売り手市場であることが影響して、「求人募集をしても応募数が集まらない」「求めている人材が応募してこない」といった人材に関する課題意識を持っている人事担当者も多いのではないでしょうか。
しかし、それらの課題は、求人募集の書き方を変えることで解決できるかもしれません。
求人の記載方法ひとつで、求職者からの応募数が増加したり、双方のミスマッチが減ったりするかもしれません。
そこで本記事では、改善が必要な求人募集の共通点を整理し、効率的に人材を獲得するための求人募集の書き方についてご紹介します。
目次
【1】改善が必要な求人募集の特徴
本章では、「応募数が増えない」「希望する人材が獲得できない」といった求人募集の共通点をご紹介します。
さらに、改善が必要な求人募集は企業と求職者にどのような影響があるのかついてもご紹介します。
1-1 法的に明記しなければならない必須項目
求人募集をする企業は、求人票や求人広告において、求職者に知りたい情報を詳しく、誤解のないように明確に記載することが重要です。
そのため、法律で求人票・求人広告に明記しなければならない労働条件が定められています。
求人の申し込みや労働者の募集をおこなう際の労働条件については、職業安定法5条の3において、次のように定められています。
ハローワークや人材紹介会社などでは、上記の明示がなければ求人申込は受理されないので、注意が必要です。
1-2 曖昧な表現をしている
求人応募に記載されている情報が不足していれば、求職者は働くイメージが想像できないため、応募を見送るでしょう。
下記の図はマンパワーグループ株式会社が、過去5年以内に転職経験を持つ正社員に、「求人情報(広告)の情報不足により応募をためらった経験があるか」という質問をした回答結果です。
このように、求職者の半分以上は「ある」と回答しています。
たとえ企業側が詳細な情報を記載しているとしても、求職者に伝わっていない可能性があるということがあげられます。
特に、幅広く応募者を募るために曖昧な表現を用いた場合、求職者は働くイメージが想像できず、応募を見送るかもしれません。
具体的に、曖昧な表現を用いた求人募集の記載をまとめましたので、以下のような表現をしていないか確認してみてください。
例えば、求人広告に「若手営業社員」と書かれていても、「若手」とは何歳までか、「営業」とは誰に何を売るのかと、求職者は多くの疑問を抱きます。
単に営業職と書くのではなく、営業形態・営業手法・対象顧客など詳細に記載することで他社の求人募集と差別化を図ることができるでしょう。
1-3 改善が必要な求人募集がもたらす影響
企業側と求職者のミスマッチ
企業側が曖昧な表現を用いて求人募集をおこなった場合、企業側と求職者の間でミスマッチが発生する可能性があります。
応募時や面接時に、企業側か求職者がミスマッチに気づくことができれば、時間的にも金銭的にも少ないコストで済みます。
しかし、入社時に気づいた場合には、人件費や教育する時間など多くのコストがかかります。
そのため、求人募集をする企業は、求人票や求人広告に、より詳細に「希望のする人材」や「社内の様子」を明記する必要があります。
費用対効果
『2019年卒マイナビ企業新卒採用内定状況調査』によると、新卒採用時にかかった広告費は平均で221.2万円になります。
また、マイナビ転職中途採用状況調査(2017)によると、中途採用時にかかった広告費は平均で151.5万円です。
このように、求人広告を出して1人の人材を獲得する場合、多くのコストをかけなければなりません。
そのため、費用に見合った人材を獲得できるように、求人広告や求人票が十分な効果を発揮する必要があります。
【2】求人票・求人広告を魅力的にするには?
1章で示したように、求職者は求人広告の記載されている情報に満足していない可能性があります。
では、どのようにすれば求職者にとって魅力的な、わかりやすい求人募集になるのでしょうか?
本章では、求職者が応募したいと思う魅力的な求人募集の書き方をご紹介します。
2-1 希望する人材の明確化
募集背景の把握
求人票や求人広告の作成に取り組む前にまず確認すべきことは、欠員募集や増員募集などの募集背景を把握することです。
そのポジションを採用する理由や背景を把握しなければ、どのような人材を獲得すべきかが曖昧になります。
たとえば、欠員募集の場合、前任者に代わる人を採用しなければなりません。
そのため、前任者の人の保有していたスキル、性格、業務内容を把握することで、希望する人材が明確化されます。
ペルソナの設定
募集背景の把握をした後は、希望する人材のペルソナを設定することをおすすめします。
ペルソナとは本来、商品・サービスの対象となるユーザーを実在する人物のように詳細に設定するマーケティング手法で、これを採用に応用します。
希望する人材を詳細に設定することで、求人票・求人広告の記載において曖昧な表現を避けることができます。
また、自社内でも希望する人材が明確化し、面接時の評価もスムーズに判断することができます。
希望する人材の明確化やペルソナ設定の具体的な方法は下記の記事を参考にしてみてください。
2-2 条件・待遇面の整理
希望する人材が明確化された後は、条件・待遇面を整理する必要があります。
待遇面は求職者が重視するポイントなので、できるだけ詳細に書きましょう。
また、条件・待遇の内容については、法律で書くことが禁止されている表現がありますので、注意が必要です。
求人募集に関連する法律は、雇用対策法、男女雇用機会均等法、職業安定法の大きく分けて3つです。
男女雇用機会均等法は「事業主は、労働者の募集および採用について、その性別にかかわり均等な機会を与えなければならない(第5条)」と定めています。
具体的には「セールスマン募集」は「営業社員募集」に、「ガードマン募集」は「警備員募集」に変更しなければなりません。
下記に法的に求人票・求人広告に書いてはいない表現をまとめておきましたので、ご参考ください。
<募集要件> | <該当する限定表現> |
明るい、ハキハキした方歓迎 | 外見や性格を限定する表現 |
25歳以下までの方 | 年齢を限定する表現 |
体力のある男性歓迎 | 性別を限定する表現 |
日本人のみ | 国籍を限定する表現 |
徒歩で通勤できる方のみ | 地域を限定する表現 |
簿記2級をお持ちの方 | 必須ではない資格を限定する表現 |
上記の図のように、求職者を限定するような求人募集は、法律違反と認識される場合があるので注意が必要です。
2-3 求職者が働くイメージができるような表現
求人募集を見て、求職者が働くイメージを持てなければ応募することはできないでしょう。
「中小企業白書2015年版」によると、仕事辞めた理由の1位として「人間関係(上司・経営者)への不満」となっています。
また、2位は「業務内容への不満」、3位は「給与への不満」、4位は「労働時間の不満」となっています。
この結果から、「人間関係」、「業務内容」、「給与など待遇面・労働条件」の記載は特に求職者にわかりやすい表現をしていなければなりません。
①人間関係の記載方法
人間関係や社風についての記載は特に曖昧な表現をすると、求職者に伝わりにくくなります。
例えば、「社員の仲が良く、アットホームな会社です」と記載するのではなく、「ランチタイムの話題」や「社員の休日の過ごし方」など具体的に記載する方が求職者は働くイメージが想像できます。
また社風を説明する際は、その根拠が重要になります。
たとえば、「風通しの良い職場」と記載されていても、求職者はなぜそう言えるのか疑問に思います。
そのため、「役員とメンバーのシャッフルランチを定期的に開催している」など根拠となる制度や仕組みを記載することが重要です。
②業務内容の記載方法
業務内容はできるだけ詳細に記載する必要があります。
求職者がその会社に入社し、次の日から何をするのか具体的にイメージできるような文章が良いでしょう。
具体的には以下のような文章になります。
上記のように、誰が見てもわかりやすく、働くイメージがわく文章を記載することによって、応募段階でのミスマッチを防ぐことができます。
③給与などの待遇面・労働条件の記載方法
給与や労働条件は定量情報なので、数字を活用し、詳細に記載する必要があります。
例えば、「年収400~600万円」と記載するのではなく、月給、残業代、その他の手当、インセンティブなど、年収の内訳を詳細に書きましょう。
また、労働条件も「休日の多い会社」と記載するのではなく、「年間休日は130日です」と記載するといいでしょう。
その他にも「ノー残業デー」や「育児休暇」など自社独自の福利厚生制度は、多くの求職者が関心を持ちます。
本章で記載したように、求職者が離職する理由から考えることによって、より求職者のニーズに沿った求人募集を書くことができます。
2-4 掲載方法・掲載サイトの比較
求人票・求人広告の中でも、Web広告や紙媒体広告、ハローワーク広告などその種類は多岐にわたります。
それぞれの媒体で特徴が異なるため、比較検討する必要があります。
下記の記事で求人広告の種類と特徴についてまとめたので、ご参考ください。
数多くある転職サイトの中から掲載するサイトを選ぶ工程は、求人募集をする上で重要な工程です。
転職サイトに掲載するメリットとして、スカウト機能による欲しい人材にアプローチが可能な点、潜在転職層へのアプローチができる点などがあげられます。
しかし、応募者対応に手間がかかることや費用を払っても集まるとは限らないというデメリットもあげられます。
サイトによって、費用や特徴が異なるので比較検討することおすすめします。
下記の記事で24の転職サイトを比較できるので、ご参考ください。
2-5 求人募集の効果検証
求人募集は、ただ求人票・求人広告を出せば良いというわけではありません。
求人募集から応募した人は「希望する人材」と合致しているのか効果検証する必要があります。
下記の図のように、選考プロセスごとの通過率を把握することで、効果的な募集ができていたかが確認できます。
上記の図のようなケースでは応募総数は多いですが、面接での通過率が10%と、自社が求めている人材と応募者が多かったことがわかります。
応募総数が多いにもかかわらず、希望する人材が少ないことは、人事担当者にとっては何度も面接をするため時間的コストが多くなります。
求人募集に希望する人材をより詳細に記載することによって、希望通りの人材からの応募が増えるため、人事担当者の負担も減ることでしょう。
次に、掲載方法・掲載広告での効果検証も必要です。
求人広告に掲載した後は「どの媒体やサービスから何人応募しているのか」「希望する人材は何を見て応募したのか」といった数値を確認する必要があります。
この確認作業をおこなうことにより、どの媒体やサービスが採用に効果的だったのかを知ることができ、翌年の採用活動に活かすことができるでしょう。
また、求人広告の効果検証の際に見るべきポイントは以下の通りです。
- 自社の求人広告はどの業種、職種、年代、エリアの人に見られているか
- 求人広告を見た人は何人エントリーしているか
- 求人広告を見てエントリーした人は希望する人材であったか
上記の3点を確認することにより、求人広告が採用活動において効果を発揮していたのかどうかがわかります。
【3】求人票・求人広告チェックシート
ここまで、求人募集を書く際に書かなればならない必須項目や求人募集を魅力的にする方法についてご紹介してきました。
本章ではまとめとして、求人募集を書く際のチェックシート(※)をご紹介します。
このチェックシートを参考に必須項目は抜けていないか、求職者に伝わりやすい表現になっているかを確認してみて下さい。
※チェックシートはHR編集部が独自に作成したものです。
【4】まとめ
現在の求職者の半数は、公開されている求人募集を検討材料として足りないと判断しています。
求人募集をする企業側は、詳細に求人募集を書くと応募数が減るのではないかと懸念するかもしれません。
しかし、曖昧な表現を使って求人募集を記載することで、希望の人材を獲得することは難しいでしょう。
そこで本記事で紹介したように、求人募集の背景や求職者が知りたい情報、希望の人材のペルソナ設計などを確認し、求人募集を書いてみてはいかがでしょうか。
求人募集を見た求職者は、働くイメージが想像でき、希望の人材を獲得することができるかもしれません。