ムスリム大国インドネシアにて「宗教と一緒に働く」とは|HR NOTE

ムスリム大国インドネシアにて「宗教と一緒に働く」とは|HR NOTE

ムスリム大国インドネシアにて「宗教と一緒に働く」とは

  • 編集部より

インドネシアの人口は2億6,400万人を超える世界第4位の規模であり、また世界最大のムスリム人口を有するため、ムスリム国家としても有名です。そんな国で宗教とともに働くというのはどういうことなのでしょうか。

インドネシア人の仕事の価値観とは

仕事よりも家庭・宗教に優先度が高く、時間をかけている。

仕事のために宗教上の儀式や家族の行事をおろそかにする人は少ないです。そして、年齢を重ねるほど、また都市部よりも地方に行くほど、この傾向が強くなります。なかには家庭よりもキャリアアップを重視されている方もおり、自身の携われる範囲・決定権の多さを重視します。また、そういった方の多くは、コスというアパートにて1人暮らしをされている方が多いです。

同じ職場環境で働く人たちに影響を受けやすい性質がある。

インドネシアは、同じ職場環境で働く人たちに影響を受けやすい性質もあります。ポジティブな職場環境を作れば、ポジティブな影響を受けあいますし、文句ばかり言っているネガティブな環境を作れば、一緒になってネガティブになる状況を生み出してしまいます。

インドネシアでは目上の人を敬い、上下関係を大切にする風習がある。

年功序列の考え方が浸透しており、上司に不満があったとしても、日本のように職場で強く意見をぶつける人は少ないないでしょう。インドネシアには「Asal Bapak Senang(アサル・バパ・スナン)」という言葉があり、日本語で「ボスが喜ぶように」という思想が根付いています。問題があれば自分たちでできる限りのことをして、ボスの期待に応えるというような意味もあるようです。それだけ、上司の威厳は絶大なのです。

インドネシア人の従業員は「自分の担当業務の仕事をする」という認識が強い。

インドネシアの従業員は「これが自分の業務」という意識が強いです。つまり、“言われたことを100%やることは得意“です。そのため、自分の担当業務さえ終わってしまえば、まだ就業時間内であったとしても、他にすべき事を探さずに過ごす社員も少なくありません。

副業は、当たり前。

インドネシアの人の大半は、会社員でも公務員でも副業をいくつか持っています。田舎の人ならば、近くの工場に勤めながら農業をやっていたり、週末や休日だけ漁師になったり、ココナッツの実を都市に売りに行ったりするような人もいます。

都市部だと、ご主人は勤めながら奥さんと小さな食堂や雑貨店を経営するケースもあります。また、街中であっても牛や鶏などを飼い、食材生産者である人もいます。

最近ではオンライン・バイクタクシーなどの新しい副業が流行っていて、早朝・就業後、また休日に、マイペースで副収入を稼ぎます。

インドネシア人と一緒に働く上での注意点がまとまっている記事がありますので、あわせてご確認ください。

(過去記事参照)

業務における宗教の影響

お祈りのための時間が、就業時間中に2回ある。

イスラム教は一日5回ほどお祈りが義務付けられており、就業時間中だと15時と18時で2回被ります。そのため、スケジュール等を設定する際には、お祈り時間を考慮する必要があります。またインドネシアでのオフィスや工場設立時には、お祈りスペースの有無を確認し、付近にない場合は、用意するようにしましょう。

また、毎週金曜日の正午前後(11:50~12:45位)にはジュマタンと呼ばれる男性のみの金曜礼拝があり、金曜日はバティック姿の男性が多く見られます(バティックの着用を推奨しています)。多くの会社では金曜日は11時半から1時間半が休憩時間になっており、オフィスや工場で働く男性たちは一斉にムショラ(礼拝スペース)へ向かいます。金曜の昼休憩は通常より長くするなど宗教的な理解が必要となります。

お祈りのタイミング
Subuh(夜明け前)、Zuhur(昼12時頃)、Asar(午後3時頃)、 Magrib(夕方6時頃)、Isya(夜8時頃)の5回です。 それぞれ祈りの時間が来ると、近くのモスクや礼拝所からアザーン(Azan)と呼ばれる祈りの呼びかけが大音量で聞こえてきます。

会食時には、お店や食べ物に気をつけましょう。

国民の9割という大きなシェアを占めるからといって、ビジネスシーンで出会う人たちが全員「イスラム教徒」というわけではありません。中華系華僑の人たちの多くは、仏教徒やキリスト教徒です。そのため、相手の宗教を正しく把握して、ランチやディナー・ミーティング、接待などを設定するようにしましょう。

もしも相手がイスラム教徒の人であれば、豚肉を使っていない「Halal(ハーラル)」の店を選びましょう。一方、ヒンドゥー教徒の人は、豚肉が大好きで、敬虔になればなるほど牛肉を食べません。敬虔なイスラム教徒であれば、アルコール飲料も避けなければいけない場合もあります。

断食時、生産性を考慮すること。

断食明けの祝日「イドゥル・フィトリ」までの1ヶ月間、イスラム教徒たちは日の出から日が沈むまで、毎日、飲み物、食べ物、喫煙などを一切摂りません。 イスラム教徒たちにとっては、毎年の恒例行事で慣れているとはいえ、断食中は、仕事にも影響をきたします。なかには、イライラしたり、集中力を欠いたりする従業員もでてきます。運転手は、運転中に交通事故のリスクが高まるので注意が必要です。また、通常に比べてどうしても一日の生産性が下がってしまいます。それを含め、一日の目 標設定や、生産計画を立てる必要があります。

ラマダン(断食中)に気をつけるポイント

ラマダンは、ヒジュラ暦の第9月にあたる月のことを指し、そのラマダン月の1ヶ月間、ムスリム(イスラム教徒)は、日の出から日没まで断食することが義務付けられています。ムスリムにとっては、宗教的な修行の意味合いを持つ神聖なものです。とはいえ、業務中に支障がでないよう、工夫をしている会社も多いようです。

就業時間を調整する。

特にジャカルタ、都市部にある会社の就業時間は、工業地帯の会社の就業時間に比べるとやや遅めの時間からの始業時刻となっているところが多いです。つまり、断食の終了時刻がきたタイミングで、すぐに飲食ができないということです。そのため、このラマダンの期間のみは、勤務時間を縮小したり、始業時間をはやめに変更し、終業の時間をはやめていたりと、配慮している日系企業も多いです。

いつも以上に寛容の態度でいるようにする。

断食中の従業員の前では、飲食・喫煙は控えるのが礼儀とされています。目につく形で日中に飲食する場合は、一言断る程度の配慮があるといいかもしれません。また、この期間は、生活ペースが大きく変わることになりますが、イスラム教徒にとっては通常月とは異なる期間です。そして、お腹が空く以外に「眠気」とも戦わなければならないので、よくあくびする従業員を見るかもしれません。お昼の時間にお祈りした後に、お昼休みが終わるまでにみんなは殆ど寝ています。周囲の人、特に部下や使用人、その他立場の弱い人に不行き届き等があっても、いつも以上に寛容の態度で臨むことが必要かもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?インドネシアは、人口も多く、今後の経済成長も期待できる国です。

外国人である私たちが、この地で一緒に働くためには、日本の考え方に固執されるのではなく、彼/彼女らの性格、文化背景、国民性や宗教を理解した上で、歩み寄ることが必要なのではないでしょうか。

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