こんにちは!組織コンサルティングを行う株式会社JAMの菊地です。
研修の内製化を積極的に実施している株式会社サイバーエージェント曽山氏、株式会社LIFULL羽田氏に対し、弊社代表の水谷がインタビューを実施した「研修の内製化 3社対談」の4回目の記事をご紹介。
今回は、「どのように自発的に研修を実施できるのか、研修を受けてもらえるのか」についてお伺いしました。2社独自の育成の仕組みについて、ぜひご覧ください。
※本記事は、以下5つのテーマに分けて連載形式でお届けします。
[連載記事はこちら]
曽山 哲人(そやま てつひと)|株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括
羽田幸広(はだ ゆきひろ)|株式会社LIFULL 執行役員人事本部長
水谷 健彦(みずたに たけひこ)|株式会社JAM 代表取締役社長
社員が自発的に研修の企画・参加をするために何をしているのか?
水谷氏:研修って、人事主導のもの以外ってどうやって実施されるんですか?
曽山氏:エンジニアは、技術についての勉強会を行う風土があって、すごく良い意味で勝手にやってくれてるんですよ。
4人くらいの少人数で勉強会やろうとか、飲み会をセットでやろうとか、すごい自発的に動いてるんですけど、これは私たち人事は全く関与してないんですね。若いメンバーも、活躍人材も、いろんな勉強会をやってますね。
本人たちも楽しそうにやっているので、すごく良いなと思ってます。そういった勉強会をやってもいいんだよという風土を、ここ10年くらいでエンジニアのリーダー陣が作ってくれていて、いろいろなところで新しい技術や言語に関する勉強会とかをやってますね。
水谷氏:今の話でいうと、「学ぶ」ということに対する向き合い方が、良い方にちょっと違いますよね。基本的には研修って人事が設定して、「面倒だな」って言いながら集まって、「終わった終わった、まあ学びはあったけど・・・」っていうのが一般的ですよね。
でもお二人の話を聞いていると、もっと自発的に「これを学ぼう」とか「こういうことを教えたい」というものがあって、そこに人が集まってくるというサイクルができていますよね。
曽山氏:そうですね。僕たちの場合は経営課題が先にあって、その課題を解決する研修をしようとしても、社員の中にはそれに困っている人もいればそうでない人もいますよね。研修をやるスタンスとして、やっぱり確率的には研修ってそんなに出たいものじゃないだろうと思ってます。
でも経営課題としてやるとなった以上は全員出てもらわなきゃいけないので、短い時間で「楽しかった」と言ってもらえるように作ろうとしていますね。
水谷氏:先ほどの1時間で行うっていう話ですね。
曽山氏:社員に価値提供することにすごく集中して作るんです。研修に出てもらうとだいたいみんな「良かった」と言ってくれますが、価値を感じてもらおうという意識はすごくありますね。
水谷氏:先程おっしゃっていたエンジニアの方の勉強会は、全員参加じゃないんですよね?
曽山氏:そうです。参加は別に強制ではないので、本当に良い意味で勝手に盛り上がってやってくれています。
水谷氏:完全に自発的な参加ですよね。
羽田氏:LIFULLが参加必須の研修プログラムを最小限にしているのも、まさにそれなんです。研修のテーマが自分の課題だと感じていない人は「受けさせられる」ってなっちゃうんですよね。
自分の課題じゃないのに受けさせられているという研修はできるだけ減らすようにしています。そこで先ほどお話したような自分で選択するタイプのプログラムを多用しています。
また、選抜プログラムの「LIFULL WILL」の場合は、研修の冒頭で、「皆さんは次世代経営人材候補として選抜されてここに呼ばれました。もし将来取締役になる意思がなく、スペシャリストなど別の道を目指したいのであれば、この時点で帰ってもらってもいいですよ」と本人の意思を確認しています。
曽山氏:やっぱりそうですよね。そういうスタンスはアリですね。
羽田氏:そうですね。あとは、たとえばエンジニアって外部の研修で結構金額の高い研修があるので、職種ごとに予算をつけています。自由に個人で申請して、それを各職種のマネジャーが判断して受講できるようにしていますね。自分で興味を持ったものを選べるようにしています。
水谷氏:なるほど。教わる機会が社内に沢山あって、そこに良い雰囲気で向き合えるっていうのはいいですよね。「1時間研修がある」とか「毎週水曜日は研修をやっている」とか、会社の中に学ぶ機会が沢山あって、取りに行けばすぐに得ることができますよね。でも、それを用意できる会社って少ないじゃないですよね。
曽山氏:本当にそう思います。
水谷氏:そういった環境が用意されていくと、社員側の意識や向き合い方が変わるなとか、学ぶことに積極的になっていくなとか、そういう印象ってありますか?
曽山氏:サイバーエージェントには「CyBAR」という社内報があって、ここに活躍人材のインタビューとか社員同士の対談が載ってるんですね。そこに、最近始まったコンテンツとして社内研修の資料を、社内講師のインタビューを交えて紹介するというものがちょうど掲載されたんですよ。
羽田氏:それはいいですね!
曽山氏:まだ連載は4、5回なんですが、マナー研修やファシリテーション研修の研修風景の写真と、こういう思いでこんなことを伝えてますというインタビューを載せています。
下のほうには研修資料のリンクが貼ってあって、問い合わせをしてもいいし、資料をダウンロードしてもいいしという流れができています。資料の共有や研修のノウハウ共有はニーズにあわせて実施していますね。
水谷氏:じゃあ、その資料をもとに別の人が研修を展開できるってことですね?
曽山氏:実際にもうやってますね。
水谷氏:へぇー!素晴らしいですね。
曽山氏:その時に、資料を展開した人に問い合わせも入りますし、すごくいい流れかなと思ってます。
それまでは、僕がパソコンのローカルに研修資料を持っていて、問い合わせがあれば共有してましたけど、社内報にあげることで「あげてもいいんだ」となる。これが大ヒットするか分からないですけど、良い取り組みだったなと思ってます。
羽田氏:うちも、管理職向けの研修コンテンツは編集して「LIFULLリーダーブック」としてまとめて、管理職に配布しています。
曽山氏:素晴らしいですね!
羽田氏:でも今のお話が素晴らしいのは、研修コンテンツが注目を浴びてるってことですよね。研修コンテンツってどこかにアーカイブしておいても、社員は普通あまり見にいかないじゃないですか。それをちゃんと研修コンテンツが見られるように工夫してるのがすごいですね。
水谷氏:各現場のマネージャーが「自分のチームの課題はこれだ」って分かって、勝手に研修を企画してやっていくって組織として強いじゃないですか。
曽山氏:強いですね。
水谷氏:そういう感じになってきてますよね。
曽山氏:僕らの場合、ビジネスドメインが部門によって違うので、各部門の中で独自に勉強会とか育成プログラムを作っています。「この部門がやっているものが良さそう」って真似をし合うこともありますね。マネージャーの研修をやって、その評判が良いと、別の部門の事業部長が「それ教えて」って聞きに行くっていうのはありますね。
水谷氏:へぇー!各現場主導でそんなふうにテーマ設定がなされて実行されていくという組織状態になったら相当優位性ありますよね。
曽山氏:それはすごく良い取り組みだなぁと思ってます。人事がむしろ介在しないほうが、自発的にどんどん動いてくんですよね。
水谷氏:既存の研修会社が潰れていきますね(笑)
曽山氏:いやいや!(笑) 「こういうノウハウについては外部研修を使った方がいい」っていうのはありますよ!
水谷氏:ここはやりきれないよね、という部分があるんですね。
曽山氏:部門ごとの研修だとむしろ外部のパートナーの力を借りて、一緒にプログラムを作ったりしてますね。
水谷氏:そうか。部門ごとに役員と人事がいるから、部門ごとに課題を解決して、現場展開していくわけですね。
曽山氏:そうです。事業部課題とか経営課題に、育成や研修が紐付いていることがすごい重要ですよね。部門人事としては、これはもう教えないとだめだというのが見えているので、経営陣とよく話して、これはお金をかけた方がいい、研修の手間をかけた方がいいという感じで決まっていきます。
水谷氏:もう少し現場に近い課長クラスの方はどうですか?課長くらいの人が、「うちのチーム、全然論理的思考できないから、その研修だけ1時間くらいやりたい」とかって話はありますか?
曽山氏:そこまでは部門によりますが、やはり各リーダーやマネージャーはもっと教えてあげたいとは思ってますね。
特に直部下だと、自分ができるスキルを部下が持っていないというのはフラストレーションにつながりがちなので、OJTでマンツーマンで指導してるんですよね。でも、体系的に教えるというところまでは行けていないなと思うので、人事としてサポートすべきだなと思ってる部分はあります。
「曽山さん、こういう研修やりたいので相談に乗ってくれませんか?」というマネージャークラスも結構いて、そういう声はどんどんサポートします。
水谷氏:LIFULLさんはどうですか?現場主導でテーマ設定されるってことはありますか?
羽田氏:うちの場合は、「未来人材会議」という人材育成を議論するような会議を組織階層ごとに行っています。例えば、対象が役員クラスの場合は、役員や役員候補について現在の状況や育成方針について話し合います。
一方で、対象がメンバークラスの未来人材会議は、部門関係なく、全社横断で職種別の会議をおこなっています。例えば新規事業などの規模が小さい事業の場合、メンバーがエンジニアで上司がデザイナーというようなことが結構あって、育成がしにくいという話がありました。
そこで、たとえばエンジニアのマネジャーが、全部門のエンジニアのメンバーの育成について話し合うための会議体を開催しているんです。
この未来人材会議でエンジニアやデザイナーの育成について各職種のマネジャーが中心となって議論していきます。人事は専門的なアドバイスや会議のファシリテーションなどを行います。ですのでまさに現場主導で育成のテーマ設定や研修の設計、研修会社の選定を行っています。
また、先ほどの例のように、A部門のメンバーがエンジニアで上司がデザイナーの場合、B部門のエンジニア出身のマネジャーが彼らの目標設定や評価も同席するようにしています。全体の育成テーマを決めるだけではなく、メンバーひとりひとりの成長支援やキャリア支援を行っています。
水谷氏:そこでニーズを拾って人事がどうカバーするかっていうことですね。
羽田氏:そうですね。そこで一緒に研修を作っていくという感じですね。
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