育児や介護、それ以外にもさまざまな理由で時短勤務制度を利用する人が増えていますが、時短勤務者の有給休暇はどのように扱われるのでしょうか。
今回は、時短勤務者に対する有給取得の考え方と、企業が知っておくべきポイントについて解説します。
「社内で時短勤務をした例が少ないので、勤怠管理や給与計算でどのような対応が必要か理解できていない」とお悩みではありませんか?
当サイトでは、時短勤務の法的なルールから就業規則の整備、日々の勤怠管理や給与計算の方法まで、時短勤務の取り扱いについてまとめた「時短勤務のルールBOOK」を無料で配布しております。
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目次
1. 時短勤務とは勤務時間を短縮できる制度
時間勤務制度は、所定労働時間を原則6時間までにできる制度です。育児や介護などによって、8時間のフルタイムで働くことが難しい場合に利用されることが多く、残業免除の申請などがおこなうことができます。
仕事と家庭の両立を図る目的で施行された制度であり、時短勤務希望者から申し出があった場合、企業は労働時間の短縮を認めなければなりません。
時短勤務については就業規則で定め、有給休暇の付与についてや賃金の計算方法なども記載しておく必要があります。
関連記事:時短勤務とは?|短時間勤務制度はいつまで適用?メリットやデメリットについて詳しく解説!
2. 時短勤務者の有給付与日数の考え方
時短勤務であっても、要件を満たしている場合は有給を付与しなければなりません。しかし、出勤日数によって付与日数が異なりますので、確認しておきましょう。
2-1. 有給が付与される要件
以下の要件を満たしている従業員には有給を付与する必要があります。
- 雇い入れから6か月が経過していること
- 6か月間の労働日の8割以上出勤していること
時短勤務者だけでなく、パートやアルバイトも有給付与の対象です。また、最初に有給が付与された日から1年経過し、その年の労働日の8割以上出勤していれば新しく有給が付与されます。
2-2. 有給付与日数は勤務日数によって変動する
有給付与の日数は、所定労働時間ではなく労働日数によって決まります。週5日出勤している時短勤務者はフルタイムのときと同じ数え方です。
勤続年数も付与日数に関係しているため、労働日数と照らし合わせて見てみましょう。以下は時短勤務者の有給付与日数一覧です。
週の 労働日数 |
年間 労働日数 |
勤続年数 |
|||||||
0.5年 |
1.5年 |
2.5年 |
3.5年 |
4.5年 |
5.5年 |
6.5年 |
|||
付 与 日 数 |
5日 |
– |
10 |
11 |
12 |
14 |
16 |
18 |
20 |
4日 |
169~216日 |
7 |
8 |
9 |
10 |
12 |
13 |
15 |
|
3日 |
121~168日 |
5 |
6 |
6 |
8 |
9 |
10 |
11 |
|
2日 |
73~120日 |
3 |
4 |
4 |
5 |
6 |
6 |
7 |
|
1日 |
48~72日 |
1 |
2 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
たとえ、週に1日しか勤務していなかったとしても、先ほど紹介した要件に当てはまっていれば、有給は付与されます。また、有給は週の労働時間ではなく、日数で考える点に注意しましょう。このように、従業員が時短勤務をする際にはいくつかの注意点があります。注意点を確認しておかなければ、知らず知らずのうちに従業員が不利益を被ることもあるため、事前に確認しておくのがおすすめです。当サイトでは、従業員が時短勤務をする際に企業が注意すべき点をまとめた資料を無料で配布しています。時短勤務の取り扱いで注意すべき点を確認したい方はこちらからダウンロードしてご活用ください。
3. 時短勤務者の有給休暇の賃金決定方法
有給休暇は、賃金が支給される休暇なので、1日あたりの賃金を計算して支給しなければなりません。時短勤務者の場合は、通常の方法で計算した1日あたりの賃金を、時短勤務の所定労働時間に応じて算出します。
時短で6時間働いている場合、通常の8時間分で計算された賃金を、6時間に換算する必要があるでしょう。
有給休暇の賃金算出方法は全部で3つあり、どの方法を採用するかは企業が選択できます。それぞれの方法を確認してみましょう。
3-1. 所定労働時間働いた分の通常賃金で計算する方法
所定労働時間働いたときの通常賃金で有給休暇の賃金を決める方法は、一般的に採用されている方法です。
この方法を用いれば、通常出勤したとみなすことができるため、計算の手間が省けるなど、企業にとってメリットがあるでしょう。
通常賃金から時短勤務者の有給休暇賃金を求める方法は、時給制や月給制など、賃金の支払い方法によって異なります。
例えば、通常の日給が1万円の場合、フルタイムであればそのまま1万円が有給休暇1日分の賃金として支払われます。時短勤務で6時間働いている場合は、8時間働いている人の25%短いため、日給も25%減額された7,500円とするのが一般的です。
3-2. 平均賃金で計算する方法
有給休暇1日分の賃金を、平均賃金で支給する方法は、原則として直近3か月の総額賃金を、3か月間の休日を含めた総数で割って算出します。
6月に有給を取得する場合、直近3か月の給料は3~5月分です。仮に3か月分の給料の総額を90万円で考えてみると、暦日数の92で割った9,783円が有給1日分の支給額になるでしょう。
また、平均賃金でもとめる方法には、最低保証額が設けられており、直近3か月の総額賃金を労働日数で割った額の60%が最低保証額になります。先ほどの例で当てはめてみると、3~5月の労働日数を61日とした場合、90万円を61日で割った60%の額は8,852円です。
企業は、平均賃金の額と最低保証額を比べて高い方の額を、有給の賃金として支払わなければなりません。
ただし、この方法は従業員の受け取り額が少なくなり、トラブルが起こる場合があります。また、時短勤務の場合は計算方法に手間がかかり、整合性が取れなくなる可能性があることにも注意しましょう。
3-3. 標準報酬日額で計算する方法
標準報酬日額とは、社会保険料の計算の際に用いる標準報酬月額を30で割った金額のことです。社会保険に加入している場合は、従業員の標準報酬月額が分かるため、簡単に計算できます。
しかし、上限額があり支払額が少なくなるケースも考えられるので、標準報酬日額で有給賃金を支払う場合は、従業員と労使協定を結ばなければなりません。
また、計算のもとになる標準報酬月額は、通常4月から6月の給料から算出されるため、時短勤務者の場合はフルタイムで働いていたときの賃金で計算されることになります。
そのため、この方法も実労働時間との整合性が取れなくなる可能性が高く、時短勤務者の有給賃金決定方法としては現実的ではないでしょう。
4. 時短勤務者の有給休暇で知っておくべきポイント
従業員とトラブルが起きないよう、企業は時短勤務制度や有給休暇について正しく理解することが大切です。ここでは、時短勤務者の有給休暇において知っておくべきポイントや注意点を解説します。
4-1. 有給の賃金は勤務実態に即して計算する
企業が従業員を雇うとき、所定労働時間や賃金などさまざまな労働条件について雇用契約を結ぶのが一般的です。しかし、時短勤務に切り替えても所定労働時間などの変更をせず、雇用契約もそのままにしているという企業もあるのではないでしょうか。
そのような場合、有給休暇の賃金はフルタイムで働いているときと同じ額支給しているケースもあるかもしれません。
基本的に従業員に不利でなければ問題ありませんが、他のフルタイムで働いている従業員との公平性が保てない、整合性が取れないなどの問題が生じる可能性があります。
そのため、できる限り勤務実態に即して賃金を計算することが望ましいでしょう。
4-2. 時短勤務者が半日有休を取得した場合
有給休暇の取得は、1日だけでなく半日単位でも可能です。時短勤務で6時間働いている場合、通常で考えれば半日は3時間になります。しかし、法律では有給の半休に関する定めがありません。
そのため、午前と午後という括りで分けても法的には問題ないことになります。例えば8時~15時(休憩時間1時間を含む)の6時間勤務の場合、8時~12時の4時間を午前休とすることもできるのです。
しかし、このようなケースでは午前と午後の労働時間に差が生じるためトラブルが起きる可能性があります。半休の取り扱いに関しては、就業規則に明示しておきましょう。
5. 時短勤務者の有給付与日数や賃金計算は正しくおこなおう
所定労働時間を短縮する制度である時短勤務を利用している従業員には、正しい計算方法や数え方で有給を付与する必要があります。
有給付与日数は労働時間ではなく、労働日数や勤続年数によって考える点に注意してください。また、時短勤務者の有給賃金の決定方法は、1日の通常賃金から算出することが一般的です。その際は、実労働時間に即した賃金を支払うようにしましょう。
トラブル発生を防ぐためにも、企業は雇用契約書や就業規則に有給付与に関する記載を明確にしておくことが大切です。
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