こんにちは!HR NOTE編集長 根本です。
『ネットマーケティング宇田川さんとMOLTSそめひこさんの対談記事Vol.3』ということで、採用において周囲とどのように協力体制を築いていくべきかに関してお話いただきました。
採用活動は、人事だけで完結するものでなく、経営陣や現場の社員、人材会社の方々をいかに巻き込むかが重要になりますが、宇田川さん、そめひこさんは、そもそも「巻き込もう」という意図をもって周囲に働きかけていないとのこと。
では、どのように周囲と協力関係を築いているのか。そこには、結果にコミットする姿勢や自分が成し遂げたい「信念」が欠かせないとお話されており、今回はお二人のスタンスや実際のエピソードを交えて「周囲との協力関係構築」についてご紹介します。
採用領域に携わる方のみならず、それ以外の方にとっても非常に参考となる内容かと思います。
<採用担当に求められていることを、2人で語ってみた | 宇田川×そめひこVol.1>
<テクニック武装はもうやめて、面接は互いに腹を割っていこうぜ|宇田川×そめひこVol.2>
宇田川 奈津紀 | 株式会社ネットマーケティング
寺倉 そめひこ | 株式会社MOLTS
目次
巻き込むという意識ではなく「相談したいことがあってコミュニケーションをとっているだけ」
そめひこ氏:社内外とどのように協力体制を築いていくかに関してですが、わかりやすい部分だと、リファラルリクルーティングであれば社員紹介率が目に見えてわかる項目で、採用広報の部分では社員がどれだけコンテンツを拡散してくれるのか、あとはチームをつくって一緒にプロジェクトとして採用を進めていくなどがあると思います。
事業側の協力を募って、社員を巻き込んでいくことは重要なことだと思いますが、宇田川さんはどのようにされていますか?
宇田川氏:セミナーに来てただいた人事の皆さんから良くいただくお声として、「宇田川さんはいつも元気だから、みんなと分け隔てなく接することができるから、巻き込み力がありますよね」と言われるのですが、あらためて考えると、そもそも巻き込もうと思って話しかけていないんですよね。
そめひこさんはどうですか?
そめひこ氏:確かにそう言われると、巻き込もうという意識はないですね・・・。
宇田川氏:そう、巻き込もうと思ってないんですよ。私は、どうしたら募集職種を理解することができて求職者と会社がより良いマッチングができるかを考え、「私はこのポジションの方をこのように採用したいと思っています、市場は今、こんな動きなんですね。アドバイスをください」ということを各部署に相談に回っています。
ですので、「採用のために周囲を巻き込むために何をしているのですか」と言われますが、私はただ会社の中の人間とコミュニケーションの量を増やしたいだけです。
毎朝、いろんな方に「●●さん、おはようございます」と挨拶し、エンジニアの部署に行って話をし、マーケティングの部署の人と休憩室でお菓子を食べながら雑談もします。ただ、採用で巻き込むためかというと全然そういう意識は持っていません。
結果にコミットする姿勢がないと誰もついてこない
そめひこ氏:前職にジョインしたばかりの話になりますが、藍染職人からメディアの世界という異業界に入って、1ヵ月半でマネージャーという立場を任せてもらいました。ただ当時は、同じ部署の年上の方で会社を作ってきた人がいて、なかなか前に進まないことがありました。カルチャーがまだわかっていない、若かったということがあったのは事実ですが、なかなか考えに共感してもらえない日が続きました。
そんな中、ある日突然切り替わったタイミングがあったんです。それが何かというと、僕の話を聞いてもらう、協力してもらうためには、周囲以上に何かしらで「結果を残す」というパフォーマンスを見せる必要があったんです。
圧倒的に活動量を増やして、入社3ヶ月後になんとかチームで一番の実績を残せたことがあり、そこらのタイミングから、自分の話に耳を傾けて聞いてくれるようになりました。
先行きの見えない未来に対し、「これをやる」って決めて、そこで結果を残し、それを繰り返し行っていくと、周囲が一緒に協力してくれる体制が構築できてくると思っています。そういう意味でいうと、結果を残し続けることもひとつ重要な要素のように感じます。
宇田川氏:結果にコミットするということですね。
私は採用担当責任者として「今、やらねばならないこと」「やりたいこと」の2つがあります。「やらねばならないこと」をやっていないのに「やりたいこと」にチャレンジするのは難しいと思っています。「やらねばならないこと」をやったその後にきっと「やりたいこと」ができるスキルも身についていると思うんです。
「あなたのやりたいことををやってみなさい」って会社が背中を押してくれるのは、今までの実績の積み重ねがあったからだと思います。なので、その話はすごく共感します。
そめひこ氏:宇田川さんは、転職エージェントの方々と良好な関係を築いて、協力して採用成功に向けて動いていく体制づくりに非常に長けていると感じています。周囲を巻き込んで、みんなが宇田川さんのパートナーとなり、候補者を探してマッチングのサポートをしてくれる。これって宇田川さんが採用成功に結びつけてきているからで、一切採用決定に至らなかったら、離れていってしまう可能性もあるのではないかと思いました。
宇田川氏:エージェントのみなさんは、自分の営業数字があると思うので、採用に至ることでお互いが幸せになる。私は、エージェントの方々に対して「発注している側」ではなく、「一緒に頑張ってお互いの目標を達成しよう」という想いでやっていきたいと考えています。
エージェントの方が自社に合う優秀な候補者を紹介してくださったら、後はこちら側の仕事だと思っています。「こんなに自社にぴったりの優秀な候補者を紹介してくれたんだから、全力で良縁に結びつけないと申し訳ない」と感じています。
「宇田川さんに紹介すれば採用成功に結びつけてくれる」、「ぴったりの候補者が出てきたら、私は絶対にその機会をムダにはしない」と、お互いを信頼し合って、役割分担がしっかりできています。
そめひこ氏:みんなが協力してくれるからこそ、結果がすぐ出るという良いチームワークができていますよね。逆に、そのような関係を上手く築けずに、あいまいなフィードバックで何が良くて何が悪かったかをしっかり伝えていない人事の方もいるように感じます。
宇田川氏:マッチングに関してお互いの感覚にズレがあって、なかなか採用に至らない場合は、エージェントの方と直接話さないといけないと思っています。それは、紹介してくれたことへの感謝の気持ちや、礼儀、ごめんなさいという気持ちもあります。
「ごめんなさい、今回ご紹介いただいた方ですがこのような理由で決まりませんでした」「わかりました。じゃあ、こういう思考の人ですか、このような方どうですか、違いますか」という擦り合わせが必要で、お互いの努力を無駄にしたくないのです。
だめだった場合でも結果次につながるための何かを導きだしたいという気持ちがあります。それでも精一杯やってダメだった場合でも、「やることをやり尽くしてそれでもダメでした」と、やり切った上で頭を下げれば、お互いに分かり合えるのではないかと思っています。
そめひこ氏:そうですね。逆に自社に合う人材を採用することができたときは、みんなでパートナーも含めて喜べると思うし、「良いチームだな」って感じますね。
責任を負う覚悟はあるか?『信念の強さ』がないと周りを巻き込めない
そめひこ氏:周囲に協力を募って、結果として人を巻き込んでいくという話になったときに「巻き込んでいくことに耐えられるか?」と思うときがあります。人を巻き込んでいくことに対し、主体として行っている人は、巻き込まれた人の何かしらの責任を背負っていかないと、巻き込み続けることは絶対できないと思います。
若手の方が、「どうやって組織巻き込んでつくっていくのですか、私もやりたいんです」という話をされたときには、「責任を背負う覚悟はありますか」とまずはたずねています。
宇田川氏:1人で行うことには限界があります。ですので、現場の社員やエージェントの方々の力が必要です。例えば、「エンジニアのポジションの募集で、私がその魅力を間接的に伝えても熱意が伝わりにくくなってしまうので、現場から直接伝えるべきなんです。現場のみなさん協力してください。」と、しっかりと説明をしてお願いをしています。
周囲にお願いをして巻き込んでいけば、やはり背負うものも大きいと思います。それでも、「自分が好きな会社、そこで働いている好きな仲間のために貢献したい、会社を強く大きくしていきたい」という想いがあって、背負うものを超える何かがあるからできるのではないでしょうか。そのため、「巻き込みたい」が目標ではなく、それは手段であって、その先のもっと大きな目標がないと意味がないと思います。
そめひこ氏:何かしら想いがないと進めていけない。大変なことですよね。
確かに自分を振り返ると、この会社を大きくしたいとか、部下の給与をあげたいとか、全社員をとことんハッピーにしていきたいという思いがなかったら、あそこまで必死にはできなかったかもしれません。
宇田川氏:巻き込むことが目標になっているなんてつまらないですし、それは1つの通過点であって、自分がどうなりたいか、会社をどうしていきたいかというビジョンを持っているほうが、自分を奮い立たせられますし、『信念の強さ』が巻き込むことには重要かもしれないですね。
そめひこ氏:前職で責任者をしていたときに感じたのは、巻き込み方を教えていくというよりは、熱い想いを持った人間にいかに裁量権を渡して、その人間を中心に渦を作っていくことがすごく重要じゃないかと思いました。
「こういうことをやりたいです」と言っている人間に裁量権を渡して、「あなたの思うチームをつくってみてください」「予算はどれぐらい必要ですか?」とチャレンジできる環境を与えてあげる。想いや責任があるからこそ、人は巻き込まれるのではないでしょうか。強い想いができたときに、その人間にどのように裁量を渡すのかが、社内外を巻き込んだチームを作っていくときには一番必要なのかなと思います。もちろん、人によるところはありますが。
宇田川氏:そもそもできない可能性が高いとわかっている状況で、そこでストップをかけないでやらせる勇気を上が持たなくちゃいけないなと思いました。そこから失敗して這い上がってくる経験や、何で失敗をしたのかをとことん考えさせることが、次のステップアップだったりするので。もちろん失敗しなければそれに越したことはないのですが、でも失敗してしまうかもしれないチャレンジングな環境を用意できない組織はあまり大きくならないのではないかと思います。
そめひこ氏:ひとつすごく面白い例があって、ラブレター採用という前職のときにやっていた採用手法がありました。会社が大きくなっていくと、採用のプロセスにおいて重要なのは正しい選択をしていくことだと思います。つまり、「この候補者はうちの会社に合っている」という人だけを採用していくことです。とても当たり前のことではあるのですが、前職では少し違っていました。未経験者の方ばかりを採用していたのですが、それでもすぐに良いチームができて、運営メディアがスケールしていきました。そのとき何をしていたのかというと、『正しい選択をするのではなく、選択したことが正しかったって思えるように進めていく』ことを心がけていました。採用した方に対して「この人がうちの会社に入社してすごく良かったな」と思ってもらえるように、みんなでその意思決定は正しかったっていう方向に持っていくことがすごく重要ではないかと思います。なので、入社した後が非常に大切だと感じています。
ラブレター採用の話に戻すと、選考、面接などのさまざまな選考プロセスを省いて、ラブレターの内容だけで人を採用するものです。その中で、狂気的なラブレターをくれた方がいて、その人に内定を出したんですね。こんなに狂気的なラブレターもらったのだから、絶対しっかりと育てていこうという想いが湧いてきたのですが、なかなか結果が出ない時期が続きました。その後、入社して3ヵ月後に面談をして「今の状況はどうですか?」という話をしたときに、「ごめんなさい。今、結果残せていないです。ただ、ラブレター採用が失敗したか、成功したかは僕が活躍できるかどうか。あのときのそめひこさんの決断は正しかったって言えるのは、僕が結果を残すかどうかです。ここから結果出すので見ておいてください」って言ってくれたんです。このとき、ものすごい衝撃を受けました・・・。感動しました。
宇田川氏:すごく面白いですね。3ヵ月後の面談で、「自分はダメだったってわかっている、でもここから採用して良かったって思われるように頑張りたい」って、人事のことを想ってくれていますよね。愛を感じますね。
そめひこ氏:宇田川さんも会社に愛があって、入社のきっかけをくれた人をすごくリスペクトしているからこそ、「採用を頑張ろう」って思える部分はありませんか。
宇田川氏:そうです。私も、私にチャンスをくれた人や、社長をがっかりさせたくない。多分、ラブレターで採用した人もそういう想いだったんですよ。そめひこさんをがっかりさせたくないから、頑張りたい、期待に応えたいって絶対あるじゃないですか。自分が認めている人をがっかりさせたくないし、期待を良い意味で裏切るぐらいの成果を出したいという想いが湧いてきます
「採用を愛で紐解く」じゃないですけど、採用って愛とか信念というところがないとできないのかなとあらためて感じましたね。
おわりに
以上、宇田川さん、そめひこさんの対談内容の一部をご紹介しました。
巻き込もうと思って行動するのではなく、あくまでも自分の力では及ばない部分に対して周囲に相談やお願いをするためにコミュニケーションを取っていった結果として協力体制が築けていること。
そして、その先にある自分の信念や目的に向けて、結果にこだわりコミットし続ける姿勢が重要で、あくまでも巻き込むことは手段の一つにすぎません。
周囲を巻き込んでチームをつくる背景には、それぞれの想いがあるかと思いますが、何か課題感や閉塞感がある方は、参考にされてみてはいかがでしょうか。
(本取材は2016年8月26日に、飲食店向け予約/顧客台帳サービスを提供する株式会社トレタにて実施。)