HRTech領域でサービスを展開しているファインディ株式会社。
代表的なプロダクトとして、「AI求人票点サービスFindy Score」、「ハイスキルなエンジニアのためのプレミアム転職サービスFindy」があります。
採用においてさまざまなチャレンジや試行錯誤をしている企業は多いかと思いますが、意外とそこまで注力できていないのが「求人票のテコ入れ」ではないでしょうか。しかし、求人票のテコ入れは採用に大きな効果をもたらしてくれます。
今回は、ファインディ株式会社の代表 山田さんと、Findy Scoreを使い倒している「Findyマニア」であるスタディプラス株式会社の人事 黒須さんに、Findy Scoreの魅力とその活用方法、求人票のテコ入れが採用に何をもたらしてくれるのかをお伺いしました。
山田 裕一朗(やまだ ゆういちろう) | ファインディ株式会社 代表取締役
黒須 香名(くろす かな) | スタディプラス株式会社 管理部 採用兼広報
【目次】
- Findyとは具体的にはどのようなサービスなのか?
- 「100点を出すことはかなり難しい」Findy Score活用でわかること
- Findy Scoreを活用することで、採用にどのようなメリットがあるのか?
- エンジニア採用が上手い会社はエンジニアが採用にコミットしてくれる
- もっともっとたくさんの人にFindyをつかってもらいたい
目次
Findyとは具体的にはどのようなサービスなのか?
AIでリアルタイムに求人票を採点できる「Findy Score」
-まずはFindy Scoreのサービス概要を教えてください
山田氏:Findy Scoreは求人票を入力すると、AIを使ってリアルタイムに求人票を採点するサービスです。
全体の文字数は適切か、曖昧な表現はないかなど、アドバイスに沿って求人票を改善することでスコアが上がり、より求職者にとって魅力的な求人票が作成できるようになっています。また、ハイレベルな求人票の事例を検索できる機能も提供しています。
さらに、エンジニア向けか非エンジニア向けの求人票かもわかるようになっています。エンジニアが好む言葉と、エンジニアが嫌う言葉を分析していきます。
ハイスキルのエンジニアに特化した「プレミアム転職Findy」
-先日、エンジニアに特化した採用サービスもリリースされていましたね。
山田氏:はい、プレミアム転職Findyというハイスキルのエンジニアに特化した採用サービスになります。
こちらの特徴としては、
- GitHub連携でエンジニアのスキルを自動で偏差値化
- スキル審査の通過者には、プレミアムオファーが届く
- 「Tech企業トップ100+」を独自のアルゴリズムにより作成。その対象企業の中から厳選して求人を紹介する
といったものがあります。
企業ランキングに関しては、「求人票のわかりやすさ」「求人票のエンジニア魅力度」「エンジニア向け求人票の個数」、これらを独自に分析しスコア化しています。
-求人票の個数も重要なのですね。
山田氏:求人票の個数に関して言えば、職種を細かくして多くの求人票を出している会社の方が求職者にとって分かりやすいんです。役職別、職種別など、なるべく細かく分けている会社の方が、求職者からすると「自分はここだな」というイメージがつきます。
また、採用が上手く言っていない会社ほど給与レンジが広いように感じています。極端な話、「年収300万円~900万円」という記載があった際、年収300万円の方と年収900万円の方は確実に同じ人じゃないですよね。そういった観点でも細かく分けることは重要です。
やはりランキング上位の企業の特徴を見ると、大前提としてエンジニアの採用に力を入れてるというところはあるのですが、エンジニアの求人票だけでも10件以上あり、それぞれの求人票の点数も高くなっています。
長年、求職者の要望や葛藤と向き合ってきたんだろうなという感じはすごくしますね。
数万の求人票を解析した結果、Findy Scoreの平均点は50点以下になる
-ちなみに黒須さんはどういった経緯でFindy Scoreを活用することになったのですか?
黒須氏:おそらくFacebookの人事コミュニティグループで、山田さんがFindy Scoreに関する内容を投降されて「使ってみようかな」と思ってはじめたのがきっかけだと思います。
山田氏:「ちょっと試してみよう」という感じで使ってくださる企業様は多いですね。スタートアップ・ベンチャー企業だけでなく、大企業やその小会社、地方の会社も活用してくださっていて、今採用に困っている企業様は本当に多いと思っています。
-だいたい平均点はいくつくらいになるのでしょうか?
山田氏:50点に届かないくらいです。でも、実際の世の中の平均点はもっと低いと感じています。1500社くらいの求人票を取得しながら解析していっているのですが、1、2行しか書いてないような企業の求人票は解析していません。私自身も1500社の求人票を全部見てきていますが、そういった求人票も結構多いですね。
黒須氏:山田さんも1500社の求人票、全部見てるんですか?
-それはすごい!
山田氏:そうです。ですので、最近どの会社の求人票が良くなったかなど、だいたいの変化が分かります。求人票博士みたいな感じですね(笑)。たとえば、最近採用サイトをリニューアルして、求人票もそれに合わせてかなり綿密に詳しく書かれるようになった企業などはすぐにわかりますね。
夜な夜なずっと求人票読んでました(笑)。求人票の数だけでいうと数万件はあるのではないでしょうか。しかも、1回だけでなく、何回も何回も読み見返していました。
「100点を出すことはかなり難しい」Findy Score活用でわかること
求人票の何がだめで何がいいのかが、可視化できる
-ちなみにFindy Scoreを活用して刺さったポイントはどの辺でしょうか?
黒須氏:求人票のイケてる感、イケてない感など、なんとなくでしかわかっていなかったところが、可視化されるようになったことですね。
Findyを活用することで、「このワードはダメ」「文字数が少ない」「これは曖昧」など、改善の余地がある部分を指摘してくれるんです。最近は、「箇条書きが多い」って私は良く出てきます(笑)。
何がだめで何がいいのかが、可視化されて分かりやすくなっているのがいいですね。
-そういったところまで出るのですね!「箇条書きが多い」以外ではどのような指摘が多いですか?
黒須氏:出やすいのは「曖昧なワード」の指摘ですね。
よくやりがちなのが、「各種」「一部」「いずれか」の表記です。「あ、これダメなんだ」って気づきを得ました。「下記いずれかのご経験お持ちの方」と記載すると、ほぼ間違いなく曖昧と指摘されるんですよ。
でも「本当にいずれかか」と言われたら、「いずれかじゃないかも・・・」となるんですよ。たとえば、「上場企業での経理の経験」「ベンチャー企業でのCFOの経験」「監査法人での経験」いずれかという記載。
自分ではいずれかのつもりだけれど、「確かに言われると曖昧だな」ということは、良くあります。
あとは「箇条書きの一文が短い」。情報量を多くしようとすると必然的に箇条書きを多用するわけなのですが、そうすると一方で箇条書きが情報の羅列だけになってしまって、箇条書きで何かを伝えられてないケースがあります。あと連結数が短すぎるとか。
-連結数が短いとはどのようなことですか?
黒須氏:箇条書きが2つしかないなど、少ないということです。「箇条書きする必要ないですよね?」というメッセージだと思います。
山田氏:すごく地味な部分なのですが、連結数には平均があるんです。たとえば、箇条書きにするのであれば3個以上あるのが一般的だとすると、2個は少ない。逆に6個以上あるということは要件多すぎじゃないですか、という感じで採点されていきます。
本当に地道に研究と開発を重ねてFindy Scoreをつくっていきました。
「70点の壁」がある、高得点をだす秘訣とは?
-黒須さんは最初に求人票をFindy Scoreで採点したときは何点ぐらいだったのですか?
黒須氏:最初は40点くらいだったと思います。
山田氏:最初はそんな感じになりますよね。私もそうでした。最近は何となく点数があがるロジックが頭に入っているので、高得点を出すことができます。
黒須氏:それすごく分かります。先に箇条書きをつくっておいて・・・次はこれを入れてとか・・・。
40点が出る前、私ちょっと自信があったんです。なので、当時は結構ショックでした(笑)。「こんなしょぼかったんだな」って。そこから私が何をしたかというと2つあります。
1つ目はネットで検索をして、目についた求人票をコピペしてFindy Scoreで採点し、点数が高かったものを真似しました。採用が上手くいってそうな企業を探して、その求人票をFindy Scoreで採点にかけていくんです。
2つ目は、Findy Scoreがいろいろ指摘してくれるので、それを地道につぶしていくという作業です。
-点数があがるのに結構苦労するものなのでしょうか?
黒須氏:50点はわりとすぐ超えるんですよ。求人票をつくりこんでいる他社のものを参考にさせていただくと、すぐに65点まで結構いきます。ただ、「70点の壁」があって、私は70点を超えるまで苦労しました。
山田氏:「70点の壁」という表現は結構あっているかもしれないですね。私も他社様の採用支援をさせていただくときに求人票を作成するのですが、70点~80点になると求人票を改善してもなかなか点数があがらなくなってきます。
自分で作ったロジックなのに100点が出なくて「うーん・・・」と思いながら(笑)。それこそ、エンジニアの求人票を書いている時はエンジニアの方にチェックしてもらい調整するなど、そういうことをおこなっています。
黒須氏:90点いったときはかなりつくりこんだ感がありました。◎がいくつかないと90点はいかないんですよ。
-◎ですか?
黒須氏:Findy Scoreは×△○◎でアドバイスしてくれるのですが、○が10個あってもおそらく80点ぐらいなんですよ。◎がないと90点はいかないということに気づきました。
やり込みすぎると、「え、さっき○だったのに×になっちゃった・・・」「箇条書きを足してみよう。数が多すぎる?え?」みたいな迷いの森に入ることもしばしばあります(笑)。
-100点を出す企業はあるのでしょうか?
山田氏:ほとんどないですね。世の中でも1%もいかないのではないでしょうか。黒須さんはこの前100点出しましたよね。
黒須氏:そうなんです。ついに100点が出ました!!本当に嬉しかったですね。それくらい100点を出すことは難しいと思います。
Findy Scoreを活用することで、採用にどのようなメリットがあるのか?
-え、すごいですね!!最初は40点だったのに・・・!ちなみに100点に至るまでの過程で採用において変化はありましたか?
黒須氏:定量的な部分では、転職サイトGreen内での企業ランキングがどんどん上がってきたことですね。もともとスタディプラスはGreenをあまり活用できていなくて、ランキングが掲載2000社中の360位くらいだったんです。
それが直近では40位前後までランキングがあがってきています。ランキングにはさまざまなロジックがあると思うのですが、そこには求人票のテコ入れが大きく関わっているのではないかと考えています。
定性的な部分でいうと、人材紹介のエージェントや面接官の間で「口説きポイントがずれない」ようになってきたように感じています。求人票をつくりこんでいくことで、自社の魅力や求める人材が明確になってくるので、「この求職者にはこの魅力を訴えていこう」というイメージが共有しやすくなったように思います。
スタディプラスに入ってから思ったのが、「何でもやってもらいます」という求人をつくろうとすると、一定以上点数が上がらないんですよ。なぜかというと情報が多すぎるからです。「この求人票は情報が多すぎます」と、どうしても出てしまうのです。結局、求人を細かく分けざるを得なくなるんです。
山田氏:私が求人票を改善して効果が出た事例としては、とある企業の求人票を1から全部書き直すということをしました。
当時は2~3個しか求人が出ていませんでした。それを細かく分けて13個ぐらいにまで増やしました。もうとにかく細かく書き直していった結果、応募数が約4倍になりました。
あとはリファラル採用が増えました。「紹介したい」と社員が思っていても求人が曖昧だと誰にどう紹介していいのかわかりません。それが求人票の内容が細かくなっていれば、イメージが湧くようになるので、紹介しやすくなるんですよね。
さらに、さきほどの話のように口説き方にずれがなくなりました。求人票を作成するプロセスにおいて、現場の方に求人票を書いてもらうということを取り入れたんですね。それを添削して、再度すり合わせをして形にしていく方式をとったんです。
何が良かったかというと、今まで面接官となるチームリーダーと部長で、口説き文句が違ったことがあったんですね。それぞれが違う口説き文句をしていて、「あれ、言っていることが違う」と。それによって内定辞退にもつながっている可能性があったのですが、口説き文句のずれが無くなったっていうのは大きかったですね。
また、しっかりと求人票をつくりはじめると、人材紹介のエージェントからの紹介が増えてくるんですよね。
エンジニア採用が上手い会社はエンジニアが採用にコミットしてくれる
-エンジニア採用のときはどのように求人票を作成しているのでしょうか?
黒須氏:エンジニアのことはエンジニアにしかわからないこともあるので、エンジニアに相談しながらつくっていきますね。
山田氏:プレミアム転職FindyのランキングTOP100の上位企業を見ると、ほぼエンジニアが採用にコミットしていますね。
魅力的なエンジニア向けの求人票を書いている企業は、エンジニアが求人票を書いてくれます。スカウトメールも「自分たちで打ちたい」と言ってくれるようなエンジニアがいるんですよ。
黒須氏:いかに現場と協力体制を築けるかは重要ですね。
山田氏:そういう意味で言うと、大手でエンジニア採用に力を入れている企業様では、私が営業に行くと人事と一緒にエンジニアの方が商談に出てきますね。
エンジニア採用に強い企業は、エンジニアを採用に巻き込めているかどうかが重要な気がします。それはエンジニアに限らず、マーケティングも、管理系の職種も同様だと思います。人事の方は営業出身者が多いので、営業の求人はしっかりと書かれている印象ですね。
-そこにFindy Scoreがあることで、求人票の改善部分が可視化できるので、お互い何をすればいいのかわかって協力しやすいですね。
山田氏:それが一番理想的ではありますね。求人票改善におけるコミュニケーションツールとしても役に立って欲しいですね。
もっともっとたくさんの人にFindyをつかってもらいたい
-Findy Scoreを活用して求人票の改善をするだけでも採用にとって多くのメリットがあるのですね。
黒須氏:人事だけでなく、人材会社など多くの人に使って欲しいですね。たとえば、人材紹介のエージェント。難しい部分ではあるのですが、こちらで渾身の求人票を作成しても、各社の求人票フォーマットがあるのでアレンジが入ります。
中には「え、なんでこんなことになっているの?」と思うアレンジをされているときもあります。その求人票をFindy Scoreで採点して見てもらいたいですね。
山田氏:いいですよね。人材紹介では本当に活用できると思います。
黒須氏:Findy Scoreは、採用が上手くいってる企業も上手くいってない企業も使うことはかなりメリットだと思っています。なぜかというと、採用は感覚的なところが大きいからです。
「何で採用できたのかわからない」「何で採用できないのかわからない」といった中に、いろいろ要素があります。たとえば会社の知名度が低い、検索したらブラック出ていて印象が悪いなど、どうしようもない部分もあると思います。
ただ、やるべきことはたくさんあって、Findy Scoreを活用することで、感覚的なものが数値化でき、良し悪しが可視化できるため、PDCAをまわしやすくなるのではないでしょうか。
-ありがとうございます。山田さんから最後に今後の展望や想いをいただければと思います。
山田氏:Findyの話とは少しずれるのですが、今後やりたいことの一番中核にあるのは、人材と教育を紐づけていきたいと思っています。
日本はまだ「みんなに同じことを勉強させよう」というカルチャーであると感じています。それは素晴らしい部分でもあるのですが、一方で「その時に何を勉強したらいいか分からない」ということになってしまう懸念があります。
今後、グローバルなどの舞台で競争をするために、どのように勝負していくのかを考える際、そもそもどういうことを勉強したら、どういう結果につながるのか、ということを知ることが必要です。
大学受験も目的が曖昧ですし、大学生が勉強しないのも、勉強しても何になるかよくわからないからだと思います。ですので、「こういうことを勉強したらこういうことにつながる」といったことを、人材サイドから明確化していきたいです。
レアジョブに在籍していた頃から、教育業界は人材業界に従属的な業界だと感じていました。人材業界が大きく変わらない限りは、おそらく教育も変わっていかないのではないでしょうか。そういった観点から人材業界に貢献していきたいと考えています。