海外赴任が決まってから大きな障害の一つとなるのが「就労ビザ」ではないでしょうか。
インドネシアでの就労ビザの取得・申請プロセス、また退職・転職をお考えの方が知っておくべきEPOのプロセスについてお伝えします。
目次
インドネシアで申請できる就労VISAの種類
一般的にインドネシアの就労ビザは、一時滞在ビザ(C312)と呼ばれています。
インドネシアで働くためには、就労ビザ(一時滞在ビザ)に加えてIMTAという就労許可証と、KITASという一時滞在許可証を取得する必要があり、渡航の目的によって必要なビザの種類が変わります。
シングルビザ・マルチプルビザという名前の「ビジネスビザ」も存在しますが、このビザは商談・打ち合わせ・監査等しかできず、就労することができませんので注意が必要です。
もしも就労ビザ以外で入国後「就労」とみなされると、罰則対象になります。罰則は、罰金だけでなく国外退去など様々なリスクがあります。就労に当たる行為の解釈としては、『利益を上げる行為・会社内での作業・現場指導』等が含まれるため、怪しいととられる行動は避けるようにしましょう。
また就労とみなされる範囲はその担当入国管理官の解釈次第なため、どのビザの種類を取得すべきか不明な場合には、専門家に確認を取るようにしましょう。
インドネシアで就労ビサを申請・取得するためのステップ
(1)外国人雇用計画書(RPTKA)の提出
外国人従業員(日本からの駐在員を含む)の雇用を予定する企業は「外国人の数・職務・任期・賃金・勤務地・組織図・インドネシア人従業員への教育計画」などを労働移住省に提出し、承認を得ます。
(2)ビザ発給推薦状の申請
RPTKAの承認を得た後、労働移住省かインドネシア投資調整庁にて入国管理局にビザ発行のため必要な推薦状の発行を申請します。申請の際には、RPTKAの承認書のコピー・履歴書・卒業証明書などが必要になります。
これは就労させる外国人が、インドネシアで業務を行うだけの経験や能力・学歴があること等を証明するためのもので、申請後に、労働移住省から就労のためのビザ発行の推薦状が発行されます。
(3)一時居住ビザの申請
労働移住省から入国管理総局に推薦状が回付されるのを待ち、同局にビザ発給許可書(VTT)を申請します。同ビザの発給許可が下りると同局から在日インドネシア大使館にVTTが電送されるので、在日インドネシア大使館で所定の手続きを行い、一時居住ビザを取得します。
なお、発行から90日以内にインドネシアへ入国しなければ無効となるそうです。
(4)外国人就労許可(IMTA)の申請
ビザ発給許可書(VTT)の発給を受けた後、駐在員1人当たり月100ドル、1年分計1,200ドルの外国人労働者雇用補償(DKPTKA)を指定銀行へ納めます。
その後、労働移住省もしくはインドネシア投資調整庁に、外国人就労許可を申請します。通常、申請後10〜15営業日で取得できるようです。
(5)一時滞在許可(KITAS)の申請
一時居住ビザでインドネシアへ入国した赴任者は、7日以内に最寄りの入国管理局で、KITASおよびマルチ出国再入国許可(MERP)などの手続きを行います。
長期滞在(6カ月以上)の場合、KITASの最大滞在日数は1年間まで延長が可能です。
※上記の方法以外には、飛行機内や現地の空港で「到着ビザ(Visa on Arrival)」を取得してインドネシアへ入国、その後隣国のシンガポール等にある在外公館にて「一時滞在ビザ(C-312)」を取得するケースもあります。
インドネシアで、新しい駐在の就労ビサを申請・取得するために必要な書類・準備
ビザの申請には「企業(雇用者)が用意しなければいけない書類」と「内定受諾した求職者(被雇用者)が用意しなければいけない書類」と、それぞれに用意しなければならない書類があります。
▼雇用側の企業が用意するべきもの
KTP Direktur | 受け入れ企業役員の身分証明書 |
Akte Perusahaan | 定款(ていかん) |
Pengesahan Kehakiman / Legalisir | 定款認証 |
NPWP | 納税者番号 |
SIUP dari Trade Department | 営業許可証 |
Ijin Domisili Perusahaan | 所在地証明書(kelurahan/kecamatan発行) |
TDP | 会社登録証(RT/RW発行) |
Undang-undang No.7/wajib lapor persahaan | 申告誓約書 |
Struktur Organisasi | 会社組織図 |
KTP Pendamping & Surat penunjukkan pendanping | 申告誓約書 |
Kontrak Kerja | 雇用契約書 |
技術能力開発基金への1200 US$ |
▼赴任する人が個人で用意する必要がある書類一覧
1 | パスポート(原本) |
・必要残存期間:ビザ種類によって異なります ・未使用査証欄:3ページ以上(シングル)、6ページ以上(マルチプル) ・パスポートカバーは外して下さい。 |
2 | 証明写真 1枚 |
・縦4.0㎝x横3.0㎝ ・白黒、デジタル、ポラロイド、スナップ写真は不可。 ・パスポートに使用した写真は避けて下さい。 ・写真館で撮ることをお勧めします。 ・裏面に旅券と同じサインが必要です。 ・3ヵ月以内に撮影されたもの。 |
3 | 英文職務経歴書 | 申請時に大使館窓口にて配布 |
4 | 英文卒業証明書 | 最終学歴の英文卒業証明書が必要です。 |
5 | 過去の在籍会社の在籍証明書(英文) | 一般的に、過去5年分以上あると望ましいといわれています。 |
6 | 健康保険証コピー |
海外保険への加入が確認できない場合、 VISAプロセスが中断してしまうケースがあります。 |
インドネシアで業務に携わることができる就労ビサ以外のビサの種類
インドネシアには、用途にあわせて様々な種類のビサがあります。赴任ではなく、出張等でインドネシアに来られる際は、下記のような種類のビサを取得することになるでしょう。
工場の見学が制限されているビサもありますので、業種・用途にあわせて事前に確認するようにしましょう。
業務シングル(B211A)商談、会議等 | |
許可される活動 | 観光、親族訪問、社会訪問、文化・芸術、政府用務、商業目的でないスポーツ、視察・短期講座・短期トレーニング、商談、商品の購入、講演、セミナー参加、国際展示会参加、インドネシア本社または駐在事務所での会議、トランジット、緊急時の作業 ※工場への訪問はできません。 |
滞在可能日数 | 30日/60日(滞在可能な最大日数) |
業務シングル(B211B)工場関連の訪問等 | |
許可される活動 |
工業関連の訪問で ①インドネシア製品価値の向上、国際的マーケティングのためのコンサルタントと研修 ②インドネシア支社への監査・品質管理・検査、 ③外国人労働者候補の採用に向けての実地試験 |
滞在可能日数 | 30日/60日(滞在可能な最大日数) |
業務1年マルチプル(D212) | |
許可される活動 |
親族訪問、社会訪問、政府用務、商談、商品の購入、講演、セミナー参加、国際展示会参加、 インドネシア支社への監査・品質管理・検査 |
滞在可能日数 | 60日(1回の入国で滞在可能な最大日数) |
有効期間 |
発給日から1年(有効期間内に入出国が必要) ※ビザ発給日から90日以内に一度使用しないとビザが無効になります。 |
就労ビサの更新に関して
就労ビサ(IMTA/KITAS)の期間が、1年の場合
① 期限の切れる1ヶ月程前には、更新手続きの準備を開始する。
- 外国人雇用計画書:RPKTA就労枠の延長
- 外国人就労許可:IMTA就労許可の延長
- 一時滞在許可:KITAS 滞在許可の延長
② 期限の切れる2週間前くらいにパスポート原本を預け、イミグレーションに行く。
※パスポートの原本が必要なのは、KITASの延長のプロセスの際のみ
就労ビサ(IMTA/KITAS)の期間が、1年未満の場合
1年未満のビサの場合はインドネシア国内でビサを更新することができないため、期間満了とともにEPO(KITASを取り消す処理)をするため、国外でプロセスをする必要があります。
その後インドネシアに戻る際は、到着ビサ(VOA)を使います。本来、VOAでは就労禁止となっているため、1年未満の場合は”ビサを更新する”という概念ではなく常に”新規発給”となるイメージです。
① EPOに必要な書類の準備をしインドネシア国内でのEPOプロセス後、1週間以内もしくは決められた日時までにインドネシアから出国する。
② EPOの完了後、IMTA再手続きのためシンガポールやマレーシアなどの外国に行き、インドネシアに到着ビサ(VOA)で入国し次のVISAのための手続きを行う。
③ ビザ発給許可書(VTT)の申請を完了させる。
④ イミグレーションに行き、1年用もしくは再度1年未満用のKITASの手続きを行う。
EPO(ビサ取り消し)に関して
上記にも少し記載がありましたが、EPO とはExit Permit Only の略で、KITAS を取り消す処理の俗称です。”ビザ手続き”というと取得や延長などのイメージが多いですが、取り消しも”ビザ手続き”のひとつです。
KITAS 保持者が本帰国する際や転職などでスポンサー(所属する会社)が変わる場合は、必ず現在所有の KITAS を EPO する必要があります。基本的にEPO処理は管轄地域イミグレーション事務所で行い、KITAS オリジナルなどイミグレーション関係書類をすべて返却します。
またEPO 処理をするとパスポート上に 「 Return of Immigration Document 」 というスタンプが捺されますので、そのスタンプに書いてある日付から 7日以内にインドネシアから出国しなければならないそうです。もしも特定の日付けが書いてある場合は、その日付け前に出国しなければなりません。
また日本帰国後、インドネシアに戻らない場合でも EPO 処理が必要です。その場合は、KITAS オリジナルを日本からインドネシアに物理的に送付してもらう必要があります。
送付されたKITASオリジナルと、インドネシアからの出国スタンプ部分のパスポートコピーとスポンサーからの申請書で、本人が日本に居たままインドネシアに戻る事なく EPO 処理が出来るようです。
※EPOプロセスは直近まで所属していた企業が行うのが一般的です。大体2万円弱ほど費用が発生します。
まとめ
外国人が海外で働くということで、入国から出国までこのようにいろいろな手続きがあります。インドネシアでの就労ビザ取得に関しては、自社ですべての工程を行うと手続きが多く長期に渡ることもあるため、現地のビザエージェントを通じて発給をするのが一般的です。
現在「高卒者や実務経験が5年に満たない方はビザ発給許可が下りない、ないし期間が半年までしか認められない」という話をよく聞きますが、しかしそれはすべてではなく問題なく通る場合もあり、綺麗に線引きができない状態です。
また受け入れ企業の規模、業態等様々な要因によりビザ発給許可状況が変わっているようですので、まずは一度専門家に確認してみてはいかがでしょうか。