【創業者退任のその後】ママリを運営するコネヒト、社長交代の裏側を聞いてみた | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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【創業者退任のその後】ママリを運営するコネヒト、社長交代の裏側を聞いてみた

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

ママ向けQ&Aアプリ『ママリ』を運営するコネヒト株式会社が2019年6月7日に経営体制を一新。

創業者である代表取締役社長の大湯さんとCTOの島田さんが退任し顧問になり、新たに北吉さんが代表取締役社長に就任。

北吉さんはコネヒトのKDDIグループ入りを支え、その後もコネヒトの戦略策定をサポートしてきた人物です。

創業者退任という出来事は、どの会社にとっても大きなターニングポイントになりますが、コネヒトでは大きなハレーションが起きることもなくスムーズに体制移行ができたとのこと。

はたしてそこには、どのような社内コミュニケーションがあったのでしょうか。今回は社長交代の舞台裏や、北吉さんの新代表としての想いや考えについてご紹介します。

【人物紹介】北吉 竜也 | コネヒト株式会社 代表取締役社長

1983年生まれ、同志社大学卒。2006年、KDDIに新卒入社。サービス担当、事業立ち上げ、戦略策定を経験した後Supership株式会社の立ち上げ、複数社のM&Aを推進。2016年6月コネヒトのKDDIグループ入りを推進し、その後も戦略策定などのサポートを経て、2019年6月コネヒト代表取締役社長に就任。

なぜこのタイミングで社長交代なのか?なぜ北吉さんだったのか?

−まずは、コネヒトについて簡単にご紹介をお願いします。


北吉さん
コネヒトは「人の生活になくてはならないものをつくる」というミッションを掲げている会社でして、現在は「ママの一歩を支える」をブランドミッションとしたママ向けQ&Aアプリ、情報サイト『ママリ』を運営しています。

北吉さんママリのサービスローンチから5年が経ち、今では月間閲覧数は約1.5億回を突破、2018年に出産をしたママの3人に1人(※)が利用するという、多くのママたちが活用してくれるサービスになってきました。

※「ママリ」内の出産予定日を設定したユーザー数と、厚生労働省発表「人口動態統計」の出生数から算出。


−そういったときに社長交代の話がきたわけですよね。なぜそのタイミングだったのでしょうか?


北吉さん
そもそも、ママリがみなさんの生活に根付くインフラとなるためには、50年100年といった長期に渡ってサービスを続けていく必要があり、その中で当然、社長も変わっていくことになります。そうしないと、サービスが継続的に続いていくことは実現し得ません。

そして、創業社長から二代目社長という最初のバトンタッチがとても重要になると思うのですが、創業社長の大湯さんとしては今が最高のタイミングだったと。

会社のフェーズが変わること、社内に任せられるチームができたこと、そして会社の業績が伸び続けていること。大湯さんによれば、この3つがそろったことが決め手で、「5年に1回くるか、こないか」だと言っていました。


−大湯さんから北吉さんには、どのように打診がきたのですか?


北吉さん
当時、僕はコネヒトには経営支援の役割をもって参画していたのですが、事前に大湯さんが退任することは聞いていて、「じゃあ次の体制をどうしていこうか」と一部のメンバーで話し合いをはじめていたんです。

もちろんその時は、自分が社長をやるなんて全く思っていなかったので、わりと客観的な目線でさまざま議論をしていたのを覚えています。

それである日、たしか大湯さんから「北吉さんを社長に推したい」といきなり言われたんです。いやもう、かなりびっくりしましたね。

その打診から、一気に当事者目線になりました。びっくりしたあとに「これは大変そうだな」と感じたのが素直な気持ちですね。


−その会話の流れで「社長をやる」と意思決定されたのですか。


北吉さん
そうですね。打診を受けて「マジですか、押忍!」みたいな。

最終的には株主であるKDDIが意思決定をするので、この時点では推薦したいと言われた感じです。


−かなり大きな決断だと思うのですが、悩むことはなかったのですか?


北吉さん:
あまり悩まなかったですね。

大湯さんは今後のコネヒトの成長を考えた際に、よりKDDIと連携を強め、コネヒトのメリット・KDDIのメリット、双方の観点で物事を考えられる人を社長にしたいと考えていたみたいです。

それを実現するには「KDDIの人間を社長に据えたい」という決断をし、だからこそ僕に打診がありました。

コネヒトのプロパーの中から社長を選ぶとなったら当然僕は該当しませんが、大湯さんが「KDDIの人間が社長になるべきだ」と考えたのであれば、それはもう「僕しかいないかも」と。

僕はコネヒトをM&Aした3年前から見ているので、KDDIの中で一番コネヒトのことを知っているし、事業も一番深く関わってきています。

KDDIの中で誰が一番コネヒトの成長にコミットするとよいかを考えると、僕以外には思い浮かばなかったので、やると決めました。

社長交代をどのように伝えていったのか?

−そこから、社長交代を社内のメンバーに伝えていくことになるかと思うのですが、どのようなプロセスで実行していったのでしょうか。


北吉さん
新体制でのスタートは6月7日からでしたが、3月29日付けでコネヒトがKDDIの子会社化になるタイミングでもあったので、社長交代のアナウンスは子会社化とあわせて4月1日に全体に伝えるように動きました。

ただ、4月1日にいきなり伝えても、みんな受け止めきれないし、全員の前で発表してもその場で聞きたいことも聞けない状態なのですごく不安になりますよね。

なので事前に、大湯とCTOの島田がメンバーと個別に対話する機会を設けることにしました。

大湯と島田から、各メンバーに「こういう想いがあって退任を考えている、次の体制はこう考えている」といったことを話し、「何か聞きたいことある?」みたいな感じで、個別MTGを実施していきました。

メンバーが不安に感じていることや聞きたいこと言いたいことを、1ヶ月弱ぐらいかけて個別にやりとりをしていき、4月1日のタイミングでは全員が知ってる状態で、あらためて全体の場でアナウンスをしました。

そのときに、同時に新体制のメンバーも発表して、それぞれの想いを伝えていきました。


−4月1日のときは、北吉さんもその場にいらっしゃったのですね。


北吉さん
そうですね。大湯が「次の体制はこのように考えてます」と次の経営チームの紹介をして、そこから僕がマイクをもらって所信表明をしていく流れでしたね。

僕と田村というメンバーが取締役で、CTOとビジネスのトップとコーポレートのトップの3人が執行役員となり、この5人が新しい経営陣になります。


−全体にアナウンスをした後、実際に就任されたのは6月7日からですが、その間に実施したことはありますか?


北吉さん
僕からも全メンバーと1on1MTGを実施しました。

1on1をした理由としては、やはり会社の全メンバーをしっかり理解したいということが一つ。

一方でメンバーからしても、自分はまだ遠い存在で「誰?」みたいな感情があって、「会話をして雰囲気やひととなりを知りたい」というのもあるだろうし、新しい体制に向けての期待や不安もあると思うので、そこもしっかり聞きたかったので実施しました。

各メンバー1時間ずつ、68人と1on1をした感じですね。


−68時間を費やしたってことですね。


北吉さん
そうですね。全体アナウンスがあった4月1日から、正式に社長に就任する6月7日までに終わらせるスケジュールで動きました。

6月7日の新体制になるタイミングでは、僕とメンバーがある程度お互いのことを理解できている状態で迎えたかったので、結構スケジュール的には大変でしたね。

1on1で感じた、変わってほしくないものと変えていってほしいもの

−こういった大きな節目ではハレーションも起きそうですが、1on1で意識したことはありますか。


北吉さん
すごく意識したことは、僕の時間ではなくてメンバーの時間だということですね。なので、メンバーからの意見に耳を傾けることに集中しました。

感じていることを全部吐き出してもらいたかったので、僕が話す時間が1割・メンバーが話す時間が9割くらいにしたいと思って臨みました。


−メンバーからはどのような声がありましたか?


北吉さん
まず、「退任の話を聞いたとき、率直にどう思いましたか?」みたいなことを聞いていったのですが、「彼らの新しいチャレンジを応援したい」と思っているメンバーが多かったですね。

もちろん「みんな応援するって言ってるけど私はちょっと寂しいな」という声もありましたが、比較的みんなポジティブに捉えていましたね。


−新体制に期待することや不安に感じていることについてはいかがでしたか?


北吉さん
変わってほしくない部分と、変えていってほしい部分があるという声をもらいましたね。

変わってほしくないものでいくと、やはりコネヒトが今まで培ってきた文化ですね。

「人の生活になくてはならないものをつくる」「ママの一歩を支える」と、ミッションドリブンにサービスの運営をしてきて、ミッションにすごく共感してくれているメンバーが多くいます。

ですので、この部分は引き続き変えないでほしいという声はたくさんもらいました。

また、今回はCTOの島田も一緒のタイミングで退任となるため、「テクノロジーに対する投資は引き続きやっていってほしい」と、開発に対する意見がありました。

島田は創業メンバーとして開発に力を入れてきましたが、僕はエンジニアではないので、そのあたりが気になっていたのだと思います。

逆に変えていってほしい部分でいくと、会社の制度づくりに関する意見がありました。従業員数が70人を超え、サービスの規模も大きくなってきており、組織としてのフェーズが変わりつつあります。

これまでは別に詳細なルールがなくても、創業者2人による意思決定があればそれで十分に機能していたんです。

それが2人が抜けて新しい経営チームになるので、「このタイミングで、会社として仕組み化できる部分は整えてもいいかもしれませんね」といったコメントは結構もらいましたね。

また、「どのようなプロセスで何を意思決定していくのか、メンバーも見れたほうがいいですね」「意思決定プロセスが見えると、自分たちも先読みして考えることができます」といった声もいただきました。


−変えるもの、変えないものをヒアリングしていったのですね。1on1の中で印象的だったことはありますか?


北吉さん
1on1ですごく嬉しかったことが2つあります。

1つ目が「弱みを教えてください」と言われたんですよ。「それはなんで?」と聞き返すと、「弱みを知っていると、そこの部分を支えることができるかもしれないから」って。

こんなモジャモジャ頭の人間がきて社長やるっていってるのに、そのように考えてくれるのはすごくありがたいなと感じました。

2つ目が、「北吉さん色にしていったほうがいいと思います」と言われたことです。

どこをどう変えるという具体的な話ではないのですが、「創業者のことは一旦忘れて、北吉さんの色にしたほうがいいんじゃないですか」みたいな。

「それを期待してます」と言われたときはグッときましたよね。プレッシャーというか責任の重さを感じました。

まだ、完全に信頼をしてもらっているわけではないと思いますが、思い切ってやっていいというか、そのようにメンバーから言ってもらえるのは幸せだなと思いましたね。

創業社長と二代目社長の違い

−ちなみに、北吉さんが感じる創業社長と二代目社長の違いはありますか?


北吉さん
まず、僕は「コネヒトについて把握しきれてないことが多いんだろうな」と思っています。

創業者であれば、自分でサービスを立ち上げ、自分でコンテンツも企画し、サービスの方針を決めて実行して、グロースさせてきています。

ですので、比較的サービスにおける全プロセスが頭に入っているし、そこまでの過去の経緯も全部わかっているじゃないですか。

一方で僕の場合は、過去の経緯をすべてを知っているわけではないし、サービスの細かいプロセスを実体験として経験していません。そう考えると、「知らないことが多い」というのは創業者との大きな違いだと感じています。

だからこそ、創業者2名の経営チームから、新しく5名の経営チームになったという背景があります。それは各セクションに強みのあるメンバーを配置して、それぞれがお互いを補完し合って支えながら経営をしていくということです。

創業者は、過去の経験があるから肌感覚で意思決定できたと思うのですが、それを僕がやると間違った方向にいくリスクがあるなと。

ですので、各セクションにおける詳細な意思決定は委譲して、僕の役割としては各セクションを横並びで全体を見渡して意思決定していくことだと考えてます。


−創業社長と二代目社長では、その役割も結構変わってくるのですね。


北吉さん
0→1や1→10をつくるのが創業社長で、10→100の部分が二代目以降の役割になってくると思います。ですので、戦略やマネジメントのやり方も変わってくる感じですね。


−マネジメントでいえば、北吉さんが意識されていることはありますか?


北吉さん
当たり前の話になるのですが、コネヒトのメンバーはめちゃくちゃ大事な存在だと思っています。

KDDIはグループで4万人を超える社員を抱えていて、僕は約7年KDDIで働いてから、自分でM&Aした会社に出向して6年目になります。

その中で感じているのは、最初にM&Aした会社は社員数10名にも満たない会社だったんです。そこで「4万分の1」と「10分の1」の影響力の違いをものすごく感じたんですね。

1人が体調を崩した瞬間、もう会社全体に影響があるわけです。それを肌で感じてきました。

それまでは正直なところ、ひとりひとりの影響をあまり気にしてなかったんです。「それよりも事業をどう進めていくかのほうが大事だ」みたいに思っていました。でも、その考え方が180度変わりましたね。

サービスをつくる人がいてはじめてサービスができ価値が生まれてきます。ですので、メンバーは一番の資産であり、一番大事にしていきたいものですね。

そのためには、メンバー自身のパフォーマンスが最大化すること、メンバー自身が働きがいを持っていきいき働けることが会社として重要だと思っています。

そこに対するスタンスは、これからも変わらずにやっていきたいですね。


−北吉さんが6月に社長に就任されから1ヶ月が経ちましたが、実際に業務に携わってみていかがですか?


北吉さん
「社長業は使う脳みその部屋が多いな」という印象ですね。僕はゼネラリストタイプでマルチタスクが多く、案件数や仕事量も結構幅広くやってきた自負があります。

ただそれ以上に、社長業は仕事が広いし深いですね。

妻からも、金曜日くらいになってくると「すごく疲れてるね」と言われるようになりました。それまではあんまり言われたことはなかったのですが(笑)。


−やはり社長業は大変なのですね。


北吉さん
社長になる前は事業サイドの話がメインで、売上・利益だったり、事業戦略だったり投資効果みたいなところを見ていました。

それが経営となると、事業の話だけでなく組織の話も入ってきますし、メンバーの話も入ってきますし、制度の話も入ってきます。

幅がそれまでよりもすごく広がるし、あとは最終的な意思決定をするので、深さという意味でいくとその部分が大きいですね。当然、僕にしか意思決定できないことも増えてきます。

採用の最終面接もすごく悩みますね。人が人を評価するって難しいので、本当に集中力や脳みそを使うシーンが多い感じです。


−重い決断が連続して続くわけですもんね。


北吉さん
そうなんですよ。だから社長の立場になってみて「大湯さん大変だったんだなぁ」と日々感じています(笑)。

「自覚と矜持」を持った自走できる組織を目指す

−北吉さんが描く、今後のコネヒトの展望について教えてください。


北吉さん
世界の他の国々から「日本ってママリがあるからいいよね」と言われる未来をつくりたいですね。

ママを支えることで、ママがハッピーになり、子どもがハッピーになり、旦那さんを含めた家族もハッピーになり、そこから「家族っていいな」と周りの人が思うようになり、家族という単位が増えていって、ハッピーの総量が大きくなるイメージですね。

そのために、今まではママ向けにアプローチをしてきましたが、ママ以外にアプローチすることにもトライしています。

それが昨年度から実施している「変えよう、ママリと」プロジェクトです。ママを支えるために、企業や行政にもアプローチをする動きをとっています。

今後はこのように多方面を巻き込んでいくことが、10年30年50年100年といった先を見据えたときに、必要なことだと思っています。


−ありがとうございます。そのために、北吉さんはどのような組織をつくっていきたいと考えていますか?


北吉さん
今のコネヒトのカルチャーは会社の規模が大きくなっても守っていきたいですね。

「ママの一歩を支える」というミッションに共感してジョインしているメンバーがほとんどで、ユーザーファーストで社会課題に対して真摯な想いを持って取り組む姿勢は、他社よりもすごく強い印象を持っています。

ママを支えるというこのサービスは、絶対的に正しいことをやっている自負はあるので、こういったスタンスは崩さずに進めていこうと思います。

また、個々のメンバーに対して求めているものがあって、それは「自覚と矜持」です。

さきほどの創業社長と二代目社長との違いにもなりますが、創業社長は意思決定・決断を自分でおこなっていって、それについていくことで成り立っていた部分も一定あったかなと思います。

ただ二代目社長となる僕の場合は、もちろん意思決定はしますが、事業の規模も幅も広がってきているし、広げていきたいので、創業社長のように周りがフォロワーとなっているだけではうまくいかないと感じています。

他のメンバーも自分で考えて意思決定をしてみんなで組織をつくっていく必要があると考えています。そして、メンバー個々人が意思決定できるために「自覚と矜持」をもってほしいなと思っています。

自覚とは、自分ができること・できないことを理解して、かつ事業の強み・弱みも自覚することです。そして矜持ですが、僕たちが目指すミッションに対し、プライドを持って業務に取り組んで欲しいと思っています。

この自覚と矜持が持てるようになると、自分で考えて意思決定できる量と質がレベルアップしていけると考えています。

ですので、みんながそれぞれの自覚と矜持によって意思決定をたくさん生みだしていければ嬉しいなと。
意思決定できる人が適切な意思決定を適切なタイミングでできる、そのような自走する組織にしていきたいですね。

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