経費を確定申告時に計上するためには、領収書が必要です。この記事では、新たに経理担当者となった人にも理解できるように、経費と領収書について解説します。経費として認められる領収書とそうでない領収書、記載が必要な5つの要素、領収書の代わりになるものなど、基礎知識を網羅しています。日々の経理業務のための参考にしてください。
「経理担当者になってまだ日が浅いため、基本知識をしっかりつけたい!」
「法改正に関する情報収集が大変で、しっかりと対応できているか不安・・・」
「仕訳や勘定科目など、基本的なこともついうっかり間違えてしまうことがある」
などなど日々の経理業務に関して不安になることがございませんでしょうか。
特に経費精算は毎月頻繁に発生する経理業務ですが、細かいルールや規定があり、注意が必要です。また直近の電子帳簿保存法やインボイス制度など毎年のように行われる法改正に対して、情報を収集し適切に理解する必要があります。
そこで今回は、仕訳や勘定科目などの基礎知識から、経理担当者なら知っておきたい法律知識などを網羅的にまとめた資料をご用意しました。
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目次
1.経費と領収書
税額控除のための手続きが経費の計上です。経費の計上には領収書が欠かせません。ここでは経費と領収書の基礎知識について解説します。
1-1.経費(必要経費)とは
経費とは事業で収益を得る目的で使用した費用のことです。これらの費用は「必要経費」
として税金の控除対象になります。業務に必要な費用である経費は、事業内容によって種類もさまざまです。
関連記事:経費とは?わかりやすく解説|何が経費になるのかや精算の流れなど基礎的な知識を紹介
1-2.経費を計上するとは
経費を計上するとは、必要経費を確定申告することで、支払う税金を抑えることです。この行為は、「経費で落とす」と表現されることもあります。税金の対象となる事業所得は「収益-経費」で計算されるため、経費が増えるほど税金が少なくなります。
関連記事:経費を計上するタイミングとは?|企業会計で知っておきたい発生主義・現金主義を解説
1-3.経費計上する際に領収書が必要になる
経費を計上するには、支払った費用が必要経費であることを証明する領収書またはそれに準ずる書類・データが必要です。
税法上の手続きをする際には、領収書類の整理・保管が必要です。また、使用目的や日付などについても、税務署から要求されれば提出できる状態にしておかなければなりません。なお、領収書があっても、全てが必要経費として認められるわけではなく、法人か個人事業主かによっても異なります。
経費の種類や領収書の注意点についての詳しい内容は、追って解説します。
2.必要経費として計上できる費用
国税庁のホームページには、必要経費として計上できる費用が、以下のように定義されています(2021年10月5日時点)。
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
次項から、領収書の発行によって経費と認められる例を紹介します。
2-1.計上できる費用例
必要経費に計上できる主な種類は以下のとおりです。
・人件費:給与や福利厚生費など
・旅費交通費:出張で使った交通機関の費用など
・消耗品費:コピーや文房具など
・交際費:来客のもてなし、会議室・飲食店の利用費用など
・宣伝広告費:広告、パンフレットなどの費用
・通信費:社内のインターネットや従業員に貸与するスマホの通信費など
・地代家賃:事務所の家賃
・損害保険料:社用車の自動車保険や、事務所の火災保険など
そのほか、光熱費や支払手数料、荷造運賃など事業に直接必要な費用は必要経費として計上できます。
2-1-1.判断しにくいものの例
例えば、社長用の車をプライベートで使う場合は、業務利用の割合分しか計上できません。また、業務に不必要な高級車は、認められないことがあります。
受取人が会社になっている社長の生命保険料は、事業継続リスクに備える経費として認められています。ただし、保険内容によっては全額経費で落とせません。
個人事業主の場合は、光熱費・通信などで事業用と個人用が混在しがちなため、按分比率に注意しましょう。
関連記事:備品を経費に計上するには?備品と消耗品の違いや会計処理の方法などわかりやすく解説
関連記事:家賃を経費として計上する方法|個人事業主の場合・法人の場合の家賃計上方法を徹底解説
関連記事:食事代は経費として扱えるか|食事代に関する経費計上の可否や注意点などわかりやすく解説
3.必要経費として計上できない費用
事業の収益につながらないものや私的に利用したもの、個人事業主の個人に関する税金などは、必要経費として認められません。必要経費は仕入れや製造などに必要な売上原価と利益を上げるために直接的に支払った費用、および販売費・管理費などに限られます。
会社名義で費用を支払えば、すべてが認められるわけではありません。以下で具体例を紹介します。
2-1.所得税・住民税・社会保険料や会社に課された法人税
個人事業主の場合、所得税・住民税は個人の所得にかけられる税金なので、経費にはなりません。また、社会保険料も自分のために支払うものなので対象外です。
法人の場合、法人税や法人住民税は会社が得た所得に応じてかけられるため、経費にできません。また、相続税も財産を受け取ったことに対してかけられるため対象外です。そのほか、交通違反の罰金なども計上できません。
2-2.仕事で着用するスーツやネクタイ代
仕事で着用するスーツやネクタイ代は、原則として経費の対象外です。これらは私用でも着用できるからです。また、仕事用として必要な費用分は、給与所得控除という形で補助されています。例えば、所得が700万円の場合は「給与所得控除=所得×10%+110万円=180万円」まで控除されます。一方、制服・作業着は必要経費として認められます。
3.経費の計上は算入時期にも注意が必要
確定申告では必要経費を計上する時期である「算入時期」を正しく決めます。ルールは次のとおりです。
(1)その年の12月31日までに債務が成立していること.
(2)その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
(3)その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること
例えば、オフィスチェアを購入して領収書を2021年中にもらっても、受け取りが翌年なら算入時期は2022年です。
4.正式な書類として認められる領収書の条件とは
領収書は事業の利益のために支出したことを証明する書類になります。領収書として認められるためには、次項で説明する5つの要素が記述されていることが必要です。逆にいえば、これらの要素が含まれていれば、税務上、領収書のフォーマットや媒体に特に決まりはありません。
4-1.記載が必要な5つの要素
領収書に記載が必要なのは、以下の5つです。
・書類作成者の住所・氏名
・支払いを行った年月日
・支払いの理由(但し書き)
・金額
・領収書の交付を受ける事業者の氏名(宛名)
これらの内容は、消費税法第30条9項1号に定められています(条文上は「請求書」)。
4-2.5つの条件を満たしていればレシートや他の書類でも正式な書類になる
記載が必要な5要素が記述されていれば、領収書以外でも経費の証明書類として認められます。例えば、レシート、お買い上げ表、受領書なども、正式な書類として使えます。もしこれらに記述されていない項目があれば、領収書をもらうほうが無難です。
なお、感熱紙の場合は文字が消えてしまうことがあります。コピーを取るか内側に折って保管しておくとよいでしょう。
5.領収書に不備があったり、領収書が発行されない場合どうするか
領収書に不備があった場合や領主書を受け取れなかった場合も、経費の計上ができる場合があります。また、領収書の代わりになる書類もあります。
5-1.宛名がない領収書でも経費計上はできる
宛名が空欄または「上様」でも経費計上は可能です。ただし、証拠能力としては劣るため、税務調査で聞かれた場合に、事業で使われたお金であることを、しっかり説明できることが条件です。
そのため、税務調査で無用な混乱が起きないように、宛名が記述されていない領収書は経費精算しないルールにしている企業もあります。
5-1-1.宛名のない領収書であっても利用が可能な事業
消費税法上でも、宛名のない領収書は例外的に認められています。以下の事業は宛名がなくても領収書として認められます。
・小売業
・飲食店業
・タクシー等を営む事業者
・写真業
・旅行業(鉄道・飛行機・バスなどの事業者)
・駐車場業
5-2.仕事の支出であることが証明しにくいものは内容を追記しておく
個人的な支出と疑われる領収書は、内容を明確にしておきましょう。例えば、取引先に贈呈品を渡した場合や、打ち合わせで飲食店を利用した場合などです。
但し書きの欄に単に「お品代」と書いておくと、後で説明が難しくなるため、「○○株式会社△△様への贈呈品」など詳しい情報を明記しておきましょう。
5-3.領収書の代わりになる書類がある
領収書を発行してもらえない場合や紛失してしまった場合は、どのように対処したらよいのでしょうか。また、後から、領収書の記載漏れに気づくこともあるかもしれません。ここでは、領収書の代わりに金銭の授受を証明できる書類や電子データ、メモ書きなどについて紹介します。
5-3-1.代替になる書類の種類
クレジットカードの利用明細や請求書、通帳の記録などは、領収書の代替書類として使えます。
例えば、海外の店舗で領収書を発行してもらいにくい場合も、クレジットカードの利用明細で代用可能です。また、領収書を紛失してしまった場合でも、銀行振り込みの明細や預金通帳の記録があれば、経費であることを説明できるケースがあります。
5-3-2.出金伝票作成や表計算ソフトへの入力、メモ書きなどでも可
領収書が発行されないことが一般的な場合は、企業が使用している出金伝票や仮払金精算書、立替経費精算書、表計算ソフト・会計ソフトのファイルでも代用可能です。
出金伝票などを使う場合は、記載が必要な5要素に加え、詳しい情報も記録しておくと信頼性が高まります。また、レシートや関連書類など、情報を補足する記録も併せて取っておきます。交通費は乗車区間運賃も記録しておきましょう。
また、慶弔費のような記録に残らない支出は、コピーやデジタル画像を残しておきます。
5-3-3.収入印紙がない領収書はどうすればいいのか
経費の計上では、収入印紙がなくても関係ありません。5万円以上の領収書には収入印紙が必要ですが、貼り付け義務は発行元にあるからです。そのため、書類の不備について税務署の調査が入るのは発行元側です。
6.その他、経費計上する際の領収書の注意点
経費を計上する際は不正計上でペナルティを受けないように注意が必要です。また、保存期間や保管方法のルールも守らなければなりません。
6-1.不正計上にならないよう注意が必要
経費計上には、境界があいまいな部分がありますが、節税のためだとしても常識の範囲を守りましょう。もちろん領収書偽造や架空計上などは違法行為です。領収書をもらう際も、正しく記載されているか確認しましょう。
不正計上には未納分に10~15%の税率が加算される過少申告加算税が科せられます。さらに、金額の大きな領収書を偽造するなどの悪質行為に対しては、35~40%の追徴課税が発生する重加算税が科せられます。
関連記事:経費で税金はどれくらい節税できる?経費計上のポイントをわかりやすく解説
関連記事:経費の不正使用は横領罪?不正の種類や防止策、経理担当者が注意するべき点など解説
6-2.領収書はただ集めておくだけでは必要経費にできない
領収書や領収書に変わる書類は、ただ保存しておくだけでは必要経費として認められません。税務署から要請があれば、事業に使った経費であることを明確にしておく必要があります。
紙媒体の場合は、月別に封筒を作って領収書を整理することや、専用のノートにレシートを張り付けるなど地道な作業が必要です。近年はデジタル保存に移行する企業も増えてきました。
6-2-1.保存期間に注意
領収書の保存期間は法律で決まっています。法人の保存期間は原則7年間です。また、個人事業主は、青色申告の場合7年、白色申告の場合5年の保管期間が定められています。その年の確定申告・納税が済んだ後も、長期間にわたって保管しておくことが必要です。
6-2-2.保管方法に注意
領収書の保管方法は、大きく分ければ紙媒体と電子取引による電子データの2つがあります。また、中間的な便利な方法として、紙で発行された領収書をスキャナで電子データにして保管する場合もあります。
特に注意が必要なのは電子データです。電子帳簿保存法にはスキャナ保存、電子帳簿等保存、電子取引などそれぞれにルールが定められ、事前申請が必要な項目もあるので、内容をよく把握しておく必要があります。
電子帳簿保存法以外にもインボイス制度も2023年より施行され、領収書などの経理書類に関して適切な対応を行う必要があります。
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7.まとめ
経費の計上を正確に行うには、経費扱いになる支出とそうでない支出を区別することが大切です。また、正しく記載された領収書類を、定められた方法で5~7年間保存します。
「経理担当者になってまだ日が浅いため、基本知識をしっかりつけたい!」
「法改正に関する情報収集が大変で、しっかりと対応できているか不安・・・」
「仕訳や勘定科目など、基本的なこともついうっかり間違えてしまうことがある」
などなど日々の経理業務に関して不安になることがございませんでしょうか。
特に経費精算は毎月頻繁に発生する経理業務ですが、細かいルールや規定があり、注意が必要です。また直近の電子帳簿保存法やインボイス制度など毎年のように行われる法改正に対して、情報を収集し適切に理解する必要があります。
そこで今回は、仕訳や勘定科目などの基礎知識から、経理担当者なら知っておきたい法律知識などを網羅的にまとめた資料をご用意しました。
経理に関する基本情報をいつでも確認できる教科書のような資料になっております。資料は無料でダウンロードができ、毎回ウェブで調べる時間や、本を買いに行くコストも省けるので、ぜひ有効にご活用ください。