近年、新卒採用市場は売り手市場になっており、苦戦を強いられている採用担当の方も多いのではないでしょうか。
そんな中、「大卒資格」を持っていない「非大卒生」にも注目して採用を展開している企業が増えてきています。
そこで今回は、「非大卒」に特化した就職サービスバスキャリアが仕掛ける新しい採用についてご紹介。
なぜ、非大卒生に注目したサービスを開始したのか。非大卒生のキャリアにおける現状とはどのようなものなのか。大卒生と非大卒生の違いはあるのか。
バズキャリアを仕掛ける株式会社VAZの森社長に、非大卒生の実態やその特徴・魅力についてお伺いしました。
森 泰輝(モリ タイキ)| 株式会社VAZ 代表取締役社長
早稲田大学在学中に、当時日本に上陸直後のアプリ「vine」を活用した6秒動画グルメサイト「@mikke」で起業。その後、インフルエンサーマーケティング事業の株式会社VAZ を設立。これまでに大手企業を中心に約700社以上のプロモーション支援を実施。それ以外にも、若年層女性向けメディア「MelTV」を、約半年で国内企業の美容系チャンネル1位に育て、また非大卒者の就活マーケットを作り出すべく新事業「バズキャリア」を立ち上げる。現在、VAZ社は、レコード会社、芸能プロダクション、テレビ局、IT企業やベンチャーキャピタルなどから出資を受け、積極的に事業を拡大。
バズキャリアが掲げる「非大卒生」採用市場とは?
「優秀な若者はたくさんいる」18-22歳の非大卒生の可能性を広げたい
-「非大卒生」とは、どのような層を指すのでしょうか?
森氏:非大卒生は、大卒を卒業していない18歳から22歳の非大卒の若者を指します。具体的には中卒・高卒・専門卒・高専卒・大学中退といった方々です。
彼らは、いわゆる一般的な大卒での就職活動を経験しておらず、新卒の採用市場では滅多に会えない層になります。大卒者向けの就活サービスは充実していますが、まだまだ、非大卒生向けの民間のサービスが少ないためです。
しかし、大卒資格は無いけれど優秀な若者はたくさんいます。そういった可能性に気づいてもらうために『バズキャリア』をサービスとして展開しています。
非大卒限定の就職支援サービス『バズキャリア』
大学中退して起業したときの違和感から生まれた『バズキャリア』
-バズキャリアをはじめたきっかけは何だったのですか?
森氏:僕は大学を休学している間にVAZを立ち上げたのですが、「大学の意味ってなんだろう」ということについて、ずっと思うところがあったんです。
「なんで大学に行ったの」と言われても、特別な理由がないんですよ。大学は学びたいもの、研究したいものがあって行くというのが、本来のかたちだと思うんです。でも、僕はそうじゃなかったんですよね。
とりあえず就職予備校として大学に入って、そこから良い企業に就職してキャリアが積める。そんな漠然とした考えだけで、なんとなく大学に通っていて、明確な目的もなく毎日だらだらと過ごしていたんです。ただ出席さえすれば単位がもらえてラッキーみたいな。
毎月何十万円と授業料が支払われているにも関わらず、大学に行く意味が見出だせずに、だんだんと鬱憤がたまっていって、それに耐えきれずに大学2年生のときに、大学を休学したんですよね。
そこから、働ける場所を探したんですけど、大卒生でないと働く選択肢がすごく限られてしまうんです。
そのことを痛感して、いろいろと悩んだ結果、在学中に起業しようとなりました。VAZは2社目になります。ちなみに、昨年の下旬に大学は正式に退学したので、僕も非大卒生です。
そうした実体験から、非大卒でも大卒と変わらないようなキャリアを選択でき、応募できる世の中にしていきたいと思ったんです。
『非大卒生』のキャリアにおける現状と特徴
18歳~22歳の半数を占める「非大卒生」はキャリアの選択肢がない
-非大卒生と、大卒生の就職状況の違いに関して、もう少し詳しくお伺いできればと。
森氏:たとえば、高卒生が就職するとなると選択肢が限られるんです。高卒生の就活はハローワーク経由での就職先紹介か、学校の先生から求人を渡されてその中から選ぶ感じです。
求人内容もホワイトカラーではなく、ブルーワーカー系が多くを占めます。しかも一定期間、1人1社しか応募することができないんです。
一方で、大卒生での就職活動だと、営業職、企画・マーケティング職、販売職、エンジニア職、研究職など、ホワイトワーカー、ブルーワーカー問わず、幅広い選択肢があります。
「大卒」の資格があるかないかで、本当に選択肢の幅が違ってきます。大卒生にとって当たり前の状況が、高卒生には与えられないんですよ。
高卒生の離職率が高いと言われるのも、このような選択肢の少なさが起因していると考えています。そういう現状があるため、先ほども言ったように、とりあえず「大学に行かなきゃ」ってなるんですよ。
-大卒・非大卒の割合はどのくらいになるのでしょうか?
森氏:大卒・非大卒の割合でいうと、だいたい5:5ですね。非大卒生が約半分を占めているのです。その中の18〜22歳の若者たちだけでも約250万人います。
そして彼らは、あまり望んでいない仕事に就いている、フリーター・派遣などキャリアが積みにくい働き方になっている可能性があります。
その結果として、貧困層になりやすいようなスパイラルに陥ってしまっているように思います。
非大卒生採用に対する企業のイメージは「好感触」
-各企業が抱える、非大卒生に対するイメージはどのようなものなのでしょうか。
森氏:多くの企業は、大卒での新卒採用がメインのため、「会ったことがないから分からない」とおっしゃっています。
僕は個人的には、非大卒だろうが大卒だろうが変わらないと感じています。
別に非大卒が優秀というわけでなければ、大卒だから優秀というわけでもなく、どちらも色々なタイプの方がいるので、正直ピンキリです。そういう意味で非大卒だろうが、大卒だろうが変わらないと思います。
ひとつ特徴があるとすれば、非大卒生は面談がヘタクソだと思います。大卒生は就活をはじめる際に、自己分析や面接対策などをおこなうじゃないですか。
でも、非大卒生はそういう教育がされていないので、自分をうまく見せることができないんですよ。ただ、それは見せ方の問題です。その人のポテンシャルとは別です。本当にその人のやる気次第、コミット力次第だと思います。
-2017年8月に非大卒生を対象にした就活イベント「NEXTSTAGETOKYO」を開催されていましたが、そちらに参加された企業様の感想はどのようなものでしたか?
イベント参加定員300名に対し、14,000人の方が応募
DMMをはじめ、多くの企業が参画
森氏:「NEXTSTAGETOKYO」は、非大卒生が約300名、参加企業17社で実施しました。
参加された企業様の声に関しては、アンケートを取ってグラフにしているのですが、「大卒向けの説明会と比べて、良い・変わらない」という声が94%を占めていたり、「採用したいと思える参加者に出会えた」と感じた割合が82%だったりと、非常に好感触だったように思います。
-それはすごいですね!実際にどのくらいがマッチングにつながったのでしょうか?
森氏:内定に関しては、約80人に内定が出たという話を聞いています。
そうしたことからも、企業が欲しがる魅力的な人材が多く存在していると言えるのではないでしょうか。
非大卒生の3つの特徴
-非大卒生の魅力はどのようなところでしょうか?
森氏:大きく大別して、3つの特徴があると考えています。
1、若くから育成できる
社会経験の少ない若者だからこそ、余計な知識や思い込みがないため、素直でまっすぐな人材が多く、早い段階での育成が可能です。会社のカルチャーにフィットした育成をおこなうことができます。
また、高卒生であれば当然18歳から働くことになるので、大卒22歳で就職したときには、彼らはすでに社会人4年目の戦力になっています。
2、企業に求めるハードルが低い。
今までは、ハロークーク経由で学校の先生から紹介されるブルーワーカー系の仕事が多く、それしか就職の選択肢がありませんでした。
そのため、IT系などの知的産業への選択肢へのモチベーションが非常に高く、結果として面接して1社目で就職を決める若者も多くいます。
そもそも、「スーツを着てパソコンを使って仕事をするのがカッコイイ」と、それだけでモチベーションが高くなりますからね。
また彼らは、福利厚生や働く環境など、多くのものを望みません。決められた環境で努力をしてくれます。
3、成長意欲が高い
選択肢が少なかった分、「自分にはこの会社しかない」という想いが強く、就職後の成長意識が高くなる傾向があります。
また、「大卒生に負けたくない」といったハングリー精神も非常に強く持ち合わせています。
実際でVAZで働く、非大卒社員に話を聞いてみた
-ここからは、実際にVAZで働く外川さんにお話を聞いてみたいと思います。
外川氏:よろしくお願いします。
外川 洋介(トガワ ヨウスケ)| 株式会社VAZ バズキャリアユニット CSディビジョン
-まずは、ご経歴をお伺いさせてください。
外川氏:僕はずっと滋賀県にいて、高校卒業後は滋賀県立大学に入学しました。そして、大学2年の終わりに1年間休学をし、そのまま大学を辞めました。
家庭の事情もあったのですが、一番は「兄と同じ進路をたどり続けることが面白くない」と感じたためです。僕は、昔からずっと兄と同じ進路をたどっていて、大学入学の理由も、なんとなく兄と同じ進路に進んだだけ。
それで思い返した時に、「兄とは違う環境に挑戦したい」という想いが強くなってきて、大学を辞めて働こうとなったんです。
-年齢は今おいくつですか?
外川氏:22歳です。
-22歳!随分落ち着かれていますね。同級生にあたる方々はまだ大学生ですか?
外川氏:そうですね。友人の多くは現在大学生です。高卒で働いている友人もいますが、彼らは工場勤務やフリーターが多いですね。
最終学歴が高卒で、VAZのような会社で働くといった、僕みたいな経歴の人間は周りにはいないです(笑)。
-現在はVAZでどういう業務をされているのですか?
外川氏:現在は、バズキャリアでのユーザーのチャット対応や電話での対応業務をしています。また、人材を紹介させていただく企業様とのやりとりを実施する窓口として働いています。
森氏:外川の働きぶりを見ていても、大卒生との違いはないように感じています。本当に同じですね。
外川氏:そうですね。僕も大学に2年間通っていたのですが、周囲の大学生・大卒社員と、VAZで働く中卒・高卒の社員を比較してみても何も変わりもないように思います。
VAZにいる中卒・高卒の社員は、「アホなんだけど賢い」。漢字とかは全然書けないんですけど、考える力がすごい。全然違った発想を出してきて「あ、そういった考えもあるんだ」と、僕自身も学ぶことが結構ありますね。
森氏:たしかに、大卒生では出てこないようなアイデアが、結構出てくるように感じています。
外川氏:あとは、「飢えてる感」がやっぱりすごいですね。
-「飢えてる感」とはどのようなことですか?
森氏:みんな学歴などに対して、ある種のコンプレックスがあるんです。それは非大卒生はみんな言ってますね。そういったこともあって、「結果を出したい」という想いが非常に強くあるように思います。
外川氏:「結果出したい」「成長したい」とは、みんな言ってますね!
やはり、中卒・高卒・大学中退とかでは引け目があるのですが、その分負けたくないと思いますね。
大学での勉強は結構詰め込む感があると思うんですけど、仕事で入ってくる知識は、何かもう次から次へと入ってきて、すぐに経験にして活かさないといけない。
そういったことを早くから経験できることはアドバンテージだと思いますね。
-大学での学びと、実際に仕事で学ぶのとでは全然違いますよね。
外川氏:僕は早い段階から働けて、“スポンジ”のまま成長していけることが強みだと感じています。
個人的な意見ですが、大学生であれば、凝り固まったものを柔らかくしてから教育していくイメージがあるのですが、非大卒はそういうのがありません。昔はヤンキーをしていた社員でも、スッと周囲の意見を受け入れて働いています。
森氏:1つ採用する際の注意点でいうと、マネジメント層がある程度手取り足取り教えてあげる環境をつくってあげることだと思います。僕らも結構それで失敗した経験があります。
これは大卒も非大卒も変わらないと思うのですが、良くも悪くも素直なので、最初に“正しく成長できる環境”をつくってあげないと、社会人としての土台がきちんとできません。
特に非大卒生は、ビジネスマナーをはじめとした常識が大卒生に比べると弱いので、そういった部分から意識してマネジメントしていく必要はあると思いますね。
非大卒も大卒も変わらないという価値観を広めていきたい
-非大卒生採用マーケットにおいて、今後どのような展望をお考えでしょうか?
森氏:まずは、大卒の採用と非大卒の採用は何も変わらないということを伝えていきたいです。結局はその人のやる気次第なので。
非大卒と大卒の割合は半々なのに、大卒だけを採用して活用していくのは非常にもったいないと思います。特に労働力不足が叫ばれている昨今、非大卒生を活用しない手はありません。
また、大学進学に対する考えを変えていきたいですね。就職予備校としてだけで、大学入学するということをなくしていきたいですね。
実態は、“大学卒業資格”以外のところで、大学が特にビジネスマンとしての能力の養成に何かしら寄与してるわけではないと思います。
学びたいもの、研究したいものがあれば大学にいくべきです。でも、「大学を卒業しないとキャリアの積める良い求人が得られない」といった理由だけで大学になんとなく進学するという現実を変えていきたいです。
そういう意味で、22歳から働くのが当たり前というところから、18歳から働くのが当たり前だと、働く年齢を引き下げたいと思っています。
そうなると、子どもを1人を成人まで育てるのに2,000万弱から3,000万円くらいかかると言われている中で、大学進学をせずに働く人を増やすだけで、経済にも大きな影響を与えることができると考えています。
-少子高齢化が進んでいく中で、注目度も増してきそうですね。
森氏:当たり前のように「大学新卒市場」があるのと同様に、『非大卒生』が採用枠として当たり前にある社会を生み出していきたいですね。
中卒・高卒の学歴でも、優秀な経営者の方はたくさんいます。もっともっと、働く意欲とそのポテンシャルがある非大卒生にスポットライトを当てられる仕組みをつくっていきたいと思います。