今回は株式上場企業と非上場企業の違いについてご紹介します。
日本には現在、約382万社の企業が存在し(参照:中小企業庁・中小企業白書(2016年版))、近年は若年人口の減少や団塊の世代の引退に伴う廃業の増加で企業数は緩やかな減少傾向が続いています。
このうち中小企業は380.9万社で全体の99.7%を占めており、大企業に分類されるのは1.1万社で0.3%です。
大企業の数は極めて僅かで、日本経済の裾野を広く支えているのは中小企業で、その中でも株式会社がその中核の存在といえるでしょう。
このように同じ株式会社の中でも、大企業、中小企業と規模で分類されています。その中でも株式が上場している企業、非上場企業という分け方もあり、中には「大企業であれば、株式上場企業だ」と思っている方もいるかもしれませんが、そういうわけではありません。
ではこの「株式」を上場している企業と非上場企業、にはどのような違いがあるのでしょうか。それについてご説明いたします。
労働時間でよくある質問を徹底解説
この記事をご覧になっているということは、労働時間について何かしらの疑問があるのではないでしょうか。
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【資料にまとめられている質問】
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株式上場とは?~上場までの流れや、非上場企業とどう異なるのかなど~
株式を上場するということは、簡単に表すと株式を広く一般に公開し、取引可能な状態にして出資者を募ることです。
英語ではpublic offeringといいますが、最初に市場に株式上場することを特にinitial public offeringと呼び、私たちがよく耳にするIPOという言葉はこの頭文字を取ったものです。
2016年12月1日現在で日本の証券市場には3,531社が上場していますが、日本の企業数は380.9万社なので日本では僅か0.09%の企業しか上場していないということになります。
この中には、2016年の上場でもっとも話題を集めた人気SNSのLINEを運営するLINE株式会社や、私の身近なところでは、串カツ田中を運営する株式会社串カツ田中などといったさまざまな規模・業種の企業がIPOを果たし仲間入りをしています。
株式を市場に上場するには、その預かった資本をもとに企業を経営することになりますので、さまざまな約束ごとやルールがあり、その1例をあげると
- 事業の継続性と収益力
- 経営の健全性
- 事業内容の開示適正力
が求められる必須条件となります。
やがて廃業になりそうな事業形態や、収益基盤のない企業は上場企業になることができません。
アメリカのブロードウェイでは、ミュージカルが企画されると台本やキャストが公開された段階でエンジェルと呼ばれる出資者を募り、集められた資金を基に舞台が準備され公演がおこなわれますが、終演後にその収益をエンジェルの出資比率で利益の分配をします。
このようなイベント単位で投資を募る類型は他にも多く見られますが、株式市場はこのようなことを前提としておらず、永続する事業を前提としていることが大きな特徴だといえます。
【永続する事業として求められる前提条件】
- 経営体制は組織としてしっかりと機能しているか
- 事業内容について
- 株式価値を適時適正に見定めるために必要十分な情報開示をおこなう能力を備えているか
- 公益上社会に必要な事業であるか
そして一定以上の売上・利益を継続し続けた企業のうち定められた手順の財務監査を受け、証券会社や監査法人、証券市場がおこなう厳しい審査に合格した企業の中から、上場企業は生まれることになります。
上場企業のメリット・デメリット
多くの経営者にとって1つの夢であり目標でもあるのが株式の上場です。
なぜ経営者は企業を上場させようとするのでしょうか。上場企業になるとどのようなメリットがあるのでしょうか。そしてデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
上場企業には、定性的・定量的な観点からさまざまなメリットとデメリットが存在します。
定性的な観点から考えた場合
定性的観点は、さまざまな理由が書籍やネット上の情報で語られていますがそのメリットとデメリットは以下のように分けられるといってもよいでしょう。
- メリットは社会的信用の向上
- デメリットは経営の自由度が制限を受けること
知名度が向上する、人材の確保が容易になる、社員の士気が上がるなど、定性的な上場のメリットを述べる情報数は尽きませんが、行き着くところは上場から生まれる社会的信用といったところではないでしょうか。
そして、その効果は絶大です。
一方で、投資家は多くの場合キャピタルゲイン(株式売却益)を得ることを目的に株主になるため、短期で確実な株価の上昇が見込める施策を望みます。
そのため、中長期的な企業の成長戦略というものは描き辛くなるので、敵対的株主が経営に参加する可能性もあることから、企業の経営方針の自由度も大きく下がるといえます。
定量的な観点から考えた場合
次に定量的な観点から考えるとメリットとデメリットは以下のように集約されます。
- メリットは資金調達手段の多様化と与信の増大による調達コストの低減
- デメリットは間接部門の肥大化とそのコスト負担
株式を上場し、エクイティ・ファイナンスで得られる資金は企業の成長に極めて大きな役割を果たします。
銀行借入とは異なり、自己資本なので返済の必要もありません。IPOで得た資金を基に大きく成長することに成功した企業は、枚挙に暇がないといえるでしょう。
一方で、上場企業で在り続けるためにはどんなに小さな組織でも、多くの費用が必要になります。間接部門の人員や監査法人への報酬、上場維持コストなどがその主な費用ですが、その費用負担は軽くありません。
上場によって得られるメリットを考えた場合、上場維持の費用負担が安いのか高いのかを十分に考える必要があります。
上場をしない非上場企業の存在
多くの企業にとって、株式上場は望んでもできることではない非常に困難なものですが、ここまでお伝えした上場企業のメリットやデメリットを踏まえたうえで、上場企業として認められる要件が整っているにも関わらず上場をしない企業というものが存在します。
上場をしない企業例
では実際に上場をしていない企業をご紹介していきます。以下の企業は、誰もが知る有名な大企業であるにも関わらず株式は上場していません。では、なぜこれらの企業は株式を上場しないのかを調べてみました。
5大新聞社(朝日、読売、日経、毎日、産経)
上場することのデメリットである「経営の自由度が制限を受けること」ことが、上場しない理由ではないかと考えられます。株主に不利な内容の記事を書かせないなどといった制限を受けると、偏った情報を流すことになってしまいます。
そのようなことがないように新聞社は非上場であると考えられます。
株式会社DMM.com
DMMは主要サービスの数が約40種と数多くの事業を展開しています。事業は動画やFX、ゲーム、英会話、3Dプリンターなど多岐に渡ります。
DMMの組織風土が自由に新しいことに挑戦していくという考えであることが、非上場の理由ではないでしょうか。
2016年、DMMのサービスの数は40を超えようとしています。
多種多様なサービスと、サービスをとりまくすべてのものをつくるのが
わたしたち、DMM.comグループの仕事。
めまぐるしく、日々新たなものを生み出し、挑みつづけています。
サントリーホールディングス株式会社
CMなどでよく目にするサントリーも実は非上場企業です。サントリーは親会社は上場していませんが、子会社は上場していて非常に珍しいです。
サントリーが上場しない理由も、企業理念である「やってみなはれ」というチャレンジ精神あふれる考え方が理由なのかもしれません。
チャレンジ精神「やってみなはれ」
ウイスキーをはじめとする日本の洋酒文化を切り拓いた創業者のチャレンジ精神を受け継ぎ、総合酒類食品企業として、ビールや清涼飲料、健康食品などのさまざまな事業分野を開拓してきました。この精神は、自由闊達な社風と新たな価値の創造に挑戦していく原動力となっています。
帝国データバンク
倒産情報でおなじみの帝国データバンクも非上場企業です。
企業信用調査は公平性が問われる仕事であるため非上場であるべきだと考えられます。もし上場したら企業信用調査の信頼性が担保されなくなってしまうので、上場していないのは当然と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
株式を上場する定性的・定量的メリットをおさらいしてみると、以下の2点です。
- 社会的信用の向上
- 資金調達手段の多様化と与信の増大による調達コストの低減
裏を返しますと、これらのメリットを享受する意味が薄い企業にとっては、株式を上場するメリットは意味を成さないということになります。
サントリーなどは誰もが知る企業で、上場による知名度の向上は期待する理由がありません。また、元々キャッシュが潤沢な企業のため資金調達を多様化する必要もなく、十分な社会的信用があるために調達コストに無駄がありません。
つまり、上場によるメリットは薄く、逆に上場により受けるデメリット「経営の自由度が制限を受けること」を嫌い、非上場の状態を維持していると考えてよいでしょう。
株式の上場は確かに素晴らしいことですが、一方で業績ごとに株価が上下し株主も経営者も一喜一憂する場合があります。
株式を非上場にしておけば、短期的な業績に左右されず、中長期的な観点から企業を成長させることができるメリットがあるため、上場によるメリットが薄い企業にとっては、非上場で在り続けることは十分に意味があるといえるでしょう。
上場企業も、非上場企業もメリット・デメリットがあります。そのため、上場していて知名度が高い企業、成長を目指して非上場で走り続ける企業のなかで、内定者の内定辞退に課題を抱える企業は多いのではないでしょうか。
そこで、学生の不安を軽減し、内定辞退を防ぐためのフォローの方法を紹介するこちらの記事を参考にしてください。