一人当たりの営業生産性が大きく改善!エンリード不動産が実践する「準業」とは? |HR NOTE

一人当たりの営業生産性が大きく改善!エンリード不動産が実践する「準業」とは? |HR NOTE

一人当たりの営業生産性が大きく改善!エンリード不動産が実践する「準業」とは?

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~「準業」とは?準備を制する者がビジネスを制する~

2019年に創業し、わずか5期で70億円超の売上を達成したスタートアップ、エンリード不動産

中古マンション買取再販」という不動産業界の中でもニッチな市場で、大手も参入している中、急成長を遂げています。その成長を牽引してきたのが、営業部長の松野智寛さんです。

自らがトップ営業でありながら、マネージャーとしても若手営業が結果を出す仕組みをつくってきた松野さん。特に注力しているのが準業」です。

今回は、この「準業」にフォーカスを当てながら、結果を出すマネジメントについて深掘りしていきます。

【人物紹介】松野 智寛|株式会社エンリード不動産 営業統括 本部長

1993年茨城県生まれ、文教大学卒業。2017年新卒で株式会社未来都市開発に入社し、同年に新人賞受賞、仕入れ、販売部門共に1位に。翌年4月、最年少で営業部主任に昇格し、その後も活躍を続け、2020年に代表からの紹介で株式会社エンリード不動産(当時2期目)に入社。現在は営業統括本部長として活躍。

未経験の若手が活躍しているエンリード不動産とは?

−本日はよろしくお願いします。まずは、エンリード不動産について簡単にご紹介いただけますか?

エンリード不動産は2019年に代表の工藤が創業し、私は2020年入社しました。

私は、前職でも不動産営業に従事してきており、新卒から一貫して不動産業界で経験を積んできています。

当社は2024年の現在で6期目になりますが、5期目の売上が71億円で、今期は110億円を目指しています

事業内容は100%不動産の中古マンションの買取・再販です。これは、物件を買い取って、リノベーションをして、付加価値をつけて販売するというビジネスモデルになります。

具体的には、一般の売主様やオーナー様から直接買い取ったり、一般のエンドユーザーさんに直接売るのではなく、それぞれ人脈を持っている仲介会社さんに対して営業するという、仕入れ・販売ともにBtoBのビジネスになっています。

今は東京と福岡に拠点があり、社員数は全体で43名、営業人員だと18名になります。

特徴としては、営業のほとんどが未経験者の入社1年~3年の社員で構成されている点です。基本的には新卒がメインで、あとは未経験者の20代の中途社員となっています。

若手の未経験者を育てて、成長させて活躍させるという点では、業界でも珍しい会社なのではないかと自負しています。

なぜ若手が育って活躍できるのか。そこに大きく貢献しているのが「準業」になります。

ハイパフォーマーが実践している「準業」とは何か?

−急成長の秘訣が「準業」にあるとのことですが、これはどういったものなのでしょうか?

「準業」は、我々が取り組んでいる施策で、簡単に言えば「事前準備の徹底」です。

そもそも、準業を始めたきっかけは、当社が抱えていた課題にありました。

それが何かというと、行動量の問題です。仕事の成果は「量×質」だと言われますが、ハイパフォーマーと比較した時に、他の社員は行動量が全然少なかったんです。

量をこなせないので質も上がっていかない。質をうまく承継できないという結果、人が育たない、売上があがらない、という悪循環が起きていたんです。

 

−なるほど。その際にどのような対策をとられたのですか?

一人ひとりの行動パターンを詳細に分析しにいったのですが、共通してあったのが、1日の動きにメリハリがなくて、集中力に欠ける状態だったんです。

この業界で起こりがちなことなのですが、始業時間の9時30分に対して9時29分に来て何の準備もせずに「今日どうしようか」と考えるところからスタートして、結果としてだらだらと22時、23時まで残業してしまっている。そんな状況でした。

要するに、午前中の時間の使い方がものすごくヘタクソなんです。

一方で、高いパフォーマンスを上げている人はどういう行動をしているのかも、見にいったんです。

すると、決められているわけではないのに、通常の始業よりも早く来て、その日の行動であったり、ターゲット、日次目標の設定などを毎日しっかり準備して、「9時30分にはもう行動するだけ」という状態まで準備ができているということがわかったんです。

 

−そこから「準業」が生まれたわけですね。

そうです。我々の目指すところは「日本を代表する不動産再生企業」になることです。

そこを目指すためにも、ハイパフォーマーたちが主体的にやっていることを、徹底してルール化しようと考えました。

始業前の準備は業務の一環だと位置づけています。

「準業」による変化

−「準業」を始めてから、どのような変化がありましたか?

まず、行動量が増えました。それも短時間でです。

行動量が増えて、かつ残業がほとんどなくなったので、時間当たりの生産性がかなり高くなりました。しっかり休めているので、1日の集中力も高い状態をキープできています。

質の面でも改善傾向にあります。準業の中で、どこに何をするか、何時までに何をすべきかを、各課長と各メンバーでトークスキルから商談の交渉の仕方まで細かく準備します。

そうすることで、9時30分を迎える時には、ハイパフォーマーの考え方で全員が動ける状態になっています。

 

−具体的な数字の変化はありますか?

はい、かなり大きな変化が出ています。

例えば、今月新たにリーダーになった社員がいるのですが、この社員は昨年、年間の粗利が2,000万円くらいでした。それが、今期は4ヶ月目ですでに約5,000万円と、すでに倍以上の成果を出しています。

もちろん、年次を重ねて質が上がったり、取引先が増えたということもあると思いますが、それを抜いても非常に大きな成長率を示しています。

また、新卒2年目の社員は、他社のトップセールスマン並みの実績・生産性を生み出すことに成功しています。

「準業」の具体的な実践内容

−それでは、「準業」の具体的な内容について教えていただけますか?

まず、8時から各課でミーティングをします。これは業務なので、朝残業として残業代を出しています

内容は大きく以下になります。

  • 前日の行動の振り返りと具体的な改善案をつくる
  • 今日の具体的なスケジュールをハイパフォーマー基準で組み立てていく

実は、これに先立って7時30分から各課長と私でミーティングをしています

ここで私自身の考え方を課長たちに落としています。そうすることで、施策の考え方や進め方に認識のズレがないようになっています。

また、以下のようなイメージで、ハイパフォーマーの基準となる数値を可視化することもしています。


−基準となる数値があって、そのうえで松野さんの考えを各課長にインストールしているわけですね。この部分で特に意識していることはありますか?

朝残業してもらっている分、遅くとも19時までには強制的に仕事を終えて帰らないといけないルールにしているんですね。

ですので、限られた時間で効率よく行動するために、やらなくていいことをとにかく捨てる、やらなくていいことを教えることを常に意識しています。

例えば、よくある営業手法として「訪問営業」がありますが、これも曜日や時間帯を徹底して統一します。

我々の業界で言うと、土曜日は仲介業者さんが一般のエンドユーザーさんの対応で忙しいので、訪問営業をしても生産性が低いんです。

そこで土曜日は、溜まった事務作業や急ぎでない物件の査定などに当てます。逆に平日は、9時30分には取引先のドアを開けるくらいのイメージで動きます。

一方で、ローパフォーマーの傾向としては、平日土日関係なく、同じことをずっと繰り返す。謎のルーティーンかのように、戦略・戦術にメリハリがないんですよね。

 

−他にも工夫されていることはありますか?

業者訪問の範囲を絞るというのも大きな特徴です。

我々は、各担当者に東京の1区から2区くらいしかエリアを割当てません。その代わり、とにかく何度も何度も同じ人に会いに行く。

朝のミーティングでは、
「来週Aさんに会いにいこう」
「Bさんと2週間コミュニケーション取っていないけど、いつにどんなアプローチする?」
「新規開拓が多いけど、1ヶ月間連絡とっていないCさんに優先的にアプローチしてください」
などといった会話をしています。

「準業」を成功させるポイント|主催側の準備と、行動のデータ化

−「準業」のミーティングを運営するために意識されていることはありますか?

ミーティングを主催する側の準備ですね。

せっかく朝早く集まっているのに、指示を出す側が準備できていないと、ただの生産性の低い時間になってしまうんです。

ですので、課長や部長はミーティングの準備をしっかりしないといけません。短時間で効率的に全員の今日すべき方向を指し示すはずが、準備ゼロで入ってしまうと、ミーティングの時間がすごくかかるので、ここの準備が非常に重要です。

そのためにも、行動量を可視化、データ化することがポイントです。


−どのようにデータ化して管理していくのでしょうか?

我々はSalesforceを使って、常に案件の状況や昨日の行動を確認できるようにしています。何を何件やったかを全部Salesforceに入力して、毎日振り返りをしています。

具体的には、以下のようなデータになります。

  • 案件情報:現在抱えている案件の詳細
  • 日々の行動記録:何を何件実施したか
  • 目標と実績:月次、週次の目標と達成状況
  • 顧客ランク:取引先ごとのランク付け

こういった数値を見ながらミーティングをおこない、今月の目標と現状、実績を各課ごとに確認します。

例えば、ある社員の結果が出ていない場合、

  • 買い付け件数(購入申し込み件数)は他の社員と同等だが、成約に至っていない。それはなぜか?
  • 買い付け案件の質が低い、または交渉力に課題がある可能性が考えられる
  • その前段階の「物件紹介」「査定依頼」の件数を見ると、ハイパフォーマーとの差が大きい
  • つまり、母数を増やすための行動が足りておらず、結果として質の低い買い付け案件ばかりになっている

このように、データを細かく見ていくいく、具体的な改善ポイントを明確にしていきます。

幹部候補の育成も「準業」の意識で取り組む

−幹部候補の育成も「準業」として実施されているそうですね。

はい、幹部研修を年3回実施しているのですが、課長職はもちろん、サブリーダーになる1歩手前の入社2年目くらいのメンバーから参加しています。

目的は大きく2つあります。

1つは、マネージャーとしての役割の確認です。「人財を預かる」ことに対するマインドセットや自分の役割の確認をします。

もう1つは、チーム、メンバーを成功に導くためのPDCAサイクルを高速で回す癖をつくることです。その実践として事業計画書の作成を行っています。

3ヶ月ごとの事業計画をつくって、毎月振り返ってもらうんです。その度に改善点を見つけ、次の改善につなげていく。このPDCAを若いうちから回していく練習をします。


−研修を受けた方々の反応はいかがですか?

とにかく「ハッ」とすることが多いようです。自分の課題に気づくきっかけになるんです。

例えば、「ここが課題だ」って言って、行動に移せずに終わっていたことに気づいたり、実践してもそれがうまくいったのかどうかを振り返ることが、実はできていなかったことに気づいたり。

また事業計画書をつくることで、「自分の数字だけやっていればいい」と思いがちな営業が、事業全体の視点で考えるようになります。

自分自身ができていないことはもちろん、まわりのメンバーができていないことも全部課題になります。

「全て自分が変えられる、全てリーダーの責任」というマインドになったという声も多いですね。


−ちなみに、松野さんが考える理想のマネージャー像はどのようなものですか?

まずはやってみせること。そして、誰よりも1番悩むこと。その人たちのことを毎日考えて、どこに課題があって、どこが良いところで、どこを伸ばせばいいのか。

厳しさと愛情のバランスを取ることは大前提ですが、その人の成功や成長に対してどこまで本気でマネージャーがコミットするかが重要です。

そう考えると、「このメンバーをこうしてあげないと」という強い思いが自然と湧いてくるんです。

やらされ仕事のチームでは人は絶対に育ちません。本気で向き合わなければ、相手には絶対に伝わらないし、成長もしないと思います。

−そういった松野さんの考えは、周りのメンバーにも伝えているのでしょうか?

そうですね。特にリーダーには「自分が1番やれ」ということを重要視して伝えています。

リーダーになったら、人を動かして自分はふんぞり返るというイメージがあるかもしれません。でも、それは真逆なんです。

人の上に立つなら、人より率先して人がやりたくないことをやる。これがすごく重要だと思います。


−若手の育成に関して、特に意識されていることはありますか?

早い段階で役割をどんどん与えていくようにしています。

例えば、1年目でサブリーダーを任せてみたり、2年目で支店立ち上げをやってもらったり。

実際に当社では、1年目、2年目で支店長や課長になるということが起こるんです。

今いる現場でも、1年後に先輩たちを全員追い抜かして課長になったり、中途で入社して1年しかやっていないのに支店の立ち上げを任されたりすることが実際にあります。


−若いうちから任せるというのは、機会でもありリスクでもあると思いますが、その辺りはどうお考えですか?

確かに、一時期は「ちょっときついな」「なかなか伸びないな」と思った時期もありました。そのために研修を強化したこともありました。

私が考えているのは、人が増えれば増えるほど、上司が権限移譲でメンバーに任せつつも、本当に大丈夫かは常にチェックしてあげないといけないということです。

リーダーが1人増えたら、その上司はもっと忙しくなる感じですね。最初のうちはいつも以上に気を張らなければいけません。

その一方で、細かい管理はリーダーに任せる。その管理ができているかを管理するというイメージです。

大事なのは「任せっきり」にしないということ。権限は与えるけど、こっそりずっと見守っている。これが大事だと思います。

「準業」の進化と今後の展望

−最後に、HR NOTEの読者にメッセージをお願いします。

「準業」は決して特別なものではありません。要は「しっかり準備をする」ということを、会社の文化として根付かせたものです。

どの会社でも、トップパフォーマーは必ず入念な準備をしていると思います。その行動を「見える化」し、全員で共有する。そして、それを日々の習慣にする。これだけのことです。

ただし、これを継続するには強い意志が必要です。特に最初のうちは、「面倒くさい」「時間の無駄では」という声も上がるかもしれません。

しかし、結果が出始めれば、みんなが自然とこの習慣を大切にするようになります。

皆さんの会社でも、まずは小さな部分から「準業」的な取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。必ず、良い変化が起こるはずです。

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