです。法定控除には以下の保険料と税金が該当します。

  • 雇用保険料:失業、職業訓練、育児休業などの際に、雇用安定や就職促進のために給付してくれるもの
  • 介護保険料:40歳以上の従業員が対象となる保険料。介護サービスが必要な人に費用を一部負担してくれるもの
  • 健康保険料:従業員やその家族が病気やケガをした際に、医療機関でかかる医療費負担を軽減してくれるもの
  • 厚生年金保険料:高齢になった際やや収入が得られない状態となった場合に、従業員や家族に対して老齢年金、障害年金、遺族年金などの支給してくれるもの
  • 所得税:収入に対して発生する税金。月々概算額から差し引き、年末調整で精算をおこなうもの
  • 住民税:都道府県や市区町村に納付する地方税。前年度の所得に基づき、毎月同じ額を差し引くもの

従業員全員が、同じ金額の保険料や税金を控除されるわけではありません。例えば介護保険料は40歳以上の従業員が控除されるのが特徴です。

また、控除される金額は各保険料と各税金によって計算方法が異なるので、従業員一人ひとりに合わせて計算することが求められます。

2-2. その他の「法定外控除」項目

その他の法定外控除とは、法定控除以外の内容で控除される項目のことです。法律で定められているわけではないので、会社によって法定外控除の内容は異なるのが特徴となっています。

法定外控除の項目として多くの会社が控除しているのが以下の内容です。

  • 社宅、寮の家賃や光熱費
  • 財形貯蓄
  • 労働組合費

法定外控除で注意しなければいけないのが、会社が自由に控除する内容を決めていいというわけではないという点です。会社が法定外控除を定める場合には、従業員との間で労使協定とよばれる協定を結ぶ必要があります。

労使協定とは、会社と従業員の間で交わされるルールを定めた協定のことです。書面にて契約をすることが定められていて、種類によっては労働基準監督署への届け出が必要となりますが、法定外控除に関する労使協定は、労働基準監督署への届け出は必要ありません。

3. 給与明細の控除項目別の計算方法について 

給与明細の控除項目の種類についておさらいしたところで、それぞれの控除額の計算方法について確認しましょう。給与明細にて控除額の計算を誤ってしまうと、過不足分の賃金調整や保険料の追納などの対応工数が発生してしまうため、あらかじめしっかりと理解しておくことが重要です。

3-1. 「標準報酬月額」の確認方法

社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の控除金額を計算する際は、「標準報酬月額」を用います。

標準報酬月額はの具体的な金額は、9月中に「標準報酬月額通知書」が企業に届きます。給与に大幅な変動がない限りは年間を通して変わらないものであり、前月と同額となります。

また4月~6月の3ヵ月間に支払われた報酬の平均額を、「標準報酬月額表」にある等級区分にあてはめても確認できます。「標準報酬月額表」は常に最新版であることに注意して使用しましょう。

社会保険料が決定される仕組みや、控除について不安のある方は、当サイトで無料配布している「社会保険料の給与計算マニュアル」もご活用ください。本資料では、社会保険料を決めるにあたって必要な手続きから計算方法、控除の仕組みまで網羅的に解説しているため、社会保険料の控除について確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

3-2. 雇用保険料の控除額計算

雇用保険料の控除額は、下記の公式にあてはめると計算できます。

「雇用保険料控除額=給与の総支給額×雇用保険料率」

雇用保険料率に関しては、令和5年4月1日から令和6年3月31日までの労働者負担分は一般の事業で1,000分の6となります。

詳細は、厚生労働省が公開する下記資料からご確認いただけます。

参考:令和5年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省

3-3. 介護保険料の控除額計算

介護保険料は、40歳以上の従業員が被保険者となり支払うこととなります。

介護保険料の控除額の計算方法においては、下記の公式で算出ができます。

  • 給与から
    「介護保険料控除額=標準報酬月額×介護保険料率÷2」
  • 賞与から
    「介護保険料控除額=標準報酬賞与額×介護保険料率÷2」

介護保険料率については、日本年金機構のサイトにてご確認ください。
参考:令和4年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます|日本年金機構

3-4. 健康保険料の控除額計算

給与明細の健康保険料の控除金額の計算方法は、以下の通りです。

  • 給与から
    「健康保険料控除額=被保険者の標準報酬月額×健康保険料率÷2」
  • 賞与から
    「健康保険料控除額=被保険者の標準賞与額×健康保険料率÷2」

健康保険料率は、日本年金機構の公式サイトよりご確認ください。
参考:厚生年金保険料額表|日本年金機構

3-5. 厚生年金保険料の控除額計算

厚生年金保険料率は18.3%で固定されているため、下記の公式にて算出できます。

  • 給与から
    「厚生年金保険控除額=被保険者の標準報酬月額×0.183÷2」
  • 賞与から
    「厚生年金保険控除額=被保険者の標準賞与額×0.183÷2」

3-6. 所得税の控除額計算

所得税の控除額は以下のステップで算出が可能です。

①総支給額-通勤手当などの非課税の諸手当

②①の金額-社会保険料総額(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)

③「給与所得の源泉徴収税額表」に照らし合わせて、社会保険料控除後の給与金額から源泉所得税の金額を確認

3-6-1. 給与明細で所得税を天引きしないケースとは

給与明細で所得税を天引きしないケースとは、個人で所得税を計算し、確定申告をおこなう人が該当します。確定申告とは、税務署に所得税額の申告をおこなうことを指します。

基本的には、給与明細で所得税を天引きしますが、所得税を差し引きそびれた場合には、年末にまとめて確定申告で対処することも可能です。

3-7. 住民税の控除額計算

住民税に関しては、従業員が住んでいる市区町村から税額の通知がきます。

そのため企業は、計算する必要はなく、各従業員の給与から通知通りの住民税額を控除します。

3-8. その他控除の控除額について

企業によっては、「社宅」「寮の家賃」「光熱費」「財形貯蓄」「労働組合費」などを設けている場合もあります。控除額に関しては、企業が自由に設定することができます。

ただしこれらの法定外控除項目は、あらかじめ労使協定を締結しなければ控除できませんのでご注意ください。

4. マイナス控除が発生するケースや理由など

給与明細の控除項目をチェックしていると、稀にマイナスが表示されている場合があります。このマイナスがついている控除項目を、「マイナス控除」といいます。本来差し引かれる金額を控除項目には記載するので、その部分がマイナスになるということは、反対に還付される金額が記載されているということになります。

普段はマイナス控除が発生することはあまりありませんが、マイナス控除になる理由が主に2つ考えられます。

4-1. 給与計算にミスがあった

マイナス控除が発生するケースの1つ目が、給与計算にミスがある場合です。先述のとおり、控除される項目は法定控除と法定外控除がありますが、それぞれ計算方法が異なるため、控除項目の給与計算のミスは起こりやすくなります。

4-2. 年末調整で還付金が発生した

先程紹介したのはマイナス控除が間違っているケースでしたが、マイナス控除が正しい形で発生するケースもあります。それが、年末調整で還付金が発生したケースです。

年末調整では様々な理由で所得税が還付されることがあります。その結果マイナス控除となり還付金を受け取ることができます。

還付金が発生する理由としてあげられるのが、生命保険の支払いに応じた控除や、扶養家族に関する控除、住宅ローン控除などです。様々な個人の事情に応じて、余分に払いすぎた源泉所得税を還付金として返してもらうことができます。

5. 給与明細控除の項目に関するミスを防ぐ方法

マイナス控除が発生する理由の一つとして、給与計算のミスがあると紹介しました。

ここからは、できる限り控除項目の給与計算のミスが発生しないためのポイントについて紹介します。

5-1. チェック体制を整える

給与計算のミスを防ぐために必要なのが、チェック体制を整備することです。給与計算が起こってもチェック段階でミスを見つけることができれば、実際に従業員に給与明細を交付する前に修正することができます。

1人でチェックしていると、ミスを完全に見つけ出すことが難しくなります。そのため、複数人でチェックするダブルチェック体制を整えることが大切です。複数人でチェックすると、1人では見つけられないミスも見つけやすくなります。

5-2. 年間スケジュールを作成する

法定控除には各種社会保険料や税金が含まれますが、これらは常に一定の金額ではありません。保険料率や税率が毎年変わったり、昇給や減給によって標準報酬月額に変更が生じるなど、控除額が変動するタイミングがあります。これらは突発的に変動するというより、おおむね変動するタイミングが決まっているため

年間で控除額が変動するタイミングを可視化して、毎月そのスケジュールを確認してから給与計算すると控除の計算ミスを減らすことができます。

5-3. 計算ミスが起こらないための対策を図る

計算ミスを見つけ出すチェック体制を整えると同時に、はじめから計算ミスを起こさない対策を施すのも大切です。計算ミスを起こさないことで、後に修正したり給与明細を作り直す手間を減らすことができます。

給与明細の計算ミスが発生する理由の一つとして、アナログでの作業が挙げられます。今でも給与計算を手作業でおこない、給与明細を紙で交付している会社は多いです。アナログでの作業はヒューマンエラーが起こりやすいため、給与計算のミスに繋がります。

近年はITの普及により、給与計算をより効率的におこなえるようなシステムも多く誕生しています。アナログでの作業をやめて給与計算システムを導入することにより、計算ミスや入力ミスを防ぎ、給与計算のミスを減らすことが可能です。

また、給与計算のアウトソーシングを利用するのも対策として有効です。アウトソーシングとは、業務を外部に委託することです。給与計算は正確性と専門性が求められる業務なので、専門の業者に依頼することで、給与計算の業務の負担を軽くすることができます。

6. 給与計算ミスが発覚した場合の対応

これまで述べたチェック体制の強化やミスが起こらないための対策を施しても、ミスが起こる可能性はあります。給与計算のミスが発覚した場合におこなうべき対応について解説します。

6-1. 本人に対して謝罪する

給与計算のミスが発覚した場合には、すぐに本人に対してミスが発覚した事実を伝え、謝罪することが大切です。ミスが発生した後の対応次第では、従業員との信頼関係に支障をきたす可能性があるため、迅速な対応が求められます。

6-2. 過不足分の調整

給与計算のミスにより実際の給与の金額に変更が出る場合は、過不足分を調整する必要が出てきます。この過不足分の調整は、翌月分でおこなうのではなく、当月中に調整するのが原則です。

当月中に調整する理由は、賃金全額払いの原則があるためです。これは労働基準法に定められている賃金支払の5原則のうちの一つで、賃金は全額支払わなければいけないという原則となっています。

特に給与が不足していた場合、翌月分で調整すると、賃金全額払いの原則に違反する可能性があるため注意が必要です。しかし事前に同意を得ている場合は、翌月分での調整も可能となっています。

7. 給与明細控除に関する情報は正確に記載し、管理しよう

本記事では、給与明細の控除項目や、マイナス控除について解説しました。控除される項目は法定控除と法定外控除の2種類があり、控除される項目は多岐にわたります。年末調整などの場合、正しくマイナス控除が発生することもありますが、給与計算ミスも考えられます。

給与明細を正しく記載するための対策や、確認の仕組みを作ることが大切です。

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

社会保険労務士の視点から、人事労務関係や社会保険関係の記事をHRNOTEにて監修しております。 また前職の信用金庫の経験を活かした金融知識にも精通。そのほか行政書士の資格も保有しています。
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