人事経験1〜3年の新米人事に、仕事に対する熱意や困難を乗り越えたエピソードをお伺いする企画「新米人事特集」。
第2弾は、株式会社サイバーエージェントで新卒採用を担当している松村さんを取材しました。
松村さんは、インターンシップへの参加を経て内定者時代からサイバーエージェントの採用に携わってきた方です。
今回は、人事としてスタートした3年間のこれまでのキャリアで印象に残ったエピソードや、松村さんが持つ人事という仕事に対する想いをご紹介します。
また、マネージャーとして活躍されている今、これからどういった人事を目指していきたいかについてもお聞きしました。
目次
「やりたいことはなくてもいい」何でもできると言われて入社を決めた3年前
松村 留里子 | 株式会社サイバーエージェント 人事統括 採用育成本部 ビジネスコース マネージャー
2017年株式会社サイバーエージェントに入社。DRAFT1期生としてインターンに参加後、内定。子会社立ち上げ等を経験し、新卒1年目より新卒採用チームに所属。2年目には次世代幹部候補育成プログラム「YM18」に選抜され、現在は新卒採用チームのマネージャーを務める。
―現在の仕事内容を教えてください。
松村さん:現在はサイバーエージェントの新卒採用に携わっており、その中でもビジネスコースを担当しています。具体的な業務は新卒採用の戦略立案から、インターンシップの企画、イベントの参加、面接、また入社後の育成まで一貫しておこなっています。
―サイバーエージェントに入社して、新卒採用の担当となったのはどういった経緯があったのでしょうか。
松村さん:サイバーエージェントに入社したのは、事業会社であることと働いている社員たちに魅力を感じたためです。
というのも、就職活動していて、どうしてもやりたいことを絞りきれなかったんです。ですので、「やりたいことは何ですか?」と聞かれると困ってしまうという状況でした。
そういった中でサイバーエージェントは事業の幅が広く、色々な事業や仕事に挑戦できる会社だと知り、興味を持ちました。
また、社員が本当に楽しそうに働いている姿を見て、私も同じように働きたいと思った点も入社を決めた理由ですね。
―社員の働く姿はどのようにして見ることができたのですか?
松村さん:大学在学時に夏のインターンシップに参加した際に、社員が働く姿を見ることができました。
インターンシップは、「DRAFT(ドラフト)」といって、サイバーエージェントが毎年開催している選抜型のイベントです。私は大学3年生のときに、第1期生として参加しました。
―インターンシップはどういった内容なのでしょうか?
松村さん:内容は毎年変わりますが、基本的には新規事業の企画立案です。
私が参加した年は、「子会社を作ることを仮定して、事業内容を提案する」という課題が出されました。
インターンシップで学生が提案した事業で実際に子会社化した事例もいくつかあって、内定者でありながら社長を経験する人もいます。
私も内定者時代、DRAFTから生まれた子会社の立ち上げに携わりました。
「人事っていいな」やりたい仕事に出会えた内定者時代
―子会社の立ち上げではどういったことをされたのですか?
松村さん:会社の名前を考えるところから始まって、ロゴを決めたり、ビジネスモデルを考えたりと色々挑戦しました。
その中でも学生アルバイトを管理する仕事を経験して、「人事」という職種に興味を持つようになりました。
―具体的にどういった部分に興味を持ったのでしょうか?
松村さん:「どうしたらこの会社で楽しく働いてくれるだろうか」を考えることが楽しかったんです。
大学生が、授業がある中で自分の会社に来て働いてくれていたので「時間を頂いている」という感覚がありました。そこで、ただ作業してもらうのではなく何らかの価値を提供したいと考え、アルバイトが楽しく働ける仕組みづくりをおこないました。
こういった仕組みづくりや制度設計が自分にとって得意であり、好きな仕事であると気づいて、人事として働きたいと考えるようになりました。
また、子会社の立ち上げと同じタイミングでサイバーエージェントの採用部で内定者アルバイトもしており、こちらでの経験でさらに人事になりたいという想いが強くなったかと思います。
子会社立ち上げ時
-採用部でのアルバイトはどういった仕事をされていたのですか?
松村さん:印象に残っているのは、インターンシップの企画です。
当時、採用責任者から「自分自身が学生であることを活かして、後輩の学生が参加したいと思うようなインターンを考えてみたらどうか」と提案されました。
ちょうど人事の仕事に興味を持ち始めていた頃でしたので、「やってみよう!」という気持ちでゼロからインターンシップを企画しました。
―企画する際に困難だと感じたことはありますか?
松村さん:1番は「内容を考える」ことでした。
私自身、就活中に多くのインターンシップに参加して、自分の価値観や進みたい方向性が大きく変化していきました。
ですので、「参加する学生の人生を変えてしまうかもしれない」という不安と共に、自分が企画するインターンシップでも何かしらの気付きや学びを与えないといけないと考えていたんです。
といった際に、どういった内容にするかを考えることが難しかったですね。
一方で、学生として「自分が体験して学びになったこと」や逆に「もっとこうしてほしかったこと」といった考えはありました。
そこで、自分の考えをインターンシップの内容に落とし込むために、とにかく社員に聞いて回って、アイデアを集めました。
学生として「自分が体験して学びになったこと」や逆に「もっとこうしてほしかったこと」といった考えを形に出来たのは、当時の社員の方々のサポートがあってこそだと思っています。
―困難がありながらも、人事の仕事に魅力を感じたのはなぜでしょうか?
松村さん:私が企画したインターンシップに参加した学生から、内定者が出たんです。それが本当に嬉しくて。「人事の仕事ってこんなに楽しいんだ」と思いました。
内定者アルバイト時代に組織開発や採用に携わったことで、人事の仕事に魅力を感じて、入社後の配属先として選択しました。
「学生の人生を変えてしまうかもしれない」プレッシャーに押しつぶされそうになった1年目
―社員として入社し、人事としてのキャリアをスタートして初めに大変だったことはありますか?
松村さん:学生との面接で「合否をつける」ことが大変だと思いました。
30分~1時間程度の短い時間で面接し、合格か不合格か判断するのは本当に難しかったです。
「自分が不合格を付けたら、もうこの学生は一生サイバーエージェントに来ることはないかもしれない」「何者でもない自分が、評価を下してしまっていいのか」と最初の頃は悩みました。
また、自分より年上の大学院生や、専門的な研究をしてきた学生と面接する際のコミュニケーションでも苦労しました。
自分自身新卒1年目で知識や経験が少なかったので、学生が話す内容がわからなくて「どうしよう」と感じることもありました。
―そういった困難に対してどのようなアクションを取ったのでしょうか。
松村さん:先輩社員に経験談を聞きにいったり、とにかく自分の足を動かしました。
いろいろ試して、学生が話したくなるような質問の仕方を学びました。
結果的に、面接では「学生がやってきたこと」ではなく「根底に持つ価値観」についての深堀りが重要だと気が付くことができました。
1年目を振り返ると、とにかく「応募者の本質を聞き出す力」を付けて「正しく合否を判断できる」ようになりたい、その一心でトライアンドエラーを繰り返していたと思います。
「同じことしても意味なくない?」役員からの一言で意識が変わった2年目
―2年目で印象に残っているエピソードはありますか?
松村さん:2年目では、インターンシップの内容を刷新したエピソードが印象に残っています。
サイバーエージェントは「YJC(よい人を自分たちでちゃんと採用する)」という採用プログラムに取り組んでいます。
「YJC」では、人事と現場社員が一丸となって採用の戦略や計画を考える取り組みなのですが、その際に現場の社員から言われた一言がきっかけでインターンシップの内容を変えようと決めました。
YJCに取り組んでいた当時、私がタッグを組んでいたメディア事業の役員に「去年と同じ採用を続けていては、より良い採用はできない」と言われたんです。
その通りだと思いました。去年と同じことをしていても成長できないなと、ハッとさせられました。
松村さんが2年目に責任者として参加した「DRAFT」の様子
インターンシップの内容を開催直前に変更。すべては学生のためだった
―3年目となった今年、何か印象に残った出来事はありましたか?
松村さん:約半年かけて企画したインターンシップの内容を、2週間前に変更するという波乱がありました(笑)
3年目の今年、毎年開催している「DRAFT」に加えて「ITADAKI(イタダキ)」というインターンシップの企画に挑戦したんです。
「ITADAKI」は、将来経営やマネジメントをおこなうリーダーになりたい学生に向けたインターンシップです。
企画段階では、20~30名を選抜して、DRAFTのようにグループワークをおこなう予定でした。グループワークは、4~5名でグループを組み、経営課題に対する解決策をアウトプットしてもらう内容でした。
松村さん:私は「ITADAKI」を開催することによって学生に「最大限の学び」を得てほしかったため、選考は厳しく慎重におこないました。
その結果、選抜されたのは9名。当初予定していた人数には届きませんでした。
参加予定人数より少ないことで生じたのが、「この人数でグループワークが成立するのか」という懸念です。
実際に、役員から「9名しか選ばないのであれば、ちゃんと9名に合わせたプログラムに変えるべきだ」と指摘をいただきました。
意見をもらったのは開催の2週間前。約半年間かけて企画してきた内容でしたので、正直「まじか」と思いましたね(笑)
また、プログラムの内容を変更することで1日のスケジュールや開催期間も変える必要がありました。
すでに学生のスケジュールは押さえていたため、こういった部分でも「プログラムの内容を押し通すのか、それとも変更するのか。どちらを選べばいいのだろう」とものすごく悩みました。
3年目にマネージャーとして参加した「ITADAKI」の様子
―変更するという決断の決め手となったのは?
松村さん:選抜したメンバーや、インターンシップに本気で向き合ってくれる役員の顔を思い浮かべた時に、「このまま内容を変えずに押し通したら後悔するだろうな」と感じたんです。
決まっている内容での開催は簡単です。ですが、選ばれた9名にとって「最高のインターンシップになるだろうか」と考えた際に、自信を持ってそうだと思うことができませんでした。
ですので、覚悟を決めて「内容を変更する」と決め、開催までの2週間全力を尽くそうと思いました。
-開催2週間前でのインターンシップの内容の変更はかなり大変だったかと思いますが、どのようにして乗り越えたのでしょうか。
松村さん:「できない理由ではなく、できる方法を考える」という考え方を、上司から何度も教わってきたので、自然に意識することができました。
「時間がないからできない」「人が足りないからできない」こういった負の考えを捨てて、「それでもできる方法はないだろうか?」「他に手段はないか?」と前向きに考えていましたね。
結果的に、周りからの協力を得ながらもなんとか開催予定日までに間に合わせることができました。
学生には、サイバーエージェントの役員が普段どういった考えを持って働いているかを体感してもらうプログラムに変更し、5営業日・10~19時までみっちり役員と過ごしてもらいました。
会議に同席したり、外出にまで同行したりと、学生の日常生活ではまず体験できない貴重な機会を作れたのではないでしょうか。
―実際に、参加した学生から反響はありましたか?
松村さん:嬉しい言葉をたくさんもらいました。
「人生が変わる経験になった」ですとか「こんなに刺激のある経験は始めてだ」といった声をもらいました。また「この9人に出会えてよかった。少ない人数だったからこその絆が生まれた」と言ってもらえて、プログラムの内容を変更して本当に良かったと思いました。
新しい取り組みに挑戦させてもらって、かつ嬉しい言葉をもらったことで、ますます「人事をやってよかったな」「人事って面白いな」と感じました。
―面接やインターンシップで学生と接する機会の多い松村さんですが、学生と関わる中で思うことはありますか?
松村さん:将来についてキラキラ・ワクワクしながら話してくれる学生さんからは、すごくエネルギーをもらっています。
また、「なんでサイバーエージェントに入ったのですか」とか「実際に働いていて楽しいですか」といった学生さんからの質問は、自分を振り返る良い機会にもなります。
学生さんから学ばせてもらうことは多く、いつも「初心を忘れてはいけないな」と思いますね。交流する度に気づきを与えてくれるため、学生さんにはとても感謝しています。
マネージャーになった瞬間、仕事に対する考え方が変わった
―新卒でサイバーエージェントに入社して3年目、これまでを振り返って感じることはありますか?
松村さん:1年目は、「人事」であることに必死でした。目の前の学生に向き合おうとしたり、インターンシップを企画したりするのに一生懸命で、自分の仕事で精一杯だったように思います。
2年目は、いかに多くの人から理解・協力を得るかということと、プロジェクトが成功した先の未来を考えることに力を注ぎました。
初めてリーダーを任せてもらい、周りの人を巻き込んでプロジェクトを進める経験をたくさんしたという印象が残っています。メンバーを持つようになった2年目のタイミングで、視座が一気に上がりました。
マネージャーとなった3年目の今は、「人に任せるスキル」をもっと磨きたいと思っています。
―「人に任せるスキル」とはどのようなスキルだと考えていますか?
松村さん:メンバーの成長のために、仕事を与えるスキルだと考えています。
正直、2年目までは、人を巻き込むと言いつつ「ここからここまでをお願いします」とタスクを降るような形で仕事を頼んでいました。でも、マネージャーになって始めて、今までのやり方ではメンバーの成長につながらないと気づきました。
「自分でやったほうが早いな」と思う仕事でも、メンバーを信頼して任せることが重要だなと感じるようになったんです。
―「メンバーの成長につながらない」と気付くきっかけとなった経験があるのでしょうか?
松村さん:自分がメンバーだった頃にどういったマネジメントを受けていたかなと振り返った際に、上司からよく「自分で考えて決めなさい」と言われていたことを思い出したんです。
当時の上司は、私が相談すると「あなたはどうしたいの?」と逆に意見を求めてくる方でした。その上で、私の考えに対するアドバイスとともに、仕事を任せてくれました。
実際に、裁量を持って任せてもらった仕事のほうが成長を感じましたし、「やってよかった」と思っています。「自分で考えて決断する」という経験が、自身の成長につながったと思います。
ですので、マネージャーの立場に変わった今、私がやるべきなのはメンバーに「自分で考えて決断する」経験をしてもらうことだと考えています。
そのために「仕事を任せるスキル」を身に付け、成長する機会をどんどんメンバーに与えていきたいです。
目指すは「曽山さん超え!」松村さんが目指す人事の理想像
―松村さんがサイバーエージェントへの入社を決めたきっかけは「やりたいことがなくてもよかった」からでしたね。あれから3年経った今、「やりたいこと」はできましたか?
松村さん:はい。採用チームのマネージャーとして、「経営目線を持った採用がしたい」と考えるようになりました。
これは、サイバーエージェント独自の文化である「あした会議」に参加したことがきっかけです。
「あした会議」は、社長を除く10名の役員が現場社員4名を指名して開かれる会議です。内容は、サイバーエージェントの経営、人材育成を推進するための施策や新制度の提案となっています。
松村さん:「あした会議」に参加して、「こんなことも見据えて役員たちは仕事をしているのか」と役員たちの視座の高さに驚きました。
私がどれだけ考えても思いつかないような世界まで見ていると知り、「少しでも早く追いつきたい」と考えるようになりました。
となると、採用活動においても経営目線を持つ必要があります。
今までは、プロジェクトを成功させることに集中できる立場でしたが、今後は経営目線を持って「サイバーエージェントの成長につながる採用」を実現していきたいです。
―「サイバーエージェントの成長につながる採用」を実現するためには何が必要だと思いますか?
松村さん:「ダイヤモンドの原石を見つける力」ではないでしょうか。
新卒採用担当として、「未来の藤田晋に出会うんだ」くらいの感覚で多くの学生に出会いたいですし、向き合っていきたいです。
サイバーエージェントの中核を担う人を見つける力が、「サイバーエージェントの成長につながる採用」を実現するために必要だと思います。
あとは、「人事のプロフェッショナルになりたい」です。
新卒1年目から人事を担当していることを強みに、プロとして突き抜けていきたいと考えています。
―松村さんにとって「人事のプロ」とは?
松村さん:「サイバーエージェントのこれからを作っていく」という意識と誇りを持って働く人だと考えています。
事業や環境、人を見て会社の未来を想像できる人事でありたいです。会社の未来を考えた上で、戦略立てから実行、クロージングまで一気通貫してできるようになることが理想ですね。
目標は取締役であり人事統括責任者の曽山さんです。
「目指せ曽山さん超え!」をモットーに、これからも走り続けていきたいです!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
内定者時代から、サイバーエージェントの新卒採用に携わっている松村さん。さまざまな困難に立ち向かい、乗り越えてきたエピソードをお伺いすることができました。
松村さんの言葉一つひとつから、サイバーエージェントへの大きな愛と、人事という仕事への熱い想いを感じました。
「何者でもなかった」という言葉で表現した学生時代から、今では「人事のプロフェッショナルになりたい」と明確な理想像を持たれている松村さん。
成長環境に身を置いて挑戦を重ねることで、だんだんと自分の理想像の解像度が上がるのだとわかりました。