80万人以上(2017年11月末時点)のユーザーが使う、国内最大級のプロジェクト管理ツール「Backlog(バックログ)」などを運営する、株式会社ヌーラボ。
2017年度には、なんと創業以来最大の採用人数を実現。しかも、その多くがソフトウェアエンジニアとのこと。
今回は、ヌーラボで採用や組織開発を担当する安立さんに、「94%の内定承諾率を保つ中途採用の秘訣」や「特徴的な制度設計」についてお話を伺いました。
【人物紹介】安立 沙耶佳 | 株式会社ヌーラボ 人事
目次
内定承諾率94%!大事なのは、「いかに不合格者を少なくするか」
-まずは御社について教えてください。
安立さん:ヌーラボは、プロジェクト管理ツールの「Backlog」、ビジュアルコラボレーションツールの「Cacoo」、ビジネスディスカッションツールの「Typetalk」という3つの自社プロダクトと、それらを1つのアカウントでつなぐ「ヌーラボアカウント」を開発・提供しているソフトウェア会社です。
福岡に本社を持ちながら、日本国内では東京・京都にも事務所があり、他にはニューヨーク、シンガポール、アムステルダムに海外子会社を持っています。
-グローバルですね。社員は何名くらいですか?
安立さん:グローバル全体で100名程度です。国内は8割ほどがソフトウェアエンジニアですね。直近3年間での入社者が多いのが特徴です。
-去年はエンジニアを中心とし、かなり採用に注力されていたということですね。それだけ採用されるには、かなりの人数と接点を持たれていたのではないですか?
安立さん:いえ、そんなことありません。もちろん職種や地域によっても異なりますが、「だいたい2〜3名一次面接をおこなえば、1名の内定承諾に至る」という採用プロセスです。
-一次面接に来た人の半分近くは内定承諾をしているということですか?
安立さん:そうなりますね。ただし、決して選考が緩いというわけではありません。弊社では、一次面接までに必ず面談や書類選考をおこなっています。
面談を希望いただく数も合わせると、だいたい15名くらいの面談希望者から一次面接に至るのが2名程度、というような状況です。ありがたいことに2017年度の内定承諾率は94%と高い水準なので、内定に至れば、基本的にはご入社いただけています。
また、応募経路としても6割ほどが自主応募で、いわゆるスカウトは週に10通ほどしか打ちません。
徹底的な情報開示でミスマッチを無くす
-通常は、なるべく多くの候補者と接点を持とうとされる人事の方も多いように思いますが、御社はそうではないのですね。
安立さん:はい、応募数や一次面接実施数は全く重視していません。究極なことを言うと、「1名の応募から1名の採用」が最も良いと考えています。
お互いの時間や労力を無駄にしないために、なるべく応募いただく段階から、こちら側の文化や採用ポジションのオーダーと応募者の認識がずれないようにしたいと思っています。
そのために、できる限り会社内部の情報を公開するようにしています。通常なら「入社してみないと分からないこと」を、ウェブで検索しただけで分かるような状態が理想です。
特に、ただ「こんな制度がある」というだけでなく、なぜその制度をおこなっているかなどを開示することで「ヌーラボの考え方」や「大事にしていること」が伝わるよう意識し、入社後のギャップをなるべく無くしたいと考えています。
-先ほどから安立さんが、採用プロセスの歩留まりや内定承諾率を惜しみなく公開してくれている理由が分かりました。
安立さん:はい。こういったRJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)のスタンスを大事にしていることもあり、かなりハイスピードで人が増えたにもかかわらず、2017年の1年間だけで見れば、退職者はゼロでした。
自社ブログやWantedlyブログなどで、良い面も悪い面も発信
安立さん:先ほど一次面接をおこなう人数は多くないと言いましたが、そのぶん一人の人と向き合う時間が長いのも特徴です。
弊社の文化や現状を知ってもらうのと同様に、私たちも候補者の方をきちんと理解できればと思っています。
なるべくバラバラなタイプの集まりで、強いチームを作るという考え方
-そうは言っても、エンジニア採用がただでさえ難しいとされる中途採用市場で、良い人材に出会うのはなかなか難しいのではないですか?
安立さん:他社さんの人事の方からもそういったご質問をいただくこともありますが、実は、そんなに難しいとは思っていないんです。
あえて言うと、ヌーラボは「良い人材」という定義を持っていません。他社様では、活躍している方の人物要件などを分析して、なるべく似たタイプの方の採用を図ることが標準的だと聞きますが、ヌーラボの場合はそうではなく、「なるべくいろんなタイプの人に入社してもらう」というスタンスです。
言うまでもなく、最も大事にしている「ヌーラボの文化や考え方に共感していること」は必須ですが、年齢や性格、歩んできたキャリアなどはなるべくバラバラなチームにしたいと思っています。
-「なるべく違うタイプの方を採用する」というのはあまり聞いたことがありません。なぜそれを重視されているのですか?
安立さん:弊社はソフトウェアの開発をおこなっている会社ですので、視点やバックグラウンドが多様なチームの方が、多くのユーザーの気持ちを理解することができるからです。
また、長い目で見たときには、違うタイプ同士の方が予想もできなかった化学反応を起こすと思っています。
似たタイプが集まると、瞬間風速的にパフォーマンスを上げることができても、問題に直面した際の対応が一様に苦手になってしまうなどの側面もありますね。
そういった意味でも、弊社はさまざまなタイプの方をチームに迎え入れています。大学を卒業したばかりの方もいれば、代表の橋本より年上の方もいる。自身で会社を経営していた方もいる。そんな多様なメンバーが、相互の違いを許容し合いながら働いています。
「自由をとことん許容し合う文化」への共感を重視
-採用において、「文化や考え方への共感」を最も大事にしているとのことですが、その辺りについても聞かせてください。
安立さん:弊社は、「Fun、Creative、Collaboration」を合言葉に、「 NUice Ways (ヌイス・ウェイズ)」としてまとめた6つの考え方を持っています。
これは、「今のヌーラボのこういうところを残したいよね」という視点で、経営層(会社役員)が参加せずにつくられた行動規範です。
ヌーラボの行動規範「NUice Ways」
安立さん:フレックスタイム制(コアタイム11:00~15:00)の運用は当然ですし、有給休暇は入社初日から10日間(2年目以降は毎年20日間)付与されます。
それとは別で、子育て休暇なども取得しやすい状況です。「なるべく残業はしないでね」という意思を込めた「残業代全額支給」も、IT業界では珍しいと思います。
それぞれの事情に合わせた働き方の選択肢を増やすことで、相互に「本人がパフォーマンスを発揮できるなら許容しよう」という考え方を保っています。逆に言うと、「こうじゃないとダメだろう!」という方からすると、ヌーラボの自由度の高さは理解できないかもしれませんね。(笑)
-確かに、自由度が高く型にはまっていない印象がありますね。「楽しむ」「あそぶ」といった言葉も印象的です。
内発的な動機付けを重視した「モチベーション3.0」の状態の組織を作る
-行動規範「NUice Ways」は、組織としてはどんな狙いでつくられたのでしょうか。
安立さん: ヌーラボが大事にしているのは、「モチベーション3.0」の状態をつくることです。
ダニエル・ピンクという方が提唱した考え方で、金銭的インセンティブなど外発的な動機付けではなく、興味・関心を引き出した結果生じる内発的な動機付けを重視するというものです。
この考え方を起点として、ヌーラボは「自律性」「熟達」「目的」の3つが揃った組織でありたい、と考えています。
まず「自律性」とは、言われたことをやるのではなく、「これをやったらユーザーにとって良いのでは?」「これをやりたい!」といった調子で、自らの業務をつくることができるような状態です。
「熟達」とは、自身のなりたい像を描き、レベルアップしていく状態です。弊社は、個人の成長のための支援は惜しみません。例えば、カンファレンス登壇やイベント運営のサポートは、書籍購入や言語学習の補助もおこなっています。
最後に「目的」。組織としての目的が共有され、そこに納得感があると、その目的をものさしに個人が判断をおこなえるようになります。
これは単純に売上目標などを指しているのではなく、弊社が提供するプロダクトを通し何を叶えたいかなどを指しています。目的があることで、いわゆる「やる気」も担保されます。
そういった狙いがあり、ガチガチに縛るためではなく、より自由を許容するための制度設計を心がけているのです。まだまだ走り始めたばかりの制度が多く、今述べたことには実現できていないこともあります。
-よくわかりました。安立さんも中途採用で入社されたと聞きましたが、以前から採用や制度設計などをおこなっていたんですか?
安立さん:いえ、人事業務をおこなうのは弊社が初めてです。「人事未経験」で入社しました。
その割に、自分がやりたいことをどんどん勝手にやらせてもらっていて、まさに弊社らしい採用と文化だなぁと感謝しています。(笑)
今後も、既存の中途採用の常識や制度設計のセオリーやあるべき論を鵜呑みにせず、理にかなっているところはしっかり学びつつ 弊社流にアレンジもどんどん加えながら、いい会社をつくっていきたいと思います!