従業員が自社に対して信頼や愛着を持つことは、会社の生産性向上や採用コストの削減につながります。しかし、信頼や愛着などは目で見えるわけではないので、従業員がその思いを抱いているかはわかりづらいでしょう。そこで活用できるのがエンゲージメントスコアです。
今回はエンゲージメントスコアの意味や高めるためのポイントを紹介します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. エンゲージメントスコアとは?
エンゲージメントスコアとは、従業員と会社とをつなぐ「信頼」や「愛着」などを数値化・見える化した指標を意味します。エンゲージメントスコアを測定する際は、従業員に10個ほどの項目に回答してもらい、目に見えない信頼や愛着などを数値化します。
1-1. エンゲージメントスコアと従業員満足度の違い
エンゲージメントスコアのように、従業員が自社に満足しているかを確認する指標として、従業員満足度があります。エンゲージメントスコアも従業員が自社に信頼や愛着を抱いているかを数値化するため、従業員満足度と同じように思えますが、実際は次のように異なります。
エンゲージメントスコア |
従業員満足度 |
|
可視化する情報 |
従業員と会社員と双方の関係性(信頼や愛着)を可視化 |
一方向(社員)のみの満足度を可視化 |
質問例 |
|
|
従業員満足度は、給与や労働時間などをベースに満足度を可視化します。そのため、従業員が給料に満足していない、労働時間が長いと感じているといった状況では、関係性が崩れかねません。
一方、エンゲージメントスコアは互いに信頼関係が築けていれば、急に関係性が崩壊する心配は少ないでしょう。
2. エンゲージメントスコアに注目が集まっている背景
多くの企業がエンゲージメントスコアに注目している背景としては、以下のようなことが挙げられます。
2-1. 人的資本という概念の広まり
人材を大切な資本と考える「人的資本」という概念が広まったことは、エンゲージメントスコアに注目が集まっている理由のひとつです。人的資本とは、従業員のスキルや能力、実績や経験など、人材に関する資本を意味します。
資金や時間だけではなく人材を重要な資本と考え、従業員を成長させるために投資をおこなうことが人的資本の基本的な考え方です。人材を成長させるためには、現状のモチベーションや課題を把握しなければなりません。そこでエンゲージメントスコアという指標に注目して、従業員の状況を把握しようとする企業が増えてきたのです。
2-2. 少子高齢化による労働力不足
少子高齢化による労働力不足は、多くの企業が抱えている課題です。新卒採用や中途採用に力を入れても、なかなか人材を確保できないケースも多いでしょう。
そこで労働力不足を補う手段として、今いる従業員のスキルを向上させ、生産性を高めようとする企業が増えてきました。エンゲージメントスコアを向上させると、従業員の生産性やモチベーションもアップするため、この指標に注目が集まっているのです。
3. エンゲージメントスコアを高めることによる効果
エンゲージメントスコアを高めることで、生産性の向上や離職率の低下といった効果が得られます。また、自社に愛着を持った従業員を介したリファラル採用も期待できるでしょう。
3-1. 従業員が意欲的に取り組むため生産性が高まる
エンゲージメントスコアが高い従業員は意欲が高いため、積極的に業務に取り組みます。そのため、エンゲージメントスコアが高い従業員は生産性が高い傾向にあります。
また、エンゲージメントスコアが高く業務に対して積極的な従業員は、新たなアイデアやイノベーションに対しても柔軟に対応できるでしょう。
3-2. 離職率が低下する
エンゲージメントスコアを高めることで、従業員の離職率の低下が期待できます。エンゲージメントスコアが高い従業員は職場でのやりがいを感じているため、離職しにくい傾向にあります。
厚生労働省「-令和3年雇用動向調査結果の概況-」によれば、正社員が含まれる一般労働者の2021年1年間の離職率は11.1%でした。離職率は入職率10.9%を上回っていることから、離職者の方が多い結果となっています。[注1]
このような状況において、エンゲージメントスコアを高めることによる離職率低下は、人手不足解消にもつながるでしょう。
3-3. チームや組織の連携が高まる
エンゲージメントスコアが高い従業員は、チームメンバーや上司と協力して業務を遂行できます。そのため、チーム内の協調性が高まり、チーム全体の業務遂行がスムーズになる可能性があります。
3-4. リファラル採用につながる
エンゲージメントスコアが高い従業員は自社への愛着や信頼が高いため、自社の求人内容に見合った知人や友人に自社の魅力を自発的に発信してくれます。これによってリファラル採用につながる可能性もあるでしょう。
リファラル採用は採用コストを抑えられるほか、紹介者である従業員を通じて応募者のスキルや人柄が事前に把握できるといったメリットがあります。
3-5. 顧客満足度が向上する
顧客満足度の向上につながることも、エンゲージメントスコアを向上させるメリットのひとつです。モチベーションの高い従業員が増えれば、商品やサービスに関する新しいアイデアや、業務改善に関する提案などを積極的に出してくれるようになります。
その結果、商品やサービスの魅力が高まるのはもちろん、企業全体のブランド力も高まり、顧客満足度が向上するでしょう。
4. エンゲージメントスコアの測定方法
エンゲージメントスコアの主な測定方法としては、エンゲージメントサーベイ、パルスサーベイ、従業員サーベイが挙げられます。それぞれの測定方法について詳しく見ていきましょう。
4-1. エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイとは、従業員の意欲や仕事に対する興味、企業に対する愛着などを把握するための調査です。従業員のエンゲージメントを測定できるようなアンケートを作成するのが一般的で、6カ月に1回、1年に1回など、定期的に実施するケースが多いでしょう。
アンケートを回収したら、どのような回答が多いのかを分析して、組織の課題を抽出します。過去の結果と比較してエンゲージメントスコアの変化を確認したり、必要な対策を講じたりすることも重要です。
4-2. パルスサーベイ
パルスサーベイとは、従業員のエンゲージメントを短期的に把握するための調査です。先ほどのエンゲージメントサーベイと同様、従業員の意欲や愛着を調べるものですが、より日常的で簡単な調査といえるでしょう。
パルスサーベイには意識調査という意味もあり、新しい規則を定めたときやシステムを更新したときなどに実施して、従業員の意見や満足度を把握します。気軽に実施でき、すぐに結果を得られるのですが、エンゲージメントスコアの大きな変化を把握することは難しいため、エンゲージメントサーベイも並行して実施するとよいでしょう。
4-3. 従業員サーベイ
従業員サーベイとは、給与や休日、職場環境や福利厚生などに対する満足度を把握するための調査です。従業員サーベイを通して、さまざまな部分に関する満足度を調査することで、組織の課題を抽出したり環境改善につなげたりすることができます。
満足度とエンゲージメントは少し異なる概念ですが、職場環境の改善により満足度を高めることで、企業に対する愛着が強くなることも期待できるでしょう。
5. エンゲージメントスコアを高めるためのポイント
エンゲージメントスコアを高めるには、社内コミュニケーションの活性化や従業員向けのブランディングなどがポイントです。また、エンゲージメントスコアを測定した後に、課題への対策を講じることも大切です。
5-1. 社内コミュニケーションを活性化させる
インナーコミュニケーションの呼び方でも知られている社内コミュニケーションを活性化させることで、エンゲージメントスコアの向上が期待できます。具体的には会社としてのビジョンや目標を全社員に向けて発信し、コミュニケーションを図ります。会社と従業員とのビジョンが離れていってしまうと、エンゲージメントスコアが低下してしまうでしょう。
また、会社からビジョンや目標を従業員に発信するだけではなく、社内報や社内SNSなどを通じて従業員の情報が発信できるようにしておくことも大切です。
5-2. インナーブランディングで自社に愛着を持ってもらう
エンゲージメントスコアが高い従業員は自社や商品、サービスに愛着を持っています。そのため、エンゲージメントスコアを高める方法のひとつとして、社内向けのブランディングであるインナーブランディングの活用が挙げられます。従業員に向けた自社ブランドの紹介動画の作成や、社内SNSで自社の商品やサービスを発信していきましょう。
また、福利厚生の一環として、自社サービスを割引もしくは無料で利用できるといったブランディングも挙げられます。
5-3. 管理職がエンゲージメントスコアについて理解しておく
管理職は従業員のモチベーション維持において重要な役割を担っています。管理職が従業員と密なコミュニケーションをとって会社のビジョンを共有することで、従業員のモチベーションとエンゲージメントスコアの向上が期待できます。
そのため、管理職がエンゲージメントスコアの重要性についてしっかりと理解して、エンゲージメントスコアを高める意識を持つことが大切です。
5-4. 継続してエンゲージメントスコアは測る
エンゲージメントスコアは一度測っただけではなく、継続的に測ることで効果をより引き出せます。ただし、単純にスコアを測るだけでは効果を期待できません。計測によって判明した問題点や課題を解消するための改善策を講じることが重要です。
その後、次の計測時に改善策の効果を確認します。これを繰り返すことで、段階的にエンゲージメントスコアを高められます。
ここまで読んで、会社としては従業員満足度を向上させたいと考えた方も多いのではないでしょうか。そのような方に向けて当サイトでは「従業員満足度のハンドブック」という資料を無料配布しています。従業員満足度の基礎知識から、調査の方法、また調査する際のツールまで網羅的に記載しており、従業員満足度調査を始める際のマニュアル本として有効活用できます。
興味のある方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
6. エンゲージメントスコアを高めて従業員の生産性を向上させよう
従業員と会社とをつなぐ信頼や愛着を数値化したのが、エンゲージメントスコアです。エンゲージメントスコアを向上させることで、従業員の生産性の向上や離職率の低下、リファラル採用などにつながります。
エンゲージメントスコアを高めるためには、社内コミュニケーションの活発化やインナーブランディングによって従業員が自社へ愛着を持つようにする、継続してスコアを測るといったポイントを押さえておくことが大切です。
エンゲージメントスコアを測定して、自社の問題が判明したら対策を講じましょう。測定、対策を繰り返してくうちに、エンゲージメントスコアの向上につながります。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。