近年では技術職など、コアタイムで労働時間を規定する必要性が低く、また勤務時間に裁量を持たせた方が仕事に成果があがりやすい業種に対して、適用される事例が増えてきています。
今回は、裁量労働制におけるメリットやデメリット、またそこで課題となる勤怠管理のあり方についてご紹介します。
労働基準法の改正によって、フレックスタイム制の清算期間が延長されるなど、近年柔軟な働き方を導入しやすい体制が確立されてきました。
実際にフレックスタイム制や裁量労働制など、柔軟な働き方を導入した企業も増えているのではないでしょうか? しかし、出勤・退勤時間が従業員によって異なるため、今までよりも勤怠管理が複雑になってしまう傾向が見られます。
そこで今回は「働き方改革に対応した勤怠管理対策BOOK」をご用意しました。 柔軟な働き方を導入しつつ、勤怠管理を効率的おこなうためにもぜひご覧ください!
1. 裁量労働制とはどのようなものか
1-1. 裁量労働制について
労働時間は実際に働いた時間ではなく、みなしの時間でカウントされるのが裁量労働制の大きな特徴です。
働く時間は会社が規定するものではなく、個人の裁量で決められるので、自身が仕事に集中しやすい時間帯に勤務することができます。
ただし、裁量労働制は全ての職種において導入できるわけでなく、適用できる仕事の例としては、「専門業務型」と「企画業務型」などがあります。
1-1-1. 専門業務型裁量労働制
コピーライターやシステムエンジニア、そしてゲーム用ソフトウェアの開発といった、1人当たりでの仕事の成果を把握しやすかったり、あるいは創造的な仕事が問われたりする分野が該当します。
厚生労働省が管轄の中央労働委員会によって認められた、19の業務に限られています。
1-1-2. 企画業務型裁量労働制
企画業務型は、事業の中核を担う人たちが主な対象となります。会社の売り上げ目標の設定や、各事業の企画を練る仕事などが該当します。
1-2. 裁量労働制とフレックスタイム制の違い
どちらも仕事を始める時間と終える時間に、自分の裁量が与えられていることが共通しています。
違いは、給料の支払い方法が異なることに関係してきます。
フレックスタイム制の場合には、実際に働いた時間で給料を計算します。
一方、裁量労働制の場合では、労働時間はみなしでカウントされるので、実際に働いた時間がみなしの労働時間よりも長かったとしても、残業代が発生することはありません。
1-3. 裁量労働制を導入するための条件
経営者などが、社員に対して一方的に裁量労働制を導入することはできません。従業員側と相談しなければならず、労働組合が存在する時には労働組合の代表者へ持ち掛ける必要があります。
仮に労働組合がない事業所では、そこに在籍する全従業員の半数以上を束ねている立場の人物に相談しなければなりません。
この協定を結ぶにあたり、みなし労働時間の規定や長時間労働によって、従業員が体調を崩した際の健康処置が確保されていることが必要となります。
また企画業務型裁量労働制の場合には、労使委員会において委員の8割から同意を得ることも条件となります。
導入にあたり、労働基準監督署へ届け出ないと、労働基準法に違反することになるので注意をしましょう。
2. 裁量労働制における勤怠管理のあり方
裁量労働制は、勤務開始時刻・終了時間を各自で決めることができるなど、労働時間に裁量が与えられています。
しかし、裁量労働制に勤怠管理が全く必要ないというわけではありません。
なぜなら、たとえば労働基準法において、「22時以降または休日においての勤務には特別手当を加算しなければならない」と定められているからです。
22時を過ぎて働いていても、裁量労働制のもとではみなし残業として処理され、本来受け取れるはずの割増賃金がもらえなくなる可能性があります。
従業員に適切な給料を支払うためにも、勤怠管理が重要となるのです。
勤怠管理のあり方に関して、大学の研究職員を例に挙げると、一日の多くの時間を研究に費やすことになりますが、総計時間は自主目的と業務用に分ける必要がります。
自主目的の分まで勤務時間としてカウントしてしまうと、受け取る賃金に労働力として提供していない分まで含まれ、不当利得となる可能性があります。
そのため研究職員のケースでは、業務用の研究時間を正確に管理することが重要となります。
3. 裁量労働制における勤怠管理のポイント
裁量労働制の最大のメリットは、被雇用者側が自身の勤務に裁量や柔軟性を持てることです。
プログラマーなどは、仕事の管理を労働時間よりも生産量で把握する方が効率的でしょう。
しかし、時間だけで賃金を査定すれば、被雇用者にとって対価が不当なものになる可能性が高くなります。
つまり、裁量労働制の導入と、仕事の成果を適切に評価して賃金を決定する評価制度の導入を両立させることが重要になるといえるでしょう。
一方でデメリットは、残業が発生しても賃金につながらないことです。
ゆえに裁量労働制は、従業員のパフォーマンスやモチベーションを正確に把握した上で導入することが必要となり、それらを勤怠管理に結びつけておくことが必要となるでしょう。
これらのポイントを押さえるのに役立つ、裁量労働制における勤怠管理にも最適な勤怠管理システムを、いくつか紹介していきます。
ここまで裁量労働制の概要や勤怠管理のポイントについて解説してきましたが、当サイトでは、本記事で解説した裁量労働制の制度や導入方法について、図を用いてわかりやすく解説した資料を無料で配布しております。
残業が発生しても割増賃金がかからないからといって勤怠管理を行わないのは違法になってしまいますので、裁量労働制の導入や運用に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「裁量労働制を実現するための制度解説BOOK」をダウンロードしてご確認ください。
4. 裁量労働制に役立つ勤怠管理システム
4-1. ジンジャー 勤怠
「ジンジャー」は、採用・勤怠・人材管理など、人事領域に関する業務を一貫して管理できる、プラットフォームサービスです。
特徴の一つとして、タブレットなど複数の打刻方法が可能で、スマートフォンがあれば手続きができることがあります。スマートフォンで報告できるので場所などの制約はなく、どのタイミングでも自由に勤怠状況を報告することができます。
また、一社の中でビジネス職の社員には定型時間勤務、技術職にはみなし労働など、複雑な勤務体系になっている会社にも対応することが可能です。
使用料金は1ユーザー400円からとなっています。
4-2. Money Forward クラウド勤怠
Money Forward クラウド勤怠は、株式会社マネーフォワードが提供する多数の機能を搭載した働き方改革を推進する勤怠管理システムです。
従業員の勤怠管理データを元に残業や休暇の取得状況をリアルタイムで把握し、より強固な労務管理体制を構築することができます。また、基本勤務制・シフト制・裁量労働制・フレックスタイム制など、様々な就業ルールでも対応が可能です。
その他、人事管理や給与システムなどのマネーフォワードクラウドHRソリューションと組み合わせて使用することも可能です。
使用料金は1ユーザー300円となっています。※別途、基本料金や各種オプション料金あり
4-3. IEYASU 勤怠管理
IEYASU株式会社が提供する、ベンチャー企業向けのクラウド勤怠管理システムです。特徴として、みなし労働時間を管理できることがあげられます。
その他にも、会社の細かな就業規則や勤務体系に沿った設定が可能なため、多様な働き方に対応できるシステムとなっています。
また機能は制限されますが、初期費用や月額使用料金も含めて、試用期間中はすべて無料で使用することできます。
5. おわりに
コピーライターやデザイナーなど創造性が求められている職業では、時間給によって賃金を割り出すよりも、生産性や成果に基づく方が合理的でしょう。
そのような従業員に対して裁量労働制を導入した場合に、労働時間が深夜に及んだり、休日出勤の際、割増賃金が支給されずに違法にならないよう、注意することが必要です。
そのようなリスクを回避すると同時に、個人単位での働き方をサポートするために、勤怠管理システムの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
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