今回は、株式会社モザイクワークの代表である杉浦 二郎氏に、前職でもあり現在も携わっている、三幸製菓の採用の取り組みや、モザイクワークで実現したい世界観に関してお話いただきました。
三幸製菓は新潟にある地方のお菓子メーカーで、知名度も大手のお菓子メーカーと比較するとそこまで大きくありません。
そんな地方の中堅企業である三幸製菓は、どのような採用戦略を行ってきているのか、なぜそのような考えに至ったのか、またモザイクワークでは何をされているのか。
以下内容を中心に前編・後編に分けてインタビュー記事にさせていただきました。
杉浦 二郎| 株式会社モザイクワーク 代表
前編
- 予算がなく、競合との知名度が4倍近い差がある中でどのようにブランディングをすべきか
- 経営陣に採用の重要性を訴え続けて予算を増やし、エントリー数が300名から13,000名に
- いきなり就職サイトをやめて、Facebookでの採用活動をメインに実施
後編
- 面接では判断できない。どうやって見極めを行っていくべきか
- 「日本一短いES」「35の質問」「カフェテリア採用」の組み合わせでマッチングを図る
- 客観的に評価でき、どんな能力を持っているか可視化できる世界をつくりたい
目次
予算がなく、競合との知名度が4倍近い差がある中でどのようにブランディングをすべきか
-三幸製菓で採用担当となった当時に関してお伺いさせてください。
杉浦氏:新卒採用をメインに採用を行っていましたが、基本的には新潟中心ですし、正直採用予算もほとんどなかったです。
今現在使ってるお金の10分の1ぐらいしかなかったです。
-そこまで少ない予算だと実施できることも限られてしまいますよね。何人くらいの採用だったのですか?
杉浦氏:10人の採用予定で動いていました。
少ない予算で、セミナー会場とか就職サイトなどを手配しないといけない。貸し会議室でいうと本社が新潟なので東京で1回会場借りただけで10万とかするわけですよ。
ぼくらの交通費とか、そういうのも全部予算に入っていたので、当然のことながらパンフレットは作れません。就職サイトも低価格のプランで掲載していました。
-エントリーはどのくらい集まったのですか?
杉浦氏:エントリーは300人とか400人とかでした。ぼくはそれでも多いと思ってたんですよね。採用担当になりたてで、よくわかんなかったんです。
他社はどうなのかなと思って、1度合説に出たときに、近くに大手のお菓子メーカーさんがいらっしゃって、同じお菓子会社なのでご挨拶がてらお伺いして「ぶっちゃけエントリー何人ぐらいいるんですか?」って聞いたら、「3万ぐらいですね」って言われて。「え?本当に!?桁2つ違うぞ」みたいな話で。(笑)
これはシャレにならないと思って、そこでハッと気づいてこれはヤバいぞと。大手と戦おうとするんだったら本気出して母集団集めなきゃいけないなと感じました。
-そこから改善していこうとなって、初めにどのようなことをされたんですか。
杉浦氏:そこからとにかくブランディングだと。会社のイメージだとか採用ブランディングだとかに興味関心がいきました。
「自社のポジショニングってどうなんだろう」「どうやって打ち出していったらいいのか」「打ち出す言葉はどうしよう」とか。
合同説明会やるにしても、どういう中身にしようかとか、全部考えていって作り込んでいったんですね。
まず、自社のポジショニングですよね。そのときたまたまトライアルみたいな扱いでブランド調査のサーベイを無料でできたんですよ。
三幸製菓の競合がどこなのか、競合視しているところと三幸製菓との認知度の違いはどのくらいか、三幸製菓って名前を聞いただけでどういうイメージを持つかとか、そういうデータをとれたんですよ。
それで結構衝撃的なデータが出て来て・・・。
いわゆる他社の大手お菓子メーカーだと、認知度が8割とか9割まで行ってるんですけど、三幸製菓が確か2割とかなんですよ。企業認知度が、3倍、4倍近い開きがあったんです。
これだとこれから本気で戦おうとしたときに、何をどうすればいいのかよくわからなくて・・・。
とりあえず、ポジショニングの本を買い漁って読んで、ポジショニングの考え方をひたすらインストールしていました。
そして、ぼくらはどういうポジションでどういう見せ方でやっていったらいいかって考えたときに、業界の中で唯一「売上成長力」だけはあったんですよね。
とにかく、ここだけを打ち出していこうっていうことになりました。
経営陣に採用の重要性を訴え続けて予算を増やし、エントリー数が300名から13,000名に
杉浦氏:2割ぐらいの認知度しかないのであれば、8割の方は知らないわけじゃないですか。
知らないんだったら、「熱量高くて、成長力があって、すごい会社がある。地方によくわかんないお菓子メーカーあるぞ」と、そういうブランディングで打ち出していこうということで、就職サイトの画面も全部変えていって、色も徹底的に赤を使っていったりとか、パンフレットも巻物にしたりとか、巻物をこう広げると、隣の人にぶつかる、またカバンにしまうのが大変みたいな(笑)。
中身はそこまで重視していなくて、巻物って相手が「この人、本気だな」って伝わりやすそうじゃないですか。
「とにかくよくわからないけど成長力があって、情熱的」っていうのを一生懸命打ち出していきました。
合同説明会などのプレゼンテーションもひたすら「自分たちがいかに成長しているか」しか伝えてないんですね。
-そこから変わったことはありますか。
杉浦氏:認知度がぐっと上がりました。300ぐらいしかなかったエントリーがMAX13,000までいったんですよ。
-えーっ!すごい!どのぐらいの期間でそこまで伸長したのですか?
杉浦氏:3年とかそのくらいだったと思います。
-毎年同じことを徹底的に継続して行ったのですか?
杉浦氏:そうです。ブラッシュアップして。もちろんお金もかけていったんですけど。実は一番最初にやったことは社内の説得ですね。
-そこ気になったんです。どうやって予算を増やしたのか。
杉浦氏:採用支援会社が出していたデータを社内、当時の社長(現会長)に出したり、経営会議に出したりして、「いかに自分たちの採用の状況が厳しいか、不利か」っていうこと、「それを逆転するためには今の予算では難しい」ということ、「採用のリソースをもっとさかなきゃいけないこと」を説得したんです。
多くの企業の人事の方にお伝えしたいことは、一番最初にやらなきゃいけないことは経営陣と握ることなんですよね。
「ぼくらは採用とにかく一生懸命やるよ」っていうところをいかに握って予算を引っ張ってこれるかというところが大事で。それができないと多分うまくいかないですね。
-なかなか「企業成長=優秀な人材の採用」とはならずに、採用予算を増やせない企業も多いかと思います。「今までと同様のやり方で採れてるんだから変えなくていいじゃん」のような。その辺は、経営陣はどのようなお考えだったんですか。
杉浦氏:一番最初の頃は、「採用なんてそんなに頑張らなくていい」と。「東京なんてわざわざ行かなくていい」と言ってました。お菓子メーカーだし、黙ってても集まってくるだろうと。
確かに採用も、毎年母集団は少ないながらも充足はできていたんです。質の部分はおいといて。
ただ結局ここが会話しなきゃいけないところで、ぼくらは何をしたかというと、「それはわかります」と。
だけどこれから三幸製菓という会社がどうなりたいのかということを考えていったときに、いちローカル新潟本社企業のままか、ナショナルブランドとしてさらに成長していくのかって考えたときに、ぼくらはやっぱりナショナルブランドとしてさらに大きくしていきたいと。
であれば、「新潟の中で人材を探すんじゃなくて、全国から探していかなきゃいけないですよね」という話をしていって、何回もいろんな場面で都度話し合っていくっていうのが当時やってたことですね。
真っ正面だけじゃなくて、何かあったとき、折に触れて、「やっぱり採用をもう少しやりたいんですよね」とか、「もうちょっとこういうことしたいんですよね」みたいな。
いろんな形でアクションしていって、だんだん刷り込ませていくというか。
-母集団もある程度増えて来たとなると、求める人物像や選考プロセスの改善に着手していくかと思うんですけど、その辺はどのようなことをされたのでしょうか?
杉浦氏:当時、選考フローそのものはあまり大きく見直すことはしなかったんです。とにかく集めることにリソースを割いてたので、母集団形成を一生懸命やってました。
実はそれが今につながるんですけど、今振り返って、当時はそれでよかったかというと、よくないんです。
だからぼくらもたくさん失敗はしてて、当時13,000人も集めるだけ集めて、結局そのあとやったことは変わらなかったんですよね。
-そこで採用できた方々は、300人だった頃と比較して質はどうだったのですか?
杉浦氏:変わりました。それだけ来ますから、それなりにいい人たちも来ます。
そういうのを見ると経営側も、「やればできるんだなって、採用大事だよね」ってなって、そのあたりから採用に対しての考えががらっと変わりましたね。
いきなり就職サイトをやめて、Facebookでの採用活動をメインに実施
-いつぐらいからプロセスを変えなきゃって思い始めたのですか?
杉浦氏:結局13,000人受けてもらっても、採用できるのは10人ぐらいなわけです。ということは、12,990人を落としてるわけじゃないですか。
それが果たして正しいのだろうかってなったときに、「全然だめじゃん」ということに気づくわけですよ。
ぼくらはよく考えたら10人採用することを考えてるんじゃなくて、「12,990人をどう落とすかっていうことに一生懸命になってるよね」って話をしたときに、「それって採用じゃないよね」みたいなことがぼくの中で課題感として生まれてきて。
もう少し1人1人見ていきたいなと。ちゃんと限られた母集団でもいいから見ていきたい。
一方でブランディングはある程度できただろうというのがあったので、一気に切り替えようということで、そこで就職サイトをやめるんです。
-え、いきなり就職サイトやめたんですか?
杉浦氏:就職サイトをやめるのも結構大変で、何が一番大変かっていうと、一緒にやっていたメンバーを説得するのが一番大変でした。
まず経営陣に対して、当時の社長に、「ナビをやめたいです」って言いまして。「それでどうすんの、集まるの?」って。「いや、多分集まりません。最悪ナンパします」みたいな。
「そのへんにリクルートスーツ着てる子、片っ端からナンパするんで就職サイトやめたいんです」って言ったら、「そこまでやるならいいじゃん」みたいな(笑)。そこはあっさりOKで。
で、うちのメンバーに、「社長にも了承もらったし、就職サイトやめたいんだよね」って話したら、猛反対を受けて・・・。
-いきなりだと不安になりますよね。
杉浦氏:最後ぼくもムキになって、「だったらいいよ、1人でやるから」って言って、当時Facebook採用がまだ世の中的にメジャーじゃなかったんですけど、Facebookページを自分で作って、Facebookページとリアルなイベントとの連動をずっとやってたんです。
Facebookでリアルなイベントの開催を告知してそこに呼んで、そのリアルなイベントでまた新しくつながって、イベントで話したものをまたFacebookで議論したりですとかしていました。
あとはそのFacebookページからとばして、外付けでチャット機能みたいなのを作ってですね、「社会人って何だろうね」、とか、「働くって何?」みたいな議論をそこでやっていました。
そういうリアルなものとFacebookとの融合することによって何をしたかというと、「これから採用は一方的な伝え方じゃなくて、インタラクティブでいこうと」、共感・共振を高めようと思ったんですよね。
採用人数は変わらずに10人採用できていました。実は母集団っていう考え方をやめたんですよ。僕らが目指すところは分母をいかに分子に近づけるかだと。
だから10人採用するなら応募は10人でいいと思う。ただその10人が僕らが望む10人が集まるような仕掛けをしようっていうことを心がけました。
-今でこそFacebookを活用した採用は多く見受けられますが、2008年からそこまで行っていた企業はなかなかないですよね。
杉浦氏:実はFacebook採用はぼくからするとあまりうまくいかなかったと思ってるフェーズなんですね。
Facebook採用を行った理由の1つが「共感共振をどう生んでいくか」みたいなところなんですけど、一方で三幸製菓はそろそろ多様性文脈で採用してかなきゃいけないフェーズに入ってきてたんですよね。
というのが、売上の成長力が鈍化するだろうなというのが僕の中にあったので。鈍化すると企業は何をするかというと、多角化とか海外に行くとかだと思うんですよ。
お客様もいろんな多様性を求めてきていることは、我々提供側も、いろんなサービスを提供する、または柔軟性を求めなきゃいけないなというのもあって、少し多様性のある人たちを採らなきゃいけないなっていうのもあったんですよね。
SNSだと、ぼくらの考えてること、ぼくらの熱量と同じ人たちが集まっちゃって、多様性があまりない人たちが集まるっていう感じがして、悪くはないんだけど、弊害もあるなというのがちょっと感じていました。
三幸製菓の歴史は3つあって、一番最初はブランディングの歴史があるんですね。次にソーシャル採用っていうのがあって、今に至っているんです。
今はカフェテリア採用だったり、35の質問というところを中心に採用を行っています。