スーパーフレックスとは?制度の内容や導入方法などをも解説 |HR NOTE

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スーパーフレックスとは?制度の内容や導入方法などをも解説

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スーパーフレックスとは、コアタイムの定めがないフレックスタイム制のことです。出社しなければならない時間帯がないため、従業員がより柔軟に出社日や出社時間を決めることができます。スーパーフレックスのメリットや導入事例を紹介します。

目次

1.スーパーフレックスとは?

スーパーフレックスとは、清算期間における所定労働時間を満たす限り、従業員が出社と退社の時間を自由に決めることができる労働時間制度です。企業によって「フルフレックス制」「完全フレックスタイム制」とよぶ場合もあります。

1-1.スーパーフレックス制度に注目が集まる背景とは

スーパーフレックスタイム制と裁量労働制は、始業・終業時刻を従業員一人ひとりにゆだねられているという意味では、似た特徴をもちます。ただし、両制度の違いは大きく2つあり、それは、「対象職種が限定されているか」「報酬の支払い方」という観点です。

スーパーフレックスタイム制はどの企業・職種でも導入が可能ですが。しかし、一方で裁量労働制は、法律で定められた特定の職種(労働時間が変動しやすい、専門性が高い業務・事業場外での業務・マーケティングや企画などの業務などを担う職種)のみ適用が認められます。

またスーパーフレックスタイム制は、労働時間によって報酬が定められますが、裁量労働制はみなし労働時間で報酬が支払われる点も、大きな違いの一つです。

1-2.スーパーフレックス制度と裁量労働制の違いは?

スーパーフレックスタイム制と裁量労働制は、始業・終業時刻を従業員一人ひとりにゆだねられているという意味では、似た特徴をもちます。ただし、両制度には大きく分けて「対象職種が限定されているか」「報酬の支払い方」の2つの観点に違いがあります。

スーパーフレックスタイム制はどの企業・職種でも導入が可能ですが、一方で裁量労働制は、法律で定められた特定の職種(労働時間が変動しやすい、専門性が高い業務・事業場外での業務・マーケティングや企画などの業務などを担う職種)のみ適用が認められます。

またスーパーフレックスタイム制は、労働時間によって報酬が定められますが、裁量労働制はみなし労働時間で報酬が支払われる点も、大きな違いの一つです。

2.スーパーフレックス・フレックス・フルフレックスの違いとは?

スーパーフレックスとフルフレックスに違いはなく、どちらの呼び方も「フレックス制度より柔軟性が高い」という理由から用いられています。一方で、スーパーフレックス(フルフレックス)と、フレックスの大きな違いは、「コアタイムの有無」です。

スーパーフレックス(フルフレックス)は、通常のフレックスタイム制からコアタイムを取り除いた制度です。厚生労働省によると、コアタイムとは「労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯」を指します。[注2]

例えば、コアタイムを10時から16時までに設定している場合、従業員は遅くとも10時までに出勤し、16時以降に退勤しなければなりません。スーパーフレックスにはコアタイムが存在しないため、業務状況に合わせて10時以降に出勤したり、16時より前に退勤したりと、自由な時間に出退勤することが可能となります。

2-1.スーパーフレックスの休憩時間は?

スーパーフレックスであっても休憩時間は、労働基準法34条によって定められている、次の条件と同様になります。

  • 労働時間が6時間を超える場合は45分間の休憩をとる
  • 労働時間が8時間を超える場合は1時間の休憩をとる

スーパーフレックスを導入している場合、ほかの従業員も一斉に休憩をとることは難しいといえます。実際の休憩時間と時間が一致しない「みなし休憩時間」のような事態にならないためにも、勤怠管理システムなどを活用し、従業員の休憩時間確保をする必要があるでしょう。

3.スーパーフレックスの導入方法

通常のフレックスタイム制と同様に、スーパーフレックスを導入するには就業規則への記載と労使協定の締結の2点が必要です。

とくに出退勤の時間を自由に決められるスーパーフレックスでは、労働基準法第34条の規定どおり、休憩時間を一斉に与えるのが困難です。休憩時間のルールをはじめとして、労働組合または労働者代表との話し合いの場を設けましょう。

ここでは、スーパーフレックスを導入するまでの流れを解説します。

3-1.スーパーフレックス制度の概要を就業規則に記載する

スーパーフレックスの導入にあたって、まず制度の基本的な枠組みを就業規則に記載しましょう。労働基準法第32条の3の定めにより、就業規則に「フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする」と記述する必要があります。[注2]

また、スーパーフレックスでは従業員に一斉休憩を与えるのが困難なため、休憩時間のルールも就業規則に記載する必要があります。例えば、就業規則に「休憩の取得は従業員の自主的決定に委ねる」と記載し、休憩の与え方を明記しましょう。

なお、休憩時間を一斉に与えない場合、労働基準法施行規則第15条の規定により、労使協定の締結が必要になります。

スーパーフレックスに関する就業規則例

厚生労働省はフレックスタイム制度の導入の手引きを公開しており、就業規則の記載例を掲載しています。

フレックスタイム制度と異なりスーパーフレックス制度は、コアタイムとフレキシブルタイムを設ける必要がないため、下記のように「適用者の範囲」「清算期間および総労働時間」「標準労働時間」などを規定することが望ましいでしょう。

(適⽤労働者の範囲)

第○条の規定にかかわらず、営業部及び開発部に所属する従業員にフレックスタイム

制を適⽤する。

(清算期間及び総労働時間)

第○条 清算期間は1箇⽉間とし、毎⽉1⽇を起算⽇とする。

② 清算期間中に労働すべき総労働時間は、154時間とする。

(標準労働時間)

第○条 標準となる1⽇の労働時間は、7時間とする。

引用:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省

加えて、始業・終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨を記載する必要があるため、そちらも下記のように明記しましょう。

(始業終業時刻)

第○条 スーパーフレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の⾃主的決定に委ねるものとする。

3-2.労働組合または従業員代表者と労使協定を締結する

就業規則への記載に加えて、スーパーフレックスの制度内容について労使協定を締結する必要があります。労使協定を締結する際は、次の6つの項目を労働組合または従業員代表者と定める必要があります。[注2]

対象となる労働者の範囲

清算期間

清算期間における総労働時間

標準となる1日の労働時間

コアタイム(※任意)

フレキシブルタイム(※任意)

引用:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省

コアタイムが存在しないスーパーフレックスの場合、コアタイムの開始時間や終了時間について労使協定を定める必要はありません。

ただし、深夜や早朝の時間帯に従業員を働かせないため、フレキシブルタイム(自由に出社してよい時間帯)の時間帯を指定する場合は労使協定の締結が必要です。

4.スーパーフレックスのメリット

ここまでスーパーフレックスと裁量労働制やフレックスとの違い、導入方法について解説しました。ここからは、スーパーフレックス制度を採用することで発生するメリットを紹介します。

4-1.柔軟な働き方が可能となる

スーパーフレックスなら、従業員が1日の労働時間を柔軟に調整することができます。例えば、家庭の事情によって2時間しか勤務しない日や、業務の都合に合わせて10時間勤務する日があってもかまいません。そのため、スーパーフレックスは通常のフレックスタイム制よりも従業員のワークライフバランスを確保しやすい制度です。

4-2.優秀人材の登用・離職の防止につながる

スーパーフレックス制度を導入することで、生産性を重視して柔軟に働きたい優秀な人材にとっても、魅力的な求人へとなります。また既存の従業員に対する離職率低下にもつながるでしょう。

スーパーフレックス制度を採用している企業になることで、従業員のプライベートを尊重する側面や、計画性やタスク管理能力が高い従業員が在籍しているという印象を与えられることもメリットの一つでしょう。

4-3.生産性が向上する

スーパーフレックス制度では、それぞれの従業員が自分の意思で始業時間を選ぶことができます。そのため、例えば海外との会議があるなどの理由で、前日夜遅くまで仕事をしていた場合は翌日出社時間を遅らせることで睡眠などの休息時間をしっかり確保することが可能です。

また、通勤ラッシュが苦手な人の場合は、ラッシュ時間帯を避けた始業時間にすることで、余計なストレスを感じることなく仕事を始めることができるでしょう。

このように、スーパーフレックスでは業務時間が制限されていることによって生じるストレス要因を減らすことができるため、結果として生産性の向上につながることもが期待できます。

4-4.長時間労働の解消につながる

スーパーフレックス制度では、総労働時間の範囲内であれば実労働時間の調整が可能です。

そのため、定時制で起こりがちな、「やるべき仕事が終わっているのに退勤できない」といった事態や、「周りが残業しているから帰りづらい」といった事態も避けることができます。

企業にとっても無駄な長時間労働を防げることになるため、残業代を削減できるというメリットがあるでしょう。

5.スーパーフレックスのデメリット

このようにスーパーフレックス制度は、従業員にとっても企業にとっても大きなメリットとなり得る制度です。ただし、適切に運用ができない場合、デメリットのほうが大きくなる可能性もあるため、注意が必要でしょう。

あらかじめデメリットとして発生しやすいポイントを理解し、自社に適用可能であるか見極めることが大切です。

5-1.コミュニケーション量・一体感が低下しやすい

スーパーフレックス制度の場合、フレックス制度とは異なりコアタイムがないため、より従業員同士の偶発的なコミュニケーションが起きにくい環境となります。そのため従業員一人ひとりの関係性が構築しづらく、定時制と比較して、職場の一体感が低下することも考えられるでしょう。

5-2.取引先とのやりとりに弊害が生じかねない

スーパーフレックス制度を導入した場合、企業は従業員一人ひとりに始業・終業時間をゆだねる必要があります。これにより、顧客や取引先からの受電やメール対応に遅れが生じることも考えられるでしょう。

5-3.有給の消化率が低下しやすい

勤務時間を自身で選択できることから、プライベートや体調に応じて柔軟な対応が可能となる制度がスーパーフレックスです。

ただし、その分年次有給休暇の取得割合が落ちてしまう可能性が考えられます。年次有給休暇の付与は、法律により義務付けられているため取得を促す対応が必要となるでしょう。

5-4.勤怠管理が煩雑化しかねない

スーパーフレックス制度を導入することで、従業員一人ひとりの出退勤の時間にバラつきが生じ、労働時間の集計・管理が煩雑化しやすくなるでしょう。

労働時間の集計に誤りがあると、給与計算にも反映され、賃金未払いへとつながるため注意が必要です。

6.スーパーフレックスを導入する際の注意点・対応策

ここまでスーパーフレックス制度を導入すると陥りやすいデメリットを4つ解説しました。

ここからは、スーパーフレックス制度を導入するうえでの注意点や、デメリットを発生させないための対応策を紹介します。

6-1.顧客と連絡がとれる体制に整える

顧客や取引先との連携に関しては、あらかじめ担当者が不在である場合の代替要員を設けるほか、緊急連絡方法を連携しておくことも手段の一つです。またスーパーフレックス制度の適用対象を限定的にするといった方法もあります。

6-2.クラウドの勤怠管理システムを活用する

給与計算との連携が可能な勤怠管理システムを導入すると、従業員の出退勤の打刻集計・管理など煩雑化した業務に対応する手間が発生しません。

勤怠管理システムを利用すれば、打刻データから労働時間の集計はもちろん、割増賃金や諸手当を含めた給与計算が自動で完結します。

また、管理者は従業員一人ひとりの労働時間をリアルタイムで把握できるため、マネジメントがしやすくなり、過剰な労働を防ぐことにもつながるでしょう。

6-3.コミュニケーションの機会を設ける

社員同士のコミュニケーションは、社内SNSツール・オンライン会議ツール等を積極的に活用して、促していくことが重要でしょう。

業務上の情報共有はもちろん、他にも雑談ができるスペースを設けるなど、従業員一人ひとりが発言しやすい心理的安全性の確保が必要となります。

6-4.残業代の計算に注意する

スーパーフレックス制度では、清算期間中の総労働時間を越えた場合は時間外労働となるため、残業代が発生し、超過時間分の残業代を対象となる従業員に支払います。清算期間が1カ月を超える場合については、当月の実労働時間の週平均が50時間を超えると残業となります。

また、一般的な中抜けは休憩時間や時間単位年休の扱いになりますが、スーパーフレックス制度では中抜けも労働者が管理する範囲となるため特に規定を設けるは必要ないでしょう。

さらに、22時~翌5時までの勤務は深夜勤務にあたり、残業代には25%以上の深夜割増が必要です。なお、法定休日に出勤した場合も35%以上の割増賃金が必要となります。

7.スーパーフレックスに関するよくある質問

ここからはスーパーフレックス制度に関するよくある質問を解説します。
スムーズに運用がおこなえるよう、以下の点をあらかじめ確認しておきましょう。

7-1.スーパーフレックスで中抜けはどう取り扱う?

そもそも中抜けとは、労働者の都合で労働時間の途中に一旦離席することを指します。スーパーフレックス制度で中抜けが発生した場合、清算期間内で所定の労働時間を満たしていれば問題ないため、給与計算にて賃金控除は発生しません。そのため通常の給与支払いで問題ないでしょう。

清算期間内で中抜けした分の労働時間を補えない場合には、法定労働時間の総枠を超えない範囲で翌精算期間へ不足労働時間分を繰越し対応することが可能です。

こちらも翌清算期間で上乗せ分を合わせた総労働時間を満たしていれば、賃金の控除の計算は必要ありません。

控除の対応をとる際には、給与を清算期間の総労働時間で割り1時間単位の賃金を出してから不足時間をかけあわせ、合計の賃金から不足労働時間分の給与を控除します。

また時間単位の年次有給休暇として処理することも可能です。ただしその際には、事前に時間単位の年次有給休暇取得の旨を、労使協定で締結しておく必要があります。

7-2.スーパーフレックスに遅刻・欠勤の概念はある?

スーパーフレックス制度に、遅刻の概念はありません。なぜならコアタイムがなく、始業・終業時間は従業員一人ひとりが自由に決定できるからです。

一方で欠勤の概念は存在します。労働時間は自由に決められますが、労働日を変更できる権限はないため、欠勤としての処理が発生します。

ただし、清算期間中に総労働時間を満たしている場合には、「欠勤控除」は不可能であるため注意が必要です。

8.スーパーフレックスとフレックスタイム制の違いを知り、自社に合った働き方を選ぼう

スーパーフレックスは、通常のフレックスタイム制からコアタイムを取り除いた制度です。出社しなければならない時間帯が存在しないため、清算期間内で定められている労働時間の範囲内で出社日や出社時間を自由に決めることができます。

スーパーフレックスを導入すれば、従業員のワークライフバランスを改善し、家庭の事情に合わせて働けるようになります。個々人がパフォーマンスを発揮しやすい時間帯に働くことで、生産性の向上や成果アップにつながるケースもあります。

スーパーフレックスと通常のフレックスタイム制の違いを知り、自社に合った労働時間制度を導入しましょう。

[注1]フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省

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