裁量労働制とは、従業員に一定の裁量を与え、働き方や労働時間を自由に決めさせる制度です。裁量労働制をうまく運用すれば、仕事の効率や生産性の向上を期待できます。ただし、勤怠管理が複雑になるため、人事担当者の負担が増える可能性もあるでしょう。
今回は、裁量労働制のメリット・デメリットや勤怠管理のポイントなどを紹介します。裁量労働制に適した勤怠管理システムも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
労働基準法の改正によって、フレックスタイム制の清算期間が延長されるなど、近年柔軟な働き方を導入しやすい体制が確立されてきました。
実際にフレックスタイム制や裁量労働制など、柔軟な働き方を導入した企業も増えているのではないでしょうか? しかし、出勤・退勤時間が従業員によって異なるため、今までよりも勤怠管理が複雑になってしまう傾向が見られます。
そこで今回は「働き方改革に対応した勤怠管理対策BOOK」をご用意しました。 柔軟な働き方を導入しつつ、勤怠管理を効率的おこなうためにもぜひご覧ください!
目次
1. 裁量労働制とは?
まずは、裁量労働制の仕組みやフレックスタイム制との違いについて再確認しておきましょう。
1-1. 裁量労働制とはみなし労働時間分の賃金を支払う仕組み
裁量労働制の大きな特徴は、実際に働いた時間ではなく、事前に設定したみなし労働時間分の賃金を支給することです。たとえば、みなし労働時間を8時間と設定した場合、実際の労働時間が7時間であっても9時間であっても、8時間分の給与を支給することになります。
裁量労働制においては、働く時間を個人の裁量で決められるので、自身が仕事に集中しやすい時間帯に勤務することが可能です。
ただし、裁量労働制は全ての職種において導入できるわけではありません。裁量労働制は、「専門業務型」と「企画業務型」の2つに分けられ、それぞれ適用できる職種が限られています。
1-1-1. 専門業務型裁量労働制
コピーライターやシステムエンジニア、ゲーム用ソフトウェアの開発者など、個人の仕事の成果を把握しやすかったり、創造的な仕事が問われたりする職種に適用できます。
厚生労働省が適用できる職種を限定しているため、導入前に確認しておきましょう。
1-1-2. 企画業務型裁量労働制
企画業務型は、事業の中核を担う人たちが主な対象となります。会社の売り上げ目標の設定や、各事業の企画を練る仕事などが該当します。
1-2. 裁量労働制とフレックスタイム制の違い
裁量労働制とフレックスタイム制は、仕事を始める時間と終える時間を従業員が自由に決められるという点で似ています。
2つの制度の大きな違いは、給料の支払い方法です。フレックスタイム制の場合には、実際に働いた時間をもとに給料を計算します。
一方、裁量労働制の場合は労働時間をみなしでカウントするため、実際に働いた時間がみなし労働時間よりも長かったとしても、一部の例外を除き、割増賃金が発生することはありません。
1-3. 裁量労働制を導入するための条件
経営者の判断のみで、一方的に裁量労働制を導入することはできません。裁量労働制を導入するためには従業員側と相談しなければならず、労働組合が存在する場合は、労働組合の代表者へ持ち掛ける必要があります。
仮に労働組合がない事業所では、そこに在籍する全従業員の半数以上を束ねている立場の人物に相談しなければなりません。
協定を結ぶにあたり、長時間労働によって従業員が体調を崩した際の健康処置が確保されていることも必要です。また、企画業務型裁量労働制の場合には、労使委員会において委員の8割から同意を得ることも条件となります。
また、導入にあたり、労働基準監督署へ届け出ないと労働基準法に違反することになるので注意をしましょう。
1-4. 裁量労働制のメリット・デメリット
裁量労働制の最大のメリットは、従業員が自身の働き方を柔軟に調整できることです。プログラマーやエンジニアなどは、仕事の進め方を自分で管理したほうが効率よく作業できるでしょう。その結果、業務効率化や残業代の削減も期待できます。
一方で、一般的な勤務形態と比較して残業代が発生しにくいことは、従業員にとってのデメリットです。従業員の不満が発生しないよう、裁量労働制の仕組みや目的をしっかりと説明しておきましょう。
2. 裁量労働制における勤怠管理の注意点
裁量労働制は、勤務開始時刻や終了時間を各自で決めることができるなど、従業員に裁量が与えられています。しかし、裁量労働制に勤怠管理がまったく必要ないというわけではありません。以下のような点に注意して、勤怠管理をおこないましょう。
2-1. 割増賃金の計算が必要
裁量労働制においては、実際に働いた時間にかかわらず、事前に設定したみなし労働時間分の賃金を支給します。そのため、割増賃金がまったく発生しないと思われがちですが、一定の条件を満たす場合は、割増賃金を支給しなければなりません。
具体的には、深夜労働や休日労働が発生した場合は、労働基準法に従って割増賃金を支給することが必要です。一般的な勤務形態と同様、深夜労働に対しては25%以上、休日労働に対しては35%以上の割増率が適用されます。
2-2. 健康福祉確保措置が必要
裁量労働制を採用した場合でも、一般的な勤務形態と同様、健康福祉確保措置が必要です。健康福祉確保措置とは、法定労働時間を超えて働く従業員の健康や福祉を確保するための対策を意味します。具体的には、医師による⾯接指導の実施、深夜労働の回数制限、身体に関する相談窓口の設置などが挙げられます。
裁量労働制を採用したからといって、勤怠管理や従業員の健康維持が不要になるわけではありません。従業員ごとの労働時間をしっかりと把握し、健康を維持できるよう適切な対策を講じましょう。
3. 裁量労働制の勤怠管理をうまく進めるポイント
裁量労働制の勤怠管理をうまく進めるため、以下のポイントを検討しましょう。
3-1. 評価制度を見直す
裁量労働制を導入する際は、評価制度の見直しが必要となるケースが多いでしょう。裁量労働制においては、基本的に仕事の成果に注目して従業員を評価する必要があります。既存の評価制度のなかに、成果を重視するような評価項目がない場合は、裁量労働制に合わせて制度の再構築が必要です。
ただし、急に成果主義的な評価制度を導入しても、従業員の理解が得られない可能性もあります。その場合は、業務プロセスや勤務態度も一緒に評価するような仕組みにするとよいでしょう。
3-2. 残業の事前申請制を導入する
裁量労働制を導入するなら、残業の事前申請制を導入するとよいでしょう。裁量労働制では働き方を従業員に任せるのが基本ですが、どの程度の残業が発生しているのか、把握しておくことは重要です。
とくに深夜労働や休日労働が発生した場合は割増賃金を支給する必要があるため、事前申請制を導入して無駄な残業を抑制しましょう。
3-3. 勤怠管理システムを活用する
裁量労働制を導入すると、従業員ごとの労働時間がバラバラになるため、勤怠管理が複雑化します。タイムカードや出勤簿などを活用した勤怠管理では、管理や集計の手間がかかり、担当者の負担が大きくなってしまうでしょう。
裁量労働制を採用するなら、勤怠管理システムの活用がおすすめです。勤怠管理システムを活用すれば、従業員ごとの労働時間や残業時間を自動で集計できます。休日労働や深夜労働なども自動的に集計してくれるため、勤怠管理や給与計算にかかる手間を大幅に削減できるでしょう。
ここまで裁量労働制の概要や勤怠管理のポイントについて解説してきましたが、当サイトでは、本記事で解説した裁量労働制の制度や導入方法について、図を用いてわかりやすく解説した資料を無料で配布しております。
残業が発生しても割増賃金がかからないからといって勤怠管理を行わないのは違法になってしまいますので、裁量労働制の導入や運用に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「裁量労働制を実現するための制度解説BOOK」をダウンロードしてご確認ください。
4. 裁量労働制の導入時に役立つ勤怠管理システム
ここでは、裁量労働制を導入するときに役立つ勤怠管理システムをピックアップして紹介します。労働時間や残業時間の管理を効率化できるため、複数のシステムを比較したうえで導入を検討しましょう。
4-1. ジンジャー 勤怠
「ジンジャー」は、採用・勤怠・人材管理など、人事領域に関する業務を一貫して管理できる、プラットフォームサービスです。
特徴の一つとして、タブレットなど複数の打刻方法が可能で、スマートフォンがあれば手続きができることがあります。スマートフォンで報告できるので場所などの制約はなく、どのタイミングでも自由に勤怠状況を報告することができます。
また、一社の中でビジネス職の社員には定型時間勤務、技術職にはみなし労働など、複雑な勤務体系になっている会社にも対応することが可能です。
使用料金は1ユーザー400円からとなっています。
4-2. Money Forward クラウド勤怠
Money Forward クラウド勤怠は、株式会社マネーフォワードが提供する多数の機能を搭載した働き方改革を推進する勤怠管理システムです。
従業員の勤怠管理データを元に残業や休暇の取得状況をリアルタイムで把握することで、より強固な労務管理体制を構築することができます。また、基本勤務制・シフト制・裁量労働制・フレックスタイム制など、様々な就業ルールでも対応が可能です。
その他、人事管理や給与システムなどのマネーフォワードクラウドHRソリューションと組み合わせて使用することも可能です。
使用料金は1ユーザー300円となっています。※別途、基本料金や各種オプション料金あり
5. 裁量労働制の勤怠管理はシステムを活用して効率化しよう!
今回は、裁量労働制における勤怠管理のポイントや注意点などを紹介しました。コピーライターやデザイナーなど、創造性が求められている職業では、労働時間によって賃金を割り出すよりも、生産性や成果に基づく方が合理的でしょう。
そのような従業員に対して裁量労働制を導入した場合でも、割増賃金が発生するケースはあります。深夜労働や休日出勤に対しては割増賃金を支給する必要があるため、忘れないようにしましょう。
法律違反のリスクを回避すると同時に、従業員ごとの労働時間管理を効率化するために、ぜひ勤怠管理システムの導入を検討してみてください。
【関連記事】勤怠管理システム53製品を比較|特徴・機能比較表・料金|最もおすすめできるのは?