近年、働き方改革の推進やリモートワークの浸透が進むなかで、人材の流動化やワークモチベーションの多様化が進んでいます。
「社員に長年勤務をしてもらいたい」「高い生産性を持って働いてもらいたい」と考える人事担当者や経営者は、会社と社員との“エンゲージメント”について考える必要が出てきているのではないでしょうか。
本記事では、これから重要視されるであろうエンゲージメントの意味についておさらいしつつ、社員のエンゲージメントを高める効果やその方法について解説していきたいと思います。
目次
従業員の定着率の低さなどが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、「従業員満足度のハンドブック」を無料でお配りしています。
従業員満足度調査の方法や調査ツール、調査結果の活用方法まで解説しているので、従業員のモチベーション向上や社内制度の改善を図りたい方はこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. エンゲージメントとは?意味や定義を解説
エンゲージメント(engagement)とは、そもそも「契約」や「約束」といった意味を持つ言葉で、ビジネスシーンのさまざまな場面で使用されています。
マーケティング業界では、企業自体や商品ブランドに関する消費者の深い関係性を意味し、TwitterやFacebookなどの「エンゲージメント数/エンゲージメント率」などで見覚えのある人も多いかもしれません。
このように多くの場面で使用されている「エンゲージメント」ですが、人事領域においては社員の会社に対する「愛着心」「思い入れ」といった意味で使用されており、すなわり「会社と社員が相互に信頼関係を持っている度合」を指します。
会社と社員が相互に信頼関係を持つことは、社員同士の縦と横の双方の関係が円滑になるとともに、社員が「会社の成長に貢献したい」という気持ちで企業に在籍する状態となります。
また、書籍「エンゲージメント・マネジメント戦略」を参照するとエンゲージメントはこう定義されています。
社員の一人ひとりが組織に対してロイヤリティを持ち方向性や目標に共感して『心からの愛着』をもって絆を感じている状態
このように、ただ単に「会社が好き」という気持ちだけではなく、仕事のなかで結果を出し企業の成長に貢献しようとする意欲を持ち、やりがいや成長を実感することで会社や仕事に対し向上心を持っている状態を指しています。
社員のエンゲージメントが向上すると会社に貢献したいという思いが強くなるため、売上や利益の向上が望めますし、これにより離職率が低下する可能性も高くなります。
離職率が低下すると採用コストを抑えることができ、その抑えた費用を社員に還元をすればさらにエンゲージメントの向上が期待できるでしょう。
1-1. 顧客のエンゲージメントとは?
顧客のエンゲージメントは、顧客の企業に対する愛着や思い入れを意味します。企業に対してよいイメージを持っており、商品やサービスを継続的に利用してくれている場合は、顧客エンゲージメントが高いといえるでしょう。
顧客エンゲージメントを向上させることで売上アップにつながるのはもちろん、SNSでよいイメージを拡散させてくれる、商品やサービスに対する貴重な意見を送ってくれる、といった効果も期待できます。顧客エンゲージメントは従業員エンゲージメントと同様、企業の成長に欠かせない要素といえるでしょう。
2. エンゲージメントが注目される背景
近年、エンゲージメントが人事領域で注目される背景には、日本の人事制度の変化があります。
2-1. 人材の流動化
終身雇用や年功序列といった従来の人事制度から成果主義型の報酬制度へ移行する企業が増え、労働者側はより良い環境を求めて転職をするようになりました。
こうした背景から長期的な業績向上を目指す人事施策の重要性が認知されるようになりました。
優秀な社員ほどそれを感じやすくなるため、そういった組織の構築に欠かせないのがエンゲージメントとなります。
2-2. エンゲージメントが高い組織は生産性が高い
人材コンサルティングをおこなう株式会社リンクアンドモチベーションと慶應義塾大学の共同研究によると、エンゲージメントが高い組織は営業利益率および労働生産性にプラスの影響をもたらすことがわかりました。
そのためエンゲージメントの高い組織を構築できれば、人材は組織に定着し、長期的に企業の業績や生産性が向上することを期待できます。
個人と企業、双方の成長に貢献するエンゲージメントは、人材流出が課題となる現状において、重要な経営戦略の一つになっています。
3. エンゲージメントと従業員満足度・ロイヤリティの違いとは?
エンゲージメントに似た言葉として良く使用されているのが、「従業員満足度」と「ロイヤリティ」です。
本章では、エンゲージメントと従業員満足度やロイヤリティはどのように異なるのか解説していきます。
3-1. エンゲージメントと従業員満足度の違いとは?
従業員満足度は、社内の人間関係や労働環境、報酬などにどれくらい満足しているかを表現する言葉です。
文字通り、“社員の満足度”を表しており、上図のように福利厚生や働く環境を元に会社自体の評価が決まります。
そのため、待遇が悪化した場合、従業員満足度は失われる可能性が高いでしょう。
また、社内の環境や福利厚生を改善した場合、従業員満足度はアップしますが、必ずしも社員の成長や業績アップにつながるわけではありません。
一方、エンゲージメントの場合は、会社と社員の信頼関係をもとに成り立っているので、会社の経営状況が厳しいときこそ支えあうような強さがあります。
従業員満足度が高いだけの会社は、その会社への満足度が低下すると会社に残る必要がないと感じてしまうため、社員は支え合うよりも転職を考えるでしょう。
エンゲージメントが高い会社は、社員が自発的に貢献をしたいと思うことができるので、各個人が能力を発揮し業績のアップにつながります。
3-2. エンゲージメントとロイヤリティの違いとは?
ロイヤリティ「Loyalty」とは、「忠誠」や「忠義」という意味です。
似た言葉としてロイヤリティ(Royalty)がありますが、印税や特許使用料などの権利に関する言葉となるため、会社と社員の関係を示す言葉としては全く別の言葉になります。
そして、エンゲージメントの意味は、ロイヤリティとも異なります。
エンゲージメントは、社員が会社に対して愛着心を持っており、社員自身から前向きに行動し会社の業績アップにつながるといった、社員と会社が対等の立場で共に成長していく関係です。
一方でロイヤリティは、社員が会社に対して忠誠心を持っているものの、会社のほうが強い立場(主従の関係)にあります。
会社が権力を持っているため「社員が会社に尽くす」というような状態であり、終身雇用制度や年功序列制度などの会社で良く見られる日本企業の特徴的な社風ともいえます。
4. エンゲージメントが高い状態とは?
次のような状態であれば、エンゲージメントが高いといえるでしょう。
- 社員が仕事に対して貢献したいと思う意識がある
- 社員が会社と仲間を信頼できている
- 社員が自分たちのビジョンやあるべき姿に共感/理解している
- 社員同士のコミュニケーションが円滑になっている
- 会社が各社員の成長を大切にしている
エンゲージメントが高い状態は、社員同士の人間関係が良好なだけではなく、仕事そのものに対して、社員自身がポジティブに取り組めている状態となります。
仕事内容にもやりがいを感じ、顧客から感謝されるほうが、より前向きな気持ちで仕事に取り組めるのは言うまでもありません。
そして、社員が本来の力を発揮するには、会社と社員、または社員同士での信頼関係を築くことが大切です。
近いチーム内や部署単位での関係だけではなく、社員と会社といった遠い関係でも信頼を構築することが求められます。
会社と社員という縦の関係、社員同士の横の関係、双方の信頼関係があることで業績のアップにつながります。
5. エンゲージメントを高めるメリット
社員のエンゲージメントを高めることには、以下のようなメリットがあります。
5-1. 売上アップを期待できる
エンゲージメントが高い状態の場合、会社に貢献したいという気持ちが強くなり、やる気やモチベーションが高まるため、売上や利益の向上を期待できます。仕事に対して前向きに取り組んでくれるため、生産性が向上したり新しいアイデアが生まれたりするケースもあるでしょう。
愛着のある会社を成長させたい、という同じ目標に向かって進むことができ、組織力や競争力の強化にもつながります。
5-2. 社員の主体性が高まる
社員の主体性が高まることもエンゲージメントを向上させるメリットのひとつです。社員のエンゲージメントが高ければ、会社のために動きたいという気持ちが強くなり、主体的に意見を言ったり、業務改善の提案をしてくれたりする場面が増えるでしょう。
上からの指示がなくても自主的に動いてくれることが増えるため、上司が部下へ指示を出したり業務内容を管理したりする手間を省くこともできます。
5-3. 離職率の低下につながる
人材の流出を防ぎ離職率を低下させることは、企業の大きな課題です。離職率を下げるためには、給与を上げるといった待遇の改善も重要ですが、愛着を感じてもらえるよう心がけることも必要です。
エンゲージメントが高い状態を維持すれば、今の会社で働きたい気持ちが強くなり、早期離職を防止できるでしょう。
5-4. 新しい人材の確保につながる
エンゲージメントを向上させれば、離職を防止できるだけではなく、新しい人材の確保も期待できます。愛着を感じていると、自分の会社を紹介したいと考えるようにもなり、就職活動をしている大学の後輩や転職活動をしている知人に自社の魅力を伝えてくれるケースもあるでしょう。
紹介によるリファラル採用を強化できれば、採用コストの削減にもつながります。
6. エンゲージメントが低いことによる問題点
エンゲージメントを高めることで多くのメリットを得られる一方、低くなるとさまざまな問題が発生します。ここでは、エンゲージメントが低いことによる問題点について詳しく見ていきましょう。
6-1. 社員のモチベーションが低下する
エンゲージメントが低い状態の場合、社員のモチベーションまでも低下してしまうため注意しなければなりません。与えられた仕事だけこなせばよい、といったネガティブな考えになってしまい、新しいアイデアは生まれにくくなります。
会社に愛着がないため、社内に問題があっても前向きな改善案を提案しようという気にならず、環境がどんどん悪化してしまうケースもあるでしょう。
6-2. 優秀な人材が流出してしまう
優秀な人材が流出してしまうことも、エンゲージメントが低いことによるデメリットのひとつです。エンゲージメントが低いことは、社員が仕事に対する熱意ややりがいを失っていることを意味します。
とくに優秀な人材は、よりよい職場を探して転職活動を始めてしまうでしょう。離職率が高まると、採用活動のための手間やコストも発生してしまいます。
6-3. 顧客エンゲージメントの低下につながる
社員のエンゲージメントが低下することで商品やサービスの品質が悪くなり、顧客のエンゲージメントまで低くなってしまう可能性もあります。
今までの顧客が離れていってしまったり、新しい販路を開拓できなくなったりして、企業全体の売上が低下してしまうケースもあるため注意が必要です。
7. エンゲージメントを高める方法
従業員エンゲージメントを高めるためには、さまざまな方法があります。
ただし、社風や地域性などによって最適な方法は異なるので、他社のやり方をそのままコピーしてもうまくいくとは限らず、自社に合ったやり方を模索する必要があります。
従業員エンゲージメントの高い企業に共通しているのは、全社員が企業のビジョンを共有し、壁をつくらないコミュニケーションをとり、結果として互いに尊敬し合える関係が作られていることです。
従業員エンゲージメントを高めるには、社員が適度なストレスを感じることもときには必要といえるかもしれません。
7-1. 社内イベントの開催や表彰によるやりがいの創出
社内の働きにやりがいを創出させるためには、社内イベントなどを開くと良いでしょう。
表彰式を実施したり報酬アップをしたりすることで社員がやりがいを感じ、またそれを見た社員同士で切磋琢磨する環境が生まれ、より業績アップにつながるでしょう。
しかし、このような施策は目の前の短期的な効果にしかならない可能性もあります。
長期的な視点で社員にやりがいを感じてもらうには、それぞれの得意領域や意向を分析し、それぞれの職場で活用できるような取り組みが重要です。
各能力や経験値に応じた適材適所の推進や、挑戦する機会を与える社内フリーエージェント制などを導入するのも良いかもしれません。
7-2. 働やすい職場環境作り
働きやすい環境を構築すれば、仕事へのモチベーションを維持し、心身ともに健やかな状態を保つことができます。
そして、社内のコミュニケーションが活発化することで、組織への愛着心が生まれやすくなります。
働きやすい環境作りとしての健康経営、ワーク・ライフ・バランスの推進は、エンゲージメントを高めるうえでも重要です。
7-3. 目指す姿の共感
会社のビジョンへの共感は、エンゲージメントを向上させるうえで欠かせないでしょう。
もしも、それぞれが勝手な方向に進んだり、何のために仕事をするのか不明瞭になったりすると、目的意識が薄くなり組織が崩壊してしまう可能性もあります。
企業が今後進む方向性を統一することで、縦と横のつながりが強まり、業績アップにつながっていきますので、経営者から繰り返しビジョンについて発信したり、社内でビジョンに関するテストを実施したりするなど、社員がしっかりと認知できるような形を整えましょう。
7-4. 社員の成長の支援
現在では、職務への満足度を高め、それぞれの社員が成長を実感できる仕組み作りに取り組むことも大切になってきています。
スキルアップやキャリア形成に役立つ研修を実施するなど、社員それぞれの成長を会社として支援するのも良い方法でしょう。
また、エンゲージメントの高い組織作りにおいては、上司のコミュニケーション力も重要です。
マネジメント力やリーダーシップの強化は、組織のコミュニケーションを円滑にし、さらなるエンゲージメントの向上に役立ちます。
7-5. サーベイの活用
エンゲージメントを高めるためには、サーベイの活用が効果的です。
エンゲージメント・サーベイを活用することで、社員が組織や業務に対してどのような感情を持っているのか調査できます。
社員の「本音」を知ることで、今の会社に足りていないことを把握し、改善策を練ることが可能となります。
【エンゲージメントサーベイの質問項目例】
- 仕事上で、自分に何が期待されているかを理解している
- 自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている
- 仕事をするうえで、もっとも得意とすることをおこなう機会を毎日持っている
- 最近1週間で、良い仕事をしていると認められたり、褒められたりした
- 上司または職場の誰かが自分を一人の人間として気遣ってくれる
- 仕事上で、個人の成長を応援してくれる人がいる
- 仕事上で、自分の意見が頼りにされていると感じる
8. エンゲージメントを高めて優秀な人材の流出を防止しよう!
働き手の流動化が進むなかで、組織が成長していくためには、社員とのエンゲージメントを向上させることが欠かせません。
長期的に会社に携わってくれる優秀な社員を手放さないために、またより強い組織を作っていくために、今一度社員のエンゲージメントを見直してみましょう。
従業員の定着率の低さなどが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、「従業員満足度のハンドブック」を無料でお配りしています。
従業員満足度調査の方法や調査ツール、調査結果の活用方法まで解説しているので、従業員のモチベーション向上や社内制度の改善を図りたい方はこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。