「最近の若手はすぐ辞めてしまう」「何を考えているのかわからない」——こんな言葉を、職場でつぶやいたことはありませんか。
若手の離職は、採用・育成コストの観点からも企業にとって深刻な課題です。しかし、辞める若手の多くは、給与への不満や明確なキャリアビジョンを持っているわけではありません。
リクルートマネジメントソリューションズが2023年に実施した社会人3年目までの会社員を対象とした調査(N=435)では、未退職者の約6割が「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答しており、その理由の上位には「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)、「自分のやりたい仕事ができない」(12.8%)といった内発的な不満が挙がっています。
待遇を整えても、職場環境を改善しても、それだけでは若手の離職は防げません。問題の根っこには、「やりがい」や「仕事の意味」という個人の内側に根ざした部分があります。
この調査からは、「上司の適切なマネジメントが若手の離職意思を軽減できる」というエビデンスも得られています 。そして、そのマネジメントをより効果的にするカギが、「若手の価値観タイプを理解すること」です。
本連載では、若手社員の価値観を2つのタイプに分類し、それぞれに応じたマネジメントの実践方法を解説します。第1回となる今回は、2つの価値観タイプの特徴と離職意思の関係、そしてタイプを見極めるための具体的な質問例をご紹介します。

寄稿者坂本 佑太朗(さかもと ゆうたろう)氏株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 測定技術研究所 主任研究員
ここに人物紹介文が入ります。2015年株式会社リクルートマネジメントソリューションズ入社。人事アセスメントに関する新規商品開発や心理測定技術に関する研究に従事。研究成果は関連学会で発表、および専門誌に投稿し、理論と実際を結びつける。現在は、360度評価を中心とした研究開発に取り組む。2020年東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員。
目次
「働く目的」で分かれる2つのタイプ
調査では、若手社員の「働く目的」に関する価値観を、以下の大きく2つのタイプに分類して傾向を確認しています 。
| A. 自己成長重視タイプ | 仕事を通じて自分の力を高めることを優先するタイプです。市場価値の向上やスキルアップへの関心が高く、「今の会社でどれだけ成長できるか」を意識しています。組織に依存せず自律的に働くことを志向するため、現在の職場と外部環境を比較する傾向もあるでしょう。 |
|---|---|
| B. 組織貢献重視タイプ | 組織の中で役割を果たし、周囲やチームに貢献することに価値を見いだすタイプです。所属組織への愛着が強く、「チームや会社のために役立てているか」がモチベーションの源泉となります。 |
この2つのタイプの間には、離職意思の高さに差がありました。自己成長重視タイプほど離職意思が高く、組織貢献重視タイプほど低かったのです。
自己成長重視タイプは成長の手応えが感じられない状況に置かれると「ここにいる意味があるのか」という疑問が生まれやすい一方、組織貢献重視タイプはチームや会社への帰属意識が離職の抑止力として機能することが示唆されます。
また調査では、上司の以下3つのマネジメント行動が、価値観タイプにかかわらず離職防止に効果的であることも示されています。
- 成長につながる業務アサイン:メンバーの特徴を理解し、成長につながる業務を割り当てること
- 成長につながるフィードバック:振り返りや学びにつながる建設的なフィードバックを提供すること
- キャリア支援:メンバーが仕事を通じて実現したいことや目指したい姿を一緒に考えること
さらに、同じマネジメントでも相手の価値観タイプによって響き方が異なることも明らかになっています。だからこそ、タイプを理解したうえでアプローチを調整することが重要です。
価値観タイプを知るための3つの質問
メンバーのタイプを見極めるには、1on1や面談での対話が最も有効です。以下の3つの質問を活用してみてください。
質問①「最近の仕事で、やりがいを感じたことはありますか?」
動機の源泉を探る質問です。自己成長重視タイプは「苦手だったことができるようになった」「できることが増えた」など自身の変化に喜びを感じる回答が返りやすく、組織貢献重視タイプは「チームで目標を達成できた」「先輩から『助かった』と言われた」など他者への貢献に喜びを感じる回答が多い傾向があります。
質問②「最近の仕事で、モヤモヤしたことはありますか?」
不満や不安の所在を探る質問で、離職リスクの早期察知にも役立ちます。自己成長重視タイプは「同じ作業の繰り返しで新しい挑戦ができていない」「このままで成長できているのか不安」といった成長停滞への不満が表れやすく、組織貢献重視タイプは「自分の仕事がチームにどう役立っているかが見えない」という貢献実感の薄さへの不安が出やすいです。
質問③「先輩の中で、『こんな風になりたい』と思う人はいますか?」
ロールモデルの選び方に価値観が色濃く反映されます。自己成長重視タイプは専門知識やスキルを持つ先輩を挙げる傾向があり、組織貢献重視タイプはチームから頼られ信頼されている先輩を理想とする回答が多くなります。
なお、価値観は固定されたものではありません。ライフステージや経験によって変化することもあり、どちらにも偏らない人もいます。「一度聞いたから分かった」ではなく、定期的な対話を通じて理解を深め続ける姿勢が大切です。
タイプ別、効果的なマネジメントの方向性
自己成長重視タイプへのアプローチ
重要なのは「成長の道筋を示すこと」です。日々の業務が自分のキャリアにどうつながるかが見えないと、このタイプは不安になってしまうでしょう。
「この仕事を通じて○○のスキルが身につく」「このプロジェクトで将来△△を目指せる」といった接続点を明示することでモチベーションが高まります。また自律性を重視するため、細かい管理よりも「目標を共有したうえでやり方は本人に委ねる」スタイルが効果的と言えます。
組織貢献重視タイプへのアプローチ
重要なのは「組織の中での役割と貢献を見える化すること」です。日々の業務がチームや組織の成果にどうつながっているかを、具体的かつ定期的に伝えることが欠かせません。
業務アサイン時に「なぜあなたにこの役割を依頼するのか」「この仕事がチームにとってどんな意味を持つか」を丁寧に説明することで、強いコミットメントを引き出るでしょう。
まとめ
今回のポイントを整理すると、以下の3点です。
2. 若手の価値観は「自己成長重視」と「組織貢献重視」の2タイプに分類でき、タイプによって離職リスクの高さが異なる
3. 上司の適切なマネジメントはどちらのタイプにも離職意思を軽減できるが、タイプに応じてアプローチを変えることでその効果はさらに高まる
「最近の若手は……」と一括りにする前に、まず目の前のメンバーがどちらの価値観を持っているかを理解することが、マネジメントの第一歩です。
次回(第2回)は、「自己成長重視タイプ」に対して、1on1・業務アサイン・日常フィードバックといった場面ごとに、明日から使えるOK例・NG例を詳しく解説します。
