カップル・家族のお出かけにカメラマンが同行し、記念となる最高の一枚を残す写真撮影サービスをおこなっているスタートアップ企業ラブグラフ。
ラブグラフは現在15名の社員がいますが、全社員がリファラル経由での採用とのこと。誰もが知っているようなメガベンチャー出身の方も何名か在籍しています。彼らはなぜ、スタートアップであるラブグラフに転職したのか。
今回は、会社を立ち上げた代表の駒下さん、リファラル採用でメガベンチャーから転職してきたCOOの中井さん、エンジニアの成澤さんの3名に当時を振り返っていただき、「どのような経緯でラブグラフに入社したのか」「採用において意識していることは何か」などをお伺いしました。
3人のお話を聞いていると他社に比べて企業規模が小さく、提示条件が低くても、優秀な人材の採用は可能だと感じました。では、どのようにラブグラフは採用をしてきているのか、ご参考となれば幸いです。
駒下 純兵 | 株式会社ラブグラフ 代表取締役
1993年生まれ、大阪府出身。大学から始めたカメラの経験を活かしてミスコンや広告写真の撮影、富士フイルム写真教室の講師などを務める。2014年、「得意な写真を通して人を幸せにしたい」という思いで撮影した友人カップルたちの写真が掲載されたHPがネットで話題を呼び全国から撮影依頼が入るようになる。全国からの依頼に対応するため、北海道から沖縄までカメラマンを採用。2015年株式会社ラブグラフ設立し、代表取締役に就任。
中井 健太 | 株式会社ラブグラフ 取締役COO
2014年4月楽天入社。楽天グループ全事業部横断でマーケティングを統括するグループマーケティング部に配属され、TVCMを中心とした大規模マスマーケティングに従事。その後、2016年2月に株式会社ラブグラフに参画。取締役COOとして主にビジネスサイドを重点的に担当。個人の活動では経営学研究者として慶應ビジネススクールや一橋MBAでの講演経験を持つ。
成澤 克麻| 株式会社ラブグラフ エンジニア
2014年4月にDeNAに入社。ソーシャルゲームの運用エンジニアとして2年間を過ごした後、2016年7月に株式会社ラブグラフにジョイン。エンジニアリングを軸に、マーケティングやカメラマンマネジメントなど社内の様々なチームに参画。ラブグラフのカメラマンとしても活動中。
目次
ラブグラフとは?
―まずは御社の設立の経緯や事業内容を教えてください。
設立のきっかけは、僕自身がもともと学生時代からカメラマンをしていて、その活動の一環で「写真を通して人を幸せにしたい」「もっと人の人生に寄り添えるような写真を撮りたい」と思ったことからです。
そんなときに「カップルのために最高の1枚の写真を撮ってあげたら、結婚・出産後も見返してもらえるのではないか」と思い、カップル向けの写真を撮りはじめたんです。別にそれをビジネスにしようとは全然思っていなくて、作品集のような感じでWEBサイトやSNSに掲載していました。すると、それを各メディアが取り上げてくれて、そこから「一緒に写真展しませんか」と仕事の相談もくるようになり、全国的にラブグラフというサービスが話題になったんです。
そこから、多くのカメラマンの方と連携して全国からくる依頼の対応をしていたのですが、規模も大きくなってきて、「これは会社にした方がいいな」と、2015年の2月に株式会社ラブグラフを設立しました。
―具体的にどのようなシチュエーションの写真を撮るのですか?
記念日などが多いですね。たとえば1年記念日で旅行に行った際に、旅行先での思い出に残る最高の一枚を写真を残す。彼女の誕生日に彼氏がサプライズでいつまでも記念になるようなとっておきの写真を残す。それ以外にも結婚や出産などさまざまなシーンで活用いただいています。
ラブグラフで撮影したフォト
―現在、御社は社員の方が15名ほどいらっしゃいますが、どのように採用されてきたんですか?
結果として採用した社員でいうと100%がリファラル採用です。COOの中井やエンジニアの成澤もリファラル採用で入社しています。2人ともメガベンチャー出身なのですが、なぜか有名企業から弊社に入社してくれている社員が結構います。
COO中井さんの入社理由|「自分の将来の目的」と「ラブグラフでの成長」がハマった
同じ大学だったが、5分程度しか話したことがなかった
―まずは中井さんとの出会いに関してお伺いさせてください。
僕と中井は2人とも関西大学出身で一緒なんですけど、大学時代は接点は一度だけですね。「関大の面白い学生が集まってるパーティーあるからおいでよ」と誘われて行った先で、中井に会ったのですが、なぜか横にロシア人の美女を連れていました(笑)。僕、そのときカメラぶら下げていたので、中井が「カメラやっているなら、この子撮ってよ」といった感じで会話しただけです。
確かに言われて見ると最初はそんな感じだったかも・・・(笑)。そこから全く連絡も取りませんでしたね。「つながっているけど誰だろう」ってあるじゃないですか。そんな関係でしたね。
大学時代はその1回しか会ってないわけです。
1回しか会ってないっていうか、もう5分ぐらいしか話していない。
そこから、Facebookなどで「ラブグラフというカップルを撮影する活動をやっています」「会社を設立しました」と日々投稿をしていたら、それを見てくれていたみたいで、いきなりある日突然、2015年の5月ですかね、中井から連絡がきたんです。「はろー、お久しぶり。ラブグラフの調子はいかが?」って、いきなり。それで、「お久しぶりです」って僕返してるんですけど、「誰やねん」と思って(笑)。
これを送った経緯としては、「ラブグラフを設立しました」「東京にたまたま来てます」といった投稿をSNSで見て、一回会ってみたいなと思って連絡した感じです。
前職では、テレビCMなどのマスマーケティングに携わっていたのですが、入社して1年ぐらい経っていて、「いろんな方に会って話を聞いてみたい」とすごく思っていたタイミングだったんです。その中でスタートアップの経営者とは話す機会がなかなかなかったので、連絡してみました。
僕は中井がどこの会社で働いてるかも知らなくて、「ただなんか自分より年上の人が声掛けて来たから会おう」というテンションでした。
―久しぶりに会ったとき、はじめはどんな感じだったんですか?
まともに待ち合わせができないという状況でした(笑)。
駅で待ち合わせしたんですけど、お互いの外見がわからなくて、電話をかけたら目の前にいたのが駒下でした。「おお~!」みたいな(笑)。そこからはギクシャクもせず、すんなりとビジネスの会話をしていましたね。
―会ってからはどのような話をされたのですか?
会社は設立したものの、具体的なビジネスアイディアはなく、「世界中の人を撮ってあげたい」「世界中のカップルや家族の幸せをつくっていきたい」といったコンセプトだけが明確な状態でした。なので、そういった想いの話ばかりしていた記憶があります。
駒下からも相談があって、会社を設立したものの、「ビジネスの勉強をするためにリクルートに入って並行で会社をやることについてどう思いますか?」という話をされたんです。
「いや、それはない」と。他社で働きながらこの事業を大きくできるわけがないと。駒下の話を聞いて「本当に良い事業だな」とすごく感じたので、「じゃあそれだったら俺の方でビジネスサイド見るよ」って感じで話をしました。
―いきなりでもうそこまで話が発展したのですね。
僕の個人的な目的とラブグラフの環境がハマったことが大きかったと思います。将来的には、真理を追究していくような研究者になりたいという目標がありまして、実は大学時代に心理言語学を研究していて、論文を書いて学会で評価もされていたんです。ただ、それが世に一切広まらないんですよね。そのことを痛感して、そこからマーケティングといった、世に広めるための方法を知りたいと思い、前職に入社したんです。
そこで2年間修業して、「今度は自分の力で広げていきたい」と考えていたときに、駒下に出会い、次のステージとしてラブグラフというサービスを世に広めていきたいと強く思ったんです。そこから少しずつ関わることが増えていって、1年近く経った2016年の2月に入社をしました。
確かに、入社までにいろいろやってくれましたね。たとえば、2015年の8月ぐらいに、会社のビジョンやコンセプトを固める合宿をおこなったのですが、そこに中井もきてくれました。
むしろ「合宿やるからとりあえず日光に集合ね」という感じでした。外部の人間だけどいいのかなって(笑)。それからも、事業やサービスの展開について、話合っていった感じですね。
ちなみに僕、1回入社を断られてるんですよね。
―え、そうなんですか!?
2015年10月ぐらいに「転職しようと思っている」という話をしたら、「ちょっと今じゃない」って言われたんです。「いやもうすぐにでもラブグラフに行きたい、Now or never(今しかない)だ!」みたいな感じで言ったら、「今じゃない」って。
その後も変わらずに関わり続けていたのですが、結局正式に入社したのは2016年の2月。会社が2期目に突入するタイミングと、駒下が大学を卒業して事業にフルコミットことを決めたタイミングですね。
僕の中で社員を雇うという決断をそのタイミングでしたんです。社員を雇うか雇わないのか、業務委託なのか社員なのか、ずっと悩んでて・・・。この差って結構大きいんです。
多分ビビっていたんでしょうね。自分自身の覚悟の問題。ビビっていたので、中井に対しても「今じゃない」って言っていたのかもしれないです。ただ、「中井とならいけるな」という気がしたので、覚悟を決めました。
条件が下がってでも、なぜスタートアップに転職したいと思ったのか
―ちなみに条件面の部分で、前職からスタートアップに転職するとなると、給与も下がることがあると思うのですが、そのあたりの折り合いはどうだったのでしょうか。
今でも不思議なんですよね。なんで来てくれたのか。スタートアップに来たいっていう人間は基本的にクレイジーだと思っているのですが(笑)、なんで来てくれたんだろうって僕も聞きたいですね。
多少なりとも下がった部分はありますが、条件面で言うとそんなに気にはしてなかったですね。短期的に収入が落ちることを嫌がる方は多いとは思うのですが、長期的な視点で見た時に、その差分を自分への投資という意味で考えると、別に悪くはないと思います。
多分、中井がいなかったらラブグラフはここまで成長していないと思います。これは社員全員に言えることですが、中井をはじめみんながいなかったら、僕は多分今頃死んでるだろうなと本当に思いますね。
圧倒的に僕よりもできる人が集まってきてくれているので、自分が思いつかなかったような新しいことがどんどんできて広がっていきますし、それを見てると僕自身のレベルも上がってくるんですよね。中井は安心して背中を任せられる頼もしい存在なので、僕は他のことに集中できますし、新しいチャレンジもしやすいですね。
今振り返ると会った時はこんなことになるなんて思ってなかったですね。
後で知ったのですが、駒下とは高校も一緒でしたからね(笑)。僕が高校3年生のときに駒下が1年生だったんですけれど、不思議な出会いですね。
エンジニア成澤さんの入社理由|ビジョンに共感しなければ転職しなかった
たまたまTwitterでリツートしたことがきっかけ
―成澤さんが入社するまでの経緯を教えてください。
僕は2016年の7月の中旬に入社しました。前職では、ソーシャルゲームの運用のエンジニアとして働いていました。初期の開発が終わってすでに世の中にリリースされているゲームの機能改修やコンテンツの拡充などをしていました。
そんな中、僕も駒下と変な感じで出会っています。
―駒下さんとはどのように出会ったのですか。
30人ぐらいで住んでいるシェアハウスがあるのですが、そこで一緒だったんです。ただ、駒下とはそんなに関わりはありませんでした。たまにみんなでわいわいやるイベントの時に、ほんと1、2回くらいちょっと話していたくらいです。「ラブグラフという会社で、写真で面白いことをやっているな」ということくらいしか知りませんでした。
僕の成澤の印象は「同じ家に住んでるカメラ好きなお兄さん」という感じですね。エンジニアだということも知らなかったですし、どの企業で働いているのかも知りませんでした。
進展したのは、Twitterでのやりとりですね。2017年の3月ぐらいだと思うのですが、前職で2年間働いて、自身のスキルアップやキャリアについて考えていた時期でした。
僕は趣味でカメラをやっていて、わりと頻繁に写真をSNSに投稿しているのですが、そのときたまたまTwitterにあげた写真を駒下がリツイートしたんです。その頃の駒下はフォロワーが1万人以上いるかなり大きいアカウントでした。僕はまだその頃はフォロワー数1000もないアカウントだったので、「リツイートしてくれた、うれしいな」といった感じで、駒下に「ありがとう」とメッセージを送ったんです。すると、「すごい素敵な写真撮られますね」という返信がきて、「あれ?なんでそんなに他人行儀なんだろう」って思っていたんです。
そしたらすぐその後に、「も、もしかして成さん?」みたいな、すごいアホっぽいメッセージが送られてきて、「気づいてなかったんかい」と(笑)。たまたまTwitterのタイムラインを見たときに綺麗な写真だと思ってリツイートをしたら、それが同じシェアハウスにいる人間だったんです。
僕、フォロワーが1万強いたので、気づかなくてもおかしくなかったのですが、たまたま見て「すごくいい」と思ったんです。
それが職場で仕事しているときに目の前で起きていました。駒下が「すごいいい写真来たー!!え、同じ家に住んでる人!?」って。そもそも駒下がシェアハウスに住んでいることも僕知らなかったんで、「同じ家に住んでる人」って言われても意味が分からない。同居人でカメラマンでエンジニアって言われても全然意味が分からない(笑)。
それで距離が縮まって、キャリアについて考えていた時期でもあったので、ラブグラフの仕事について駒下から色々話を聞いたんです。そこですごく魅力的だと感じたので、もう「入社させてください」って言って、3か月後ぐらいに入社しました。
ビジョンに共感しなければ、おそらく転職しなかった。
―どの辺りが魅力に感じたんですか。
3つあるのですが、1つ目は、インフラからフロントエンドまで、何でもできるようなエンジニアになりたいという想いがあったので、そういった環境に飛び込めるのは面白そうだと思ったことです。
2つ目は、カメラがすごく好きなので、写真のサービスに携われるということです。全国のカメラマンが納品してくれる写真を全部見るようにしているのですが、すごく勉強になりますし、写真好きに関してはすごい楽しい環境だなと思います。
3つ目、これが一番大きいのですが、ビジョンの部分になります。正直、ビジョンに強く共感していなければ、スタートアップに転職するという決断をしていなかったと思います。実際に駒下と最初に会って話した時に聞いたビジョンがすごく魅力的で、こんな幸せな世界観をつくるために一緒に働きたいと思ったのがすごく大きかったです。
―条件面ではいかがでしたか?
まあ、下がった部分はありますが、それに関しては完全に中井と同じですね。給与よりもスキルアップができる環境だと感じたことと、2年間とか3年間、ラブグラフを拡大することに必死になって取組んで、仮にダメだったとしても、そこで充実して楽しかったら、それはそれでいい人生かなと思えたんです。
成澤も入社してくれてなかったら、今僕は死んでいると思います。エンジニアでもあり、カメラマンでもあるんで、カメラマンとの細かいコミュニケーションを取ってくれるんです。現場のカメラマンとエンジニアって距離が遠くなりがちなのですが、つなぎ役として円滑に回してくれてるのはすごく助かっています。
採用では「ビジョンの共感」と「無理のないありのままの自社を知ってもらう」ことを意識
採用で意識していることはビジョンに共感してくれるかどうか
―採用で意識していることはありますか?
あまり大きく見せない、嘘をつかないということは意識しています。無理せずにちゃんと自分の思ってることを本心で話すようにしています。
昔から「人が恥ずかしくて言えないようなことを堂々と言うよね」とよく言われるんですけど、いいと思ったらいいって言うし、それを恥ずかしげもなく面と向かって話します。世界中にカップルや家族がいることは超素敵なことだと本当に思っていますし、こんなに文化が違うのに共感を生めるのはすごい面白いことです。そういった想いを堂々と話していきたいですね。
また、「木を見せて林を見せて森を見せる」ということをいつもしています。一見すると、ただのカップルのデートにカメラマンが同行するサービスにしか見えないと思うのですが、そこにたとえば、「世界中にカップルはいるし、僕らは世界中のカップルの写真を撮りたいと思ってる」という話をしたり、「世界中の人を撮るってことが世界中の人の人生を豊かにするんだ」という話をしたりすると、どんどん想像が広がって、わくわくしてくるんですよ。
そして、一番重要なのは、そういった想いやビジョンに共感してもらえるかどうかを見ています。みんなが違うスキルを持っていて、そのうえで同じ方向を目指すから面白いし、楽しく仕事ができるのだと思っています。
弊社は『幸せな瞬間をもっと世界に』というビジョンにしているのですが、この後に動詞を入れられるようにしています。
僕は「幸せな瞬間をもっと世界につくる」ですし、中井であれば「幸せな瞬間をもっと世界に広げる」。増やすのか、根付かせるのか、その動詞の部分は各々で埋めていけばよくて、『幸せな瞬間をもっと世界に』だけを共通の想いとして持とうと。
みんなが自社に仲間を連れてくる文化ができている
―今までずっとリファラルのみで採用してきているとのことですが、御社で採用担当はいらっしゃらないんですか。
採用担当はいないですね。言うならば社員全員が採用担当という感じでしょうか。我々もそうですし、他の社員も「いいな」と思った方を積極的に自社に誘っています。
―そういうリファラル採用の文化が自然と根付いているのはすごくいいですね。
一番は僕自身が働いてて楽しいので、たとえば同期で今あまり楽しそうにしてない人がいたら、同じ思いを共感してもらいたいので、声かけますね。かつカメラ好き、かつエンジニアであれば、「絶対楽しいよ」って言っちゃいますね。
確かに、仕事を通して個人的にもかなり成長もできますし、楽しいと思える環境では絶対ありますね。
ビジョンメイキング、ビジョンの共感をどんどん増やしていきたいって思えるメンバーが多いからかもしれませんね。みんな主体的にラブグラフを発信してくれています。
将来的には、「世界中で一番人を幸せにしてるサービスはどこ?」という質問が出たときに、「ラブグラフ」の名前が出るぐらいの会社にしていきたいなと思っています。そのためには働くメンバーがそういう思いで働いてないとダメですし、そういう組織にできると思っています。世界を代表するハッピーカンパニーのような、幸せという言葉が似合う会社にしていきたいと思っています。