近年、熾烈を極めるエンジニアの獲得競争。その中でも優秀な人材を採用するために、転職潜在層へアプローチできる「リファラル採用」に取り組む企業が増加しています。
特に、優秀なエンジニアのハイレイヤー層は自ら積極的に転職活動はおこなわないものの、現職よりもよりよいミッションや条件の仕事があれば転職を検討する傾向があります。そのため、友人からの紹介は転職につながる有効な機会になり得るのです。
一方でリファラル採用は、全社での導入から制度設計、社員に制度を認知して行動に移してもらうまでの各ステップに障壁があり、苦戦している企業が多いことも事実です。
そこで今回は、2019年よりリファラル採用を本格導入しているSky株式会社の潟岡氏に「ハイレイヤーエンジニアを獲得するリファラル採用」をテーマに、リファラル採用に関する課題や導入時の取り組み、そして浸透・定着の施策など具体的な事例を伺いました。
潟岡 雅士 氏(カタオカ マサシ)|Sky株式会社 人財事業部 リクルーティング部 専任課長代理
1997年4月1日、Sky株式会社に新卒入社。入社後、採用部門に配属されて現在に至るまで新卒採用、中途採用業務に従事。現在は管理職として大阪の中途採用全般を見ており、メンバー6名のマネジメントに従事。リファラル採用専任として社内のリファラル採用促進もおこなっている。
目次
- 1.新卒・中途合計で年間300名以上を採用するSky。ハイレイヤーエンジニアの獲得競争は外資や事業会社も参入により、ますます激化
- 2.リファラル採用開始当時は約3,000名の社員への周知・浸透に苦戦。社長を巻き込んだ情報発信を皮切りに、現場責任者の意識が変化
- 3.継続的な広報と、紹介ハードルを下げるカジュアル面談で、リファラル採用をより身近に。さらに各部門の活動状況を可視化し、幹部・ハイレイヤー社員の意識向上を図る
- 4.リファラル採用のハイレイヤー比率約58%、内定承諾率100%を実現!転職潜在層から12名の優秀なエンジニアを採用
- 5. 活動社員を可視化し、リファラルポテンシャル社員を特定。 リファラル採用を、会社の文化として定着させる
- まとめ
1.新卒・中途合計で年間300名以上を採用するSky。ハイレイヤーエンジニアの獲得競争は外資や事業会社も参入により、ますます激化
━まず、貴社の事業内容と採用計画についてお聞かせください。
潟岡さん:Sky株式会社は、設立38年目のソフトウェア開発をおこなう企業です。
自社パッケージの開発・販売・サポートをするICTソリューション事業と、請負でのシステム開発、これら2本柱で事業を展開しています。現在の採用状況は新卒・中途合わせて年間300名以上を採用しています。
━3,000名規模で年間300名以上というのは、かなり積極的に採用活動をおこなっていらっしゃるのですね。では、これまでの採用活動と課題を教えてください。
潟岡さん:これまでは転職エージェント経由での採用がメインでした。しかし、即戦力の人材はどの企業も求めていますし、そもそもIT業界全体でエンジニアが不足しているという課題があります。
dodaによると、2022年5月の求人倍率は全体で1.85倍であるのに対し、IT・通信の技術系では8.60倍です。さらにハイレイヤーのエンジニアとなると、外資系企業や事業会社も含めた獲得競争となります。
当社においても内定承諾率が年々下がってきており、人材獲得がさらに難しくなっていると感じています。
2.リファラル採用開始当時は約3,000名の社員への周知・浸透に苦戦。社長を巻き込んだ情報発信を皮切りに、現場責任者の意識が変化
━次に、リファラル採用の導入背景やこれまでの遍歴についてお話しいただけますでしょうか。
潟岡さん:即戦力性の高い技術系専門職(エンジニア)を確保するために、2019年にMyReferを導入し、リファラル採用に本格的に取り組んでいます。
MyRefer導入前にもリファラル採用の制度はあったのですが、3,000名を超える社員には制度が浸透しておらず、紹介数が増えない状況が続いていたのです。
課題としては、2つありました。1つは、全社へのメール配信だけでは、リファラル採用の周知・浸透に限界があることです。
紹介のプロセスや求人の情報が少なく、「どんな風に選考が進んでいくのか」、「どのような職種の募集があるのか」といった疑問が生まれ、結果的に紹介に至らなかったという社員からの声も多くありました。
2つ目は、リファラル採用活動の定量データがないことから、問題点が見えず、効果的な打ち手を生み出せなかったことです。
口頭やメールでリファラル採用のお願いをしても、それだけではなかなか行動は結びつきません。また、実際にどれぐらいのメンバーが友人・知人にアクションを起こしてくれて、実際にどれぐらいの候補者の方が興味を持ってくれたのか、そういったデータの可視化ができていませんでした。
こうした課題を解決し、会社全体でリファラル採用に取り組むために、MyReferを導入することになったのです。
潮目が大きく変わったのは、社長にリファラル採用の意義を伝えて巻き込んだときからです。経営会議で、社長自身が「もっと社員紹介を率先してやっていこう」と発信がありました。
そこから現場の責任者の意識も変わり、リファラルに対して非常に前向きになっていきました。
━社長を巻き込むことは簡単ではないと思いますが、どのようなことを伝えたのでしょうか?
潟岡さん:コスト面でのメリットはもちろん、弊社が大切にしている「社風に合う人材を採用する」という観点においても、現場の社員からの紹介は有効なのではないかと伝えました。
そうしたリファラル採用のメリットを納得してくれたからこそ、積極的に取り入れようという発信につながったのだと思います。
3.継続的な広報と、紹介ハードルを下げるカジュアル面談で、リファラル採用をより身近に。さらに各部門の活動状況を可視化し、幹部・ハイレイヤー社員の意識向上を図る
━MyReferを活用したリファラル採用の周知・浸透のために、どのような取り組みをされましたか?
潟岡さん:できることをすべて、徹底しておこないました。弊社では、社内SNSや社内ブログなど、様々な社内ツールを用いて仕事を進めています。
特に社内ブログは情報の周知徹底に活用しており、社長のブログにもリファラル採用について書いてもらいました。
また、社員全員に支給しているスマートフォンにMyReferのアプリをインストールしています。これにより、社員が友人・知人に弊社について話す時、MyReferのアプリで募集中の求人についてと伝えることができます。
単に「紹介してください」と社員にお願いするだけではなく、従業員体験を設計して社員にいかに気持ちよくスムーズに動いてもらうかを、常に考えているのです。
そして人事からは月1~2回、募集ポジションやインセンティブなどについて発信しています。リファラルのことを忘れられないよう、「このポジションで募集が新しく始まりました」など、定期的な情報発信をおこなうことが大切です。
「カジュアル面談」も、重要な取り組みのひとつです。リファラル採用では、まだ転職の意思が明確ではなく、まずは話を聞きたいという方も多くいらっしゃいます。そういう方に対して、いきなり面接をおこなうのはハードルが高いでしょう。
そこでまずは、志望理由とか転職理由とかは一切聞かず、会社が考えていることや募集中の職種についてお話しをするカジュアル面談を積極的におこなっています。これにより、紹介のハードルは下がってきていると感じています。
ハイレイヤーエンジニア獲得の観点では、幹部社員・ハイレイヤー社員のリファラルへの熱量を上げ、自ら動いてもらうことが重要です。
そこで、MyReferを活用して各事業部の社員がどの程度リファラル採用活動をしているのかを測定し、可視化しています。数字でデータを見せることで、各事業部の責任者が意欲的にリファラル採用に取り組むようになりました。
そして幹部社員が率先して動き、リファラル採用の重要性を部下に語ることで、メンバーも意欲も喚起され、社内全体でリファラル採用に積極的に取り組む動きがみられるようになっています。
4.リファラル採用のハイレイヤー比率約58%、内定承諾率100%を実現!転職潜在層から12名の優秀なエンジニアを採用
━リファラル採用に取り組むことで、どのような成果を実感していますか。
潟岡さん:定量的な成果としては、リファラル採用によって年間12名の採用が決定しています。
採用人数も増加傾向にありますが、リファラル採用のハイレイヤー比率58.3%、内定承諾率100%といった数値が大きな成果です。
転職エージェント経由の採用では、ハイレイヤー比率9.9%、内定承諾率41.4%ですから、リファラル採用の数値の高さがお分かりいただけると思います。
定性的な成果は2つあります。1つは、部門をまたいだ紹介が活性化されたことです。
弊社ではエンジニアの募集が中心ですが、営業、事務、人事、広報など常時50以上の職種で募集をしています。エンジニアだけではなく、営業が広報人材を紹介したり、事務職の社員が他の部署の事務職の紹介をしたりと、様々な事業部・職種をまたいで紹介をするケースが、この2~3年で増加しています。これは、MyReferですべての求人情報をリアルタイムかつ手軽に社員に発信できているからだと考えています。
2つ目は、リファラル採用に対して社員のポジティブな反応が増えたことです。ハイレイヤー人材が自らリファラル採用活動をしてくれて、さらにメンバーに対して「こういう風にリファラルを進めるといいよ」と、話しもしてくれます。
そして、メンバーのお尻を叩いてリファラルを促進してくれるハイレイヤー層もいます。協力者が増えることで、リファラル採用が有効だという理解が広がっているのだと思います。
弊社では定期的にリファラル採用のアンケートを取っているのですが、3,000名ほどの社員のうち約2,500名の回答があり、その大半がリファラル採用に前向きな回答をしてくれています。
━リファラル採用での応募者は、どのような方が多いですか?エージェント採用と比較して、特徴などあれば教えてください。
潟岡さん:もともと弊社の商品を扱っていた経験がある方や、弊社と仕事をしたことがある方など、社風もある程度理解していただいている方が多いですね。
その上で、弊社の社員から声が掛かり、応募したという声をよく聞きます。転職エージェントに登録して積極的に転職活動をしているというより、転職を明確に考えていなかった方が単願で応募しているケースが多くみられます。
5. 活動社員を可視化し、リファラルポテンシャル社員を特定。 リファラル採用を、会社の文化として定着させる
━最後に、リファラル採用の今後の展望について教えてください。
潟岡さん:社内でリファラル文化が徐々に浸透・定着し、定期的に紹介が上がってくるようになりました。
ただ、これまでは情報発信は積極的におこなうものの、社員からの紹介を待つだけの状態でした。今後は、待ちの姿勢から攻めの姿勢に転じ、紹介を掘り起こす動きも必要だと考えています。
MyReferでは、何人の社員が紹介活動をしていて、それぞれが何人の友人・知人に求人をおくり、そのうち何人が応募しているのかを確認することができます。
その数字を見ると、97人の社員が友人・知人に紹介をしたものの、実際の応募にはつながっていないようです。また、紹介を受けたものの未応募の友人総数は438人にも上ります。
そこで私たちから紹介してくれた社員に「その後どうなっていますか?」と働きかけるなど、データをもとに積極的なアプローチを掛けていきたいと考えています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回のセミナーを通じて、ハイレイヤーエンジニアとリファラルの親和性を改めて感じました。たしかに転職活動を自ら積極的におこなわないハイレイヤー層にとって、友人からの紹介は転職を考えるきっかけになり得ます。
ハイレイヤーエンジニア獲得するためには、社長やハイレイヤー社員を巻き込んで、会社全体でリファラル採用に積極的に取り組む仕組みづくりをしていきましょう。