現代社会は、何かとストレスの多い社会です。そのため、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼす人も多くなっています。
労働政策研究・研修機構が平成26年(2014年)1~2月に調査したところ、メンタルヘルスの不調を抱えている人のうち、13.3%が休職しているそうです。
うつ病を抱えている従業員は、辛い思いをした結果、休職を決断していることでしょう。しかし、同僚や上司が状況を全て理解しているわけではなく、「さぼりやがって」と考える社員が出てきてもおかしくありません。
そこで、休職中の社員がに自宅外にいたのを他の社員が知った場合、会社としてはどのように対応すれば良いのでしょうか。また、休職する社員が出たときには、どのように対応すればよいかについて書いてみたいと思います。
目次
休職中に自宅外にいた場合
休職中に外出をしていたといっても、いろんなケースがあります。そこで、不問に付すべきケースと事情聴取が必要なケースに分かれてきます。
不問に付すべきケース
本来の出勤時間内に生活圏内に外出していた、出勤時間後や休日に街中に出ていたような場合は、不問に付すのが適切です。
これは、外出がリハビリの一部であるとともに、通院や買い物など日常生活に必要なことをおこなっている場合もあるためです。
行動として問題はないが、事前連絡してもらうのが望ましいケース
休職期間中に2~3日温泉旅行に出かけたり、1か月ぐらい実家に戻ったりする求職者もいるかと思います。これらのケースは、休職期間の本来の目的の範囲内の行動と考えられるため、問題視する必要はないでしょう。
ただ、休職期間中の社員の動向を知っておくことや、他の社員が知った時のやっかみを防ぐという意味では、事前に連絡を受けておくほうが望ましいでしょう。
事情聴取が必要なケース
気分転換と言っても、1週間ぐらい動き回るような旅行や活動は話が別です。このようなことが見つかった場合は、事情聴取が必要です。
長期間の旅行や活動は、会社で通常の業務をおこなっている中ではできることではありませんし、うつ病で休職するような場合は、長期間の外出をする気力がないのが普通だからです。
また、うつ病で休職する場合、傷病手当金を受け取るケースが多いですが、長期に動き回れるというのは、労務に服することができない状態ではないとみなされ、傷病手当金の不正受給の可能性も出てきます。
仮にこのような行動が本当に必要であるのなら、かかりつけの医師から、意見書や診断書をもらうようにする必要があります。
うつ病で休職するような人の場合、だいたいかかりつけの精神科医・心療内科医がいますので、そのお医者さんに依頼させるのが良いでしょう。
その結果、虚偽の休職であれば、懲戒処分も必要となりますし、最悪の場合、受け取った傷病手当金を返還させる必要もあります。
企業がとるべき対策方法
休職前の準備
まず、休職前に休職の内容を取り決めておく必要があります。期間はどのぐらいか、その期間が過ぎたらどうするかです。
また、延長を認めるにしても、ずるずると引き伸ばすわけにもいきませんので、一定の期間が経過したら、自然退職にするのが望ましいかもしれません。
さらに、うつ病の場合は復職した後、すぐに症状が再発することも珍しくありません。そのため、休職後一定期間内に同じ症状で再休職した場合、前後の休職期間を通算して1つの休職として取り扱うのが適切です。
もちろん、このようなことをするのには就業規則にその旨を記載しておくことが必要ですが、そこまで就業規則が追い付いていないのであれば、事前に上記の内容を網羅した合意書を取り交わし、速やかに就業規則の整備をすることが必要です。
休職中について
会社としては、休職中の社員の動向が気になるところです。求職者の状態をきちんと治せるのか、またどうしているかが気になるでしょう。
そこで、休職した社員には、定期的に報告を入れるよう事前に申し伝えたほうが良いでしょう。
休職した社員については、部署の同僚社員も心配するので、報告先は直属の上司にして、人事はその上司から報告を受ける形が良いでしょう。
頻度は、最低でも1か月に1度、できたら月に2度が良いでしょう。それ以上に報告が多くなってしまうと、本人もおっくうになる可能性があります。
また、報告の手段は、部署の上司に電話させるのが良いと思います。メールだと、自分が実際の状況より良く見せることができるますし、電話で実際に上司が声を聞くことで、休職中の社員の状態や雰囲気をつかむことができるからです。
そして、人事は、その上司から報告を受けるのが良いでしょう。
休職後の復帰について
ここが一番難しいところです。休職前の部署に復帰させるか、別の部署に異動させるのかいろいろ手段はあります。
ただ、いずれにしても、一番大切なのは、復職した社員のパフォーマンスは、本人の申告をうのみにするのではなく、その6~7割ぐらいと見積もっておくことです。
まず、復職した社員は、休職した罪悪感から、休職時の遅れを取り戻そうとして申告することもあります。
また、仮に病状が回復状態に近づいていたとしても、それは休職中に仕事のストレスから解放されていたこともあるので、仕事のストレスが再びかかると、また病状が悪化する可能性があるからです。
復帰の際は、本人の様子を見ながら、最初は時間短縮で対応したり、勤務日数を抑えたりして、徐々に慣れさせるのも良いかと思います。
さいごに
休職については、その目的を逸脱させないようにする必要があります。そのためには、まずは定期報告をさせることと、目的をはっきりさせることが大切です。
また、復帰してから軌道に乗るまではある程度時間がかかるものだと考えてじっくり取り組むのが大切です。
メンタルヘルスは、少なくとも短期で減少はしないでしょうから、もし休職者が出てもいいように、あらかじめ準備しておくことも大切ですね。
『人事が知っておくべき「メンタルヘルス対応の流れ」とその「予防策」』
▶メンタルヘルス対応のために人事が知っておくべきこと#2