プロアクティブ人材育成 実践ステップ③:経営・人事部門と管理職の対話と共創に着手せよ!|「プロアクティブ人材」育成実践術 #5 |HR NOTE

プロアクティブ人材育成 実践ステップ③:経営・人事部門と管理職の対話と共創に着手せよ!|「プロアクティブ人材」育成実践術 #5 |HR NOTE

プロアクティブ人材育成 実践ステップ③:経営・人事部門と管理職の対話と共創に着手せよ!|「プロアクティブ人材」育成実践術 #5

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※本記事は、株式会社日本総合研究所様より寄稿いただいたものになります。

前回の第4回連載では、プロアクティブスコアを利用して、自社にとって「意味のある」ターゲットおよびテーマを特定する方法について触れました。第5回連載では、具体的な施策を実行し、プロアクティブ行動を活性化させるために必要となる人材マネジメントの仕組みについて解説します。

【連載】「プロアクティブ人材」育成実践術

寄稿者下野 雄介株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジメント&インディビジュアル デザイングループ 部長

「プロアクティブ行動の促進」研究・ソリューション開発責任者を兼任。オンライン公開講座「2023年人的資本経営の総括と、2024年に向けた展望」(日本CHO協会 2023年度)をはじめ人的資本経営・プロアクティブ行動に関する講演実績多数。専門は組織開発、組織行動論。著書「プロアクティブ人材: アカデミアとビジネスが共創したVUCA時代を勝ち抜くための人材戦略」 (KINZAIバリュー叢書)。

寄稿者 宮下 太陽株式会社日本総合研究所 未来社会価値研究所兼リサーチ・コンサルティング部門 マネジメント&インディビジュアルデザイングループ シニアマネジャー

立命館大学客員研究員。組織・人事領域のコンサルタントとして学術の知見も駆使し、顧客の本質的な課題を捉えた科学的な組織変革を支援。専門は文化心理学、社会心理学、キャリアディベロップメント。著書「プロアクティブ人材: アカデミアとビジネスが共創したVUCA時代を勝ち抜くための人材戦略(KINZAIバリュー叢書) 」他共編、監訳、共著多数。

寄稿者 市川 謙吾 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジメント&インディビジュアルデザイングループ コンサルタント

2021年よりSMBC及びSMFGに2年間出向。その後は、地方創生に関わるコンサルティングを経て、現在は民間企業や医療法人を中心とした人事制度構築や人材開発支援のコンサルティングに従事している。

近年の人材マネジメントにおける変化

まず、最初に結論から述べると、プロアクティブ行動を活性化させるためには、経営・人事部門、管理職が一体となって施策を浸透させていくような人材マネジメントの仕組みが構築されていることが理想と言えます。具体的な打ち手を検討、実施していくにあたり、経営・人事部門だけで検討するのではなく、管理職を巻き込むことが必要になってきている背景としては近年の人材マネジメントの変化があります。

従来の人材マネジメントでは、新卒一括採用や年功序列的な人事制度を背景として、画一的な人材マネジメントが一般的であり、管理職はいわゆるKKD(勘、経験、度胸)と呼ばれる属人的なセンスでマネジメント業務を行うことも珍しくありませんでした。

それが近年は、勤務場所、勤務時間も含めた多様な働き方が進み,加えて働き手そのものも多様化する中、これまでよりも個人ひとり一人に迫る丁寧な人材マネジメントが必要となっており、管理職も従来のKKDに頼ったマネジメントからの脱却が求められるようになってきているのです。

この人材マネジメントの変化により、プロアクティブ行動を活性化させる施策を展開していく上で、ますます重要になるのが、経営・人事部門と管理職の緊密なコミュニケーションです。経営・人事部門で立案した施策を、適切な形で現場の社員に届けるためには、現場の部下をよく把握している管理職の協力が必要不可欠であるとともに、管理職がKKDに頼ったマネジメントスタイルから脱却できるように経営・人事部門がサポートする必要があります。

経営・人事部門と管理職はプロアクティブ行動を活性化していく上で、どちらかが欠けてもいけない車の両輪であり、相補的関係にあるのです。

経営・人事部門と管理職の関係性を強化

それでは、具体的に何を意識し、何が重要なのかという点について解説していきます(図表1)。

プロアクティブ行動の活性化に向けた人材マネジメントの起点となるのが、プロアクティブスコアの測定です。

経営・人事部門はプロアクティブスコアを人材マネジメントに関する共通言語とすることで、管理職に対して管理職が管掌するチームや部下の状態を適切に伝えることが可能となります。チームや個人の状態を適切に把握するという観点では、このプロアクティブスコアの測定はできれば月次、少なくとも四半期ごとには測定することが望ましいといえます。

経営・人事部門から管理職に対するコミュニケーションの中で、留意すべき点は結果としてのプロアクティブスコアの数値だけを伝えるようなことはしないということです。

最近多くの組織で実施されているエンゲイジメント調査などでも、得てして管理職へのフィードバック内容が数値の高低に関する内容のみにとどまってしまい、管理職は結局何をすればよいのか分からないという状況に陥っているということをよく耳にします。

重要なことは、「どのような人材マネジメントを行えば、プロアクティブ行動の活性化を促せるか」という観点で、管理職が自身のKKDに依存しないように経営・人事部門から管理職に対して実行可能性の高いアイデアや具体的な行動につながるヒントを提示することです。

例えば「あなたのチームは、他のチームと比較してプロアクティブ行動の中でもキャリア開発行動が低い」という事実が把握でき、「キャリア開発行動を高めるには、明確でポジティブなビジョンを示して、そのビジョンに対してチームの各メンバーがどのように貢献できるかを考えてもらうことが有効である」といったヒントが得られたら、管理職は部下との1on1ミーティングの中で、自部署のチームの状況を踏まえたコミュニケーションをとることが可能になります。

このような一連の流れがうまく機能するためには、管理職の中で、経営・人事部門から提示されたアイデアやヒントが本当に腹落ちしていることが必要であり、そのために経営・人事部門と管理職との間での質の高いコミュニケーションに基づく協創が重要となるのです。

また、経営・人事部門としては、モニタリングという観点で、管理職がKKDに極力頼らず経営・人事部門から提供されたヒントをもとに施策を展開できているかを、定期的に管理職に確認したり、360度評価などを通じてひとり一人の社員から管理職のマネジメント状況を把握することも重要です。

プロアクティブスコアを共通言語に

ここまでプロアクティブスコアが、経営・人事部門と管理職とのコミュニケーションを取るうえでの共通言語となり、お互いの理解を促進させる基盤として重要な役割を果たすことの重要性を述べてきました。仮に共通言語がない場合は、管理職と経営・人事部門が双方の状況を的確に把握できないため、それぞれの施策や意見に対して納得できず、結果として様々な施策が浸透しないということになりかねません。

我々は企業の経営・人事部門の社員と管理職の社員が人材マネジメントに関する会議を行うような機会を何度も目にしてきましたが、その中で経営・人事部門側が管理職の状況、つまりは現場の状況を正確に把握できていない場合は、お互いの意見が腑に落ちず、議論が収束しないようなこともありました。

会社として真に実効性のある施策を検討し、確実に展開していくためには、プロアクティブスコアをはじめとした共通言語を意識しつつ、経営・人事部門と管理職が一体となって人材マネジメントを行っていくことが重要なのです。

ここまで、人材マネジメントの近年の動向、そしてプロアクティブ行動を活性化させるために重要となる経営・人事部門と管理職の関わり方を説明してきました。第6回連載では、個人およびチームのプロアクティブ行動を促進するために重要となるミドルマネジメント層のリーダーシップ行動について解説します。

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