ジョブ型雇用の制度内容とは?|導入企業から見るメリットとデメリットを解説

新型コロナウイルスの影響を受け、テレワークやリモートで仕事をする人が急激に増加しました。

しかし、仕事をしている姿を直接見ることができないため、テレワークで仕事をしている社員をどのように評価すればよいのか、悩みを抱えている人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、注目されているのが「ジョブ型雇用」という雇用制度です。

本記事では、ジョブ型雇用と従来の雇用形態の違いや具体的な事例を紹介します。

1,ジョブ型雇用とは

「ジョブ型雇用」とは、社員に対して職務内容を明確に定義し、社歴や労働時間ではなく、その職務の成果で評価する雇用制度です。

ジョブ型雇用は成果主義の欧米諸国では一般的ですが、日本ではまだ浸透していません。

ジョブ型雇用では、あらかじめジョブディスクリプションと呼ばれる職務記述書にて職務、勤務地、労働時間や報酬を細かく定めた上で、雇用契約を締結します。

全ての評価がスキルと成果によって評価されるので、成果主義の雇用形態となります。

一方で、日本では「メンバーシップ型雇用」が根強く残っています。

メンバーシップ型雇用は、終身雇用を前提に、職種を限定せずに総合職として採用し、様々な仕事をローテーションさせて長期的に人材を育成するスタイルです。

メンバーシップ型雇用は、あらかじめ職務内容を限定しないため、「職に就く」というよりは「会社に入社する」という表現が近いです。

欧米では新卒採用からジョブ型雇用となるケースが一般的ですが、日本の新卒採用では総合職に代表されるメンバーシップ型雇用が一般的です。

1-1,ジョブ型雇用が注目される背景

ジョブ型雇用は、新型コロナウイルスが発生する前から注目されていました。

ジョブ型雇用が日本で注目されている理由は大きく分けて3つあります。

①国際競争力の低下

日本企業は戦後、終身雇用や年功序列の雇用システムで著しく成長してきました。

しかし、スイスビジネススクールIMDの世界競争力センターの発表した「2020年版 世界競争力ランキング(World Competitiveness Ranking)」によると、日本の世界競争力は30位でした。

日本は1989年から1992年まで1位を堅持していましたが、徐々に低下し、2019年では調査対象63ヶ国中30位となりました。

そのため、日本の雇用システムに限界が近づいてきており、欧米では一般的になっているジョブ型雇用を取り入れようとしている企業が増えています。

②ダイバーシティ

前述したように、これまでの日本企業では終身雇用制度が一般的であり、将来への経済的な安定が約束される一方で、会社からの転勤や出張、ジョブローテーションを前提にした移動の辞令を事実上反対できませんでした。

しかし近年では、従業員の労働観の多様化が進み、仕事だけでなく趣味や育児、介護にも取り組みたいといったようなライフワークバランスの充実を求める声が大きくなっています。

企業側としては、このような変化に適応するために雇用制度を見直す必要が出てきています。

③新型コロナウイルス

新型コロナウイルスの影響を受けて、日本企業で急激にテレワークやリモートワークを実施する企業が増加しました。

リモートワークでは、上司や人事担当者が社員の行動プロセスを直接見ることができないため、メンバーシップ型雇用した社員を評価することが難しくなります。

そこで、採用する段階であらかじめ、ジョブ型雇用で、職務記述書にて職務、勤務地、労働時間や報酬を細かく定めて雇用契約を締結すれば、行動プロセスを注視する必要がなく、成果だけで社員を評価することができます。

1-2,ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用は対極にある雇用制度です。

それぞれの雇用制度の職務、求められる力、採用手法などを比較してみます。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
  ジョブ型雇用 メンバーシップ型雇用
職務 ジョブディスクリプションで明確に特定されている 仕事が限定されておらず、ローテーションする
求められる力 特定分野の技術を磨いた専門力 様々な分野、スキルを身に着けられる総合力
転勤・部署異動 基本的になし 会社の都合によって有り
報酬 スキル、成果によって決定する 年齢、勤続年数によって決まる
採用方法 中途採用がメイン

新卒一括採用がメイン

労働契約 職務単位

終身雇用

 

このように、ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用では様々な違いがあります。

今後、日本でも多くの企業がジョブ型雇用を増やしていくと考えられます。

そうなれば、企業が求める人材は従来のゼネラリストからスペシャリストに変わっていくでしょう。

2,ジョブ型雇用のメリット・デメリット

ここまでジョブ型雇用の意味や、メンバーシップ型雇用の違いについて解説してきました。

本章では、ジョブ型雇用メリット・デメリットを、求職者側と企業側の立場に立ち、記述します。

2-1,ジョブ型雇用のメリット(企業側)

専門性の高い人材を採用可能

職務記述書にて職務、勤務地、労働時間や報酬を細かく定めて雇用契約を締結することで、専門性の高い人材を採用することが可能になります。

また、コロナ禍の働き方であるリモートワーク・テレワークとも相性が良く、行動プロセスを注視せずに、成果だけで判断することができます。

2-2,ジョブ型雇用のメリット(求職者側)

①職務内容にミスマッチがない

職務記述書(ジョブディスクリプション)に則って業務をおこなうため、求職者は自分の仕事内容を事前に知ることができます。

またジョブ型雇用では、業務内容や責任範囲が限定されているため求職者側はミスマッチがなく、働くことができます。

②評価基準が客観的

ジョブ型雇用の評価の判断は、ジョブディスクリプションに記載されている職務を遂行できたかどうかによって決まります。

上司や人事担当者からの評価がなく、成果に応じた評価なため客観的な判断ができます。

2-3,ジョブ型雇用のデメリット(企業側)

①転勤や異動の機会が減少

ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプション上での業務範囲で働いてもらうことが原則としてあります。

よって、会社の都合で注力したい事業があったとしても、ジョブ型雇用で雇った人材を会社都合で異動させにくいケースもあります。

②新卒を雇用しづらい

ジョブ型雇用で採用する人材は、専門性の高く、特定のスキルが秀でている人です。

理系であれば専門性がありますが、文系の新卒社員は専門的なスキルを身に着けている人は少ないので、新卒社員を雇いにくくなります。

2-4,ジョブ型雇用のデメリット(求職者側)

担当できる業務内容が偏っている

専門スキルを活かした業務ができる一方で、その仕事が景気や経済、会社の影響でなくなってしまう可能性があります。

しかし、ジョブ型雇用ではジョブローテーションがないため、自分が担当できる仕事がなくなれば退職させられるも可能性もあります。

3,ジョブ型雇用を実施するためには

今までメンバーシップ型雇用に重きを置いていた日本企業が、ジョブ型雇用に切り替えるためには様々な障壁があります。

今後、日本企業がジョブ型雇用を実施するためには、どうすればよいのか確認していきましょう。

3-1,ジョブ型雇用における評価制度

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に変更するために、まず整理しなければならないのが評価制度です。

メンバーシップ型雇用では、勤続年数や仕事のプロセス、上司からの定量・定性評価などが対象となっていました。

しかし、ジョブ型雇用では成果のみで社員を評価します。

ジョブ型雇用は、あらかじめディスクリプションで業務内容が決まっているため、その職務が遂行できたかどうかのみが、評価の対象になります。

しかし、評価制度をいきなり180°変えることは、社内で混乱が発生する可能性が高いので、たとえば管理職から移行するなどの、段階的な改革が必要です。

3-2,ジョブ型雇用のための職務の棚卸し

多くの日本企業は職務を限定していないため、ジョブ型雇用を導入するには、「職務の棚卸し」をおこなう必要があります。

例えば、営業職の人がマーケティングや営業企画などを兼務しており、誰がどこまでの仕事をしているのか把握しきれていないケースが多々あります。

ジョブ型雇用では職務を明確に限定する必要があるため、職務の棚卸しをすることが必要不可欠です。

職務の棚卸しが完了した後は、職務を細かく定義してジョブディスクリプションを作成することで、ジョブ型雇用で募集を募ることができます。

3-3,ジョブ型雇用で人材を採用するためには

ジョブディスクリプションを作成し、ジョブ型雇用の準備が整った後は、いかにしてスキルを持つ人材を採用できるかがポイントです。

ジョブ型雇用で人材を確保するためには、転職サイトやエージェントを活用し、いかに自社の魅力を伝える必要があります。

応募する求職者がどのような職務をするのかをイメージしてもらうように、詳細なジョブディスクリプションを提示し、企業独自の魅力を伝えることが重要です。

4,ジョブ型雇用の導入事例

メンバーシップ型雇用が根強く残っている日本でも、ジョブ型雇用への移行を進めている企業は一定数あります。

本章では、ジョブ型雇用を進める大手企業3社の事例を紹介します。

4-1,日立製作所

日立製作所は、2021年3月までにほぼ全社員の職務履歴書を作成し、2024年度中に完全なジョブ型雇用への移行を目指すと発表しています。

日立製作所がジョブ型雇用への移行進めた最大の理由は、グローバルでの競争力を向上させるためです。

日立製作所は2008年に、過去最大の7,873億円の赤字を計上しました。

その後、国内市場からグローバル市場に軸を移し、現在では売上の約50%は海外向けになっています。

また、従業員の約半数が海外人材であることも影響し、海外では一般的なジョブ型雇用が推し進められていることとなりました。

同社は、2020年度内にジョブディスクリプションの作成を予定しており、ディスクリプションの種類は300~400種類になる見込みです。

日立製作所ではすでに年間採用の半数程度が中途の経験者採用となっており、新卒採用の割合が年々下がっていることがジョブ型雇用への移行を表しています。

4-2,富士通

富士通では新型コロナウイルスが発生する前からテレワークの導入を進めてきました。

新型コロナウイルスが発生してからは、出社率を全社員の25%以下になるように設定しテレワークの推進をしています。

その結果、現在の出社率は約15%程度になっています。

テレワークでも約9割の仕事は完結でき、顧客に対しても満足がいくサービスが提供できることが分かり、社内でジョブ型雇用を加速させる要因になっています。

富士通のジョブ型雇用は、具体的には2021年4月にジョブ型雇用の課長職を公募すると発表しました。

まずは、ジョブ型雇用を幹部職で募集し、幹部に浸透した後は、一般社員にもジョブ型雇用を広げる予定です。

4-3,資生堂

資生堂では2015年から本社の管理職1,200人を対象に、ジョブ型の人事制度を採用しており、そのジョブ型制度を2021年1月より一般職3,800人まで拡大することを発表しました。

これにより、多様なバックグラウンドを持つ社員を採用し、その個性を引き出して、経営に活かすことが狙いです。

資生堂では、ジョブ型雇用の推進が女性の活躍を後押しし、外国人がビジネスに参画しやすい環境を整えることで、グローバルでの競争力向上につながると考えられています。

5,まとめ

グローバルの視点に立つと、日本の終身雇用や年功序列は特異な制度です。

企業活動の範囲が日本を飛び越し、世界中に広がっている現代において、ジョブ型雇用の浸透は時間の問題といえるでしょう。

さらに、コロナの影響もあり、直接仕事のプロセスを見ることが難しいテレワークやリモートワークなどの新しい働き方が普及しつつあります。

働き方の変化に伴い、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ、雇用制度を見直すきっかけになるかもしれません。

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