労働者が退職する際に、必要となる書類の一つが雇用保険被保険者離職証明書です。
雇用保険被保険者離職証明書は退職する従業員にとっても会社にとっても重要な書類なので、その目的や書き方について知っておくことが必要です。
当記事では、雇用保険被保険者離職証明書の書き方や注意点について解説します。
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社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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目次
1. 雇用保険被保険者離職証明書とは?
雇用保険被保険者離職証明書とは、離職したことを証明する書類です。
雇用保険の基本手当を受給するためには離職票が必要ですが、離職票の交付を受けるために雇用保険被保険者離職証明書が必要となります。
雇用保険被保険者離職証明書は、事業者主控え、ハローワーク提出用、退職者用の3枚綴りで構成されており、会社が発行しなければならない書類です。
雇用保険被保険者離職証明書の発行が必要なケースは主に2つあるので、その2つについてご紹介しましょう。
1-1. 退職者が希望する場合には雇用保険被保険者離職証明書が必要
雇用保険被保険者離職証明書は、退職者に対して必ず発行しなければならないものではありません。
雇用保険被保険者離職証明書が必要になるのは主に2つのケースです。
まず、退職した従業員が雇用保険被保険者離職証明書の交付を希望するケースです。
退職者は、次の就職先を見つけるまで、雇用保険の基本手当を受給したいと思うことでしょう。
雇用保険の基本手当を受給するためには、雇用保険被保険者離職証明書の3枚目にある「離職票-2」をハローワークに提出しなければなりません。
もし退職者が雇用保険被保険者離職証明書の交付を希望する場合には、会社側が必ず交付する必要があります。
一方、退職者が交付を希望しないのであれば、雇用保険被保険者離職証明書は必要ありません。
1-2. 退職者が59歳以上の場合には雇用保険被保険者離職証明書が必要
雇用保険被保険者離職証明書の交付を退職者が希望しない場合でも、退職者が59歳以上であれば雇用保険被保険者離職証明書の交付が必須です。
これは、改正高年齢者雇用安定法によるものです。
改姓高年齢者雇用安定法によれば、高年齢雇用継続給付を申請する60歳以上64歳までの労働者は、賃金の支払い状況が分かる書類の提出が必要となります。
この賃金の支払い状況が分かる書類の一つが雇用保険被保険者離職証明書の3枚目にある「離職票-2」なのです。
したがって、退職者本人が希望しない場合でも、高年齢雇用継続給付を受給するために雇用保険被保険者離職証明書を必ず交付しましょう。
1-3. 雇用保険被保険者離職証明書が不要なケース
雇用保険被保険者離職証明書は雇用保険の基本手当を受給するために必要な書類ですが、会社が発行しなくてもよいケースも存在します。
それは、従業員が死亡したケースやすでに次の転職先が見つかっているケースです。
従業員が死亡した場合、雇用保険の基本手当を受給することはありません。
次の転職先が見つかっている場合にも、雇用保険の被保険者としての資格を失うことはないでしょう。
こうしたケースでは、退職者が離職票を必要としないので雇用保険被保険者離職証明書の交付が不要となるのです。
2. 雇用保険被保険者離職証明書の書き方
雇用保険被保険者離職証明書を書いた経験があまりない方であれば、どのように書類を作成すればよいのか分からないかもしれません。
雇用保険被保険者離職証明書で記入すべき項目はたくさんあり、ミスがないように記載しなければなりません。
では、雇用保険被保険者離職証明書の書き方をそれぞれの項目別に見ていきましょう。
2-1. 雇用保険被保険者番号
雇用保険被保険者離職証明書では、最初に雇用保険被保険者番号を記載します。
雇用保険被保険者番号は、雇用保険被保険者証に記載されている11桁の番号です。
ただし、1981年7月6日以前に雇用保険に加入した人は、雇用保険被保険者番号が16桁なので、最後の10桁のみを記載します。
2-2. 事業所番号
続いて雇用保険被保険者離職証明書には、事業所番号を記載しなければなりません。
事業者番号は、雇用保険適用事業所設置届事業主控に書かれているので、その番号を転記しましょう。
2-3. 離職者氏名
雇用保険被保険者離職証明書の離職者氏名の欄には、退職する従業員の氏名を記載します。
2-4. 離職年月日
離職年月日の欄には、退職した日付を記入します。
2-5. 事業所・事業主
事業所・事業主の欄には、会社の名称や住所、電話番号、事業主の住所や氏名を記入します。
2-6. 離職者の住所または居所
離職者の住所や電話番号などの情報を記載します。
2-7. 被保険者期間算定対象期間・賃金支払い基礎日数
被保険者期間算定対象期間の欄は、離職日から1ヶ月ずつさかのぼって、各月の賃金支払いの基礎日数を記入していきます。
賃金支払い基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上ある場合には、雇用保険の基本手当を受給することが可能です。
2-8. 賃金支払い対象期間と基礎日数
賃金支払い対象期間の欄は、賃金締切日から1ヶ月ずつさかのぼって、各月の賃金支払いの基礎日数を記入していきます。
賃金支払い対象期間の基礎日数には、有給休暇や休業手当を受け取っていた日数も含まれます。
2-9. 賃金額
賃金額の欄には、月々の賃金額を記載します。
月給の場合にはA欄、時給の場合にはB欄を使用しましょう。
2-10. 離職理由
雇用保険被保険者離職証明書の右ページには、離職理由を記載する欄があります。
事業所の倒産によるもの、定年によるものなど19種類の離職理由が書かれているので、該当するものを選んで「○」を記入します。
3. 雇用保険被保険者離職証明書を書くときの注意点
雇用保険被保険者離職証明書を書いて提出する際には、いくつかの注意点について考えなければなりません。
トラブルが起こらないように、細心の注意を払って雇用保険被保険者離職証明書を作成するようにしましょう。
では、雇用保険被保険者離職証明書を書く際の注意点を2つ見ていきましょう。
3-1. 添付書類を不備なくそろえる
雇用保険被保険者離職証明書を作成する際に注意すべき点の一つが、添付書類を不備なくそろえることです。
雇用保険被保険者離職証明書は、それだけでハローワークに提出するのではなく、必要な添付書類を一緒に提出しなければなりません。
雇用保険被保険者離職証明書の添付書類は、退職者の離職理由によって異なります。
たとえば、退職者の都合による離職の場合、賃金台帳やタイムカードが必要です。
会社の倒産によって離職する場合には、裁判所が発行する倒産の申し立てを認める書類を添付しなければなりません。
どのような添付書類が必要になるのか、あらかじめハローワークに確認しておくとよいでしょう。
3-2. 提出期限内に手続きを行う
雇用保険被保険者離職証明書の別の注意点は、提出期限があること、さらに罰則が適用される恐れがあることです。
雇用保険被保険者離職証明書は、退職日の翌々日から数えて10日以内にハローワークに提出しなければなりません。
この期間を過ぎてしまうと、法令違反となり、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
退職者がスムーズに失業給付を受給できるように、速やかに手続きを行いましょう。
4. 雇用保険被保険者離職証明書は提出期限を過ぎると法令違反の恐れがある
雇用保険被保険者離職証明書は、従業員が退職した時に交付が必要になる書類です。
法令に違反しないためにも、すぐに雇用保険被保険者離職証明書の交付を行うようにしましょう。