10月8日に、一般社団法人at will work主催の合同メディア勉強会『令和に求められる「人材マネジメントHR Tech」とは?』が開催されました。
同イベントでは、HR Techプロダクトを提供する5社が登壇し、プロダクトを導入する企業の実情や、課題を解決した事例をご紹介。
また、イベントの冒頭では経済産業省の方より日本における「令和の成長戦略」「これからの人材戦略」についてお話がありました。
本記事では、イベント全体の内容をまとめてレポートにしました。
「HR Techのトレンドを知りたい」「HR Techサービスの効果を知りたい」「どういったサービスがあるか知りたい」といった疑問をお持ちの人事担当者の方に、参考になれば幸いです。
目次
経済産業省「日本が成長するためには組織と人の変革が急務」
【登壇者】堀田 陽平|経済産業省 産業人材政策室 室長補佐 弁護士
中央大学法科大学院修了。2016年弁護士登録(69期)、鳥飼総合法律事務所入所。2018年07月、日比谷タックス&ロー弁護士法人に参画。同年10月、経済産業省経済産業政策局産業人材政策室室長補佐に任期付き職員として着任。「働き方改革」への対応、フリーランサーの活躍促進等、競争力を向上させるために企業が取り組むべき人材政策に関する業務に携わる。
今後の成長戦略
堀田さん:本日お話させていただくテーマは、「日本の成長戦略」と「これからの人材戦略」です。
政府が発表した令和元年の成長戦略では、「組織の変革」と「人の変革」がメインのテーマとして掲げられています。
まず「組織の変革」が掲げられた背景には、日本が抱える労働生産性の向上という課題があります。というのも、日本は米国や欧州に比べて付加利益率(マークアップ率)が低い状況にあり、国の成長が鈍化している要因となっているのです。
付加利益率が低いということは、原価に対して生まれる利益(付加価値)が少ないということになります。ですので、付加価値を高めるためにも、労働生産性を高める必要があると考えられています。
堀田さん:日本よりもずっと付加価値率が高いアメリカは、既存の上場企業が労働生産性の高さを牽引し、付加価値を高めていることがわかっています。
一方で日本は、1990年代頃は既存の上場企業が付加価値を高めていたものの、2009年以降はその成長がストップしてしまいました。その背景には、既存の上場企業の労働生産性が低下してしまったことがあげられます。
欧米企業が付加価値を創出できている理由としては、オープンイノベーションが活発におこなわれているためでしょう。
堀田さん:欧米企業が積極的にオープンイノベーションを実現し、新しく創造的な価値を作り出しているのに対して、日本はまだまだ少ないという状況となっています。
堀田さん:オープンイノベーションをおこなっている企業でも、欧米企業と日本企業ではパートナーに違いがあります。
欧米企業はスタートアップ企業や競合企業と連携することが多いようですが、日本は大学や研究機関と連携する企業の割合が高くなっております。
大学や研究機関ですと、どちらかというと革新的というよりは学術的な側面が強くなってしまいます。ですので、もっと積極的に他者と連携する、解放連携型の組織へと変革していく必要があると考えられています。
もう一つの大きなテーマである「人の変革」は、仕事内容の変化が背景にあります。今、AI・IoTなどの技術が発達し、第4次産業革命が来ていると言われています。
堀田さん:第4次産業革命の到来によってまず減少すると言われているのが、製造ラインの工員や企業の調達管理部門などの中流工程です。
次に、保険商品の営業やスーパーのレジ打ち、コールセンターといった下流工程もAIやロボットに代替されていくでしょう。
たとえば、カスタマイズされた高額な保険商品であれば、人間でなければ販売することはできないでしょう。他にも、高級レストランの接客やきめ細やかな介護も、コミュニケーションの種類に限界があるロボットには実現できません。
つまり、これからの労働市場では、上流工程と下流工程において属人的な仕事が増えていき、中流工程の仕事が減少していきます。そして、仕事内容に偏りが生じることで起こるのが「スキルの二極化」です。
AI、IoT化が進んでいる米国では、すでにスキルの両極化が進んでいますが、日本でも同様の傾向が見られ始めています。そういった中で日本が成長していくためには「人の変革」が必要になります。
具体的にどう変革していくべきかですが、我々日本人は「兼業・副業の促進」に対する意識を変えていかなければなりません。
堀田さん:グラフは現状、兼業・副業をしている人と、兼業・副業を希望している人の割合を示しています。
グラフからわかることは、兼業・副業を希望している人は年々増加している一方で、実際に兼業・副業している人はほぼ横ばいといった状況にあるということです。
増加率が低い背景には、まだまだ社員が副業することを認める企業が少ないことが推測されます。副業を認めない理由としては、「本業に支障をきたすのではないかと懸念するため」という内容が多くを占めています。
しかし、実は兼業・副業が本業に支障をきたすことはないと考えられます。というのも、自分の会社での仕事とは異なる経験を積むことでスキルの幅が広がります。
そしてスキルが増えることで本業に生かす機会が増えるだけでなく、本人のモチベーションの向上にもつながるという好循環が生まれるのです。
先ほども申し上げた通り、これからの労働市場はAIがどんどんと中流工程の仕事を奪っていき、上流工程と下流工程の仕事に両極化していきます。
その中で、どれだけ幅広いスキルを身につけるかが自分の価値を高める鍵となるでしょう。企業としても、より多くの付加価値を生み出すために、幅広いスキルを持つ人材を確保することは重要です。
よって、兼業・副業を促進することで人の変革を実現するという方向性で、これからの日本の成長戦略は考えられています。
これからの人材戦略
堀田さん:これからの日本の成長戦略として、「組織の変革」「人の変革」の内容をご紹介しましたが、2つの変革を実現させるためには「人材戦略のアップデート」が必要です。
堀田さん:人の変革というところで、兼業・副業の促進をあげたように、これからは多様な働き方が広まっていくでしょう。
たとえば、1985年から2015年にかけて中途入社を希望する人の割合は43%から64%に増加しています。新卒で入社した会社で定年まで勤め上げたいと考える人が減り、転職を視野に入れて働く人の割合が増えたことがわかります。
また、副業を希望する人の割合も10年で23%も増加し、1つの会社で働くにとどまらず、複数のコミュニテイに属する働き方が徐々に浸透していくと考えられます。
堀田さん:このように、働き手の意識がどんどん変化している中で企業は、個人のキャリア思考・価値観に合わせた人材マネジメントをおこなう必要が出てきました。
たとえば、1人の社員が2つの会社で働いたり、1度退職した後に再入社したりといった、個人の自立的なキャリアを支える役割を担っていかなければなりません。
そして、求職者のキャリア観が変化していく中においては、「経営戦略に基づいた人材戦略」であることが求められます。どういった人材を採用するべきか、どのように育成していくかを考え、変化の激しい労働市場で優秀な人材を採用するための策略を立てましょう。
堀田さん:このように、「個人の自立的な成長・活躍の支援」と「変化に対応する経営」を実現することで、結果的に持続的な企業価値が向上すると考えています。
最後に、経営競争力・人材競争力強化のための3つの原則と6つの方策をご紹介します。
【3つの原則】
- 経営戦略を実現する重要な要素として、人材および人材戦略を位置づけること
- 個人の多様化・経営環境の普段な変化の中で、個人と企業がお互いを選びあい、高め合う関係を構築していくこと
- 経営トップが率先してミッション・ビジョンの共有と実現を目指し、組織や企業文化の変革を進めること
【6つの方策】
- 組織や人材育成を担う経営リーダー、ミドルリーダーの計画的育成・支援
- 経営に必要な多様な人材確保を可能とする、外部労働市場と連動した柔軟な報酬制度、キャリア機会の提供
- 個人の挑戦や成長を促進し、強みを活かした企業価値の創出に貢献する企業文化や評価の構築
- 個人の自律的なキャリア開発や学び直しを後押しし、支援する機会の提供
- 個のニーズに応え、経営競争力強化を実行する人事部門の構築
- 経営トップ自ら、人材および人材戦略に関して積極的に発信し、従業員・労働市場・資本市場との対話を実施
堀田さん:6つの方策の中で、今回のテーマである「HR Tech」との関連性が高いのが5つ目の「個のニーズに応え、経営競争力強化を実行する人事部門の構築」です。
個人の考えが多様化し、経営目線の人材戦略が求められる中で、人事部門の役割は確実に変わっていきます。これまで経験や感覚を軸に進められていた業務や、具体的な効果がわからなかった人事制度は、客観性・納得性のあるデータに基づいて実行していかなければなりません。
そこで、属人的になりやすい人事業務を、テクノロジーの力を用いて経営に大きなインパクトをもたらす戦力へと変える手段となるのが「HR Tech」です。
「HR Tech」を活用することによって人事部門が企業の経営競争力を強化し、組織の変革を推し進めるでしょう。組織の変革に貢献することは、日本の成長戦略のテーマに沿っています。今後日本が成長するためにも「HR Tech」は重要な役割を担っていくでしょう。
ここからは、実際にHR Techプロダクトを提供する5社の方々から、HR Tech市場の現状やHR Techを活用する企業の事例についてお話しいただければと思います。
株式会社アトラエ「従業員のコンディションをデータ化し、エンゲージメントを向上」
【登壇者】川本 周|株式会社アトラエ wevox担当
新卒で当時未上場の株式会社アトラエ入社。入社後はIT業界に特化した求人サイト「Green」のコンサルティング営業を担当。その後、新規事業の組織改善プラットフォーム「wevox」へ異動。現在は、年間1000名を超える経営者や人事担当者とお会いをしながら、エンゲージメントを軸にした組織改善を支援。通常業務とは別に社内のバリュー刷新や新卒採用などのプロジェクトも担当。
川本さん:私達は、「wevox」というHR Techプロダクトを提供しています。分類的にはエンゲージメント・サーベイとなります。
川本さん:先ほど堀田さんより、日本が成長するためには組織の変革が必要だというお話がありました。wevoxは、従業員のエンゲージメントの計測と改善によって組織の価値を向上させることで、組織の変革に貢献できると考えています。
エンゲージメントは、従業員が組織や仕事に対しての自発的な貢献欲を持ち、主体的に取り組んでいる状態であることを意味します。
ですので、エンゲージメントが高い従業員が多く、またその程度が高いほど、離職率の改善や生産性の向上につながり組織としては「良い状態」です。
wevoxは、簡単なアンケートを従業員に答えてもらい、回答結果をリアルタイムで集計・分析します。分析結果にもとづいて、管理者はいろいろな切り口でエンゲージメントの改善につながる施策の検討に活かすことができます。
また、従業員のエンゲージメントを定期的に計測することで、各質問項目に対する数値の変化を確認することができます。
川本さん:たとえば、新卒1年目のエンゲージメントを見ると、4月がもっとも高く、その後徐々に低くなっていきます。
そのような変化を定点観測することで、「このタイミングで急に下がったな」「特にこの部署の新卒のエンゲージメントが下がっているな」といった課題を見つけることができ、エンゲージメントを向上させる施策に活かすことができるでしょう。
川本さん:エンゲージメントの上げ方については、2軸に分けて考えたほうがいいでしょう。エンゲージメントは、「仕事に対してのやりがい」と「会社に対してのやりがい」という2軸に分けることができます。
たとえば、スタートアップなどの小さい会社は「会社が好きかどうか」が影響しやすいというデータがあります。
逆に、大手企業に関しては、会社が好きかというよりは「今の仕事や、一緒に働いているメンバーが好きかどうか」がエンゲージメントの向上に影響を与えやすいというデータが出ています。
wevoxの活用事例をご紹介すると、ある会社のセールスチームでは、エンゲージメントが10ポイント上がるとチームの生産性が1.2倍になったそうです。
あとは、年齢が上がることと、勤続年数が増えることで、エンゲージメントが下がる傾向があることがわかっています。
川本さん:一部の経営層や人事がトップダウン的に進めている会社は、実はあまりエンゲージメントが向上しないというデータも出ています。
一方で日々、現場のマネジャーとメンバーが一緒になって、自分たちのチームどうやったら良くなっていくか議論しているチームのほうが、エンゲージメントが上がりやすいといったデータが出ています。
このように、データ化することで今まで気づかなかった点を発見できるという面でも、エンゲージメント・サーベイは有効活用できると思います。
株式会社カオナビ「HR Techが注目されている理由は労働に対する考え方の変化」
【登壇者】佐藤 寛之|株式会社カオナビ 取締役副社長 COO
2003年4月 リンクアンドモチベーション入社。新卒2期生として入社し、組織変革コンサルティングに従事。2008年11月よりシンプレクスにて人材開発責任者として、採用・育成・人事評価などの人材開発業務に従事。 2011年10月 カオナビに参画。事業の立ち上げを柳橋と共におこなう。現在は取締役副社長COOとして、営業・マーケティング・サポートを統括。
佐藤さん:カオナビの佐藤と申します。カオナビは、顔写真に人事情報を紐付けることで、「誰がどの部署にいるか」「どういったスキルを持っているか」「どのようなことを考えているか」データとして抽出し人材配置や目標管理に活かすことができるタレントマネジメントシステムです。
佐藤さん:最近になってHR Tech活用の流れが来ている理由が2つあります。
1つ目は「エンプロイー・エクスペリエンス」の考え方が浸透してきたことです。エンプロイ-・エクスペリエンスは、従業員が組織や会社の中で体験する経験価値を意味します。
「従業員満足度」や「従業員エンゲージメント」といった指標だけでなく、従業員の健康状態や組織としての一体感など、社員が会社生活の中で経験する、全ての印象や影響を包括した考え方になります。
20年前に比べて現在は、「会社との関係がオープンであること」「自身の役割や仕事の意味が明確であること」「制度やルールの改善スピードが早いこと」を重要視する人が増えました。ですので、仕事に関する決め事のスピード感や納得性を高め、またその情報を素早く共有するために、クラウドという技術を使ったHR Techが注目されているんです。
もう1つの理由は、人材管理をより効率的にやりましょうという考えが広まってきたことがあげられます。冒頭で堀田さんから説明があった通り、現在の日本には労働生産性の向上が求められています。そういった中で、感覚や経験に左右されやすい人事業務を効率化しようとする流れが来ています。
事例をご紹介すると、飲食チェーン店を展開していて、6年前からカオナビを導入されている会社があります。その会社は、正社員の方々にスマートフォンを配って、評価とか自己申告をスマートフォンで入力させているのですが、おそらく情報の鮮度や質、共有のスピード感を重要視しているのでしょう。カオナビを使って人材を管理することで、評価の運用がスムーズになった他、定性的な情報を蓄積することで、優秀な人材を育成することに成功したそうです。
このように、日本の労働市場が変化していく中で、人材管理に関する考え方も変わっていきました。その変化にともなって、HR Techが注目されるようになり、カオナビを始めとするクラウド人材管理システムを導入する企業が増えてきているのだと思います。
jinjer株式会社「人事業務を一元管理。データをフルに活用して組織の課題を解決」
【登壇者】松葉 治朗|jinjer株式会社 経営企画本部 プロダクトデザイン部 部長
2015年にネオキャリアへ中途入社。ネオキャリアの商品戦略・カスタマーサクセスに特化したプロダクトデザイン部の部長を務め、人事向けクラウド型サービス”ジンジャー“の商品戦略・ブランディングなど、多岐に渡る領域を管掌。2018年度社員総会にて社長賞、FMG、事業部賞を受賞し、現在はジンジャーだけでなく”Calling“、”enigma“など、その他自社サービスの商品戦略・カスタマーサクセスチームの構築も担当。
松葉さん:私は「ジンジャー」というサービスの企画開発責任者をさせていただいております、松葉と申します。
松葉さん:今回は、HR Techを中心に、Fin TechやInsure Techといったさまざまなテクノロジーの融合の事例をお伝えします。
HR Techが注目されている件については佐藤さんからご説明がありましたが、実は今HR Techの他にも数多くの「~Tech」というワードが出てきています。
また、日本において「~Tech」の市場がはかなり伸びており、年成長が約31%、2023年には約1000億になると言われています。
HR Techが注目されている背景には、考え方の変化だけでなくテクノロジーが変化したこともあげられます。具体的には「クラウドサービス」「デバイス」「ビッグデータの処理技術」の3点がテクノロジーの普及に影響していると考えられます。
HR Techが果たす役割は「人事データの活用」や「組織課題の解決」などいくつかあるかと思いますが、1番は「オペレーションの改善」だと考えています。
勤怠管理や労務管理といった煩雑な業務を自動化することで、その分の時間を人材管理や従業員パフォーマンス、人材育成の改善のために使うことができるようになります。
弊社のジンジャーも、人事業務をすべて一元管理することでオペレーションの改善に貢献しようと、「1Master 1DB」をコンセプトに掲げています。
【1Master 1DB】
これまで多くの企業でバラバラに管理されていた人事データを、一つのプラットフォームに集約することで業務効率を大幅に改善することを目指す考え方。
松葉さん:業務効率化が重要視され、クラウドシステムが登場する現在では、人材管理システムはA社、勤怠管理はB社といった多数のシステムを使い分ける企業も多く存在します。
こうした状況においては、システムを使い分けること自体が手間となるだけでなく、せっかく集めたデータなのにシステムを横断して活用することもできません。
ジンジャーは、勤怠管理から労務管理、コンディション管理まで一貫しておこなうことができるため、集めたデータをフルに活用できます。
たとえば、「午後休が多くなった人に離職意向があるのではないか」「出勤時間が早い人はパフォーマンスが高いのではないか」といった気づきを、データから得ることができると考えています。
こういった気付きは、勤怠データと人事評価データ、コンディションデータなどを組み合わせなければ導き出すことはできません。
また、将来的にはHRの情報を、「Fin Tech」や「Insure Tech」といったさまざまなテクノロジーと融合して、1つの企業にとどまらず社会が抱える課題を解決していきたいと思っています。
そういった想いから、「HR Tech総研」という研究機関も設立しました。具体的には、東京海上日動様と業務提携させて頂いて、いくつか施策を走らせています。
「HR Tech」と「Insure Tech」をかけ合わせたサービスの例としては、氏名変更や住所変更など、ライフタイムにおける重要な変化のタイミングで保険サービスを案内することができます。
また、ジンジャーをお申し込みいただいた企業様に、自動で保険をつけることでスピーディーに保険に加入できるようにすることもできます。
このように、さまざまなテクノロジーをかけ合わせたサービスを含めて、人事データ活用をしていきたいと考えています。
Unipos株式会社「お互いに感謝を送り合うことで、従業員の心理的安全性を担保」
【登壇者】斎藤 知明|Unipos株式会社 代表取締役社長
東京大学機械情報工学専攻。学業の傍ら、株式会社mikanにてCTOとしてスマートフォンアプリ開発に従事。その後、Fringe81株式会社に入社。一年間エンジニアとしてアプリ開発等を行った後、Unipos事業責任者となる。2017年12月28日、Unipos株式会社の代表取締役社長に就任。2019年4月17日、Fringe81株式会社の執行役員に就任。
斉藤さん:Unipos(ユニポス)の斉藤と申します。Uniposは、従業員同士が感謝と称賛のメッセージを互いに贈り合い、知り、認め、称え合うことで、信頼関係の構築を実現するサービスになります。一言で表すと、「感謝を贈り合うツール」です。
斉藤さん:本日は、Uniposの役割について詳しくご説明をさせていただければと思います。
Uniposでは、ピアボーナスと呼ばれる少額のボーナスと、感謝のメッセージをスマートフォンから贈ることができます。メッセージの例としては、「◯◯さんあのときは仕事を手伝ってくれてありがとう」という内容ですね。
こういったメッセージを送りあうことの価値は、「従業員同士の信頼関係を構築できる」点にあります。また、信頼関係の構築だけでなく「従業員の心理的安全性の向上」にも貢献できると考えています。
少しでも頑張ったことや、失敗してしまったけど挑戦したことを認め合うことで、前向きに挑戦する組織になるのではないでしょうか。
そして、最近注目されている「バリュー評価」に対しても、Uniposは寄与できていると考えます。
斉藤さん:退職理由のうち「評価や人事制度に対する不満」が多くの割合を占めます。さらに不満の内容を深堀りすると、もっとも多いのが「評価基準が不明瞭」という意見です。
また、「評価結果に関するフィードバックが不十分」といった声もありました。つまり、従業員は自分の仕事のどの点がどのような基準で評価されているのかがわからないと、モチベーションが下がってしまうのです。
そのうえで、最近注目を集めているのが「バリュー評価」です。バリュー評価は、成果のみで評価する従来の評価方法に加えて、会社が成長するために重要な行動指針や価値観といった「バリュー」に沿った行動をしているかどうかを基準に評価する仕組みです。
会社が取り決めた行動指針に対して、従業員が自立的に行動すれば、会社全体が強くなるという考え方のもと、バリュー評価は考えられました。
斉藤さん:Uniposがバリュー評価に寄与する理由は、自社のバリューに沿って行動していることを発信できるためなんです。
たとえば、投稿文とともに「失敗を恐れず前向きに挑戦する」といったバリューにハッシュタグをつけて投稿します。
するとその投稿に対して、他の社員がリアルタイムに反応するんです。こうした評価・称賛しあうサイクルを、Uniposは実現します。
経営者と人事が、従業員一人ひとりの行動を把握することは難しいでしょう。また、職種、役職によって求められる役割が異なるため、プロフィット評価では従業員全員を普遍的に評価できる基準はありませんでした。
そこで、従来の評価制度にバリュー評価をプラスして従業員の組織への貢献も評価することをおすすめします。「成果」だけでなく「自分の行動」へのフィードバックをおこなうことで、従業員のエンゲージメントの向上につながるのではないかと思います。
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社「ミッション・ビジョンから目標を落とし込み、会社で働く意義を持たせよ」
【登壇者】大島 亜衣里|パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 HITO-Linkサービス開発部 ビジネスディベロップメントグループ マネジャー
株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア)に新卒入社。
大島さん:パーソルプロセス&テクノロジー の大島と申します。今回のイベントは「令和に求められるHR Tech」ということで私からは「エンゲージメントスコアの重要性」「OKR目標設定の効果」についてお話できればと思います。
先ほど堀田様からもお話があったように、企業と個人の関係性は変化してきています。「終身雇用が当たり前」だった時代から「転職が前提」と考える人が増えているため、企業も従業員に対する考え方を変えていかなければなりません。
個人に対して「収入を得る」という目的だけでなく、「企業に属する意義」を伝えなければ、従業員のモチベーションを保つことはできなくなってきます。
そこで、「社員に成長の機会が提供されている」「職場のコミュニケーションが活発である」といった状態を作り、エンゲージメントが高い状態を維持することが望ましいとされています。
大島さん:エンゲージメントを上げるためには、wevoxさんが実現する「組織コンディションの可視化」であったり、ユニポスさんが実現する「称賛の文化づくり」といった改善策があげられます。加えて私からお伝えするのは「OKR」という目標管理の手法です。
【OKR】
Objectives and Key resultsの略称。シリコンバレー発の目標管理手法で、ビジネスの環境変化が速く不確実な現代に適していると言われている。Googleやメルカリといった有名企業で採用されているフレームワーク。
大島さん:フレームワークの進め方としてはまず、「目的・目標」を意味するObjectivesを決定します。目先の目標というよりは、「実現したい未来」「ミッション・ビジョン」といった長期的な目標ですね。
その「目的・目標」を実現するための「Key Results」、つまり目標数値を落とし込んでいきます。
大島さん:OKRの運用を成功させるためには、ツールの活用をおすすめしています。弊社の「HITO-Linkパフォーマンス」も、OKRを軸に継続的な振り返りで従業員の成長を加速させる目標管理・人事評価ツールとなっています。
大島さん:私達は、OKRを継続することで3つの「共」が実現すると考えています。
1つ目は「ビジョンへの共感」です。会社のミッション・ビジョンに基づいて個人の目標を設定し、かつオープンにすることで、自分の仕事がどういったロジックで会社のミッション・ビジョンにつながっているのかが分かりやすくなります。
2つ目は、「リソースの共有」になります。人・物・金・情報といった会社が持つリソース、個人にも共有することで、従業員一人ひとりが裁量を持って働くことができます。
最後は「人と共創できる場・仕組みづくり」です。自分たちの業務がトップのミッション・ビジョンに紐付いていることがわかるため、他の社員とともに共創している感覚を持ちながら働くことができるでしょう。
3つの「共」の実現により、社員は「自社で働く意義」を感じやすなり、高いエンゲージメントを保つことができるのではないでしょうか。
まとめ
イベントに参加して、HR Techが注目される理由として、日本の成長が鈍化していることや、個人の働き方に対する考え方が変化してきていることが背景にあることを知りました。
HR Techは「業務を効率化する」「今まで見えなかった数値を可視化する」といった面で、企業の成長に貢献するでしょう。また、「エンゲージメント向上」「目標管理」という役割も担うことができるため、人々の考え方が変化している中においても、組織の活性化を実現できるのではないかと感じました。