「はたらく」満足度が高いZ世代。満足感の理由はリモートワークではなく「自分らしさ」だった?|doda副編集長 桜井 貴史 |HR NOTE

「はたらく」満足度が高いZ世代。満足感の理由はリモートワークではなく「自分らしさ」だった?|doda副編集長 桜井 貴史 |HR NOTE

「はたらく」満足度が高いZ世代。満足感の理由はリモートワークではなく「自分らしさ」だった?|doda副編集長 桜井 貴史

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※本記事は、doda副編集長の桜井貴史さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

HR NOTE読者のみなさま、こんにちは。パーソルキャリア doda副編集長の桜井と申します。

【執筆者】桜井 貴史|パーソルキャリア株式会社 doda副編集長
新卒で大手人材会社に入社し、一貫して学生のキャリア教育や就職・転職、幅広い企業の採用支援事業に携わる。2016年11月、パーソルキャリア株式会社に中途入社。株式会社ベネッセホールディングスとの合弁会社、株式会社ベネッセi-キャリアに出向、新卒オファーサービス「dodaキャンパス」の立ち上げをけん引し、初代dodaキャンパス編集長に。その後、パーソルキャリア株式会社 新卒事業部 エグゼクティブマネジャー、株式会社ベネッセi-キャリア 商品サービス本部 本部長として、キャリア講座やアセスメントをはじめとした、大学生向けサービスの責任者を務める。2023年4月、doda副編集長 兼 クライアントP&M本部 プロダクト統括部 エグゼクティブマネジャーに就任。年間約60万人以上の若者のキャリア支援に携わっており、Z世代の就職・転職動向やキャリア形成、企業の採用・育成手法に精通している

日本では、「はたらく」ことに対してポジティブなイメージを持つ人は多くないようです。

内閣府が令和4年におこなった「国民生活に関する世論調査※1」によると、はたらく目的の1位は「お金を得るために働く」で63.3%。前回調査(令和3年9月)よりも、2pt以上アップしています。

「生活のためにはたらいている」と割り切っている人も少なくないでしょう。

はたらくことに対してネガティブなイメージを持っているのは、現役社会人だけではありません。当社では、小中学生向けキャリア教育プログラム「“はたらく”を考えるワークショップ※2」を開催しています。

その場でも、「はたらくことは辛いこと」「生きるためにはたらくのだと思う」と認識していたという子どもたちに数多く出会います。

ネガティブな気持ちを抱きながらはたらく大人たちの姿を見て育ったために、「はたらく」ことに前向きな印象を持ちにくいのかもしれません。

そんななか、パーソルホールディングス株式会社が2023年におこなった「はたらく定点調査※3」から、興味深いことが分かりました。

X世代(42歳~57歳)、Y世代(27歳~41歳)、Z世代(15歳~26歳)の中で、現在の仕事に最も満足しているのは、Z世代だったのです

その数は半数以上の55.8%にものぼり、他世代(Y世代46.5%、X世代44.5%)と約10ptもの差がありました。

なぜZ世代は他の世代と比べて「はたらく」ことへの満足度が高いのでしょうか。

本記事では「はたらく定点調査」の結果を基に、Z世代の「はたらく」に対する意識をひも解き、よりよいはたらく環境の実現に向け、企業に求められることについて考えていきます。
※1:https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-life/gairyaku.pdf
※2:https://www.persol-career.co.jp/service/contents/career-workshop/ 
※3:https://data.persol-group.co.jp/
  構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100にはなりません。

デジタルネイティブのZ世代。しかしリモートワークは理想のはたらきかたではない?

Z世代とは、インターネット普及後の1990年代後半以降に生まれた、現在の10代~20代半ばの若者たちを指します。物心が付いた頃にはインターネットが生活に定着していたため、「デジタルネイティブ世代」とも呼ばれています。

Z世代の特徴としてまず挙げられるのは、SNS利用率の高さです。消費者庁が公表している「令和4年版消費者白書※4」によると、10~20代のSNS利用率は9割を超えており、コミュニケーションツールの一つとして日々活用されています。

そのためか一般的に、「Z世代はオンライン上のコミュニケーションが得意である一方、対面コミュニケーションは苦手なようだ」と思われがちです。

昨今では新型コロナにより、オンラインコミュニケーションが中心となるリモートワークが普及しました。Z世代にとっては、はたらきやすい環境かのように思われます。

しかしながら、「リモートワークができること」に対するZ世代の満足度を見てみると、満足していると回答した人の割合が24.5%であるのに対して、不満に感じていた人の割合は32.6%。なんと、Z世代はリモートワークに不満を感じている人のほうが多いという結果になりました。

では、Z世代が満足感を抱くのは、どのような職場環境なのでしょうか。ここで注目したいのは「職場全体のチームワーク」で、Z世代は半数以上の52.8%が満足していると答えました。

さらに詳細に関係性を見ていくと、経営層、上司、部下・同僚、仕事におけるいずれとの信頼関係についても、Z世代は他世代より「満足している」と答えた割合が多いという結果が出ました。

以上の結果から、「リモートワーク=Z世代が希望するはたらき方」というわけではなく、職場での良好な関係性に対して満足感を得ていることが分かります。

少し別の視点から考えてみると、Z世代はSNSで“自分”を発信することにためらいがない傾向にあり、これは、「自分を理解してほしい」「個を尊重してほしい」という想いの表れともいえます。

「自らのことを分かってほしい」と思う世代だからこそ、職場環境においても信頼関係やチームワークを形成し、互いを理解し合えるコミュニケーション環境を求めているのかもれません。
※4:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2022/white_paper_126.html#m01 

個を大事にしながら「自分らしくはたらく」が満足度向上のキーワード

さらに、Z世代が高い満足感を示した項目を見てみましょう。

特に、他世代と比べて満足度が高かったのは、「自分の意見や考えを安心して発言できる雰囲気」(Z世代52.7%、Y世代45.1%、X世代39.9%)と、自分を尊重してくれる雰囲気」(Z世代55.8%、Y世代44.8%、X世代38.2%)の2つです。

これらの結果から、Z世代は「個」の尊重を重要視していることが分かります。

Z世代がこのような価値観を形成した背景には、社会的な変化が大きく影響しています。

たとえば近年は、国籍や人種、性別、年齢などに関わらず多様な個々の人材を活かす「ダイバーシティ経営」や、個々の人材の価値を最大限に引き出すことで企業価値向上につなげる「人的資本経営」が注目されるようになりました。

これまで日本で主流とされてきた終身雇用や年功序列式のはたらき方ではなく、「個」を活かすはたらき方にシフトしているのです。

Z世代は、「個を尊重する社会の実現」が叫ばれる時代のど真ん中を生きている世代です。Z世代は「多様性」や「自分らしさ」を他の世代以上に重要視しており、個を尊重する職場に対して満足感を抱くと予想できます。

また同時に注目したいのは「評価制度」に対する満足度です。これに関しては、Y世代27.8%、X世代21.0%に対して、Z世代は40.8%と世代間で大きな差が見られます。

「自分らしさを分かってほしい」「個を尊重してほしい」という想いが強いZ世代だからこそ、「個」を発揮できるだけでなく、それが目に見える形で評価されることで満足度が高まるのではないしょうか。

Z世代が理想とする職場は、「“自分が自分らしくいられる”ことを認めてくれる環境」であると推測できます。

自分の「はたらく」は自分で選ぶ。自己決定が人生の満足度を左右する

前途したようにZ世代は、「個」の尊重を重視し、「自分らしさ」を大切にする傾向があります。これは、「自分のはたらき方や、生き方は自分で選択する」というキャリアオーナーシップにもつながるといえます。

現に、Z世代は仕事の内容や進め方に裁量権がある、もしくは自分にマッチしていることに対して満足感を持っているという結果が出ています。

また、「自分のキャリア・方向性と合った仕事ができること」に対する満足度を見ると、Z世代46.0%、Y世代38.5%、X世代35.3%と、こちらもZ世代の満足度が最も高いという結果となりました。

自身のキャリアにふさわしい選択ができていることが、満足感につながっているのです。

近年では転職に対するハードルが下がり、より自分に合った仕事や職場を求めて勤務先を変えることができるようになりました。

また会社勤めだけでなく、起業やフリーランスといった選択肢もあり、はたらき方の幅はますます広がっています。

Z世代にとって、自分のはたらく会社や環境、仕事内容などに対する「自己決定」は、満足度を高める重要な要素であるといえるでしょう。

実は、「自己決定」は人生の幸福度に大きく関わるといわれています。

経済産業研究所の西村和雄氏と同志社大学の八木匡氏による論文「幸福感と自己決定―日本における実証研究※5」によると、主観的幸福感には、健康、人間関係に次いで、「自己決定」が強い影響を与えることが分かっています。

そして、それは所得や学歴よりも大きく影響するといわれています。Z世代に限らず、いかに「自己決定」ができているかが、人生の満足度を高めるポイントであるといっても過言ではないのです。

以上のことを踏まえ、多様な「はたらく」の選択肢は、世代問わず社員の満足度向上につながることが期待できると考えられます。

社員が自身の在り方を自発的に選べる環境を整えることで、「はたらく」そして「生きる」ことへの幸福感が増し、やる気やパフォーマンスにポジティブに作用するのではないでしょうか。
※5:「西村和雄・八木匡「幸福感と自己決定―日本における実証研究」(経済産業研究所 DP18-J-026、2018)」

激動の時代を生きるZ世代は、自己成長できる環境を求めている

Z世代にはもう1つ大きな特徴があることが、本調査から分かりました。それは、成長意欲が高く、キャリアに対して高い視座を持っている点です。

「チャレンジ・成長できる仕事があること」による満足度を見てみると、若い世代ほど成長意欲が高いことが分かりました。

Z世代が最も高く47.7%で、Y世代(37.2%)とは10.5pt、X世代(29.8%)とは17.9ptと大差がつきました。

パーソル総合研究所がおこなった「働く10,000人の就業・成長定点調査2023※6」でも、Z世代である20代前半は会社を選ぶ際、「入社後に成長機会があるかどうか」を重視する傾向が高まっていることが分かっています。

*数値は27項目中上位5位選択率。正社員ベース。2019年(当該調査開始年)から変化の大きい上位4項目を抜粋

これを裏付けるかのように、Z世代は職場環境における「学ぶ」の充実度も重要視していることが分かりました。

「教育・学習制度の充実」「上司からの適切な仕事・育成支援」いずれもZ世代が最も高く、世代間で「学ぶ」や「成長」に対する意識が大きく異なっていることが読み取れます。

Z世代は、不確実性が高まる現代社会を生きてきた世代です。

人生100年時代の到来や終身雇用の崩壊、新型コロナウイルスの流行による社会の混乱、AIの台頭。このような状況を目の当りにしてきたZ世代は他の世代以上に、「はたらく」に対する自らの将来に不安や危機感を抱いている傾向があるといえます。

その結果として彼らは、自らの市場価値を高めることを強く意識しており、成長できる環境を求めているのです。企業においても、社員に対する成長機会の提供が、これまで以上に必要となるでしょう。
※6: 出典元:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査2023」

社員の「はたらく」満足度向上へ、管理職が「はたらく」を楽しめる組織づくりを。そのためには多角的な戦略の構築が重要

社員のキャリア自律を促すこと、社員にスキルアップの機会を提供することはむしろ、彼らが辞めてしまうリスクを高めるという声があがっていた時代さえもありました。

しかし、若者の成長欲求が高まり続けている今、特に若手社員に対し、「成長実感」を得る機会を提供しないことのほうが、優秀な人材、意欲的な人材ほど辞めてしまう可能性があるというリスクを会社は背負うことになり兼ねません。

実際に、20代前半の若手社員は、他年齢層と比較しても転職意向が高い傾向にあります※7。転職は、彼らにとって「成長実感」を得るための1つの手段であると考えられます。
※7:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」

Z世代は他世代と比べて、「転職意向」が高い

出典元:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」

優秀な人材、意欲的な人材を定着させるためには、以下2つが特に重要なポイントであると私は考えています。

  1. 人材戦略と経営戦略の連動
  2. 管理職層へのサポート

1.人材戦略と経営戦略の連動

これまで人材戦略は主に人事部門が担ってきましたが、人材難、人材獲得が一番の経営課題となった今、採用のみならず、その後の人材育成・活躍において、会社全体として向き合う姿勢が問われています。「人的資本経営」への注目が、それを物語っているといえるでしょう。

よって、人材戦略=経営戦略であり、人材を資源ではなく資本として捉えて、人材投資にどれほど重きを置いて取り組むかを、会社全体として考え直す必要があります。

例えば、中期経営計画においても、策定段階から経営企画部門だけでなく人事部門も入り介入し、経営戦略と人材戦略の接合を図ることがより求められています。

2.管理職へのさらなるサポート

「はたらく定点調査」の結果からもわかるように、今、管理職として組織を牽引する立場にいるであろうX世代(42歳~57歳)は、「はたらく」への意欲が低下傾向にあり、この事実は、成長意欲の強い若手社員のパフォーマンスや定着にも影響を与えかねません。

実際に、今の管理職を見て、「管理職にはなりたくない」と思っている若手社員が多くいるのが現状です。

 

はたらく・成長意欲は、X世代のほうが圧倒的に低い

なぜ管理職にこのようなことが起きているのでしょうか。

これは、今の管理職が若手だった頃にはまだ大きくは浮き彫りになっていなかった、ダイバーシティ、ハラスメントといったテーマが近年押し寄せてきており、それらを実際に現場で推進しなければいけない立場であることが関係していると考えられます。

そして、多くの現場において、結果的に管理職の力量頼りになってしまっているケースも多いと思われます。

「はたらく定点調査」でも、上司からの適切な仕事支援・育成支援への満足に関しては、X世代は26.9%、Z世代は50.2%で、その差は23.3ptもあります。

管理職とはいえ、さまざまな課題やテーマに対して、さらに年々それらが多様化・複雑化するなかで、一人で太刀打ちはできません。

これを解決していくためには、会社として投資すること、すなわち管理職を孤立させず、これまで以上にサポートすることが必要です。

「はたらく」意欲がある、「はたらく」を楽しむ管理職が増えれば増えるほど、若手社員もさらに活気づき、ひいては会社全体のパフォーマンス向上につながるはずです。

そして、そういう会社にははたらく意欲のある人材が集まり定着し、結果、競争力を高めていくと確信しています。

前述したとおり、今の若手社員は会社選びの判断軸として、入社後の成長機会の有無を重視する傾向があります。

自社の中期的な人材獲得力向上のため、また、これからの日本の社会を担う若い世代の意欲をさらに掻き立てられるよう、会社全体でこれまで以上に「はたらく」に向き合っていただけたらと思います。

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