「多能工とは?」
「多能工を育成するメリットやデメリットは?」
「多能工を育成する手順や注意点が知りたい」
上記のような疑問をお持ちの方もいるでしょう。多能工とは、複数の業務スキルを身につけた従業員のことです。従業員が保持するスキルに応じて、柔軟に人員配置をおこなえます。
ただし多能工を育成する手順を間違えると、業務効率の低下や従業員のモチベーション低下を招く可能性があります。スキル習得のために十分な育成期間を設けたり、評価基準を整備したりしなければなりません。
本記事では、多能工を育成するメリットやデメリットについて詳しく解説します。また多能工を育成する際の手順や注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 多能工とは
多能工とは、複数の業務スキルを身につけている従業員のことです。「マルチスキル」や「マルチタスク」とよばれる場合もあります。
複数のスキルを保持している従業員は、さまざまな場所での業務が可能です。状況に応じて柔軟に人員を配置できるため、多能工の育成を検討する企業が増えています。
2. 多能工と単能工の違い
多能工と単能工の違いは、従業員に依頼できる業務範囲と従業員が保持するスキルの数です。それぞれの違いについて以下の表にまとめました。
多能工 |
単能工 |
|
従業員のスキル |
複数のスキル |
一つのスキル |
業務範囲 |
複数の業務に対応可能 |
一つの業務に特化 |
多能工は複数のスキルを保持した従業員であり、複数の業務を依頼可能です。
一方、単能工は一つのスキルを保持した従業員であり、一つの業務に特化して作業をおこないます。業務の専門家(スペシャリスト)として高いスキルを身につけているため、滞りなく作業を進められることが特徴です。
3. 多能工を育成する3つのメリット
多能工を育成するメリットは以下の3つです。
- 属人化を防げる
- 業務の見える化につながる
- 従業員同士のコミュニケーションが円滑になる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
3-1. 属人化を防げる
多能工を育成するメリットとして、属人化を防げる点が挙げられます。
属人化とは、特定の従業員しか対応できない業務がある状態のことです。従業員が休職や退職をした際に、ほかの従業員が対応できないため、業務が滞る可能性があります。
多能工を育成すると複数のスキルを保持する従業員が増えるため、特定の従業員に頼ることなく、安定して業務の遂行が可能です。
また、業務を担当する従業員が変わっても、製品やサービスのクオリティを保てるため、企業の信頼性を高められます。
3-2. 業務の見える化につながる
業務の見える化につながることも、多能工を育成するメリットです。
業務の見える化とは、業務の進捗状況などをすぐに確認できる状態を指します。業務が滞っている箇所や問題点を把握しやすくなるため、トラブルの早期解決・改善が可能です。
多能工では見える化の手法であるスキルマップや業務フローを活用し、従業員が保持するスキルに適した配置をおこないます。見える化により適切な人員配置ができると、効率よく業務が進み、トラブルを回避しやすいです。
3-3. 従業員同士のコミュニケーションが円滑になる
従業員同士のコミュニケーションが円滑になることも、多能工を育成するメリットです。多能工はさまざまな部署で業務をおこなうため、これまで関わりがなかった従業員とコミュニケーションを図れます。
従業員同士のコミュニケーションが円滑になると情報共有がスムーズにでき、業務のミスやトラブルに発展しにくいです。
4. 多能工を育成する3つのデメリット
多能工を育成するデメリットは以下の3つです。
- 育成期間中の業務効率が低下する
- スキルを習得するまでに長期間かかる
- 人材育成のコストが増加する可能性がある
それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
4-1. 育成期間中の業務効率が低下する
多能工を育成するデメリットとして、育成期間中の業務効率が低下する点が挙げられます。通常の業務と並行して、別業務に必要なスキルを習得しなければならないためです。
習得するスキルによっては研修に参加する必要もあるため、一時的な人員不足になる可能性もあります。業務効率を低下させないためには、人員の補充や別部署からのサポートも必要です。
4-2. スキルを習得するまでに長期間かかる
従業員が複数のスキルを習得するまでに長期間かかることも、多能工を育成するデメリットです。
通常の業務と並行してスキルを習得する場合、限られた時間の中で技術や知識を身につけなければなりません。短期間に教育を詰め込みすぎると、従業員に大きな負荷がかかり、モチベーションの低下を招く可能性があります。
従業員のモチベーションを維持するためには、スキル習得までに十分な育成期間を設けることが大切です。
4-3. 人材育成のコストが増加する可能性がある
人材育成のコストが増加する可能性があることも、多能工を育成するデメリットです。
専門的なスキルを習得するには、資格取得が必要だったり、研修に参加したりしなければなりません。テキスト代、受験料、外部講師の派遣費用などのさまざまな費用が発生する可能性があります。
人材育成のコストを抑えるためには、研修内容や人材育成で使用しているツールを見直しましょう。また、国や自治体による補助金や助成金を活用するのも一つの手段です。
以下の記事では、企業のリスキリング支援に関する補助金や助成金の情報をまとめているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:リスキリング支援の補助金・助成金・給付金一覧!個人でも申請可能な補助金とは?
5. 多能工を育成する手順
多能工を育成する手順は以下のとおりです。
- 従業員に対して多能工の目的を共有する
- 各部署・各従業員の業務内容をヒアリングする
- 業務フローや従業員のスキルマップを作成する
- 従業員の育成プランを立てる
- 育成プランの評価・振り返り・改善を実行する
多能工を育成する際は、従業員に対して多能工の目的を共有しましょう。なぜ多能工を取り入れるのか具体的に説明することで、従業員は主体性をもってスキル習得に取り組めます。
次に業務の見える化をおこなうために、各部署・各従業員へ業務内容をヒアリングしましょう。ヒアリングした内容を元に、業務フローや従業員のスキルマップを作成します。
業務の見える化ができたら、育成対象となる従業員の育成プランを立てましょう。育成を開始したあとは取り組み内容を評価・振り返りをおこなうことで、従業員のモチベーションを維持できます。
6. 多能工の育成が失敗する原因
多能工の育成が失敗する原因は以下のとおりです。
- 従業員が多能工の目的を理解できていない
- スキル習得のサポート体制が整っていない
- 評価基準が整備されていない
従業員が多能工の目的を理解できていないと、スキル習得までに時間がかかり、業務効率の低下を招く可能性があります。スキル習得に必要な教育・研修体制がなければ、従業員がスキルを身に付けることはできません。
また、習得したスキルに対する評価が得られないと、業務に対するモチベーション低下にもつながります。多能工を成功させるには、従業員からの理解を得たうえで、スキル習得のサポート体制・評価基準の整備が必要です。
7. 多能工を育成する際の注意点
多能工を育成する際の注意点は以下のとおりです。
- 従業員のキャリアプランやポテンシャルを確認する
- スキル習得に見合った育成期間を設ける
- 評価基準を明確に提示する
従業員のキャリアプランやポテンシャルを確認することで、多能工を育成する従業員を選定できます。キャリアプランに合う研修をおこなえたり、人員配置ができたりすることで、従業員のモチベーション向上にもつながりやすいです。
スキル習得に見合った育成期間を設けられると、通常業務と並行しながら多能工を育成できます。余裕をもったスケジュールが組めると、従業員のモチベーションも維持しやすいです。
評価基準を明確に提示しておくと、従業員は前向きにスキル習得に取り組めます。人事評価の手法として、従業員のスキルに着目した能力評価を導入することもおすすめです。
以下の記事にて能力評価の項目や実施する際の注意点をまとめているため、ぜひ参考にしてください。