「ダイバーシティ&インクルージョンの本質的な意味とは?」
「ダイバーシティー&インクルージョンの具体的な取り組み例がわからない」
上記の疑問を抱える人事労務担当者の方は多いのではないでしょうか。
ダイバーシティー&インクルージョンとは、「多様性を受け入れたうえで、その特性を活かす組織のあり方」を示しています。あらゆる人々が活躍できる環境を整えるために、理解を深めましょう。
この記事では、ダイバーシティ&インクルージョンの基本情報と取り組み事例、メリット・デメリット、取り入れる際のポイントを解説しています。
ビジネス環境の変化に対応しようと考えている事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
1. ダイバーシティ&インクルージョンとは
ダイバーシティ&インクルージョンとは、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容性)の2つの単語を組み合わせた言葉です。
従業員一人ひとりの多様性を受け入れ、それぞれの能力を活かしあえる組織に成長するための取り組みをダイバー&インクルージョンといいます。
ダイバーシティとインクルージョンについて詳しく解説するので、2つの言葉の違いや意味を理解しましょう。
ダイバーシティとは |
インクルージョンとは |
|
直訳 |
多様性 |
受容性 |
言葉ができたきっかけ |
1950~1960年代にアメリカで起きた公民運動がきっかけとなった |
社会から排除されていることを意味する「ソーシャル・エクスクルージョン」の反対の意味を持つ言葉として使われるようになった |
意味 |
人種・年齢・国籍・性別・性格・学歴・宗教など、さまざまな要素における多様性を互いに認め合うこと |
ビジネスの分野での意味は、多様な背景を持った人同士が、互いの個性や能力を認め、活かしあえる環境づくりをすること |
「多様性」は性別や人種に注目されやすいですが、あらゆる属性に着目しなければならない点を理解しましょう。
2. ダイバーシティ&インクルージョンの重要性
現代の社会でダイバーシティ&インクルージョンが重要だと言われている理由は以下のとおりです。
- 多様な人材を活かす必要がある
- 価値観の変化に対応する必要がある
それぞれの理由を、詳しく解説していきます。
2-1. 多様な人材を活かす必要がある
現代の日本では、多様な人材をビジネスに活かす必要があります。それは、少子高齢化が進み労働人口が減少しているためです。これからは性別や年齢、障害の有無、国籍などで区別せず、さまざまな人材を雇用していく必要があります。
しかし、多様な人材を雇用するだけでは、組織の活性化にはつながりません。人数を補填するだけでなく、多様な視点を持つ人が共に働き、いままでになかった視点でビジネスを展開していくことが求められます。
また、個人の事情に合った働き方を推進する必要もあるでしょう。
2-2. 価値観の変化に対応する必要がある
ビジネスチャンスを広げるには、世の中の価値観の変化に対応する必要があります。現代では、手軽にさまざまな思想に触れられるようになり、それぞれの人が自由に考え、発信できるようになりました。
バラエティに溢れた考え方に対応する商品やサービスを展開するには、多様な考え方ができる従業員が必要となるでしょう。
市場にはすでに多くのものやサービスが溢れています。ライバル企業との差別化を図るためには、さらに革新的なアイデアが必要です。そのようなときに、さまざまな年代や性別、性格、国籍をもった多様な人材がいる企業はとても有利になります。
3. ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み事例
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み事例は以下のとおりです。
- 女性の活躍を推進する
- シニアの積極的な採用を推進する
- 外国人労働者の能力を活かす
- LGBTへの理解を促進する
それぞれの取組みを詳しく紹介します。
3-2. 女性の活躍を推進する
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れている企業では、女性の活躍を推進しています。すでに多くの企業で女性が活躍していますが、依然として管理職の割合の低さや賃金格差が完全に解消されていません。
女性が活躍できる企業を目指すためには、女性の体調の変化への対応や、妊娠・出産・子育しやすい環境が必要です。
3-3. シニアの積極的な雇用を推進する
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みの一つとして、高齢者の積極的な雇用を促進している企業も多いです。シニアの方は、多くの経験や多彩な能力を持っている方が多く、さまざまな場面で活躍するでしょう。
さまざまなスキルを若手に継承することで、いままでのノウハウが途切れずに将来に渡って活用できます。
3-4. 外国人労働者の能力を活かす
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みでは、外国人労働者の能力を活かすことも重要なポイントです。多様な考え方を持つ社会に対応するサービスや商品を作るには、外国人労働者のグローバルな視点も必要となるでしょう。
外国人労働者が働きやすい環境を整えるには、言語への対応や宗教に応じた職場環境、母国への帰国制度などが必要です。公正な評価制度や周囲の従業員からの理解やサポートもかかせません。
3-5. LGBTへの理解を促進する
多様性を受け入れるためには、LGBTへの理解も必要不可欠です。LGBTとは、性的マイノリティの総称として使われている言葉で、日本の人口では3~8%がLGBTに該当すると言われています。
LGBTの方が能力を十分に発揮し活躍してもらうために必要なのは、従業員へのLGBTへの理解の促進と制度の整備、設備の充実などです。
参考:LGBTから学ぶ「ダイバーシティ&インクルージョン」|板橋区公式ホームページ
4. ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れるメリット
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れるメリットは以下のとおりです。
- 従業員のエンゲージメント・モチベーションの向上につながる
- 優秀な人材を獲得する可能性が高まる
- 企業のイメージがアップする
各メリットを詳しく解説します。
4-1. 従業員のエンゲージメント・モチベーションの向上につながる
ダイバーシティ&インクルージョンの取組みは、従業員のエンゲージメントやモチベーションの向上につながります。自分の個性や考え方を認められた従業員は、組織のために自分を押し殺すことなく、のびのびと働けるためです。
従業員の個性や属性を受容し活躍できる場を提供すれば、従業員のポジティブな考えが企業全体に良い影響をもたらします。結果として、生産性のアップだけでなく離職率の低下にもつながるでしょう。
4-2. 優秀な人材を獲得する可能性が高まる
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れている企業は、優秀な人材を獲得する可能性が高まるでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みは、社員を大事にしている証となるためです。就職活動中の方は、自分の個性を受け入れ能力を活かしてくれる企業を進んで選びたくなるでしょう。
多くの方に選ばれる企業になれば、必然的に優秀な人材も集まりやすくなるはずです。
4-3. 企業のイメージがアップする
ダイバーシティー&インクルージョンを取り入れると、企業のイメージがアップします。近年では、社会的にもダイバーシティ&インクルージョンが重要視されているためです。
ダイバーシティー&インクルージョンを取り入れている企業はイメージが上がり、クライアントや株主などのステークホルダーからも高い評価を得やすくなるでしょう。
企業のイメージがアップすれば、提供している商品やサービスのイメージも良くなり、売上の向上が見込めるかもしれません。
5. ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れるデメリット
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れるデメリットは以下のとおりです。
- 制度や設備の整備が必要となる
- 既存の従業員が抵抗する場合がある
各デメリットを詳しく解説します。
5-1. 制度や設備の整備が必要となる
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れるデメリットとして、制度や設備の整備が必要であることが挙げられます。
ただ多様な人材を採用するだけでは成果に結びつきません。人材に合った制度や設備の整備が必要です。
具体的な取り組みは以下のとおりです。
- 妊娠や出産に対応するための制度の充実
- 子育て・介護と仕事を両立するための短時間勤務・リモートワークの充実
- LGBTの方がストレスなく働くための設備の拡充
- 障害者の方が無理なく活躍できる環境づくり
- 外国人の方が言語や宗教の違いに困らないための配慮
制度や設備の整備には手間やコストがかかるため、デメリットと感じる場合もあるかもしれません。
5-2. 異なる価値観の間で対立が生まれる
ダイバーシティー&インクルージョンを取り入れるデメリットとして、異なる価値観の間で対立が生まれる可能性があります。
多様な人材が一つの企業でともに働けば、ときに対立が生まれるのは自然なことです。女性やLGBT、シニア、障害者が優遇されていると感じる従業員も出てくる可能性もあるでしょう。
また、人はそれぞれ無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を持っています。自分自身では偏見を持っていることに気がついておらず、公平性を欠く行動をとることはだれにでもありえるでしょう。
さまざまな価値観の間で対立が生まれれば、職場の環境にマイナスに働くことは十分に考えられます。従業員同士の対立には、以下のような対策を講じましょう。
- 従業員に対しての多様性に関する教育をする
- 従業員同士のコミュニケーションの機会を設ける
- 社内に相談窓口を設ける
従業員同士の対立が生じた場合には放置せず、早めに対処することを心がけましょう。
6. ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れる際のポイント
ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れる際のポイントは、以下のとおりです。
- 自社の状況を把握する
- だれもが発言しやすい環境をつくる
- 従業員の意識改革をする
- 従業員に情報を発信する
ダイバーシティ&インクルージョンの取り入れる検討をしたら、まずは自社がどれくらい多様性の受け入れに対応しているのか状況を把握しましょう。数値でわかることだけでなく、従業員に面談、アンケートをおこなうなどして実情を把握することが大切です。
また、たとえ多様性をもった人材が集まったとしても、自分の考えを発言しにくい環境では斬新なアイデアを活かせません。勤務年数・年齢・性別などを気にせずに発言できる環境づくりが今後の企業の成長を左右します。
従業員の意識改革や進捗状況の共有により、従業員にも多様性の受け入れを常に意識してもらいましょう。
7. ダイバーシティ&インクルージョンで多様性のある職場環境を築こう
ダイバーシティ&インクルージョンインクルージョンは、ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(受容性)を組み合わせた言葉です。従業員一人ひとりの個性を受け入れ、多様な能力を活かしあうための取り組みを意味します。
労働人口不足や世の中の価値観の多様化に企業が対応するためには、ダイバーシティ&インクルージョンを取り入れる必要があります。
多様な人材が持つ能力が発揮できれば、いままでにない斬新なサービスやアイデアが生まれるかもしれません。従業員のエンゲージメントやモチベーションの向上、優秀な人材の獲得、企業イメージのアップにもつながるでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンの導入には、従業員の意識改革や環境づくりが必要となります。これからの社会で活躍する企業に成長するために、ダイバーシティ&インクルージョンで多様性のある職場環境を築きましょう。