所得税のひとり親控除とは?要件や計算例をあわせて解説! |HR NOTE

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所得税のひとり親控除とは?要件や計算例をあわせて解説!

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所得税にはいろんな種類の控除があります。その中の1つがひとり親控除です。ひとり親控除が適用されるのと、その他の控除と同様に所得税額が少なくなるのですが、具体的にどのような内容になっているのでしょうか。

本記事では所得税のひとり親控除について解説いたします。また、ひとり親控除の注意点やひとり親控除を受けるための手続きについても紹介しているので、ぜひご確認ください。

関連記事:所得税の控除種類・扶養控除についてわかりやすく解説!

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所得税のひとり親控除とは?要件や計算例をあわせて解説!

1. 所得税のひとり親控除とは?

親子が公園で遊んでいる

所得税のひとり親控除とは、令和2年(2020年)に制度化された税制上の優遇措置で、結婚や事実婚をしていない独身者が総所得金額48万円以下の子供と生計をともにしている場合に、一律で35万円の所得控除が受けられるという制度です。

シングルマザーやシングルファザーといった人たちが仕事をしながら子供を育てる状況を税制面で生活難を支援するためにこの制度が設けられました。子供を育てるには多額の費用がかかります。それらの費用を捻出しながら税金を納めるのは困難なので、少しでも税金面の負担を減らしているのです。

ひとり親控除を受けるのに性別の制限はありません。シングルマザーもシングルファザーも平等にひとり親控除を受けることができます。かつては、母子家庭・父子家庭向けの控除として、寡婦控除・寡夫控除がありましたが、それぞれで適用要件に差があり、要件や控除額に関する見直しがはかられたという背景から、このたび、ひとり親控除が創設されることとなりました。

このような控除のほかにも所得税の計算の際に適用される控除はいくつかあります。年末調整をする場合には控除の種類と金額などを把握しておかなければなりません。当サイトでは、年末調整の控除の種類や計算方法をわかりやすく解説した資料を無料でお配りしています。

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1-1. ひとり親控除は未婚でも対象になる

寡婦控除・寡夫控除は、未婚のひとり親については対象外となっていましたが、ひとり親控除においては制度の対象となりました。未婚であってもシングルマザーやシングルファザーであれば、適用対象となる可能性があります。

もちろん、この際も男女で要件が異なることはありません。しかし、事実婚の場合は注意してください。事実婚は実質的に結婚していると見なされるので、ひとり親控除の対象外です。

事実婚をしているかどうかの判断基準ですが、住民票の記載があるかどうかで判断されます。

また、ひとり親控除に似ている控除に寡婦控除というものがあります。寡婦控除というのは、親や祖父母、孫などの扶養親族がいることが適用条件です。つまり、適用範囲がひとり親控除と比べて広くなっています。

しかし、ひとり親控除については、あくまでも子供を扶養していることが条件になっています。また、生計を共にしていれば、扶養対象の子供としては認定されるので一緒に暮らしている必要はありません。

たとえば、大学生などで一人暮らしをしており、家から仕送りをしているような場合は生計を共にしているので、扶養対象として認定されます。

しかし、子供がアルバイトなどで48万円以上の年収を得てしまうと扶養対象からは外れてしまうため注意が必要です。

2. 所得税のひとり親控除を受ける要件

手続きの説明をる女性ここでは、所得税のひとり親控除を受ける要件について解説します。

2-1. 所得税のひとり親控除の対象者

所得税のひとり親控除の対象は、該当年の12月31日において、婚姻関係がない人もしくは配偶者の生死が明らかでない人が当てはまります。
また、次に挙げる3つの要件すべてに当てはまることも条件となります。

  • 事実上婚姻関係があると認められる一定の人がいないこと
  • 生計を一にする子どもがいること

※該当年分の総所得額が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養家族になっていない場合に限る

  • 合計所得金額が500万円以下であること

なお、該当年の12月31日時点で婚姻関係があると認められるパートナーがいる場合(例:事実婚)は制度の対象外となります。

2-2. 所得税のひとり親控除の控除額

所得税のひとり親控除の控除額は、一律35万円となっており、2020年(令和2年分)の所得税から適用対象となります。

3. 母子家庭の場合、年収はいくらまでが非課税?計算例も紹介

会社員(給与所得者)の母と子どもの母子家庭の場合、以下の控除が適用されます。

  • 給与所得控除 賃金による
  • 基礎控除 48万円[注1]
  • 社会保険料控除 実際に支払った保険料額
  • ひとり親控除 35万円[注2]

給与所得控除の額は、給与額に応じて6つに区分されています。[注3]

給与等の収入金額 給与所得控除額
162万5,000円まで 55万円
162万5,001円~180万円まで 収入金額×40%-10万円
180万1円~360万円まで 収入金額×30%+8万円
360万1円~660万円まで 収入金額×20%+44万円
660万1円~850万円まで 収入金額×10%+110万円
850万1円以上 195万円

社会保険料控除は、加入している社会保険に支払っている保険料額が全額控除されます。

それでは実際に、10歳の子どもを持つ年収250万円のシングルマザーAさんを例に、どのくらいの金額が控除されるのか計算してみましょう。
年収250万円の場合、給与所得控除額は250万円×30%+8万円=83万円です。

一方、厚生年金や健康保険料などの社会保険料は、約35万円です(地域やその年によって異なる)。
これらに基礎控除とひとり親控除を加算すると201万円となります。

以上の計算から、Aさんの年収250万円のうち、201万円分が非課税となります。
残り49万円に対して所得税が課税されますが、医療費控除や生命保険料控除などその他の控除が適用された場合、さらに非課税枠が増えることもあります。

[注1]「基礎控除」|国税庁
[注2]「ひとり親控除」|国税庁
[注3]「給与所得控除」|国税庁

4. 2022年現在における所得税の寡婦控除とは?

ミスを防ぐ方法

ひとり親控除創設前に制度化されていた所得税の寡婦控除は、従来の寡婦控除から適用要件の見直しがはかられました。
具体的には、2022年現在の寡婦控除は「婚姻」という事実が適用条件となっており、制度に適用には、配偶者と離婚したり死別したり、また、生死が不明となっていたり、という場合のいずれかに該当する必要があります。
一方、ひとり親控除は、婚姻していない場合でも、ひとりで子どもを養育しているという事実があれば、制度適用の対象となります。

4-1. 所得税の寡婦控除を受ける要件

2022年における寡婦控除では、該当年の12月31日時点でひとり親に該当しない女性で、次のいずれかに当てはまる女性が対象となります。

  • 夫と離婚後に婚姻していない人で、合計所得金額が500万円以下で扶養親族がいる人
  • 夫と死別後に婚姻をしていない人、または夫の生死が不明で、合計所得金額が500万円以下の人

5. 所得税のひとり親控除と寡婦控除の違い

所得税のひとり親控除と寡婦控除の違いは以下のとおりとなります。

  寡婦控除 ひとり親控除
婚姻の事実 ・夫と死別した後に婚姻していない
・事実上婚姻関係があると認められる一定の人がいない
・婚姻をしていない
・配偶者の生死が明らかでない
・事実上婚姻関係があると認められる一定の人がいない
性別 女性 男女とも
扶養要件 ・扶養親族がいる
※死別の場合は、扶養親族の有無を問わない
・総所得金額等が48万円以下
・生計を一にする子がいる
所得制限 合計所得金額が500万円以下 合計所得金額が500万円以下
控除額 27万円 35万円

参考:No.1171 ひとり親控除|国税庁

参考:No.1170 寡婦控除|国税庁

6. 所得税のひとり親控除の手続き方法

所得税のひとり親控除の手続き方法は、確定申告時に手続きを行う場合と年末調整時に手続きを行う場合とで異なります。
以下、それぞれの手続き方法について紹介します。

6-1. 確定申告の場合

自営業者や個人事業主の場合、ひとり親控除を適用されるには確定申告時に手続きを行わなければなりません。
確定申告でひとり親控除の適用を受ける際には、「ひとり親控除」に関する確定申告用の欄に忘れずに記入するようにしましょう。
令和2年(2020年)分以降の確定申告では、未婚でも子どもを養育していれば、ひとり親控除を受けることが可能です。
また、令和2年(2020年)分より、ひとり親控除の対象として「合計所得500万円以下」の所得制限がもうけられたため、確定申告時には自分が制度の対象となっているか、確認をした上で申告を行いましょう。

なお、ひとり親控除で確定申告を行う時の具体的な記入内容は、以下のとおりです。

  • 確定申告書A第一表

「寡婦、ひとり親控除」欄に、控除額を記入
参考:令和 年分の の確定申告書A|国税庁
※確定申告書A表は2023年で廃止となります。

  • 確定申告書B第二表

「ひとり親」に該当する場合は○をする
参考:確定申告書B|国税庁

また記載例を含んだ手引きは、以下よりご確認いただけます。
参考:第一表の 収入金額等と 所得金額等の箇所を書きます。|国税庁

6-2. 年末調整の場合

会社員などの給与所得者においては、会社で実施する年末調整時に提出する「扶養控除等(異動)申告書」で「ひとり親」欄にチェックを記入すると、ひとり親控除の対象となります。

参考:令和5年分扶養控除等(異動)申告書|国税庁

7. ひとり親控除の注意点

ひとり親控除の注意点

ひとり親控除は状況によって適用できるかどうか悩んでしまうケースがあります。特殊なケースではありますが、ひとり親控除の注意点について確認していきましょう。

7-1. 1年の途中で離婚や死別があった場合

1年の途中で離婚や死別などがあった場合には、1年の中には「ひとり親」でなかった期間があるということです。

しかし、ひとり親控除は12月31日時点の婚姻状況で判断します。そのため、年の途中で離婚・死別をした場合であっても該当年の12月31日時点で子どもを養育していればその年はひとり親控除の対象になります。

サラリーマンの場合は、年末調整でひとり親控除の申請をすることになるので、その時点で離婚していれば控除が適用されます。また、年末調整をしてから12月31日までの間に離婚をした場合は、年末調整での申請が間に合いません。

しかし、確定申告をすることでひとり親控除の申告は可能です。そうすれば離婚した年のひとり親控除を受けられます。もし、従業員に離婚した人がいた場合は、ひとり親控除について案内をするようにしましょう。

7-2. 養育費を受け取っている場合

離婚した後に養育費を受け取っている場合は、ひとり親控除を受けることができません。なぜなら、養育費を支払っている側と受け取っている側がそれぞれ子供と生計を一にしていると見なされるからです。

もし、それぞれでひとり親控除が認められると、父親と母親それぞれがひとり親控除を申請できることになってしまいます。そのため、養育費を受け取っている場合は、その金額に関わらずひとり親控除が適用されないと考えてください。

反対に自分が養育費を支払っている場合には、子どもと同居していない場合でも控除の対象となる可能性があるため注意しましょう。

7-3. 寡婦控除と重複する場合

ひとり親控除と寡婦控除それぞれの控除を重複して受けることはできません。寡婦控除よりもひとり親控除の方が控除金額が多いので、ひとり親控除を優先するようになっています。

今まで寡婦控除の申請をしていたという方は、ひとり親控除にした方が控除金額が大きいので税金面での優遇をより受けられます。

8. 所得税のひとり親控除の対象要件を理解し正しく申請を行おう

所得税のひとり親控除とは、令和2年(2020年)に新設された、婚姻をしていない人や配偶者の生死が明らかでない人、事実上婚姻関係があると認められる一定の人がいない場合に認められる税制優遇制度です。
従来の寡婦控除・寡夫控除とは異なり、性別を問わず申請することができます。
自営業者・個人事業主の場合には確定申告で、会社員の場合には年末調整で手続きをする必要があるため、忘れずに控除申請を行いましょう。

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