
こんにちは。ジェイソン・ダーキーです。

執筆者JASON DURKEE(ジェイソン・ダーキー)氏IDEA DEVELOPMENT株式会社(アイディア社) 代表取締役
米国シアトル生まれ。1992年に来日し上智大学に入学。卒業後,研修企画会社に就職し10年間勤務。2003年に独立起業。日本を代表する大手企業から外資系企業まで幅広い業種のクライアントに対して,研修プログラムの企画および講師として,5万人以上の能力アップとビジネス成果の向上に貢献した実績を持つ。著作に『ビジネス英語の技術』『ガツンと言える英会話』(Japan Times)ほか。
1990年代から日本でグローバル系の研修の企画と講師をしていますが、この数年で研修に求められることが大きく変わりました。
主な背景としては、
- 海外売上比率の増加(中期経営計画で比率を上げようとしている企業も非常に多い)
- 海外従業員の増員(全体の50%を超える企業も少なくない)
- 国内でもインバウンドと外国籍社員への対応が必要
つまり、グローバルビジネスに関わる人や関わる可能性のある人が以前より増えてきているため、さらに高いレベルのグローバルスキルが求められています。今回は、代表的なグローバル人材育成のヒントを対象別に紹介します。
全社員の底上げ
ニーズ
以前はグローバルに関係する人員は社内でもごく一部で、多くの従業員は「自分はグローバルとは関係ない」とはっきり言えましたが、現在はそうとはなかなか言えなくなりました。
海外赴任がなくても、例えばグローバルチームメンバーとして活躍する、海外のパートナーとやりとりをする、外国籍社員と接するなどのように、誰でも外国人と接点を持つ可能性が高くなっています。
対策
底上げをするうえで大切な背景として、対象者は現時点ではグローバルとの接点がない(少ない)ため、モチベーションも意識も低めです。
エネルギーと時間をかけても成果にはあまりつながらないため、できるだけ簡単でかつ幅広く意識を高められる施策が適切です。具体的に言うと、必要な内容はこの2つです。
1) 異文化理解やグローバルマインド
語学の前にまずはグローバルマインドを身につけさせましょう。第一歩となるのは異文化理解です。異文化的な切り口はたくさんありますが、大別すると以下の3種類に分けられます。

- 日本だから大切=コンテクスト
- グローバルビジネスの定番=権力格差小、個人主義、リスク歓迎
- 国別対策=環境を支配する、時間感覚、詳細重視、演繹的思考など
底上げする場合、まずは1つ目のハイ・ローコンテクストを押さえましょう。
2) ビジネス英語の基本
AIと自動翻訳がある今の時代に、全従業員がゼロから外国語をマスターする必要はありません。とはいえ、言語の異なる人にうまく対応できるよう、外国語で話す難しさを少しは実感してもらったほうがよいでしょう。そのため、ある程度はビジネス英語を身につけさせましょう。
幸いなことに、現在は英語自己学習に便利なアプリやソフト、ツール、サービスが多種多様にあるため、語学力強化は基本的に個人に任せることができます。
会社としてやるべきなのは、効果的な学習方法を示してあげることです。学校英語の延長で自己学習をしてしまうと効率が悪く、モチベーションが下がる受講者も多くなります。
ビジネスパーソンにふさわしい英語自己学習法としては、下のイメージのようなポイントがあります。

例えば、
- 新しい英単語を覚える前に、日本語アタマから英語アタマへ発想の転換をする
- ビジネスで最もよく使うスキルであるリーディングのコツを学ぶ
- 学習しないと分からないビジネスライティングルールを知る
- 語学力だけではなく、外国人に納得してもらえるようロジックにふれる
などです。
全体の底上げをしたい場合は、手間をかけずに幅広く従業員にリーチすることが大切です。それにはeラーニング、映像教材、短時間の講演などが最適です。
グローバル人材のグローバル実践力強化
ニーズ
全体の底上げとは違い、即戦力が求められている従業員にはピンポイントで、職場で即使えるグローバルスキル研修を提供する必要があります。
従来の対象者イメージは海外赴任者、国際部、海外出張の多い社員でしたが、現在は国内にいながらグローバルビジネスをしている人も多く、対面ではなくリモートがメインという傾向にあるのは間違いありません。
この場合に大切なのは、外国人と外国語で仕事をスムーズに行う力を身につけさせることです。
対策
グローバル系の研修は星の数ほどありますが、残念ながらその中で職場ですぐ役立つものはそう多くありません。
グローバル実践力を高めるための研修を企画する際は人それぞれの考えや狙いがあり、また施策も数多くあります。代表的なのは語学研修、英語スキル研修、異文化研修、リベラルアーツ、英語でのビジネススキル研修、海外留学あたりです。
考えるとキリがなく迷うところですが、シンプルに「外国人と外国語でビジネスを行う力」を目標にして考えましょう。そうすれば、効果的な人材育成施策が企画しやすくなります。
企画する際に研修効果を高めるためのポイントはこの4つです。
| ポイント | コメント |
|---|---|
| 1. グローバル実践力に重点を置く | 語学力の向上については、ある程度受講者本人でできることに任せましょう。研修予算を使って強化すべきことは、語学力よりもグローバル実践力です |
| 2. インプットとアウトプットのバランスをとる | 外国語でコミュニケーションを効果的にとるためには、新しい知識(インプット)と反復練習(アウトプット)の両方が必要です。効果的な研修企画にはどちらも含まれており、それぞれしっかりとつながっています |
| 3. バリエーションのある研修形態にする | スキルによって最適な研修形態が異なります(例:ライティング=eラーニング、ファシリテーション=グループレッスンなど)。スキルの習得度と受講者の集中力を高めるためには、さまざまな研修形態を使うのが有効です |
| 4. 実践力を測るアセスメントを事前・事後に盛り込む | 受講者の成長とレベルを確認し、研修効果を測るために事前・事後のアセスメントを実施しましょう。その際、受身的なリーディングとリスニングだけではなく、より実際のグローバルビジネスに近いシミュレーションがおすすめです |
以上のポイントを具体的な研修に落とし込むと、このようなイメージになります。




ヒント
AIの進化のおかげで講師が練習相手をしなくてもよくなったため、予算をあまりかけずに練習時間を多くする、アウトプットの機会を増やすことがようやくここ数年でできるようになりました。
管理職向けのグローバルマネジメント力強化
ニーズ
数年前までのグローバルビジネスの実態は、だいたいが日本で成功したことをそのまま海外に展開するというものでした。そのため、グローバルマネージャーの主な仕事は、日本でやっていたことを海外でもできるようにさせることでした。
ただ、現在では多くの日系企業の海外拠点は以前よりも大きい役割を担っています(例:新製品開発、売り上げ拡大など)。
海外の現地社員を活躍させるために、よりレベルの高いマネジメント力が求められています。それが今のグローバルマネージャーの課題です。
対策
グローバルマネジメント力強化のための施策は多々ありますが、時間も予算も限られているため、絞り込む必要があります。
その際におすすめしたいのは、国内とスキルが異なるかどうか(文化的なギャップ)、失敗するとダメージが大きいかどうか(インパクト)を軸に、スキルをマッピングすることです。以下のようなイメージです。

マッピングしてみると、文化的なギャップが大きいスキル、失敗するとインパクトが大きいスキルが分かります。マネージャー向けのグローバル研修を企画する際は、そのスキルに重点を置くべきです。
例えば、
| ポイント | よくある問題 | 研修内容 |
|---|---|---|
| ネガティブフィードバック | ・過剰なストレスを感じる ・曖昧で行動変容につながらない ・直接伝えて逆ギレされる |
文化が異なる相手でも受け入れやすいDAPフィードバックモデル(Describe 事実、Appreciate 解釈、Prescribe 期待) |
| ネゴシエーション | ・交渉に対するストレスが強い ・自分の思いが言えず、妥協する ・自己主張をすると関係が悪くなる |
・交渉の基本を理解する ・分析:相手の考えを深く理解する ・提案:Win-Winアイディアを出す |
| 部下育成 | ・メンバーの能力が向上しない ・立ち上げる時間がかかる ・求めている成長と成果を達成できない |
・Teaching 教える ・Coaching コーチング ・Support 定着させる |
| モチベーション | ・動機付けができない ・メンバーはやらされ感を覚える ・人に合わせた動機付けが難しい ・モチベーションが長続きしない |
・内的動機を重視する ・モチベーションスタイルを知る ・メンバーのモチベーションに合わせて個別対応をする |
ヒント
対象者がマネージャーの場合、忙しいためどうしても拘束時間を短くする必要が出てきます。
と同時に、上の表にあるようなスキルを、異なる文化的背景を持っている相手に英語でスムーズに行うのは、非常に高度なことです。そう考えると、研修の効率化が何より大事になってきます。最低限の時間で最高の成果を出さないといけません。
そのためにおすすめしたい研修設計は、以下のようなホップ・ステップ・ジャンプです。
1. HOP・効率的なインプット
受講者の限られた時間を余分に使わないよう、短い10分未満の映像教材にする
2. STEP・密度の濃いアウトプット
学んだことが少しでもできるようになるよう、複数の外国人講師で演習をする(半日の集中研修が理想的)
3. JUMP・実践的な繰り返しの訓練
実際のビジネスでスキルが使えるレベルに持っていくためには、反復演習が不可欠。外国人講師と1対1で数回ロールプレイをする(30分×最低4回がおすすめ)
各スキルに対してこのような流れの研修を実施すれば、忙しい受講者でも高度なグローバルマネジメントスキルをしっかりと身につけることができます。
まとめ
グローバル系の研修は数十年前からありますが、この数年で求められていることが変わりました。
今回紹介したヒントを活かして全社員の底上げ、グローバル人材のグローバル実践力強化、マネージャーのグローバルマネジメント力強化につなげられるように頑張ってください。
