こんにちは。HR NOTE編集長 根本です。
今回、Googleストリートビュー事業やVR事業を手がける、LIFE STYLE株式会社創業メンバーである、古城氏にインタビューの機会をいただきました。
2014年3月に3名で創業したLIFE STYLE。2017年4月の時点では、50名規模の組織にまで成長されています。ただ、それまでの道のりは決して順調ではなく、さまざまな人事施策をおこなってきたとのこと。
そこで、LIFE STYLEがどのような人事施策をおこなってきたのか、会社創業の1年目から現在に至る4年目まで、時系列でお伺いして記事にまとめました。
古城 芳明(こじょう よしあき)|LIFE STYLE株式会社 取締役
【LIFE STYLEのこれまでの歴史】
目次
1年目:3名で創業し、LIFE STYLEがスタート!
「最初はお金がない」ため、リファラル採用がメイン
―「創業1年目の組織づくり」に関してどのようなことをされたのか、お伺いさせてください。
古城氏:最初の1年目に関しては、毎日自分たちが明日生きていくために精一杯でした。そのため、採用にかけるお金はほぼありませんでした。ですので、弊社の代表やメンバーが「一緒に働きたいな」と思う人材を連れてくるリファラル採用がほとんどでした。
―設立から1年たったときに、何名ぐらいになっていたのですか。
古城氏:7、8名ぐらいだと思います。
―採用や組織をつくっていく上で、印象に残っていることはありましたか?
古城氏:採用においては、最初は正直「面接でこの部分をしっかり見よう」といった目線合わせも決まってない中でやっていましたね。
ただ、外から見ると楽しそうにうつるLIFE STYLEと、実際に入社したときに愚直にテレアポするといった現実とのギャップが発生していました。その辺をしっかりと伝えられてなかったために早年離職につながったケースもありました。
ですので、そういったことが教訓となり、面接のときに「ビジョンや実現したい世界観」を伝えつつも、「そのためにやらねばいけない泥臭い部分」もきちんとオープンにして伝えるようになりました。
―ギャップを埋めていくことが大事ですよね。そのために具体的にされたことはありますか?
古城氏:具体的にいうと、面接の回数を増やしました。もともとは2回の面接だったのですが、3回に増やしました。
まず、1次面接では見極めより魅力づけを重視するようにしました。私たちはスタートアップ企業で、最初にお支払できる給料も他社と比べると低いこともありますし、会社としてのネームバリューもありません。ご家族がいらっしゃれば、反対があってもおかしくないと思います。
実際に、優秀な人材だと感じて内定を出しても、内定辞退されるケースがいくつかありました。
そういう状況なので、1次面接から「こちらがふるいにかけますよ」というスタンスは良くないと思い、まず弊社に魅力を持ってもらうために候補者の方に対して営業活動をするべきだと考えました。
逆に自社をアピールして、「LIFE STYLEに来るとどういうことができるのか」「どういう会社なのか」などを理解してもらえるようにお話しします。
そして、2次面接で実際の内情を伝えていきます。「実務のこういったところが課題です」「入社後はこのような活動をしてもらいます」ということを伝えていきます。
最後の3次面接は弊社の代表と面談していただきます。これが少し変わっていて、これまでの面接を踏まえて「あなたがLIFE STYLEにもたらすこと」というテーマで最初の5分間プレゼンをしてもらいます。その上で、弊社代表と「何が一緒にできるか」「どんなことを成し遂げたいか」などLIFE STYLEについて熱く語ります。
そのような選考フローに変えていきました。もちろん、選考の都度、見極めもさせていただいています。
「会社」を意識しはじめたのは、大手出身者が入ってきたタイミングだった
―メンバーが8名になっていく中で、人事労務、人事管理の面で印象に残っていることはありますか?
古城氏:7名、8名くらいになったタイミングのときに、はじめて大手出身のメンバーが入社しました。
それまでは、スタートアップの「やるぞ、おー!」という勢いで乗り切ってきたのですが、大手出身者が1人でも入社したタイミングで会社になるなと感じました。
我々は何も思わずに過ごしていたのですが、大手出身者からすると、今まで当たり前に存在していたものがないことだらけの環境になります。そのときにギャップのようなものが生まれました。この規模だと1人の影響力は非常に大きくて、苦労したことがありました。
―どのようなギャップだったのですか?
古城氏:身近な話だと「自分たちでトイレ掃除をするの?」からはじまり、業務のところでは勤怠管理のシステムはなく、シフト表のようなものに手入力で打ち込む。あとは労務まわりの対応も煩雑で、もろもろの資料の準備も後手後手でそのあたりの整備ができていませんでした。
当時は全員営業の組織だったので、バックオフィス業務は営業活動が終わってから合間で経営陣がおこなっていました。そのため、対応が間に合わずに本当に雑になっていましたね。
―勤怠管理、給与計算、社会保険の手続き、年末調整など、本当にやることは多いですよね。
古城氏:ただやはり、働く側からすると、安心して働ける環境かどうかは非常に重要な要素です。できていないのは会社が悪いだけなので、こういった部分が課題として浮き彫りになってきました。
―具体的に変えたことはありますか?
古城氏:システムを少しずつ導入しはじめていきました。
営業関連のシステムはすでに導入していたのですが、コーポレート側のシステムには全く投資をしていませんでした。そこで2年目がはじまるタイミングで導入をしていきました。
2年目:一泊二日で「未来会議」|会社の価値観やカルチャーのギャップを解消
Wantedlyを活用し、採用単価2万円で20人を採用
―2年目は営業8名の組織から、最終的に何人になったのですか?
古城氏:着地で言うと、2年目終わったときは15人ぐらいですね。2年目は3、4回ほど応募をかけました。Wantedlyからの応募が一番多かったですね。
―Wantedlyの活用はどのようにされていたのですか?
古城氏:まず「応援合戦」をよくやっていました。応援の数で上位表示が変わってくるので、他社の人事の方と応援をし合うことをしていました。もちろん、自社メンバーや周囲の友人・知人にも応援するようにお願いしていました。
また、弊社は「Googleストリートビュー」という、わりとみんなが知っていて、興味を持ってもらえそうなサービスをしていたため、応募が集まりやすい傾向にありました。
―応募はどのぐらいきましたか?
古城氏:その当時は覚えていないのですが、Wantedlyや求人広告を活用した2017年の1月、2月だと、1カ月の応募が200弱ぐらいありました。
だいたいそこから会うのが約50%、それでも100人弱ぐらいには会えます。
リファラル採用は1年目から引き続き継続しながらも、Wantedlyを中心に採用をしていったのが2年目です。インターン採用も含め、Wantedlyを活用してから1年半の結果を集計したのですが、約20人を採用でき、採用単価が2万円程度でした。
メンバー間のギャップを埋めるために「未来会議」を実施
―1年目と2年目で、組織マネジメントで変化はありましたか?
古城氏:2年目は、直販営業でおこなっていたストリートビュー事業を代理店展開にシフトチェンジするという、会社として大きく舵を切ったタイミングでした。直販営業を一切やめて、代理店展開でマネタイズしていくというシフトは、会社としては「これがこけたらやばい」という危機感しかなかったです。
そういったタイミングで「全員が営業職という状況もそろそろちょっときついんじゃないか」という話にもなりました。そこでメンバー1名をバックオフィスに異動してもらい、運営をはじめるといった、組織体制にも変化が出てきたのが2年目です。
―そんな中、印象に残っていることはありますか?
古城氏:新しいメンバーが入ることで、組織のカルチャーの浸透具合、愛社精神というか、そのあたりでギャップが生まれているような感じがありました。
ですので、12〜13人ぐらいの規模のときに、「未来会議」というものをやりました。何をするのかというと、メンバー全員で古民家に行き、一泊二日で会社の未来について話す合宿です。
それまでは、LIFE STYLEが目指しているビジョンや、会社のカルチャーが明文化されていませんでした。メンバーが増えてくると受け取り方も人それぞれだったりするので、共通言語のようなものがないとずれが生じてきます。「そこを合わせたいね」ということで合宿をしました。
―どのようなことをされたのですか?
古城氏:「会社がどこに向かうか」「そのために何を評価するのか」というところを明文化、見える化していきました。
「会社としてここを目指しています。なので、このようなことに対して努力している人を評価します」ということを見える化しないと、メンバーにとっても不幸なことだと思います。
ものすごく頑張って努力していたのに、ふたを開けたらそこは全く見られていない、という部分をなくしたかったのです。頑張ってないメンバーは1人もいないと思っていますが、その頑張っている方向性が正しいのかどうか。
会社が進みたい方向に対して努力をしてくれて、それが会社の業績として結果が出て、メンバーに還元できるという良いサイクルをつくっていくことが重要だと思います。
3年目:「組織の30人壁、50人の壁」を乗り越えろ!ゼロイチでつくった人事制度
代表から言われた「人事をやって欲しい」。その理由とは?
―3年目から現在までのお話をお伺いさせてください。
古城氏:組織規模でいうと、正社員は35名。アルバイト、インターンを含めると50名ぐらいになります。
―人事領域に関しては、どのようなことにチャレンジされていったのでしょうか。
古城氏:もともと2年目が終わったタイミングまで、弊社には人事担当がいませんでした。そんな中、3年目がスタートするタイミングで、代表の永田が「人事をやって欲しい」と私に言ってきたんです。
採用はもちろん、組織づくりや人事制度設計も含めて人事をみることになります。そこから「採用目標として50人の組織にする」ことと、「人事評価制度の導入」の2つをミッションとしてスタートしました。
―なぜ3年目のスタートで「やろう」となったのですか?
古城氏:きっかけになったのは、「30人の壁、50人の壁」の話です。
弊社では、「おしゃれオフィス20 選」という代表の永田がおしゃれオフィスのある企業様に出向いてインタビューをするブログコンテンツをつくっているのですが、ちょうど3年目がはじまる前の2017年の1月、2月ぐらいのタイミングで、どこに行っても「30人の壁、50人の壁というのはある」という話を、いろんな経営者の方や人事の方から聞くようになったんです。
それで、30人の壁、50人の壁があるのであれば、「壁にあたってからどう対応する」ではなく、どの企業にも起こり得る課題感を先読みして「事前に手を打とう」と。
―ちなみに、どのあたりが課題になると感じましたか?
古城氏:30人の壁を意識したときに感じたのは、「会社という組織体になってくるのに、バックオフィスが整っていない状況はまずい」「組織ができてお互いの距離感が遠くなる可能性がある」ということと、「明確な評価制度が必要になる」ということです。
会社が30人規模になったときは、「本当に会社になったなあ」と感慨深かったのですが、弊社はバックオフィスのチームが1つもありませんでした。みんな攻めの姿勢は強いのですが、守りが手薄でした。そこでバックオフィスチームをつくって強化するようにしました。
また、30人ぐらいになったタイミングで、組織ができ、部署ごと、チームごとに活動するとなると、お互いが何をしているのか把握できなくなってきます。
今までは、誰が何をしているのかがよくわかっていたので、メンバー同士の考えややり方、「あの人ってこうだよね」というものが把握できていました。
ただ、組織ができることで、誰が何をしているのかがなんとなくわかるけれど、実際の業務まではわからず、「あの人がやっていることは何?」といった感じになってしまいます。
たとえば営業と広報、マーケなどさまざまな部署があって、目的はみんな同じところに向かっていると思うのですが、実際に課せられるものは違います。それで、お互いがお互いに「何してるの?」という感情が生まれてくると思います。
評価制度に関しては、たとえば既存メンバーよりも能力が高いメンバーが入社したときに、給与も既存メンバーより高くなるケースがあると思うのですが、「それを何の基準ではかるのか?」という話になります。そこを明確にしていき、メンバーの納得感の醸成をはかることで、1枚岩の組織にしていくことは、すごく大事なことだと思い、評価制度を取り入れていくようにしました。
ゼロイチで評価制度をつくるためにおこなった2つのこと
―古城さんは今までのキャリアで、人事をされてこなかったと思うのですが、どのように評価制度をつくっていったのですか?
古城氏:正直、最初は何から手を付けていいかも分からない状況でした(笑)。そして、そこから2つのことをしました。
1.LIFE STYLEが目指すべき企業の評価制度を調べた
古城氏:私たちが目指したい企業の人事の方が出している制度設計の本を何十冊か読みこみました。多分、人事評価制度はどれが正解というものはなくて、会社が目指したい方向によってかなり変わると思っています。
そして、インプットした中から「LIFE STYLEならどうすべきか」ということを自分なりに落とし込んで、結構つくりこんだものを役員会に持っていったんですね。
そこでミーティングをしたのですが、役員メンバーの中でも共通言語がなかったため、意見が全然違ったんです。「こんなに違うんだ」と、そこでショックや気づきがありました。
2.認識のすりあわせのためにさまざまな制度の歴史や背景を学んだ
古城氏:そこでまずはそもそもの認識のすりあわせが必要だという話になりました。
世の中にはさまざまな制度がありますが、そのすべてに歴史や背景があると思います。たとえば、年功序列といった評価制度がありますが、あれも第二次高度経済成長期の中ではとても理にかなっている仕組みだと思います。
そのような背景を知らないで、ただ「年功序列はだめな制度だ」と言ってしまうことはもったいない気がします。そのため、それぞれの制度の歴史や背景をきちんと理解して、お互いの知識や認識のすりあわせをするようにしました。
さまざまな制度のメリット・デメリットとその歴史を自分たちの中で落としこんでいって、「じゃあ、うちはこうだよね」というかたちで、LIFE STYLEという会社の制度を決めていきました。
―人事制度の歴史や背景まで調べて落とし込んでいったのですね。人事制度を運用に乗せるためにおこなったことはありますか?
古城氏:正直これからというところですね。2016年の4月から動きはじめて、出来上がるまでに半年かかりました。そこから、10月に「こういう制度になります」と全社にアナウンスして、11月から2月までをテスト運用というかたちで仮導入しました。
この2月でやっとそれが終わって、良かった点や悪かった点、課題がいろいろと見えてきました。次はここからどう浸透させていくかが課題です。テストを重ねて徐々に改善していっています。
―ちなみに、どのような評価制度なのでしょうか?
古城氏:言える範囲になるのですが、弊社の評価制度は大きく分けると3軸あります。
「行動評価」「成果評価」、弊社のカルチャーのような「行動指針評価」で評価していきます。
基本的に月給に関わるところは行動評価と行動指針評価が関わります。成果評価に関してはボーナスで還元しています。
「どこを評価するか」という話で、まず能力やスキルが一番下にあって、能力・スキルの高い人が意欲的に動くことで、良い行動が生まれると思っています。その良い行動に、運、環境がそろってはじめて成果が出ると考えています。
たとえば、成果だけを月給に反映させて評価しようとすると、これは運もあるので、再現性がイマイチ図りづらいのです。たまたま業績のいい部署にいて、たまたま結果が出たときに、「能力はこっちのほうが高いのに、何であの人が」といった不満が出てくると思うんですよ。
再現性が薄い「成果」よりも、再現性が高い「行動」の部分で月給は評価していきます。とは言え、成果も重要で、たとえ運だとしてもしっかりと評価してあげたいので、そこはボーナスで還元しています。
4年目:人事評価制度がもたらした「採用基準、採用すべき人の明確化」
―人事評価制度を導入したメリットはありますか?
古城氏:人事評価制度を導入したことによって、採用基準もそろうようになりました。弊社には7段階のグレードがあるのですが、「この候補者はこのグレードですね」という話ができるようになりました。
4年目の採用目標を立てるときに、「この部署にこのグレードの人を採用しよう」「このグレードの採用は充足しているね」というところまで話せるようになったというのが、大きな変化です。
―グレードによって組織の見える化ができたため、求める人材が明確になり、採用手法も取捨選択しやすくなりますね。
古城氏:そうですね。あとはこれからくる50人の壁だと思っているのですが、完全に今ミドル層がいない状況です。人事評価制度をつくって思ったのですが、ミドル層がいないと本当に大変ですね。
―よくマネジメントができる人材がいないために組織がまとまらないという話を聞きます。
古城氏:あると思います。ミドル層がいないと、「評価制度がはじまりました」と言っても、事業部長とメンバーの間では少し距離が遠くて、細かいところまでは見きれないと感じています。
それでは評価するときに、会社が求めていることをメンバーが実践していたとしても、「見られていない」という感覚を持たれてしまうのではないかと危惧しています。評価されるかどうかは別として、見てもらっている感は重要です。あとはそもそも、目標達成のためにミドル層は必要だなと思います。
―ミドル層の採用は重要だと思いますが、既存メンバーを引き上げることも考えていますか?
古城氏:はい。今までは「マネージャーにしたいな」と思っていたメンバーは何人かいました。ただ、評価制度がなかったので、「何をもって上げるのか」がなかったんです。
それが今回、2016年の11月に評価制度を導入して半期運用した結果、既存メンバーから4人マネージャーができたんですよ。それは、部長陣や役員陣からしたらすごく嬉しいことでした。「適切に上げることができた」と。
―ミドル層に向けたマネジメントの教育などはされているのでしょうか。
古城氏:ミドル層がメンバーの教育と評価制度をしっかりと使えるようになることが、まさに今期の人事の課題ですね。
全社にも伝えていることなのですが、評価制度は人が成長するための仕組みだと思っています。会社は何を求めているのか、そのために何をがんばればいいのかをしっかりと明文化してあげることが評価制度だと考えています。ミドル層のマネジメントとしてメンバーを牽引していくために評価制度をうまく使ってくれるようにしていきたいですね。
―最後にLIFE STYLEをどのような組織にしていきたいか、お伺いさせてください。
古城氏:仕事は、好きか嫌いかは置いておいて、自分の人生のかなりの時間を費やすものだと思っています。ですので、生活のためにこのLIFE STYLEという会社の仕事に関わるのではなく、自分の志などを表現する場所、自分の生き方を表現する場所としてLIFE STYLEという組織があればいいなと考えています。
世界のスタンダードになるような働き方を表現していくというのが、LIFE STYLEの大義名分ですね。