日本において、ここ数年急速に広まっている「アルムナイ」。アルムナイ制度は、もともと海外の企業で生まれましたが、人手不足が深刻化している日本でも注目されるようになりました。
採用に困っている企業は、「アルムナイネットワーク」を活用することで、自社に見合った優秀な人材を再雇用できる場合があります。
しかし、「そもそもアルムナイって何?」「制度を取り入れたいけど何からはじめていいかわからない」といった疑問をお持ちの人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、アルムナイの基礎知識から再雇用への働きかけ方、アルムナイネットワークの形成手順やサービスを紹介します。
目次
1. そもそもアルムナイとは
アルムナイの意味は、「OB・OG」と同じです。
もともとは「学校の卒業生」を指す言葉でしたが、人事領域の中では「企業を離職・退職した人たち」という意味で使われている言葉になります。
また、元社員である「アルムナイ」と企業が継続的に接点を持ち、元社員を再雇用する「アルムナイ制度」という制度があります。
アルムナイ制度は、外資系企業で盛んにおこなわれており、近年日本でも浸透し始めました。
というのも、日本では終身雇用の時代が終わり、転職や再就職が増えたことで、OG・OBなどの退職した人を再雇用するようになった背景があります。
「出戻り社員」という言葉もよく耳にするのではないでしょうか。
転職が当たり前になり、「人材の流動化」が起こっているため、一定条件の退職者以外にも再雇用する機会を提供するべきという姿勢や、ただの社友会ではなく、人材採用のリソースとして活かせる集まりにするべきという観点から「アルムナイ制度」が注目されているのです。
実際に、2018年におこなわれた「再雇用の実態を調査するアンケート」では、72%の企業が「再雇用したことがある」と回答しまし。
【アルムナイ制度を活用している企業の代表例】
- ヤフー株式会社
- 株式会社ベーシック
- セプテーニ・ホールディングス
- サイボウズ株式会社
- デロイトトーマツグループ
- P&G
2. アルムナイ制度を設計する方法
注目されているとはいえ、「実際にアルムナイ制度を設計する方法」や「導入するための準備」について具体的にイメージがつかない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アルムナイ制度は設定するための準備が必要です。ある程度の知識がいるので、事前に確認しておきましょう。
2-1.アルムナイネットワークを形成する
まずは、アルムナイ制度を運営するためのシステムを形成します。具体的には、退職者の方に向けて「アルムナイネットワーク」と呼ばれるものを作成します。
手っ取り早いのはSNSグループをつくることです。そこに対し、復帰したアルムナイの働いている様子や、社内の雰囲気、最新動向など、多くの情報を定期的に提供していきます。
アルムナイネットワークは、アルムナイ同士の交流というよりは、アルムナイに企業の様子や情報を知ってもらう場と考えたほうが、活用しやすいでしょう。
2-2. アルムナイの交流の場を作る
次に、アルムナイ同士の交流の場を作りましょう。ピザパーティのようなミートアップや簡単な飲み会でも良いと思います。
直接会ってお互いに近況報告する場を設けることで、懐かしい元同僚に会う楽しみだけではなく、他の職種の情報を得ることもできます。
また、直接会う場を作れば、オンライン上で情報を発信するアルムナイネットワークでは分からない情報も交換できます。
アルムナイが今の職場で抱えている悩みについて異業種で働いている人、フリーランスになっている人から第三者の視点でアドバイスをもらうこともできます。
このように、アルムナイの交流の場で元社員は、自身の見解を広げることができます。
2-3. 定期的にアルムナイとのコミュニケーションを計る
元社員の中には、「再雇用してもらいたい」と考えている人もいます。こうした人たちと普段から連絡を取りあえる関係を構築することが重要です。
連絡を取る手段としては、ニュースレターも効果的です。
定期的にコミュニケーションをとり、再雇用の話をする前に直接連絡ができる関係になっておくことで、元社員の帰属意識が高まります。
また、コミュニケーションをとるだけではなく、退職後もキャリアアップのアドバイスや支援をすることも効果的でしょう。
2-4. アルムナイに仕事を依頼する/再雇用する
アルムナイの方と信頼関係を構築ができていれば、業務委託、アルバイトなどで仕事を依頼することも可能です。
「3年以上就業した人」や「役職が部長以上だった人」など条件を決めておいても良いかもしれません。
ここでのポイントは、アルムナイの方が上記のような雇用形態で社内で働く際は、居心地が悪くならないように配慮しましょう。
たとえば、現役社員たちに十分な説明をおこない理解を得るなど、受け入れ態勢を整えてから再雇用することが重要です。
人材不足が叫ばれる昨今、個人的に仕事を依頼したり、新事業の立ち上げを手伝ってもらうことは効果的です。
受け入れ側は働き手の特性を把握できていますし、働き手側はすでに社内事情がわかっていることもあり、スムーズな参画が可能になるでしょう。
3. アルムナイ制度運用のポイント
アルムナイ制度を運用する際は、メリットとデメリットを把握しておくことが大切です。
また、企業の現役社員たちに制度を理解してもらえるよう認知を広め、設備を整えることも重要です。
3-1. アルムナイ制度のメリット・デメリット
アルムナイ制度には、それぞれ7つのメリットとデメリットがあります。
【アルムナイ制度のメリット】
- 優秀な人材を確保できる
- 教育コストを削減できる
- 外部からの知見を獲得できる
- 新しいビジネスの創出につながる
- アンバサダーや顧客を確保できる
- レピュテーションリスクを軽減できる
- 円満退職できる企業へ成長できる
アルムナイ制度の1番のメリットは「優秀な人材の確保」です。
1度自社で働いていた社員は、「自社の組織や文化の中で活躍出来る適応力を持っている」「求めているスキルや経験を持っている」といったメリットを享受できる可能性が高いでしょう。
採用後に活躍できるかどうかは、「スキル」や「経験」だけでなく「組織・文化への適応力」も大きな影響を与えます。アルムナイは、この「組織・文化への適応力」が他社から転職してきた方に比べて大きいという特徴があります。
他にも、ゼロから会社を知ってもらったり、制度について説明する必要がなかったり、他社での経験を活かすことができたりと、企業にとって大きなメリットがあるでしょう。
【アルムナイ制度のデメリット】
- 客観的な視点が欠如する可能性がある
- 情報漏洩のリスクがある
- アルムナイとの関係維持のコストがかかる
- 退職者を歓迎しない社員がいる可能性がある
- アルムナイの理解を広める研修をおこなう必要がある
- 給与や待遇面を慎重に考慮する必要がある
一方で、アルムナイ制度を導入する際に注意すべき点もあります。
たとえば、あまりにもアルムナイの社員を再雇用しすぎてしまうと、多様性が薄くなり、会社を俯瞰して見ることができない組織になりかねません。
斬新な発想が無くなり、企業としての成長が止まってしまう可能性があるため、注意が必要です。
3-2. アルムナイ制度の認知と整備
アルムナイ制度を運用するために、現役の社員たちに認知してもらい、社内の環境設備を整えましょう。
アルムナイ制度の説明はもちろん、具体的にどのような人材を再雇用するかを細かく説明する研修をおこなったり、社内のイントラネットに掲載したりするのも効果的です。
アルムナイに対しては、再雇用した場合の給与や待遇などを具体的に事前に決め、説明しておくとトラブルに発展しません。
そして退職した後、つまりアルムナイになった時に企業からどのように支援するかも周知して、現役社員への認知を広めましょう。
4. 【3選】アルムナイ採用を支援するサービス
アルムナイネットワークを活用すると、簡単に退職者を再雇用できる環境作りができます。
しかし、自社でアルムナイネットワークの環境を構築するためには、一定のコストと時間がかかります。
そこで注目されているのが、他社が提供するアルムナイネットワーク環境の構築サービスです。本記事では、企業のアルムナイ採用を支援する3つの環境構築サービスをご紹介します。
4-1. Official-Alumni.com
株式会社ハッカズークが提供する「Official-Alumni.com」は、アルムナイ・リレーション特化型クラウドシステムです。
企業とアルムナイの間で、やりとりをする際に必要である基本機能が充実しています。
NPS仕様のアルムナイ・リレーション測定「Gauge」、アルムナイ・イベント管理機能などでアルムナイ制度の運営を快適におこなうことが可能です。
4-2. MyRifer Alumni
株式会社MyReferが提供する「MyRifer Alumni」は、リファラル採用活性化サービス「MyRefer」の機能の一つです。
退職した元社員をサポーター化してアルムナイ採用とリファラル採用を組み合わせて促進することができます。
MyRifer Alumniでは、退社した社員が企業からの情報を確認したり、退職者のデータ管理・マネジメントしたりできます。
退職者がアンバサダーになる機能や、それぞれの退職者がどのコンテンツを閲覧したか分析できるため、企業に注目している退職者がすぐに分かります。
4-3. エアリーfor Alumni
EDGE株式会社が提供する「エアリーforアルムナイ」は、人事課題解決にOB OGの力を借りるためのHR Techサービスです。
大手企業利用社数No.1で、600社・150万人以上が活用しています。アルムナイ制度のためのプールが充実しており、成功実例が多いのがメリットです。
またセキュリティ性が高いので、アルムナイと社内情報のやりとりをしても、情報漏洩の危険性を抑えられます。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。
アルムナイ制度を運営するためには初期費用や研修などの手間がかかりますが、その分即戦力となる人材を効果的に採用できたり、企業の評判をよくできたりとメリットが多いです。
自社独自でのアルムナイネットワークの構築・運用が難しい企業は、他社が提供するアルムナイとの関係構築支援サービスを利用してみてはいかがでしょうか。
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