6時間睡眠は2日徹夜と同じ?|長時間労働を防ぐ労務管理とは | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

6時間睡眠は2日徹夜と同じ?|長時間労働を防ぐ労務管理とは | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

6時間睡眠は2日徹夜と同じ?|長時間労働を防ぐ労務管理とは

  • 労務
  • 勤怠管理

睡眠-640
※本記事は、港国際社会保険労務士事務所 代表の近藤由香さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

突然ですが、「6時間睡眠を2週間続けると、2日連続で徹夜をした時の状態のパフォーマンスと同じ状態になる」ということをご存知でしょうか。

6時間睡眠と聞くと、「自分は他の人に比べて寝ている方だ」と感じる方が多いかと思いますが、じつは知らず知らずのうちに2日徹夜と同じ状態に陥っている可能性があります。

今回は、睡眠時間をしっかり確保するためにも必要とされる長時間労働への解決策をご紹介します。

1. ペンシルベニア大学とワシントン大学がおこなった実験

このペンシルベニア大学とワシントン大学がおこなった実験では、「普段7~8時間の睡眠をとる48人の健康的な男女」が集められました。そして「8時間睡眠を2週間続けるグループ」と、「6時間睡眠を2週間続けるグループ」に分け、実験期間中、被験者たちの身体的、および精神的パフォーマンスがテストされました。

Chronic restriction of sleep periods to 4 h or 6 h per night over 14 consecutive days resulted in significant cumulative, dose-dependent deficits in cognitive performance on all tasks.

このテストの結果によると、8時間眠った被験者たちには、14日の実験期間中、認知機能の低下や、注意力の減退、あるいは運動能力の低下は見られませんでした。一方6時間しか眠らなかった被験者たちは、日を追うごとにパフォーマンスを低下させていきました。そして2週間後には、6時間睡眠のグループのパフォーマンスは、連続2日間睡眠をとらなかった時と同じ程度まで低下していたとのことです。

2. 起床後15時間経過した脳は“酒気帯び運転”と同じ

飲酒-640

ネイチャー誌に掲載された「fatigue, alcohol and performance impairment」によると起床後15時間経過した脳の状態は“酒気帯び運転”と同じくらいに能力が低下している状態なのだそうです。

Here we equate the performance impairment caused by fatigue with that due to alcohol intoxication, and show that moderate levels of fatigue produce higher levels of impairment than the proscribed level of alcohol intoxication.

この記事によると、朝6時に起きた人が9時から18時の定時の後、残業をして21時を過ぎるとお酒を飲んでいなくても、“酒気帯び運転”と同じ能力になってしまうということです。

これらの実験や論文を見ると、「残業」時間に当たる時間が、いかに効率が悪い時間ということが分かるのではないでしょうか。そして企業から見ても、残業は普段の1.25倍の残業割増がつきますが、割高の残業代を払っている時間帯というのは、極端にいうと、「酒気帯び運転」と同じパフォーマンスしかできない社員に割り増しをつけて給与を支払っているということになります。ですから、無意味な残業コストを削減する意味でも、企業として長時間労働にメスを入れる必要があるということなのです。

3. 長時間労働への労務管理

残業-640

そもそもなぜ人は残業をするのでしょうか。「仕事が終わらないからだ」というお叱りの言葉が聞こえてきそうですが、

  • 営業系では「所定外でないとできない仕事がある」
  • 専門職系では「仕事量が多い」「予定外の仕事が突発的に飛び込んでくる」

これらが残業の多い理由のようです。

時間管理を徹底し、労働時間の実態を把握することが労務管理上大切です。実態を把握できない場合は、会社として業務上の負荷が判断できず、会社として社員の健康管理をすることができないからです。

また、勤務間インターバル制度も有効です。これは勤務と次の勤務の間に一定の時間を空ける制度です。勤務間インターバル制度があれば、睡眠時間が確保でき、上記のような睡眠不足の状態で翌日出勤せざるをえないことは避けられます。パフォーマンスの低下した状態で勤務し続けることが削減されるのではないでしょうか。

4. 根本的原因の対策へ

対策-640

長時間労働の対策は時間管理、勤務間インターバル制度という外側からのアプローチと同時に、「なぜ残業が起きているのか」という本質的な部分にメスを入れることも大切です。さまざまな企業を見ていて、業務が属人化している、お客様情報も共有されていない、システム・技術が共有されていないなどの課題がある場合が多いように感じます。

  • 業務、お客様情報を「見える化」すること
  • システム、技術を全員(もしくは一定の社員)が使える状態にすること
  • 担当を複数の社員で受け持つこと

これらがとても有効になります。まず自社ではどの取り組みから始めるのがベストなのか考えてみてはいかがでしょうか。

人事業務に役立つ最新情報をお届け!メールマガジン登録(無料)

HR NOTEメールマガジンでは、人事/HRの担当者として知っておきたい各社の取組事例やリリース情報、最新Newsから今すぐ使える実践ノウハウまで毎日配信しています。

メルマガのイメージ

関連記事

キャリア開発とは?導入する意義とメリット・デメリットをくわしく解説

キャリア開発とは?導入する意義とメリット・デメリットをくわしく解説

「キャリア開発とは」 「キャリア開発を取り入れる企業のメリットが知りたい」 「キャリア開発を進める正しい手順が知りたい」 上記のようにお考えの方は多いでしょう。 キャリア開発とは、従業員のより良いキャリア構築のため、企業 […]

  • 労務
  • タレントマネジメント
2024.09.30
HR NOTE 編集部
【社会保険適用拡大前にチェック!】2024年10月へ向けた準備リスト

【社会保険適用拡大前にチェック!】2024年10月へ向けた準備リスト

10月からの社会保険適用拡大が迫ってきました。従業員数51人以上*の事業所は、短時間労働者の社会保険適用拡大に備えて準備を進められていることと思います。 *適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済 […]

  • 労務
  • 社会保険
2024.09.05
金井一真
退職金制度なしの会社の割合とは?メリット・デメリットも解説

退職金制度なしの会社の割合とは?メリット・デメリットも解説

「退職金制度なしの会社について、違法性や割合を知りたい」 「退職金制度なしに関して企業・従業員のメリット・デメリットを知りたい」 上記のような疑問をもつ方も多いでしょう。 実際、2023年時点において4社に1社の割合で退 […]

  • 労務
  • 福利厚生
2024.08.30
HR NOTE 編集部
定着率とは?計算方法と定着率向上施策の取り組み方を解説

定着率とは?計算方法と定着率向上施策の取り組み方を解説

「定着率とは?」 「定着率の計算方法とは?」 「定着率を向上させる取り組みを知りたい!」 定着率とは、入社してから所定期間を超えて働いている従業員の割合です。 定着率が低いと人材を確保できなかったり、採用コストが増加した […]

  • 労務
  • 福利厚生
2024.08.30
HR NOTE 編集部
退職金制度の導入・見直しの方法は?相場・計算方法・廃止の可能性について解説

退職金制度の導入・見直しの方法は?相場・計算方法・廃止の可能性について解説

「退職金制度の導入・見直し方法を知りたい」 「退職金制度の廃止を検討している」 「退職金制度の相場や計算方法がわからない」 上記の悩みを抱えている経理・労務担当者の方は多いでしょう。 退職金制度を導入するタイミングは、創 […]

  • 労務
  • 福利厚生
2024.08.30
HR NOTE 編集部

人事注目のタグ