この記事では、テレワークガイドラインの概要や、テレワーク導入のポイントについて解説しています。テレワークの実現に向けて取り組むべき項目を明確にするため、本記事を参考にしてください。
目次
テレワークガイドラインとは
テレワークガイドラインとは、テレワークの導入に際して実施すべきことや留意すべきことを取りまとめたものを指します。テレワークの導入を検討している場合や、改めてテレワークの制度を見直す場合には一度ガイドライン確認してみましょう。
テレワークガイドラインは厚生労働省や総務省などが策定しており、公表されたガイドラインは「テレワーク導入ガイドライン」として日本テレワーク協会でまとめられています。テレワーク導入ガイドラインは以下の4分野で構成されています。
- 総合ガイド
- 労務管理ガイド
- ICTガイド(ツールやテレワーク関連商品)
- 情報セキュリティガイド
なかでも、労働者側の注意点もまとめられている労務管理ガイドと、情報漏洩を防ぐために実施すべき情報セキュリティガイドは、とくに重要であるといえるでしょう。
厚生労働省のテレワークガイドライン
テレワーク導入ガイドラインにおける労務管理ガイドは、厚生労働省が作成しています。その概要や目的について説明します。
ガイドラインの目的
労務管理ガイドで取り上げられているガイドラインは次の4つです。
- 「テレワークモデル就業規則~作成の手引~」
- 「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」
- 「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
- 「自営型テレワークの適切な実施のためのガイドライン」
1つ目の手引書は、就業規則を作成する際に基本となる雛形や、作成時の注意点を解説したものです。
2つ目のQ&A集は、テレワーク導入時につまずきやすいポイントを一問一答形式で詳しく解説しています。
3つ目の推進ガイドラインには、テレワークで望ましい働き方ができるようにするため、使用者と労働者の双方が取り組むべき内容や留意点が書かれています。
4つ目の自営型テレワーク向けガイドラインは、起こり得る紛争を未然に防いで適切なテレワークをおこなうために必要なことをまとめたものです。
2021年3月に改定されたガイドラインの概要
上で挙げた3つ目のガイドラインは、2021年3月に「テレワークガイドライン」が改定されたものです。改定されたガイドラインの要約として、使用者と労働者のそれぞれに向けたリーフレットと、改定点の概要をまとめたファイルが別に用意されています。
改定されたガイドラインの概要は、以下のようにまとめられるでしょう。
- テレワークの実施が難しい業種であっても実施を検討する
- ペーパーレス化や電子決済を導入して意識の改革に取り組む
- 過度な負担がかからないテレワークのルールをよく話し合って決める
- 労働者ごとに時間の自由を認めて柔軟な労働形態を実施する
- テレワークにおいても安全衛生や労働災害、ハラスメントへの対策を講じる
詳細などについては、パンフレットやリーフレットを確認してください。
参考:厚生労働省 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
総務省のテレワークセキュリティガイドライン
ここでは、総務省が策定したテレワークセキュリティガイドラインの目的と概要について説明します。
ガイドラインの目的
テレワークセキュリティガイドラインは、企業が抱くセキュリティへの不安を取り除くために策定されました。テレワークが一般的な業務形態へとシフトしていくことで、企業や労働者を狙ったサイバー攻撃の危険性が高まっています。
そのうえ、サイバー攻撃は高度化および複雑化が進んでいるため、従来のセキュリティ対策では不十分です。テレワークセキュリティガイドラインは、そうした攻撃から身を守る術を提示し、具体的なセキュリティ対策方法を解説しています。
ガイドラインの概要
このガイドラインで伝えている内容は、大きく分けて3つです。
- テレワークを導入する際に検討すべきこと
- セキュリティ対策の一覧および解説
- テレワークで発生しうるトラブルと対策
まず、テレワークを導入する際に検討すべきこととしてテレワーク方式などが挙げられ、選択肢や考え方を解説しています。テレワーク導入後も、業務を改善するための参考になるでしょう。次に取り上げているのは、13個のセキュリティ対策方法です。テレワーク導入時にしておきたいセキュリティ対策を一つ一つ詳細に解説しています。
最後は、テレワークを使っていくなかで発生すると考えられる15個のトラブル例と解決策です。アクセス権限の設定不備やフィッシングメールなどの事例に焦点が当てられています。
テレワークを推進するポイント
ここまで解説したガイドラインを踏まえて、テレワークを推進するときに抑えておきたいポイントを4点挙げます。
テレワーク対象者や業務内容などを選定する
テレワークを実施する範囲や業務内容は慎重に選定してください。
必ずしも会社全体でテレワークを導入する必要はありません。なぜなら、テレワークを導入する理由は業務改善にあるからです。とにかくテレワークを導入したいからといって、著しく効率が落ちる結果になるのは本末転倒。導入したばかりで慣れないうちは時間がかかるとしても、改善されることが見込める業務でテレワークを実施しましょう。
最終的に会社全体がテレワークになる計画だとしても、導入する優先順位は重要です。最も改善される業務範囲はどこか、一度に導入できるのはどこまでかを検討し、成果のあがりやすい計画を立案しましょう。
ルールを策定し、周知する
テレワークを導入する際は、労働者の働き方に合わせたルールを策定し、周知するとよいでしょう。労働者の働き方は在宅勤務以外にもモバイルワークやコワーキング、ワーケーションなどがあります。労働する場所や時間を明示しなければ、正しく労務管理をおこなうのは難しいでしょう。
また、労働場所の明示は、労働基準法を遵守するためにもしなければなりません。テレワークをおこなう時間や場所はルールとして決め、法令に則った勤務ができる環境を整えてください。なお、あらかじめ決めている労働条件を超えた勤務をさせるには、労働者本人の合意を得て、労働契約を変更する必要があります。
勤怠管理や人事評価制度を工夫する
テレワークを実施していると勤怠管理や人事評価が難しくなるため、どのように実現するかを考えて工夫する必要があります。勤怠管理の例としては、始業および終業時間にメールや電話で報告したり、勤怠管理ツールを利用したりする方法が挙げられます。人事評価の方法には、定期的に対面で接する機会を設けるなどが考えられるでしょう。
ただし、テレワークで働く人と出社している人のあいだに不当な格差を作らないように注意してください。たとえば、常に自宅で業務をしているからといって、勤務時間外にメールや電話に対応しなかったことを理由に評価を下げるのは不適切です。テレワークと出社で扱いを変えたい場合は、どちらの働き方にするか選択できるようにしたうえで、あらかじめ扱い方を説明するようにしましょう。
セキュリティ対策をおこなう
テレワークでは各々の環境で勤務するため、社内以上にセキュリティを考慮しなければなりません。セキュリティの担当者だけでなく、経営者や労働者もセキュリティ対策を実施するよう働きかけてください。
経営者は、企業の方針や情報の取り扱い方を定め、セキュリティ担当者や労働者に教育しなければなりません。うまく教育できなければ、会社全体のセキュリティが不十分になってしまい、サイバー攻撃の被害を受けやすくなるでしょう。
考えられる被害内容や対策方法はテレワークセキュリティガイドラインにも詳細に記載されているので、ガイドラインを参考にしながらセキュリティ対策を施していきましょう。
ガイドラインを参考に快適なテレワークを実現しよう!
日本テレワーク協会で取りまとめられているガイドラインを参考にすることで、テレワークを実施するために必要な要件に取り組みやすくなります。総合ガイドやICTガイドもあわせて読めば、自社が進めていくべきテレワーク導入への道筋が見えてくるでしょう。ガイドラインを参考にしながら、トラブルのない快適なテレワーク環境の構築を目指しましょう。