変形労働時間制という制度をご存じでしょうか。閑散期と繁忙期がはっきりと分かれている業種は数多くあります。繁忙期は当然ですが残業代が増えてしまいますし、閑散期は出社してもやることがあまりないということもあります。
異なる業務量に合わせて所定労働時間を変更するのが変形労働時間制です。基本的には労働基準法で1日あたりの労働時間は8時間、1週間あたりの労働時間は40時間と定められていますが、変形労働時間制を採用すればそれに縛られる必要はありません。忙しいタイミングはそれよりも多く仕事をしても問題ありませんし、逆に仕事があまりないタイミングは早く仕事を切り上げてプライベートを充実させることもできます。
そんな変形労働時間制ですが、実はデメリットもたくさんある制度となっているのです。どのような点がデメリットとなっているのでしょうか。
本記事では変形労働時間制のデメリットについて詳しく解説を致します。これから変形労働時間制の導入を検討しているという方は、ぜひ参考にしてください。
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変形労働時間制は通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
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1. 変形労働時間制のデメリット
変形労働時間制のデメリットは主に3つあります。デメリットをしっかりと理解したうえで、変形労働時間制を導入するかどうかを検討してください。
1-1. 人事担当者は煩雑な作業が増える
給料は基本的に1ヶ月あたりで支払われます。会社によって所定労働時間は違いますが、仮に1日あたり8時間としましょう。月に勤務する日が20日あるとして160時間が合計の勤務時間です。この時間勤務をしていれば、契約通りの給料を支払うというのが会社のルールです。
もちろん、有給については勤務扱いになりますが、欠勤についてはそうはなりません。そのため、欠勤をすると給料が普通よりも少なくなってしまいます。普通であれば人事担当者は何日出社しているかを数えれば問題ありませんでした。
しかし、変形労働時間制を採用したことによって、出社していても8時間働いていない日ができてしまいます。つまり、残業時間と帳尻を合わせようとした結果、1ヶ月あたりの勤務時間が159時間になっている可能性があるのです。これはもちろん労働者側のミスですが、それを確認したうえで人事担当者は給料の計算を行わなくてはいけません。
このように所定の労働時間働いているかを数えるのが非常に手間になってしまうのです。人事担当者にとっては煩雑な作業が増えるわけですから、大きなデメリットといえるでしょう。
1-2. 法定労働時間の規定とは異なる残業時間の算出が必要
通常であれば所定の労働時間に対してどれくらい残業をしているか考えればいいだけでした。しかし、変形労働時間制の場合は残業をしても他の日の勤務時間を少なくすることで帳消しにできてしまうので、残業時間の算出が非常に難しくなってしまうのです。
そのため、法定労働時間の規定とは違う残業時間の算出をしなければならず、これに慣れていないうちはかなり手間のかかる作業になることが予想されます。人事担当者の手間がかかるのと同じく、給与の計算を請け負っている人にとっても変形労働時間制は手間のかかる制度になっているかもしれません。
このように変形労働時間制には特有の残業の考え方があるため、労働基準法に沿った勤怠管理をおこなうためにもしっかりとルールを把握する必要があります。
しかし、具体的にどのような算出方法をするのかイメージが湧かない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1-3. 他部署との就業時間が合わなくなる
誰かに仕事のことについて相談したいけれど、有給で休みになっているという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。変形労働時間制を採用すると、目当ての人が会社にいないという事態が多発します。そのため、会議をする際にも調整に手間がかかったり、業務がスムーズに進まなかったりしてしまうのです。
もちろん、問題なく業務を進めることが可能な場合もあります。しかし、今すぐに相談したいという人がいない可能性があるというのはデメリットといえるのではないでしょうか。
2. 変形労働時間制のメリット
もちろん、変形労働時間制にはメリットもあります。変形労働時間制は残業代の削減に非常に効果があります。会社側のメリットだけではありません。労働者側も仕事があまりない時期にプライベートの予定を入れることができるため、非常にワークライフバランスが保ちやすいのです。
変形労働時間制のメリットを最大限に享受するためには、繁忙期と閑散期がはっきりと分かれている業種である必要があります。それ以外の業種に関しては、変形労働時間制を導入してもあまり効果が期待できないので注意をしてください。逆に繁忙期と閑散期がはっきりとわかれているのであれば、変形労働時間制は導入する価値のある非常に魅力的な制度になっているといえるでしょう。
2-1. 変形労働時間制の運用における注意点
最後に変形労働時間制を導入する際は、いくつかの点に注意をしてください。まずは、所定労働時間の上限設定です。変形労働時間制を導入すると、特定の週に可能な限り業務を行って、それ以外の週の業務量を大幅に減らすというやり方が可能になります。
そのように運用するのは問題ないのですが、それを過度に行われてしまうと他の社員とコミュニケーションをとる機会などが失われてしまいます。また、その特定の週に関しては体に疲労が蓄積してしまうので、仕事のパフォーマンスが落ちる要因にもなり得ます。
そのため、所定労働時間の上限を設定して、働くことができる時間に制限を設けるようにしてください。そうすれば変形労働時間制を極端に利用するということはできなくなります。
また、所轄労働基準監督署への届出も忘れずに行ってください。変形労働時間制の導入は、就業規則が変わるような案件です。そのため、所轄労働基準監督署に届出を行って、しっかりと承認を受ける必要があります。
また、変形労働時間制は単位ごとに労働時間を変形させることが可能なのですが、決定後に変更することはできません。最初は運営が非常に難しいと思います。誤解しやすそうなポイントを列挙して、従業員に周知するように心がけてください。また、変形労働時間制を導入することで、労働者によって過重労働にならないように管理を徹底することも欠かせません。
最後に先ほどデメリットで紹介した人事担当者の負担増と残業代の算出の手間についてですが、これらが気になるという方はツールの利用を検討してみてください。ツールを利用することで、かなり楽にこれらの作業が行える場合があります。いろんなサービスが魅力的なツールを用意してくれているので、変形労働時間制を導入する際はツールの導入も併せて検討してみてください。
3. ツールを活用して変形労働時間制を導入
変形労働時間制にはデメリットもメリットもあります。しかし、デメリットの多くはツールを使用することで解消できます。そのため、ツールを前提として導入を検討してみましょう
また、しばらく運用してみないと従業員がどのような感想を抱いたのかわからない部分があります。そのため、運用してしばらくしたらアンケートなどを利用してみるのもいいかもしれません。変形労働時間制についてどのような印象を抱いているかについてアンケートをとり、否定的な意見があまりにも多いようであれば廃止も検討してください。
労働者の声を聞きながら変形労働時間制を活用して労働環境の改善に取り組んでください。
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