
はじめまして。Leaf Ringの安藤です。

執筆者安藤 宏樹氏Leaf Ring株式会社 取締役CHRO
大阪大学大学院ビジネスエンジニアリング専攻を卒業後、2014年に新卒で株式会社Speeeに入社し、マーケター、営業、人事等幅広い職種を経験し、2019年にキャディ株式会社に参画。HR部門を立ち上げ、年間100名を超える採用を実現。2021年に執行役員としてLeaf Ring株式会社に参画。脱炭素領域専門の転職支援・採用支援サービス「Beluga Career」の事業開発、採用、組織開発、マネジメントに従事。創業期のトップライン成長を牽引するとともに、そこで培った成果創出のノウハウを独自の『トレーニングプログラム』へと昇華させ、組織全体の能力開発を牽引。
私はこれまで、Speeeやキャディといった急成長フェーズのベンチャー企業で、人事・営業・事業開発と多角的に事業に関わり、またエージェント事業を通じて数多の「働く個人」のキャリアに向き合ってきました。
その中で直面してきたのは、個人のキャリアが「会社や事業の都合」によって規定されてしまうという、逃れられない構造上の問題です。
| 大企業のケース | 再現性の高い組織が重要であり、個人のWillよりも細分化された業務を正しく実行する、組織の「歯車」としての役割を求められることが多い。 |
|---|---|
| スタートアップのケース | 「事業成長こそが正義」であり、人員不足による高負荷な環境下でマネジメントが後回しになる。キャリアよりも目の前の事業貢献を優先し、盲目的に走らざるを得ないことが多い。 |
結果として、多くの優秀な人材が「この会社で自己実現を目指すのは難しい」と判断し、離職を選んでしまう。仮に事業部変更等の配置転換を行ったとしても、この構造上の課題が変わらない限り、本質的な解決は望めないため、近い将来の離職を避けることは難しいです。
目次
Leaf Ringが提示する「自己実現を尊重する」組織デザイン
Leaf Ringでは、メンバー一人ひとりの強みやWillに基づいた「オーダーメイド型のキャリア開発」を徹底しています。
具体的には、本人が目指す将来のキャリアについて対話を重ねた上で、必要な能力開発を言語化。日々の業務がそのゴールにどう繋がっているのかという「意義付け」と「成長サイクル」を丁寧に回します。
さらに、将来のキャリアから逆算した新しい業務(事業企画、組織開発、マネジメント等)に、無理のない範囲で段階的に挑戦する機会を提供しています。
その結果、メンバーのキャリアは非常に多様化しており、単なるHRコンサルタントに留まらず、着実に「自分のやりたいこと」の業務比率が高まり、より能動的に業務に取り組めています。
メンバーが能動的に成長すれば、当然ながら事業も成長します。その果実を給与として還元し、さらに大きな機会を創出する。この「正のループ」を回すことで、個人の自己実現と事業成長を高い次元で両立させています。

あえて「上場を目指さない」
こうした「一人ひとりに向き合うオーダーメイド型」の組織運営を語ると、多くの場合「理想論だ」「スケールしない」という声が上がります。
しかし、私たちがこれを実現できているのは、「あえて上場を目指さない」という明確な経営方針があるからです。
上場を選択した場合、企業は株主や投資家に対して利益の最大化・短期間での急成長をコミットしなければなりません。
人材紹介事業であれば「一人あたりの売上高の最大化」や「システマチックな組織拡大」が最優先事項となり、再現性を高めるために個人のキャリアは「型」に嵌められ、効率化の対象となります。そこでは、一人ひとりのWillに向き合うスタイルは合理性を欠くと判断されがちです。
だからこそ、当社は自己資本経営を貫いています。外部からの数字のプレッシャーに晒されるのではなく、自分たちのペースで着実な事業成長と厳選採用を行い、多少非効率であったとしてもメンバーの成長に投資する。
この人的資本経営の本質を、私たちは資本政策のレベルから担保しています。
取締役CHROが担うべき「真のオーナーシップ」
この取り組みを単なる理想論で終わらせないために、私は2026年4月、取締役CHROに就任しました。
一般的にCHROといえば、「経営陣が決めた事業計画を、組織面で着地させる実行責任者」としての役割が大きいと思いますが、Leaf RingにおけるCHROの役割は、その一段手前にあります。
事業・組織の『複眼設計』から、人的資本経営を実現する
私が目指すのは、事業戦略と個人のWillを高い解像度で同期させる、「事業・組織の複眼設計」です。
| 事業目線 | 「中長期の事業計画を見据え、いつ、どのようなケイパビリティを持つチームが必要になるか」というトップダウンの組織図 |
|---|---|
| 組織目線 | 「メンバー一人ひとりが中長期でどう成長し、どのような役割に挑戦したいと考えているか」というボトムアップの組織図 |
本来であれば相反しがちな2つの組織図を常に描き、双方を高い次元で統合し、デザインするのが私のミッションです。そのために、以下のようなディスカッションを日々行っています。
- 「メンバーAのマネジメント挑戦」を軸にした設計
彼が最もリーダーシップを発揮し、かつ事業成長に寄与できる最適なチーム構成はどのような形か? - 「新領域への進出」を軸にした能力開発
未経験の領域だが、メンバーBのWillとポテンシャルを活かすなら、あとどの期間、どんな伴走支援(能力開発)を行えば任せられるか? - 「成長速度」を軸にした事業始動
メンバーCの現在の成長曲線から逆算すると、このタイミングで新規事業を立ち上げるのがベストではないか。始動時期をそこに合わせよう。
既存の「箱」に人を当てはめるのではなく、「人の成長」という変数を事業戦略の起点に置くことで、新しいロールを設置したり、チーム編成やマネジメント構成を柔軟かつ大胆に動かしています。
創業期から事業のトップラインを伸ばしてきた経験と、HRのドメインナレッジを総動員し、事業と組織の双方を「オーナー」として担う。事業と組織を高い頻度で行き来しながら、メンバーの成長支援を事業戦略に直接組み込んでいく。
これこそが、中長期でやりがいを持って働き続けられる組織デザインの本質だと考えています。

これからのCHROに必要な「事業解像度」
では、これからの時代、CHROにはどのような要件が求められるのでしょうか。
私は、「圧倒的な事業解像度の高さ」に尽きると考えています。人事として採用や組織開発の「型」を回しているだけでは、本当の意味で事業と組織を接続することはできません。
- 当該事業において、リーダーやマネージャー、ストラテジスト等の役割を担うためにはどんな能力が必要か、具体業務を踏まえて言語化
- メンバーの能力開発状況を踏まえ、どこにフォーカスして能力を伸ばすべきか、マネージャーとのディスカッション
- 現在の事業状況やマネジメントキャパシティを踏まえた、採用要件の定期的な見直し
こうした具体の解像度は、自身が事業の現場に立ち、泥臭く課題に向き合ってきた経験からしか得られません。
私は創業期から事業開発とマネジメントに関わり続けてきたことで、まさにこの「接続の解像度」を磨いてきたからこそ、主体的に関わることができていると思います。
今後の展望:仕組み化と高度化
取締役CHROとして、私が今後さらに加速させていきたいことは3つあります。これらはすべて、個人のWillと事業成長を同期させる「複眼設計」を、組織全体で再現可能にするための挑戦です。
① 中長期のWillと「日々の手触り」の接続
キャリア面談で言語化した「将来のWill」を、単なる絵餅に終わらせないことが重要です。
その大きな目標を、年度・月次・週次の個人目標(短期目標)へと、いかに高い解像度で落とし込めるか。
「今日この業務を完遂することが、自分の理想にどう近づいているのか」という実感を、全てのメンバーが日常的に得られる仕組みをさらに磨き上げます。
② 最新テックを活用した「自律型成長」のブースト
オーダーメイド型の育成は、本来極めてコストの高い営みです。これを効率化ではなく「高度化」させるために、テクノロジーを積極的に取り入れます。
例えば、NotebookLMなどのAIを活用した1on1の内省サイクル。過去の対話ログをAIが構造化し、本人も気づいていない強みの萌芽や思考の癖を可視化することで、マネジャーとの対話を「報告」から「質の高い未来の壁打ち」へと昇華させ、自律的な成長を加速させます。
③ 「複眼設計」を担う高度なマネジメント層の育成
組織が拡大するにつれ、CHRO一人で全ての複眼設計を行うことには限界が来ます。そこで最も重要になるのが、現場でメンバーと向き合うマネージャーの育成です。
単なる進捗管理ではなく、事業の伸び代とメンバーのWillを掛け合わせ、能動的な機会提供を行える「高度なマネジメント力」を持ったリーダーを育て上げる。彼らが「複眼設計」の体現者となることで、Leaf Ring独自の組織文化を、より強固でスケール可能なものへと進化させていきます。
最後に
「未来の子供達が環境問題に不安を感じない社会」という壮大なビジョンの実現に向け、私たちは、義務感で働く組織ではなく、「自分の人生の手綱を自分で握り、楽しみながら成長を続ける個人」の集合体で挑みたいと考えています。
個人と組織の新しい関係性、それをLeaf Ringで実現したいと思います。
