本記事は、6月8日に開催された「18年卒新卒採用の前半戦振り返りとこれから使える取り組み 『採用担当者向け勉強会』」のイベントレポートになります。
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▶【速報】18年卒新卒採用の振り返り|新卒学生から内定承諾を促す取り組みとは?
昨今の新卒採用では就職活動の早期化が加速し、ダイレクトリクルーティングやインターン採用など、新卒採用における採用手法は多様化しています。複数ある採用手法の中でも注目を浴びているのが、新卒採用へのリファラル採用(社員や内定者の紹介による採用)の導入です。
イベントの前半は新卒採用コンサルタントの谷出 正直さんによる、2018年卒新卒採用の振り返り。後半では、リファラル採用ツール「Refcome」を運営する、株式会社Combinatorの清水巧さんが「新卒採用によるリファラル採用の有用性とその事例」について語りました。
主催はリファラル採用ツールの「Refcome」を提供する株式会社Combinator。新卒採用に取り組まれている採用担当者様同士での交流会も兼ねて、イベントが開催されました。本レポートでは、同イベントの様子をお伝えします。
事業よりも、人の魅力の方がグリップ力が高い
清水:弊社のリファラル採用を活性化させるクラウド「Refcome(リフカム)」は、自身の新卒採用での紹介経験がもとになっています。2013年Sansanにエンジニアとして新卒入社をしましたが、当時は知名度も低く新卒の募集も私の年が初めてでした。学生は名刺交換に馴染みがなく、求人ナビに載せてもエントリーがない。そこで採用担当から、エンジニアの知り合いの紹介をお願いされたんです。
最初は戸惑いましたが、Sansanとビジネスモデルが似ているto Bのクラウドサービスを志向するエンジニアの友人に声がけを始めました。友人からメールアドレスを聞き、人事に教えるという過程を繰り返し、結果として同期6人のうち、2人が私に紹介によるものでした。社員や内定者が母集団形成に協力すれば、スキルも価値観も合う人材が採用できるということを肌で感じたんです。
清水:「リファラル採用は中途採用に使う手法」としてのイメージが強いですが、実際は新卒採用にも有効です。弊社の顧客で中途採用にリファラル採用を導入している会社の7割以上が、新卒でも実施しています。
新卒採用にリファラル採用を導入するメリットのひとつは、「内定辞退率の減少」です。弊社が担当した顧客で「内定辞退率が30%」という課題を抱えている会社がいましたが、リファラル採用を施すことで内定辞退率を8%に下げることができました。
応募している学生と距離の近い「内定者」とコミュニケーションをとるため、入社する前に内定した会社の理解が進むんです。また、知り合いを介して内定承諾をしているので辞退をしづらい上、学生は人事以外に社内に知り合いがいるため、内定を決断してもらう時に事前に会った社員に協力を促せます。
つまり事業よりも、人の魅力やつながりの方がグリップ力が高い。スキルマッチよりも価値観でのマッチングを重視する新卒採用は、本来リファラル採用と相性が良いんです。
新卒採用にリファラル採用を導入するもう一つのメリットは、中途採用と比べて社員の協力率が高いことです。
中途採用で社員にリファラル採用の協力をお願いすると、協力率はおおよそ17%になります。この数字自体も非常に高いですが、新卒ではなんと、64%ほどに増加します。新卒採用を中途でたとえるなら、候補者の周りが全員転職活動をしている状態。中途よりも新卒の方が紹介できる人数が多いんです。
また社員に協力をお願いする場合、若手社員や内定者は新卒入社直後であるためエンゲージメントが高くなります。多くの企業では、新卒でのリファラル採用で基盤を作った後に中途へと広めていくという企業内での「文化醸成」の意味合いで導入します。
最後に、質の高い候補者の獲得です。ある企業では、媒体経由でのエントリーから内定につながる確率が2%でしたが、リファラル採用の場合34%と高い数値になりました。就職活動は、インターンやグループワークなどで似たようなスキルや価値観を持つ学生に、就活生自身が巡り会いやすい期間でもあります。先に内定をもらった学生から具体的な話を聞けるため組織文化とマッチする人材を獲得しやすくなるのです。
採用の主語を「人事」から「会社全体」へ
清水:リファラル採用の施策設計における全体像を整理するためのフレームワーク、「Refferal Recruiting Canvas」をRefcomeでは考案しました。「どのポジションを何人採用する」という逆算ではなく、キャンバスに書かれた7つの順番に整理することを推奨しています。
7つの要素を組み合わせていくことで、誰から、どの部署に、どんな人を紹介したいのかが明確になり、リファラル採用の前準備が完了します。
まずは、リファラル採用のプロジェクトを立ち上げる際、社内のどこが主導になっておこなうのかを考えます。新卒採用であれば、新卒採用責任者や、新卒を多く受け入れている部署の部長などをリストアップします。
次に、社内の誰に候補者の紹介をお願いするかを明確にします。入社3年目までの社員、内定者など、新卒採用のリファラル採用において有効な社員をリストアップします。たとえば、「内定者がグループになってリファラル採用をおこなう」など、入社前プロジェクトとして進むケースもみられます。
3つめに、社員に紹介してもらいたい人の人物像を具体的に書き出してみます。 ここでのポイントは、内定者の目線で「あ、こういう人いそう」という要素を洗い出していくことです。PDCAを回し、何度も内定者に「こういう人いる?」とい問いかけ、求める人物像をアップデートしていきます。共通点を抽象化した上で、「どの大学の、どこに所属している人」と具体化できるようなものだとより施策として実行しやすくなります。
4つめは、紹介した人を採用プロセスに乗せる”受け皿”の用意です。せっかく紹介してもらっても、その後の選考フローが大手ナビサイトの求人と同じく「書類選考」からでは「特別感」がありません。紹介した人向けのインターンや面談、選考会などを個別に用意することをオススメします。「内定者と人事で会社説明会を開く」というユニークな企画をされている会社も見られました。
5つめに、人事から内定者へ紹介をお願いするのではなく、営業マネージャー、企画部長といった社内のキーパーソンから現場社員へ紹介のお願いをしてもらいます。たとえば、エンジニアのポジションなら開発部長から社員へ紹介をお願いしてもらえれば、現場から紹介の動きが加速します。「全社で採用をおこなう会社」というメッセージ性を打ち出すためにも必要な手順です。
6つめに、社内でリファラル採用に協力してくれそうな「火付け役」をリストアップしていきます。「入社3年目の田中さん」、「内定者の大家くん」と率先して紹介してくれそうな人たちを挙げていきます。
最後に、リファラル採用実行に向けての施策アイディアを考えていきます。内定者でグループを作る、紹介に協力的な内定者をベストリクルーター賞として入社式で社長から表彰する、など会社に合った施策として具体化していきます。
これらの7つのステップを通して、協力的な社員から社内全体へ「紹介の文化」が浸透します。すると、リファラル採用への認識が「人事の仕事を手伝う」から、「現場の仕事を変える」と変わっていくのです。
リファラル採用はメリットばかりではない
清水:リファラル採用には、「面倒なこと」も多くあります。人事としては、前述の社内施策の設計をすることや、全社へ紹介をお願いし続けること、応募が増えてきた場合、応募者の選考状況を確認するのも一苦労です。また、社員から候補者への会社説明や人事への募集ポジションの確認など、社員にかかる負担も多くあります。
弊社の「Refcome(リフカム)」では、管理画面で社員のメールアドレスや空きポジションを入れていただくと、どの社員に対して紹介をお願いするのかを全社単位で絞り込み、送る相手を設定して、通知を送ることができます。
たとえば、サイバーエージェントさんでは、人事担当の方が「From」になって社員の皆さんにメールが送信され、募集ポジションがリンクとして添付されています。
募集ポジションのページは社員と内定者のみが発行できます。内定者は「自分がリクルーターとして特別にアサインされた」という特別感を想起できるようUXを設計しました。そして採用が終わった後は「誰が紹介してどれだけ応募があり、内定につながったのか」という分析や効果測定もできるようになっています。
最終的には「採用担当だけでなく、社員を巻き込んだ全社単位での採用」という組織文化をつくるところまでご一緒できたらと思っております。そのためにまずは新卒から始め、徐々に中途まで浸透させていくことも一つの選択肢です。もしリファラル採用の具体的な施策に関しての質問や検討がございましたら、気軽にお問い合わせいただければと思っております。
以上、株式会社Combinator主催のイベント、「18年卒新卒採用の前半戦振り返りとこれから使える取り組み 『採用担当者向け勉強会』」の模様をお送りしました。
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