こんにちは!HRNOTE編集部の高木です。
世界最大級のHRテクノロジーのイベント「HRTechnology Conference&Expo 2018」がアメリカ・ラスベガスにて、2018年9月11日から14日にかけて開催されました。
今回は「HRTechnology Conference&Expo 2018」とはどのようなイベントなのか、またイベントのなかで注目されている企業は、どんなHRTechのサービスを提供しているのかをご紹介したいと思います。
▶HRTechConference2017の記事はこちら
目次
HRTechnology Conference&Expo 2018の概要
イベント内容
イベントの開催日程は4日間あり、各企業がブースを出展するだけではなく、ピッチコンテストや著名人によるセミナーなどを実施している、最大規模のHRTechのイベントです。
HRTechのシステム導入を検討する際の判断材料を効率よく収集し、最先端のHRTech領域のトレンドを察知することは、多くの企業にとって貴重な機会となるのではないでしょうか。
ConferenceとEXPOの違い
本イベントは、「Conference」と「EXPO」の大きく2つに分かれています。
「Conference」では、著名人による講演や、今ホットなテーマに沿ったセッションなどを聴くことができます。
一方で「EXPO」は多くの企業がブースを出展し、実際にサービスのデモ画面を公開したり、スタートアップ企業のピッチコンテストが開催されたりなど、見どころが多くあるイベントとなっております。
Conferenceのポイント
本イベントのConferenceでは、各テーマに沿った講演を聞くことができます。
職場の多様性について言及する「Women in HRTechnology」や、65ヶ国語・23のタイムゾーンで働く176万人の従業員を抱えるゼネラル・モータースが、いかにしてレコグニション制度(賞賛・承認といった非金銭報酬で従業員を報いる制度)を導入したのかについて講演する「Employee Recognition」など、今ホットな話題について各分野に特化した著名人が語りました。
EXPOのポイント
本イベントのEXPOでは、以下のような特別イベントが数多く開催されました。
- Pitchfest
最も注目されるスタートアップ30社による自社サービスのピッチコンテスト。 - HRTech Talks
最先端のアイディアに関するアツい議論を聴くことができる - Opening Night Pub Crawl
クラフトビール、ワイン、カクテルを飲みながら最新のサービスについて知ることができる - Private Product Demos
HRTech業界のトップ企業の「製品デモ」を経験することができる - Free Guided Tours
展示企業が提供するサービスの概要を紹介してもらえる無料ガイドツアー - HR Happy Hour
ビールやワインを楽しみながら情報交換をおこなうことができる - Startup Pavilion
スタートアップ企業が提供するデモを経験できる他、サービスを提供している起業家たちとも実際に会うことができる
これらのイベントのなかでも「ピッチコンテスト」では、30社が優勝を競い合う形で開催され、多くの注目を集めました。
優勝者には午後のセッション「The Next Great HRTech Company」というセッションに登壇し、自社の製品を大観衆の前でプレゼンすることができます。
出展企業の概要
毎年400社以上の企業が本イベントに出展しています。
上図にもあるように、2017年の出展企業数をカテゴリー別に見ると、1番に「タレントマネジメント」「採用」「エンゲージメント&レコグニション」「教育・研修」「人材配置・分析」となっています。
一方で、2018年のイベントでは1番に「採用」、続いて「タレントマネジメント」「エンゲージメント」「AI」「教育・研修」といった順番で出展企業数が多くなっています。
さらに今年からは、「AI」といったジャンルが新たに確立されています。こちらに関しては次章「イベントから読み取れるHRTechの新たなトレンド」について詳しく説明します。
一方で、エンゲージメント&レコグニションは去年と同様に多くの企業が出展していました。
レコグニションとは「認識・承認」という意味で、賃金や賞与などの金銭的報酬だけではなく、賞賛・承認といった非金銭報酬で従業員を報いる制度です。
昨年の本イベントの優勝企業のBlueboardも報酬プラットフォームを提供しており、アメリカでは従業員のエンゲージメントを向上させる取り組みが主流といえるのではないでしょうか。
以上を踏まえると、「採用」「従業員のエンゲージメント向上」「従業員の定着」という人事戦略のフローが重要視されているように思います。
HRTechの精度向上が、より個人にフォーカスした人事戦略を促進させていると考えられます。
Blueboardに関する記事はこちら
イベントから読み取れるHRTechの新たなトレンド
出展企業が提供するサービスに新たなジャンル
2018年のイベントにも、多種多様な企業が出展していましたが、今年は新たに「AI」「Application and Web development」「Machine Learning」というジャンルが新たに確立されていました。
昨年は、「タレントマネジメント」や「エンゲージメント」などがトレンドでしたが、今年は「AI・データアナリティクス」を活用した従業員のマネジメント、組織開発に関するサービスを提供する企業が多く見られました。
セッションで繰り広げられていたHRTechの話題とは
今年のイベントではどのような話をメインにセッションが繰り広げられていたのでしょうか。
昨年の2017年は主に「HR Transformation(=人事領域の新たな成功事例)」「Talent Acquisition(=コア人材獲得のための新たなトレンド)」「Talent management(=タレントマネジメント)」「Technical insight(=HRTechによる人事課題発見)」などのジャンルをメインにセッションが展開されていました。
しかし今年はさらに8つの新ジャンルが追加され、米国のHRTechトレンドがさらに多様化し、かつ進化し続けていることを示唆しています。
例えば、セッションでは「AI in HR」、サービスでも「AI」といったジャンルが新たに開設されました。
これまでは「AI」が人事領域に適用できるといった事実自体が目新しく、現在日本でもAI人事などが話題になっています。
一方で、アメリカでは「AI」という概念が当たり前になりつつあり、「AIをどう活用するのか」「AIを活用することでどのようなイノベーション・インパクトを呼ぶのか」といった具体的な議論にまで発展しています。
他にも2017年のイベントでは「Technical insight」のジャンルのセッションが開催されていましたが、2018年では、「Technical Success」というジャンルがセッションにて開催されていました。
昨年までの議論では、テクノロジーを活用して、いかに課題を発見するかという議論がメインでした。
一方で、2018年のイベントでは「テクノロジーによる課題発見」から「その課題に対するアプローチにより生まれた成果」といった、発見された課題に対するアプローチにより生まれた成功事例について議論のフォーカスが当たるようになりました。
本イベントの注目企業5つを紹介
今回はThe Next Great HRTech Companyのファイナリスト5社について紹介します。
The Next Great HRTech Companyは、ビジネスコンペティション形式となっており、イベント開催までに事前に4社が選出されます。選出された企業は自社商品についてプレゼンテーションをおこない、セッションに参加した参加者の投票によって優勝が決定されます。
また今年からはさらに1社をピッチコンテストにて選出し、The Next Great HRTech Companyにて登壇する権利が与えられました。
ピッチコンテストとは
ピッチコンテストでは3ラウンドあり、各ラウンドは10社で構成されています。
各企業にはプレゼンテーションに3分間、質疑応答に2分間の時間が与えられ、その計5分で決勝に進む6社が決まります。
また、決勝に進んだ6社の中から優勝企業を1社決定します。優勝企業は、先程にもあった午後のセッション「The Next Great HRTech Company」に登壇する権利を掴むことができます。
ちなみに、今回のピッチコンテストで優勝した企業は「Blendoor」という企業でした。
The Next Great HRTech Companyの優勝企業も「Blendoor」
もっとも注目が集まるメガセッション「The Next Great HRTech Company」で優勝した企業は「Blendoor」でした。
こちらの企業は先程説明したピッチコンテストで優勝し、見事The Next Great HRTech Companyで登壇する権利を勝ち取り、さらにそのセッションで優勝を果たすという結果を成し遂げました。
Blendoorが提供しているサービスとは
Blendoorは、採用側が求職者に対して無意識に持つ偏見を解消するために開発された、採用に特化したマッチングアプリを提供しています。
採用側が性別や人種によって無意識に偏見を持ってしまい、採用などにおいて適切な判断を怠ってしまうことは少なくありません。
そうした現状を解決するために、Blendoorは求職者の社会経験やスキルのみにフォーカスし、個人の名前や写真をあえて隠すことで、採用側が偏見を持たずに求職者を見極めることを可能にしました。
その他ファイナリスト企業を紹介
Butterfly.AI
Butterfly.AIは「偉大なマネージャーが偉大なチームを作る」という前提をもとに設計された「AIマネジメントシステム」です。
従業員から得られるリアルタイムのデータをもとに、様々な指標からの従業員の満足度を図り、適切なマネジメントを示唆してくれます。Butterfly.AIに搭載された学習システムがリーダーにマネジメントのコーチングをおこなってくれます。
CompensationCloud
CompensationCloudは複雑な給与管理を簡単に処理できる「報酬管理ツール」です。
あらゆるガイドラインに基づき、各従業員の成果に合わせて報酬が自動で計算されるため、性別や年齢に対する偏見によって、賃金が変化することを防止することができます。
社会や企業、従業員にとってセンシティブな問題だからこそ、システムを導入することで、より公平性のある報酬制度を実現することができます。
DailyPay
DailyPayは、その日働いた分の給料の当日受け取りを可能にする「自動給与計算ツール」です。
引っ越し直後、冠婚葬祭、旅行など、想定外の出費が続いたときや、すぐにお金が必要な緊急の場合は多々あります。
働いた分だけの給与をいつでも受け取り可能にすることで、従業員の仕事への満足度が向上し、離職率の低下につながります。さらには従業員勤続年数が上がることにより、生産性向上も実現できます。
Zeal
Zealは従業員のエンゲージメント向上のために開発された「チャットボットツール」です。
マネジメントにおいて、従業員が「何に幸福を感じ、何に対して夢中になるのか」といったことを把握する必要がありますが、なかなかマネージャーにとっても難しいというのが現状です。
Zealは「従業員のモチベーション」と「組織文化」の相関性を分析し、従業員の幸福度あげるための具体的な施策を提案してくれます。
Zealを活用することで、従業員のエンゲージメント向上を図ることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。優勝企業のblendoorのサービスは多種多様な人種が在住するアメリカだからこそ必要とされるサービスだといえます。
一方で、現在の日本では使用するイメージがつきにくいかもしれませんが、今後日本企業においても、人材のグローバル化が進むと、こうしたサービスを活用することが日本国内でも当たり前になるかもしれません。
今後、まだ日本には浸透していないHRTechサービスの導入を検討されている方は来年の本イベントに参加してみるのもいいかもしれません。