コミュニケーションを取る際、相手の主張と自身の主張が衝突してしまい、円滑にやり取りが出来なくなってしまうことがあるかと思います。
また、コロナウイルスの感染拡大により、オンライン上で相手の姿が見えないままコミュニケーションを取る機会が多くなったことで、思っていることがあっても自分の意見を主張しにくくなってしまった方もいるのではないでしょうか?
そんな時に、意識すると良い概念が「アサーション」になります。
本記事では、そもそもアサーションとは何かについて、アサーションの出来ている会話例をなどを交えながら、具体的な意味や内容を解説していきます。
目次
1. アサーションとは
そもそもアサーションとは、相手の主張や状況を尊重しながら自身の主張を伝えるコミュニケーション方法の1つです。
ただ相手の意見を聞くだけでなく、自分の主張を相手にわかりやすく伝え、双方の意見をうまくすり合わせ、双方にとって納得のいく話の進め方ができることがアサーションの状態に含まれます。
仕事の場面では、クライアントとのやり取りや、上司・部下・同僚とのやり取りの際に、より良い関係を構築するために意識することが大事だとされています。
2. アサーションのメリット
アサーションを身に着けることで生まれるメリットは、「様々な立場の人たちと円滑にコミュニケーションを取ることができる」ことです。
2020年、仕事をしている全国の男女を対象に実施された「仕事におけるストレス調査」によると、仕事に対してストレスを感じる人は95.8%もいることがわかっています。
また、その中の76.3%が人間関係に対してストレスを抱えており、上位に上がる悩みは「態度の悪い顧客やクレームへの対応」「意思疎通がうまくいかない」などのコミュニケーションに関連するものでした。
上記の調査から分かる通り、多くの人が、自分の意思を主張できなかったり、主張したとしてもうまく伝わらなかったり、という悩みを抱えています。
しかし、アサーションを身に着けることができれば、自他ともに納得のいくやり取りができるようになるため、仕事上はもちろん、日常生活においてのコミュニケーションにおけるストレスも解消されやすくなるかもしれません。
2-1. メンタルヘルスへの対策になる
アサーションの大きなメリットとして、職場のメンタルヘルス対策になるという点が挙げられます。
従業員のメンタルヘルス不調は、生産性の低下や労働力の損失につながってしまいます。また、メンタルヘルス不調が起こりやすい企業というレッテルを貼られると、対外的なイメージも大きく損なわれます。
従業員がアサーションを身につけることは、業務やコミュニケーションのストレスを緩和することにつながります。アサーションが身についている職場では、部下が不満を蓄積させてしまう心配がありません。また、上司にとっても、さまざまな意見を通じて視点を広げられるという良さがあります。
従業員にとって働きやすい良好な環境を構築するためにも、アサーションを高めることを意識してみましょう。
2-2. 人間関係による離職の防止
職場の人間関係の悪化は離職理由になり得るものです。従業員同士の関係性が悪かったり攻撃的な言葉を選んでの議論が起こりやすかったりする職場では、優秀な人材が流出してしまう可能性もあります。
アサーションを軸としたコミュニケーションには、従業員の離職を防止できるというメリットもあります。
アサーションのメリットは、すべての従業員が自身の考えを適切に主張できるようになることです。上手なコミュニケーションのポイントは、上司が部下の主張に対してしっかりと向き合うことです。
活発な意見交換ができる良い人間関係が維持されていれば、離職が起こりにくくなります。
3. 3つのコミュニケーションタイプ
それでは、アサーションが機能している状態とは具体的にどのような状態なのでしょうか。
コミュニケーションの取り方は各個人によって異なるため、本章ではアサーションが機能している状態を理解するための3つのコミュニケーションタイプについて解説します。
コミュニケーションにおいては、下記に記載した3つのタイプが存在します。
- 攻撃的タイプ(アグレッシブ)
- 非主張タイプ(ノン・アサーション)
- アサーティブタイプ(アサーティブ)
それぞれのタイプに対して、具体例を用いて解説していきます。
3-1. 攻撃タイプ(アグレッシブ)
相手の意見や状況を配慮せず、自分の主張したいことを主張し、自分の利益を優先する自己中心的なコミュニケーションを取るタイプです。
コミュニケーションタイプの説明をする際に3つの特性をドラえもんのキャラクターに例えられることが多いのですが、ここでは「ジャイアン」が攻撃タイプに該当します。
具体的には、下記のような行動特性が見られます。
- 自分の考えが一番と思い、相手を支配しようとするような言動、態度をとる
- 相手に対して否定的な態度をとる
- 命令する
- 部下などがミスをした際に、理由も聞かず頭ごなしに怒鳴る
- 自身への指摘に対して、正当化しようとするような言動をする
- 相手の意見を無視する
自己主張ができるという点においては、やり取りを進める上で重要な存在ではあります。
しかし、周りの意見を受け入れる態度がないことから、チームを乱すような存在になってしまいます。
3-2. 非主張タイプ(ノン・アサーション)
自身の意見を伝える場でも、相手を優先して自己主張せず、相手任せに物事を進めるようなコミュニケーションを取るタイプです。
ドラえもんのキャラクターで言うならば、「のび太くん」にあたるといわれています。
具体的には、下記のような行動特性が見られます。
- 自分よりも相手を優先して、後回しにする
- 思っていることを言えない
- 無理だと思っていても、とりあえず頼まれたら引き受けてしまう
- 相手の言いなりになる
- 自己否定的な気持ちや自信のなさが根底にある
- 自分がしている気遣いは相手も返してくれて当たり前と考える傾向のある人が多い
相手の状況を想像し、思いやることが出来るというのは良い点です。
しかし、思っていることがあったとしても言えないということはストレスの蓄積に繋がったりしてしまうため、個人としてデメリットが大きく、チームの中でも気を使われるような存在になってしまいます。
3-3. アサーティブタイプ(攻撃タイプと非主張タイプの黄金比)
前述したように、相手の主張も尊重しながら自身の主張を伝えるコミュニケーションを取るタイプです。
ドラえもんのキャラクターで言うならば、「しずかちゃん」にあたるといわれています。
具体的には、下記のような行動特性が見られます。
- 自身が主張するタイミングと自分を抑えて他者を優先するタイミングの状況判断が適切にできる
- 自身の考えと相手の考えが異なっても、相手に歩み寄り解決していこうという姿勢である
- 相手からの提案に対応できないとしても、相手を否定せず、だからといって自身も無理をせず、バランスの取れた再提案ができる
攻撃タイプと非主張タイプの中間で、バランスの取れた自己主張ができるタイプになります。
自他ともに納得のできる結論に落ち着かせられることから、人間関係も良好に築くことが出来ます。
4.アサーショントレーニングのポイント
最後に、アサーションを体得するため方法について、2つご紹介します。
従業員にアサーションを身に付けてもらう上で参考にしてください。
4-1. DESC法
DESC法は、アサーションを体系的にまとめた概念です。
下記4つの項目を意識して話を進めることでアサーションが機能している状態になります。
- Describe(描写する)
- Explain(説明する)
- Specify(提案する)
- Choose(選択する)
各項目について、具体的に説明します。
①Describe(描写する)
自身にとって都合の悪い提案をされた際、まずはじめにおこなうことは「客観的な事実や状況を具体的に話す」ことです。
ここでは、自身の感情は一切入れず、事実として提案を受け入れられない要因に当たる物事を伝えます。
たとえば、「今、○○時までに△△をやらなくてはならなくて…」といったように、相手に納得してもらえるよう期限と内容を具体的に伝えるようにしましょう。
②Explain(説明する)
次に、相手の気持ちを尊重した自身の気持ちを伝えます。
たとえば、「○○さんの気持ちも痛いほど分かるので、私もお力添えしたいのですが」といったように、ポイントは相手の状況に共感して、寄り添う伝え方をすることです。
ただ、感情的にはならず、建設的なやり取りになるように進める必要があります。
③Specify(提案する)
そして、相手の提案に沿った代替案に提示します。
たとえば、「ですが、最短で○○時からであれば対応できます」だったり、「△△であれば対応できますが、それでもよろしいでしょうか」といったように伝え、申し訳なさを出しつつ、丁寧に提案しましょう。
その際に、自身が無理のない代替案を提示することがアサーティブにおいては重要です。
④Choose(選択する)
最後に、自身が提案した代替案に対して納得しなかった場合、ほかの選択肢を提示します。
たとえば、「もしくは、○○さんに頼んでみましょうか?」であったり、「でしたら、△△にするのはいかがでしょうか?」といったように相手の要望に対して、柔軟に選択肢を提示することが重要です。
そうすることで、相手との建設的なコミュニケーションが実現され、双方にとって納得のいくコミュニケーションが築けるようになります。
4-2. I(アイ)メッセージ
Iメッセージとは、何か物事を伝えるときに自身を主語にして伝えることです。
何か頼みごとをしたいときに
と伝える場合と、
と伝える場合、同じことだとしても、かなり印象が変わってきます。
前者と後者の伝え方の違いは、伝える側が感情を伝えているかいないかという所にあります。
なぜ相手にお願いをするのか、対応してもらえると自身はどんな気持ちになるのか、以上2点を意識してみると相手が自分に頼まれる理由を納得でき、対応しやすくなるので、気持ちの良いやり取りができるようになります。
5. まとめ
以上、アサーションとは何かをご紹介いたしました。
コミュニケーションにおける課題は誰しもが経験し、悩む問題だと思います。
本記事を通して、少しでも解決のためのヒントになって頂ければ幸いです。